ドル円 水準を若干変えてのもみあいを継続(週報6月第1週)

先週のドル円は週前半は動きが鈍く109円台半ばから後半でのもみあいに終始していました。

ドル円 水準を若干変えてのもみあいを継続(週報6月第1週)

水準を若干変えてのもみあいを継続

〇先週のドル円、木曜に4/6以来の高値をつけた後ドルは下落し週間安値圏に下押し
〇今後は一段の雇用回復、景気回復による物価上昇といった動きが出てくるかに注目
〇5月後半以降はドル円と米金利との相関は低下、直近では相関係数がゼロに近づく
〇国内のワクチン接種ペース加速でこれまでの円売りの動きに変化が出てくる可能性も
〇今週は109.00レベルをサポートに、110.00レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は週前半は動きが鈍く109円台半ばから後半でのもみあいに終始していました。木曜に発表されたADP全国雇用者数が強かったことから米金利上昇とドル買いの動きとなり、110.32レベルの4月6日以来のドル高値をつけて金曜の雇用統計待ちとなりましたが、雇用統計はNFPが予想よりもやや弱かったことを除けば比較的良い数字であったにも関わらずドルは下落、週間安値圏に下押ししての引けとなりました。

雇用統計は先月の数字のブレや今週のADPと思惑が先行しやすい流れではありましたが、数字以上に110円台でのにわかロングによる投げ、そして今回程度の雇用ではFRBのテーパリング議論は時期尚早のスタンスから変わらないであろうとの見方も重なり、結局は週前半のもみあい水準へと押すこととなりました。既にワクチン接種による経済活動正常化は始まり新たな材料とはしにくい中で、今後は一段の雇用回復、景気回復による物価上昇といった動きが出てくるかといったあたりに市場参加者の思惑が集まりそうです。

そして、動きとしては米金利との相関が高い流れが変わったとまでは言えないものの、5月後半以降はドル円と米金利との相関は日足ベースでは低下してきています。以下のチャートは上段がドル円日足、下段が米金利(10年債利回り)、下段に20日ベースでの相関係数を表示してあります。直近では相関係数がかなりゼロに近づいていて、相関が無い状況になっています。

水準を若干変えてのもみあいを継続

これは米金利が横ばいの動きが続く中、最近では特に動きが鈍く日々の動きは見られてもほぼ1.6%近辺での膠着となっている一方で、ドル円はクロス円での円売りの動きもあり、ドルの動きよりも円安の動きが目立っていたということが大きかったことによるものです。

この円安の動きは新型コロナワクチンの接種ペースが先進国の中で最も遅く、景気回復も遅くなることで為替市場では円売りに動く向きが多かったためですが、ここに来て国内の接種ペースも加速し、7月には65歳以下を対象とした接種準備も始まり、東京オリンピックも賛否あるものの開催に向かって進んでいることを見ると、これまでの円売りの動きにも変化が出てくる可能性があります。

国内のワクチン接種も週末時点で100人あたり12回を超えてきており一時期の数人レベルから大幅な改善を示しています。他国の接種ペースはそのまま当てはまらないとしても30人水準に到達するのは当初考えていたよりも早そうです。そうなってくると、これまでのワクチン格差による円売りが逆に今後の伸びしろを好材料とする流れに転換する可能性もあるでしょう。7月23日からの東京オリンピックに向け、現在は何が先行指標となるのかを市場参加者が見極めようとしている段階でしょうか。

テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

先週引いた2本のピンクのラインで示した上昇ウェッジの中での動きを継続中で、4月6日以来の高値をつけたもののウェッジの上側のラインは抜けずに反落しました。先週も結局は週間レンジは99銭に留まりましたし、今週もこのウェッジの中で基本的にもみあいの動きを継続すると考えられます。

そして110円台では売りも控えているいっぽうで109円割れでは買いも出てくるという展開を考え、109.00レベルをサポートに、110.00レベルをレジスタンスと若干レンジを下に変えてのもみあい継続を見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月7日(月)
**:** NZ市場休場
**:** 中国5月貿易収支
15:00 ドイツ4月製造業新規受注

6月8日(火)
08:01 英国5月小売売上高
08:50 本邦1〜3月期GDP改定値
08:50 本邦4月貿易収支(国際収支)
10:30 豪州5月企業景況感
15:00 ドイツ4月鉱工業生産
15:45 フランス4月貿易収支
18:00 ドイツ6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP確報値
18:30 南ア1〜3月期GDP
21:30 米国4月貿易収支

6月9日(水)
07:45 NZ1〜3月期製造業売上高
09:30 豪州6月消費者信頼感
10:00 NZ6月企業信頼感
10:30 中国5月CPI・PPI
15:00 ドイツ4月貿易収支
19:00 南ア4〜6月期企業信頼感
23:00 カナダ中銀政策金利発表
23:00 米国4月卸売上高・在庫
23:30 週間原油在庫統計

6月10日(木)
08:01 英国5月住宅価格
15:45 フランス4月鉱工業生産
16:00 トルコ4月失業率
18:00 南ア1〜3月期経常収支
20:45 ECB理事会
21:30 米国5月CPI
21:30 米国新規失業保険申請件数

6月11日(金)
15:00 英国4月鉱工業生産
15:00 英国4月貿易収支
16:00 トルコ4月鉱工業生産
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感速報値
**:** G7サミット(〜13日)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月31日(月)
LDN、NY市場とも休場となることもあって東京からNY市場前場までほとんど動意の見られない月末となりました。しかしNY市場では参加者が少ない中、月末実需でユーロが買われる動きに沿ってドル円も下落、一時109.35レベルの安値を付けましたが引けにかけては下げる前の水準に戻して引けました。

6月1日(火)
ドル円は東京朝方に株安の動きを受けて売りが先行しましたが、前日安値をわずかに下回ったものの下げきれず、米金利上昇の動きも手伝ってNY前場までドルがじり高の展開を続けました。米金利は1.64%を付けた後は引けまで低下したことからドル円も日中の安値圏へと押した後に若干戻して引けました。

6月2日(水)
東京前場のドル円は日経平均上昇とともに上昇、後場には一旦動きが止まったものの欧州市場序盤からNY市場が始まるまではユーロ安の動きに引っ張られてのドル高となりました。しかし、NY市場に入ると既に下げ始めていた米金利の動きからドル売りへと転じ、東京朝方の水準に押して引けました。

6月3日(木)
ドル高の1日となりました。東京市場から米金利上昇とともにドル円は買いが先行し、欧州市場で若干の押しを挟んだもののその後発表されたADP全国雇用者数が予想よりも強く米金利一段の上昇とともに高値110.32レベルと4月6日以来の高値をつけ、そのまま高値圏での引けとなりました。

6月4日(金)
ドル円は110円台での売りも目立ち、米国雇用統計の発表を前にややドル売りが優勢、東京朝方の高値110.33レベルから110.09レベルへと水準を下げての指標待ち。バイデン大統領が会見を行うとのニュースも入り警戒感も高まっていました。雇用統計自体はNFPこそ予想より低かったことからドル売りの動きとなりましたが、数字全体としてはまったくの想定内。しかし前日のドル高の流れでポジションが増えていたのか、ストップオーダーも巻き込みながら109.37レベルまで水準を切り下げました。バイデン大統領の発言は単に雇用の回復に言及した程度で特に材料とはならず、ドルは上値の重たいままでの引けとなりました。

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