ドル円 米雇用統計失望で、上値トライは仕切り直し(週報6月第1週)

先週のドル/円相場は、終わってみればドルが小安い。一時110.32円まで値を上げ、2ヵ月ぶりの高値を示現するも続かなかった。「行って来い」の様相に。

ドル円 米雇用統計失望で、上値トライは仕切り直し(週報6月第1週)

米雇用統計失望で、上値トライは仕切り直し

〇先週のドル円、米経済指標発表で一時急伸し2ヵ月ぶりの高値となる110円台を回復
〇翌日には一転して下値を試す値動きで週初を下回る109円半ばまで値を下げる
〇ランド円は週末にかけ年初来高値を更新、リラ円は週半ばに年初来安値を一時更新
〇今週発表の米経済指標が改善傾向を示せば再びドル買いが優勢となる可能性も
〇今週は米5月消費者物価指数や6月ミシガン大消費者信頼感指数速報値などに注目
〇今週のドル/円予想レンジは、108.50-110.70

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場は、終わってみればドルが小安い。一時110.32円まで値を上げ、2ヵ月ぶりの高値を示現するも続かなかった。「行って来い」の様相に。

前週末は、新型コロナをめぐり、フィリピンで「新変異株を確認」といった報道が観測されたうえ、バイデン米大統領が「6月16日の米露首脳会談でプーチン氏に人権問題を提起する」などと発言したことが思惑を呼んでいた。

そうした状況下、ドル/円は109.85円レベルで寄り付いたものの、ドルは冴えず。大きく崩れる展開ではなかったが、ジリジリと下値を崩し、一連の過程のなかで週間安値の109.33円を示現している。その後は、発表された米経済指標が市場を混乱に陥れ、ドルは一時急伸し2ヵ月ぶりの高値となる110円台を回復するも、その翌日には一転して下値を試す値動きに。結局週初のオープンレベルを下回る109円半ばまで値を下げ、週末NYはそのままドルの安値圏で取引を終え、越週となった。
なお、ドル/円以外でいくつか興味深い値動きをたどった通貨ペアがあるなか、とくにとなるとランドとトルコリラか。ただ、双方は異なった動きで、ランド/円は週末にかけて年初来高値を更新した反面、リラ/円は逆に週半ばに年初来安値を一時更新していた。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「米経済指標」と「新型コロナ」について。
前者は、週明けこそNY休場もあり、動意は乏しかったが、その後は発表された米経済指標に振り回された。そのキッカケとなったのは3日に発表された2つの米雇用指標。とくにADP雇用統計が大幅な上ぶれとなったことが好感され、レンジを上抜けし2ヵ月ぶりのドル高値を示現する原動力になっていた感を否めない。そんなADP雇用統計の大幅改善もあり、翌日の5月米雇用統計についても市場の期待が高まったが、発表された実数値は期待を裏切る内容。したがって、指標発表後は一転してドル売りが優勢となり、前日の上昇分をすべて吐き出すという展開だった。米景気が順調に回復していることは間違いないが、市場は過度の期待を抱き過ぎなのかもしれない。

対して後者は、前段で取り上げた「フィリピンで新変異株確認」との報道に加え、マレーシア首相が6月1日から2週間の都市封鎖を発表するなど、アジア圏を中心に再びキナ臭い雰囲気が漂う。一方、欧米はというと、欧州委が「ワクチン接種完了なら域内渡航は検査・隔離措置を免除する方針」を提案すると指摘。規制の段階的な解除を目指す考えが示されるなど米国についても感染拡大はピークアウトした感があるものの、週末に掛けては英公衆衛生局が「新型インド変異株は重症化リスクが高い可能性がある」と警告するなど、再び予断を許さない状況に陥りつつある。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円は、過去1週間ほど推移していた新レンジ109.30-110.20円を3日木曜日に一時上抜け、110.32円まで上値を伸ばしてきた。それもあり、ドルの続伸機運が高まるも、翌4日にいきなりの反転。結局のところ「元の木阿弥」、昨年来の相場でたびたび観測されている「ダマシ」となった感を否めない。今週ドルは再び上方向へと向かうのか、それとも先で取り上げたレンジを若干拡大させた109.30-110.30円といったような「新・新レンジ」を形成することになるのか、まずはその動静に注目だ。

前述したような状況下、今週もまずは引き続き広義の米ファンダメンタルズに注目。先週末に発表された米雇用統計は確かに事前予想にとどかなかったものの、数字そのものは極端に悪い内容でなく、むしろ着実な米景気の回復が示されたともいえるものだった。そのため、今週発表される米経済指標の多くが改善傾向を示せば、為替市場においては再びドル買いが優勢となる可能性も否定できない。また、それとは別に週末に実施されるG7首脳会談など重要な国際会議にも要注意。

テクニカルに見た場合、ドル/円は先週一時110.32円まで値を上げ、年初来高値110.97円も視界内に捉えられたが、週末の急落で少なくとも上値トライは出直しとなった。ただ、ドルの下値は目先109.25円前後で推移する移動平均の21日線がサポートするなど、一抹の底堅さも醸しており、敢えてリスクを指摘すれば依然として上方向にバイアスがかかりそうだ。ただ、先週安値を下回り、108円後半に位置する一目均衡表の雲の上限をしっかり下回るようだと、その限りではない。

材料的に見た場合、中長期的には領有権をめぐる周辺国との対立や人権問題など話題に事欠かない「中国情勢」や「北朝鮮情勢」、「イラン情勢」、「露・ウクライナ情勢」、「新型コロナウイルス再拡大と変異種の発生、ワクチン開発・接種」、「米金融政策の行方」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、5月の消費者物価指数や6月のミシガン大消費者信頼感指数速報値といった注目の米経済指標が発表されるほか、米財務省による10年債などの入札も実施される見込みだ。加えてIAEA理事会やG7首脳会議などの重要国際会議も行われる見込みで、そちらも場合によっては相場の波乱要因に。

そんな今週のドル/円予想レンジは、108.50-110.70円。ドル高・円安については、まず先週高値110.32円をめぐる攻防に注目。抜けると再び年初来高値110.97円が視界内に捉えられそうだ。
対するドル安・円高方向は、移動平均の21日線も近くに位置する先週安値109.32円が最初のサポートに。底堅いイメージながら、108円台後半に位置する一目の雲に日足が埋没するようだと下値不安が高まりかねない。

米雇用統計失望で、上値トライは仕切り直し

ドル円日足

※ポイント要約は編集部

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