トルコリラ円見通し エルドアン大統領の利下げ発言による急落は一服(21/6/3)

トルコリラ円の6月2日は12.82円から12.44円の取引レンジ。

トルコリラ円見通し エルドアン大統領の利下げ発言による急落は一服(21/6/3)

エルドアン大統領の利下げ発言による急落は一服、3日夕の物価統計に注目

〇昨日のトルコリラ円は早朝の急落後買い戻され12.75を挟んでの揉み合いで推移
〇対ドルでは8.77へ急落し史上最安値更新後に戻し8.58を挟んだ揉み合いで膠着状態
〇3日16時に5月のトルコ物価統計発表、物価上昇率はさらに伸びると市場は予想
〇伸びが鈍化する場合は6月と7月の物価上昇率低下により利下げへ踏み切られる可能性も
〇12.60以上での推移中は12.85から12.90にかけてのゾーンを試す可能性
〇12.60割れからは6/2朝安値12.44試し、安値更新からは12.20前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の6月2日は12.82円から12.44円の取引レンジ。エルドアン大統領による利下げへの言及が報じられたことで2日早朝には12.44円(ベンダーによっては12.40円以下の安値提示も見られた)へ急落したが、報道後のやや狼狽的な売りが一巡した後は買い戻されて12.70円台へ戻し、夜に12.80円まで戻り高値を若干切り上げた後は12.75円を挟んでの揉み合いで推移した。
トルコのエルドアン大統領は6月1日のトルコの国営テレビTRTハーバーのインタビューで、「利下げが必要であり6月1日に中銀総裁と協議した」と述べた。大統領は「金利を引き下げれば投資の負担が軽減される」「今日、中央銀行の総裁とも話した。確かに金利を下げる必要がある」「そのためには7月、8月に金利が低下し始める必要がある」と述べた。

ドル/トルコリラの6月2日は8.77リラから8.51リラの取引レンジ。5月28日に8.61リラへ急落して昨年11月6日の史上最安値8.57リラを割り込んだ後は下げ一服でやや落ち着いていたが、大統領の利下げ言及報道から再び急落して2日早朝に8.77リラへ急落して史上最安値をさらに更新した。狼狽売り一巡で8.50リラ台へいったん上昇し、夜には8.54リラへ戻したが、その後は8.58リラを挟んだ揉み合いで膠着状態に入っている。

【物価上昇率のピークがみられるか、3日夕の物価統計が焦点】

エルドアン大統領は「インフレ率と政策金利の一桁」を理想として掲げ、利下げが物価を抑えるとの主張を繰り返してきた。2018年9月には消費者物価上昇率が24.52%へ上昇、物価上昇を背景に2018年9月に政策金利である週間レポレートは24%まで跳ね上がっていたが、その後は物価上昇率が低下に転じたことで利下げへ進み、2019年10月に消費者物価上昇率は8.55%まで低下し政策金利も14.0%まで引き下げられた。しかし物価上昇率が再び上昇し始めたものの中銀は利下げを継続して2020年5月には消費者物価上昇率11.39%に対して政策金利が8.25%となり実質マイナス金利状態に陥り、2020年11月にはトルコリラが対ドルで8.57リラの史上最安値へ下落、トルコリラ円も12.03円まで史上最安値を更新した。

トルコリラ暴落と金融政策破綻への対処として2020年11月にアーバル総裁が就任、11月に政策金利を15%へ引き上げて当月の消費者物価上昇率14.03%を上回り実質マイナス金利状態から脱出、その後も二度の利上げで2021年3月には政策金利は19.0%へ上昇、リラも大幅反騰した。
しかし、3月19日付けの官報でアーバル総裁は解任、新総裁のカブジュオール氏は大統領と同じく利下げ派であり、市場は混迷を悲観してリラ暴落が再開した。3月30日には4人の副総裁のうちの1人を解任、5月25日には2人目を解任した。その上での6月1日の大統領による利下げ言及が報じられたことで混迷はさらに深まると市場は受け止めている。

6月3日16時に5月のトルコ物価統計の発表がある。消費者物価上昇率は4月の前年比17.14%上昇から17.25%上昇へとさらに伸びると市場は予想している。生産者物価も4月の前年比35.17%からさらに伸びる可能性も指摘されている。物価上昇がピークアウトしないことにはトルコ中銀も早まった利下げには踏み切らないと思われるが、仮に4月から伸びが鈍化する場合は6月と7月の物価上昇率低下により利下げへ踏み切られる可能性も高まる。その際は利下げを悲観してのリラ売りが加速する可能性がある。逆に物価上昇が続いても利上げ催促でのリラ売りとなる可能性もある。まずは3日夕の物価上昇率がどの程度になるのかで6月17日の次回トルコ中銀金融政策での声明、総裁発言、大統領発言等が注目されてゆく展開になると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月2日朝への急落と反騰を踏まえ、2日朝安値を直近のサイクルボトムとする。トップ形成期は31日夕高値を基準として3日の日中から7日夜にかけての間と想定されるが、戻りは短命の可能性もあるとみて物価統計発表後に急落商状となる場合や12.60円を割り込む場合は弱気サイクル入りとして5日朝から9日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6月2日早朝の急落から戻して横這い推移に入っているため、遅行スパンは好転して先行スパンからも上抜けているが、波乱注意の状況にあるため、先行スパンを上回るうちは戻りを試す余地があるとみるが、先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6月2日朝の急落で10ポイント台へ低下してから戻しているが、50ポイント以上を維持しきれずにいる。波乱注意の状況のため40ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとするが、40ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開による一段安警戒とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.60円を下値支持線、12.90円を上値抵抗線とする。
(2)12.60円以上での推移中は12.85円から12.90円にかけてのゾーンを試す可能性があるとみるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。物価統計に対して強気反応の場合は12.95円前後へ上値目途を引き上げるが反騰一巡後の反落警戒とし、その後に12.80円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)12.60円割れからは6月2日朝安値12.44円試しとし、安値更新からは12.20円前後への下落を想定する。また12.60円以下での推移なら4日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる

【当面の主な予定】

6月3日
 16:00 5月 消費者物価上昇率 前月比 (4月 1.68%、予想 1.46%)
 16:00 5月 消費者物価上昇率 前年比 (4月 17.14%、予想 17.25%)
 16:00 5月 生産者物価上昇率 前月比 (4月 4.34%、予想 1.9%)
 16:00 5月 生産者物価上昇率 前年比 (4月 35.17%、予想 35.64%)
 20:30 週次 外貨準備高(グロス) 5/28時点 (5/21時点 492.0億ドル)
6月10日
 16:00 4月 失業率 (3月 13.1%)

※ポイント要約は編集部

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