ユーロは一段の下げを見る流れか(週報6月第2週)

先週のユーロは、週初はロシアの外貨をユーロにシフトさせるとのニュースにユーロ買いで始まりました。

ユーロは一段の下げを見る流れか(週報6月第2週)

ユーロは一段の下げを見る流れか

〇先週のユーロ、水曜に一時的に上昇後週末に向けてユーロ売りが強まる
〇高水準で続いていたユーロ買いポジションに対し調整が入る
〇欧州のワクチン接種進展と景気回復期待を材料としたユーロ買いに対して息切れ感
〇ユーロ円は本格的な下げか上昇トレンドに回帰するか、今週か来週あたりが見極める時期
〇今週は1.2025レベルをサポートに1.2150レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは米国CPIとECB理事会後の総裁会見が同時刻となることで、木曜のNY朝方までは動きにくいという見方が広がっていましたが、細かいニュースはそれなりに出ていて、週初はロシアの外貨をユーロにシフトさせるとのニュースにユーロ買いで始まりました。ロシアによる外貨シフトの話は決して新しい話では無く、これまでも外貨リスクを分散させるために米ドルから他通貨、特にユーロへのシフトは何度も出て来ていますし、実際にそうした動きは長期的に出ています。

昨年時点でロシアの外貨準備の構成比率ではユーロが最大の約30%、そして2番目に多いのは金で約23%、米ドルは第3位の約22%です。第4位は人民元ですがまだ約12%と低く、おそらくは米ドル以外の3つの比率が今後も上がる可能性は高いでしょう。ただ、ロシア財務相が否定したことから短期的に為替市場に大きな影響が出るほどの動きは無いと考えられ長期的な材料です。

そしてCPI発表を前に米長期金利はじり安の展開となり水曜には節目の1.5%を割り込み、3月4日以来の水準へと下げ、そのことからユーロドルは一時的に上昇を見せましたが、ECB理事会前ということもあって滞空時間は短く、週初からの似たような1.21台半ばから後半の水準でECB理事会を迎えました。まず米国CPIが強くドル買い、その後ラガルドECB総裁のタカ派発言でユーロ買いと短時間に乱高下したものの、最終的には週末に向けてユーロ売りが強まることとなりました。

これはCPI後に米金利が上昇一転下げとなり一段の低下を見せたものの金曜には落ち着いた動きとなっていたこと、その一方でここのところ高水準で続いていたユーロの買いポジションがユーロドル、ユーロ円ともにテクニカルなストップオーダーも巻き込みながら調整が入ったということが大きかったようです。このポジション調整については、これまで欧州のワクチン接種進展と景気回復期待を材料としたユーロ買いに対して、息切れ感が出て利食える向きが利食った動きというところであると思います。

この売りの直接的なきっかけはテクニカルな影響が大きかったと思いますので、チャートに見てみましょう。日足チャートをご覧ください。

ユーロは一段の下げを見る流れか

先週時点で既に「3月末安値からの上昇チャンネルは下抜け」、「5月高値と6月高値とで1.22台半ばの高値圏を構成し」、「下値の目途としては5月安値と高値の61.8%押しとなる1.2092」というテクニカルなターゲットを示しましたが、既に先週の下げでこのターゲットは達成しました。

短期的には青の平行線で示した下降チャンネルの動きへと転じた動きと考えられ、今週は戻り売りを考えながら次のターゲットとなる5月安値と高値の78.6%(61.8%の平方根)押しである1.2045、そして大台1.20を視野に入れる展開になってくると見ています。

今週は1.2025レベルをサポートに1.2150レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週のコラム

今週もユーロ円の日足チャートを見てみましょう。

ユーロは一段の下げを見る流れか 2枚目の画像

ユーロ円は長期的に続いている平行上昇チャンネル(ピンクの太線)の中でスピード調整を一段と強める展開となってきました。長期的なユーロ高トレンドに変化は無いもののユーロドルが下押ししやすい状況となってきたことから、ユーロ円も短期的には青の平行線で示した下降チャンネルの中で戻り売りが出やすい期間を挟み、そこから本格的な下げとなるのか、あるいは上昇トレンドに回帰するのか、今週から来週あたりにかけて見極める時期がやってきそうです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

6月14日(月)
17:00 スペイン中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産
22:00 英中銀総裁講演
22:00 シュナーベルECB理事講演

6月15日(火)
15:00 ドイツ5月CPI
15:00 英国5月失業率
15:45 フランス5月CPI
17:00 フィンランド中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏4月貿易収支
21:15 英中銀総裁講演

6月16日(水)
15:00 英国5月CPI
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見

6月17日(木)
16:30 スイス中銀政策金利発表
18:00 ユーロ圏5月CPI
18:00 ユーロ圏4月建設支出
**:** ユーロ圏財務相会合

6月18日(金)
15:00 ドイツ5月PPI
15:00 英国5月小売売上高

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月7日(月)
ユーロドルは欧州市場昼頃までは多少の上下は見られたものの動きが乏しい展開が続いていました。NY市場に入りロシアが外貨をドルからユーロにシフトさせるといった報道が出たことからユーロドルが上昇、1.22台に乗せる場面も見られましたがロシア財務省は同報道を否定したこともあり引けにかけてはやや押しました。

6月8日(火)
ユーロドルの動きは鈍く1日のレンジも30pipsに留まりました。金融市場の主要テーマとして米国と欧州のテーパリング思惑があることからECB理事会の結果を見るまでは動きにくい展開が続くとの見方が支配的でした。

6月9日(水)
ユーロドルはNY市場まで若干底堅い推移となっていましたが、NY市場では全般にドル売り後のドル買いとなったことから、ユーロドルはユーロ買い後のユーロ売りとなり、1.2218レベルの高値を見た後に1.2174レベルまで下げました。しかし、発射台が若干高かったこともあり、東京安値の1.2171レベルは維持して引けました。

6月10日(木)
ユーロドルは強い米国CPIと同時にラガルドECB総裁の理事会後の会見が始まり景気見通しについて楽観的な見通しを示しました。そのため初動はCPIに反応してのドル高・ユーロ安、その後にラガルド総裁の発言に反応してユーロ買い戻しと短い時間に上下に振れました。その後は時間経過とともに落ち着きを取り戻しドル売りの動きとユーロ円の売りとがぶつかりユーロドルは1.2170レベルで横方向の動きのまま終わりました。

6月11日(金)
ユーロドルは東京市場ではユーロ円の買い戻しも出たことから底堅い動きとなっていましたが、欧州市場に入り米金利上昇をきっかけにしたユーロ売りが広がりました。前日安値を下抜けるとストップオーダーも巻き込みながらユーロドルだけでなくユーロ円にも売りが広がり、ユーロドルが1.2093レベル、ユーロ円は132.66レベルまで水準を切り下げ、それぞれ安値圏での週末クローズとなりました。

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