トルコリラ円見通し 中銀副総裁解任報道から売られて5月14日安値を割り込む(21/5/26)

トルコリラ円の5月25日は12.98円から12.80円の取引レンジ。

トルコリラ円見通し 中銀副総裁解任報道から売られて5月14日安値を割り込む(21/5/26)

中銀副総裁解任報道から売られて5月14日安値を割り込む

〇トルコリラ円、12.98から12.80の取引レンジ、4/29の戻り高値以降の安値を更新
〇ドル/トルコリラは8.48から8.35の取引レンジ、中銀副総裁解任報道から急落した後やや戻し8.45近辺へ
〇トルコ中銀のオズバス副総裁解任、後任は元中銀職員でエルドアン大統領の顧問トゥメン氏
〇今回の副総裁交代は利下げへの消極派を排除する動きの可能性
〇12.90以下で推移中は一段安余地あり、12.80割れから12.70前後への下落を想定
〇12.90から12.93は戻り売りにつかまりやすく、12.85を割り込んだ場合は下げ再開へ

【概況】

トルコリラ円の5月25日は12.98円から12.80円の取引レンジ。トルコ中銀の4人いる副総裁のうちの一人が突然解任されたことで金融政策への不透明感からリラ売りとなり深夜安値で12.80円まで下落、5月14日安値12.83円を割り込み4月29日の戻り高値13.38円以降の安値を更新した。その後は売り一服でやや戻しているものの12.90円を割り込んだ水準にとどまっている。

ドル/トルコリラの5月25日は8.48リラから8.35リラの取引レンジ。中銀副総裁解任報道から売られて深夜過ぎに8.48リラへ急落してからはやや戻しているが8.45リラ近辺にとどまっている。
5月13日に8.51リラへ下落して4月26日安値を割り込み昨年11月6日の史上最安値8.57リラ以来の安値水準となったところで下げ一服となり、5月18日夕刻高値8.28リラまでいったん戻したがリラ買いは続かずにその後はジリ安の推移となっていたところ、25日の下落で5月13日安値割れに対する余裕が乏しくなってきた。

5月25日に発表された5月のトルコ製造業景況感指数は110.3となり4月の111.0から低下、市場予想の111.5を下回った。5月の設備稼働率は75.3%で4月の75.9%から若干低下して市場予想の76%を下回った。

【中銀副総裁解任】

5月25日にトルコ中銀の4人の副総裁のうちの1人が解任された。官報によれば解任されたのはオズバス副総裁で後任にはエルドアン大統領の顧問でTED大学経済学部長のセミ・トゥメン氏が任命された。トゥメン氏は2002年から2018年までの間をトルコ中銀で要職についていた経緯がある。
トルコのエルドアン大統領は3月20日にアーバル前総裁を解任して後任に高金利政策に批判的な大統領と同様の認識を持つ与党・公正発展党(AKP)の元議員であるカブジュオール氏を任命した。3月30日にはチェティンカヤ副総裁も解任している。

アーバル前総裁は在任中に三度の利上げを断行し、政策金利の週間レポレートは就任前の10.25%から15.00%。17.0%、さらに19.0%へと引き上げられてきたが、エルドアン大統領は「政策金利とインフレ率の1桁を目指す」という政策姿勢にこだわり、利下げがインフレを抑制するという異説を唱えてきたためにアーバル前総裁の利上げと金融引き締め姿勢を好ましくないとして解任したと市場は受け止め、解任報道からトルコリラは暴落的な下げに見舞われて2月16日に15.26リラだったトルコリラ円は3月30日に13.01円へ急落、さらに4月26日に12.67円へ一段安となり昨年11月6日に付けた史上最安値12.03円へ迫る状況となっていた。

現在のカブジュオール総裁はインフレ率を下回るような政策金利の引き下げはないと繰り返して市場を落ち着かせようとしてきたが、アーバル総裁が「必要に応じて追加利上げの用意がある」と繰り返してきた声明の文言を削除し、4月にはインフレもピークを迎えるとの見解を示して先行きの利下げ可能性を示唆するスタンスも示してきた。エルドアン大統領の意向を忖度したものであり、今回の副総裁交代も同様に利下げへの消極派を排除する動きではないかと思われる。

5月31日にはトルコの1-3月期GDP、6月3日には5月の物価上昇率の発表があり、6月17日には次回のトルコ中銀金融政策決定会合がある。物価上昇率が4月から鈍化すれば利下げの可能性が浮上するとしてリラ売り要因となりかねず、物価上昇率がさらに加速するようなら利上げ催促でリラが売られやすくもなると思われる。今のところ、5月物価上昇率については市場予想は4月からはやや伸びが鈍化するのではないかと見ているようだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月24日午後に19日夜安値と同値まで下げたために25日午前時点では20日夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。また既に24日午後安値でボトムを付けて戻しているところとして24日午後安値割れからは新たな弱気サイクル入りとしたが、5月25日深夜に一段安してからやや戻しているため、19日夜安値から4日目となる25日深夜安値を直近のサイクルボトムとするのを妥当とみて新たな底割れ回避のうちは27日夜にかけての間への上昇余地ありとする。ただし戻りは短命の可能性があると注意し、25日深夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして28日深夜から6月1日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では25日夜の一段安で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。新たな安値更新を回避して推移すれば遅行スパンは好転しやすくなるが、先行スパンを上抜き返せないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化からは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は25日深夜への一段安により30ポイント割れへ低下したところからはやや戻しているが50ポイントに届かないうちはもう一段安余地ありとみる。25日深夜安値を割り込んでさらに一段安する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られれば反騰入りの可能性が出てくるが、指数のボトム切り上がりがみられない場合及び50ポイント以下での推移が続く場合はさらに安値更新へ進みやすい状況と考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.80円を下値支持線、12.90円を上値抵抗線とする。
(2)12.90円以下での推移中は一段安余地ありとし、12.80円割れからは12.70円前後への下落を想定する。12.70円以下は反騰注意とするが、12.90円以下での推移なら27日以降も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.90円から12.93円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみてその後に12.85円を割り込むところからは下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

5月27日
 20:30 週次 外貨準備高 5/21時点 (5/10時点 495.9億ドル)
5月28日
 16:00 4月 貿易収支 (3月 -46.5億ドル)
 16:00 5月 経済信頼感指数 (4月 93.9)
5月31日
 16:00 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月期 1.7%)
 16:00 1-3月期 GDP 前年比 (10-12月期 5.9%)
6月1日
 16:00 5月 イスタンブール製造業PMI (4月 50.4)
6月3日
 16:00 5月 消費者物価上昇率 前月比 (4月 1.68%)
 16:00 5月 消費者物価上昇率 前年比 (4月 17.14%)
 16:00 5月 生産者物価上昇率 前月比 (4月 4.34%)
 16:00 5月 生産者物価上昇率 前年比 (4月 35.17%)


注:ポイント要約は編集部

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