トルコリラ円見通し 4月26日安値から3連騰で戻すも29日高値で戻り一巡、失速気味(21/4/30)

29日も13.38円まで高値を伸ばしたが、戻り一巡となり29日深夜には13.15円まで失速、その後は13.20円台で横ばい推移となっている。

トルコリラ円見通し 4月26日安値から3連騰で戻すも29日高値で戻り一巡、失速気味(21/4/30)

トルコリラ円見通し 4月26日安値から3連騰で戻すも29日高値で戻り一巡、失速気味

〇トルコリラ円、4/29高値13.38をつけたが、深夜13.15まで失速、その後は13.20台で横ばい推移
〇戻り高値を切り下げつつ、安値更新を伺う流れの範囲か
〇対ドル、4/29夕刻に8.11リラまで戻り高値を切り上げる、下げ一服か
〇対米関係、当面は大きな動きにはならないようだが、リラ安への潜在的な材料となる可能性に注意
〇トルコの貧困率上昇、経済信頼感指数は悪化、外貨準備高減少
〇5/6トルコ中銀の金融政策決定会合、連休中の波乱にも要注意
〇13.15割れから13.00前後へ下落を想定、13.15以下での推移なら週明け安値試しへ向かいやすいとみる
〇13.30超えから13.38試しへ向かうとみる、13.30以上で推移なら週明け高値試しへ向かいやすいとみる

【概況】

トルコリラ円は4月26日夕刻安値で12.67円まで一段安となり3月22日暴落以降の安値を更新したが、26日当日からの反騰で13円台を回復、28日まで3日連続の日足陽線で戻し、29日も13.38円まで高値を伸ばしたが、戻り一巡となり29日深夜には13.15円まで失速、その後は13.20円台で横ばい推移となっている。
下げ一服によるリバウンドだが、4月26日安値12.67円から4月29日高値13.38円までの0.71円高は、3月30日安値13.01円から4月2日高値13.84円まで0.83円高の反発が入ったところと変わらないレベルにとどまっており、戻り高値を切り下げつつ安値更新を伺う流れの範囲にある印象だ。

ドル/トルコリラは4月26日夕刻には8.48リラまで大幅続落して3月22日からの暴落で付けた3月30日安値8.45リラを割り込んで昨年11月6日に付けた史上最安値8.57リラ以来の安値となったが、急落一服で買い戻しに入り4月29日夕刻には8.11リラまで戻り高値を切り上げてきた。29日深夜には買い一巡で8.28リラへ反落したが30日午前序盤は8.20リラを挟んだ小動きとなっている。
3月19日のアーバル前総裁解任騒動による3月22日から3月30日への暴落、揺れ返しの反騰も4月15日のカブジュオール新総裁下での中銀金融政策決定会合における追加利上げへの言及削除から再び急落に転じてきたが、昨年11月の史上最安値更新へ進むには時期尚早として下げ一服という状況にあるようだ。

トルコ10年債利回りの4月29日終値は17.76%、26日に17.98%へ上昇したところからはやや下げ気味の推移だが、3月30日のリラ暴落時に18.60%へ上昇した後は17%台での持ち合い推移で高止まりしている。
イスタンブール100株価指数は4月28日に前日比0.44%と下落したが29日は1.13%高と戻している。昨年11月にトルコリラが史上最安値を更新する暴落となった際、イスタンブール100株価指数はさほど下げていない。最近の最大の下落は昨年3月のコロナショックであり、3月23日にかけてはリラ暴落による混乱を嫌気して急落したが、その後は落ち着きを取り戻している。乱高下の中での突っ込み買い、戻り売りを繰り返しつつ、円安なら日経平均が上昇するようにリラ安による通貨インフレ感が見かけのトルコ株価を下支えし、全般的な傾向としては米国株高、世界の株価動向を見ながらの推移となってきている。

【米国からの圧力】

ブリンケン米国務長官は4月28日に米国の全ての同盟国はロシア製兵器をこれ以上購入すべきではないとし、追加購入すればさらなる制裁の可能性があると警告した。長官はバイデン大統領がオスマン帝国末期のアルメニア人殺害をジェノサイドと認定したもののトルコが米国にとって重要なNATO同盟国であると改めて強調したが、「トルコ、さらには米国の全ての同盟国が地対空ミサイル『S400』を含むロシア製兵器を今後追加購入しないようにすることも非常に重要だ」と指摘し、『敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)』の対象になる可能性があり、すでに実施されている制裁とは別に追加制裁の対象となると述べた。
エルドアン大統領とバイデン大統領は電話会談を持ち、トルコ側としてはジェノサイド認定を受け入れがたいと米国批判姿勢を強めているものの、深刻な対立関係へ進むことはお互いに避けたい意向がみられる。当面は大きな動きにはならないと思われるが、リラ安への潜在的な材料となる今後の火種として注意してゆくところ。

【経済信頼感指数は悪化、外貨準備高減少】

世界銀行は4月27日に2020年のトルコの貧困率が12.2%に上昇したとの推計を発表した。2019年の10.2%から悪化しており、貧困率を新型コロナウイルスのパンデミック前の水準に戻すことは困難だと指摘した。世銀は「トルコは新型コロナ危機下でも経済的な拡大を見せた世界でも数少ない国の一つ」としたが、「昨年のインフレ率は大半が12%前後、食品では20%近くとなり、さらに上昇する傾向にある。観光収入が激減して輸出も減少し、経常収支は大幅な赤字に陥っている」とした。
4月29日に発表されたトルコの4月経済信頼感指数は93.9となる3月の98.9から悪化、市場予想の97を下回った。昨年4月がコロナショックの影響で4月の93.1から52.4へ急激な悪化となったため、今年4月の前年同月比は79.2%上昇となった。3月の98.9でコロナショック前の水準をいったん回復したものの、さらに改善傾向を示すには至らず、感染拡大の第三波の影響もうかがえる。トルコがロックダウン強化に入ったこともあり、5月は悪化も懸念される。

4月29日に発表された週次の外貨準備高はグロスで479.5億ドルとなり前週の496.9億ドルから減少、ネットでは112.2億ドルで前週の106.0億ドルから若干増加した。グロスでは3月末時点の518億ドルからの減少傾向が続いている。
4月30日には1-3月期の観光収入、3月の観光客入国数の発表があるが、前年同月比では70%減前後の悪化状況が続く見込み。
GWに入っているが、5月3日にはトルコ物価上昇率の発表、5月6日にはトルコ中銀の金融政策決定会合もある。連休中の波乱にも注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月26日午後への一段安とその後の反騰を踏まえて26日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、高値形成期を27日から29日夜にかけての間と想定した。29日夕へ戻り高値を切り上げてから失速しているので29日夕高値でサイクルトップを付けたと仮定し、高値更新へ進めないうちは30日の日中から5月3日夕にかけての間への下落を想定する。ただし、29日夕高値超えからは新たな強気サイクル入りとして5月4日から6日夕にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では29日夕高値からの反落とその後の揉み合いで遅行スパンは実線と交錯しているが、先行スパンからの転落は回避している。29日夕高値を超えないうちは一段安警戒とし、先行スパン転落からは下げ足が早まるとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、29日夕高値超えからは新たな上昇期に入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は50ポイントを挟んでの横ばい推移となっているが、28日夜から29日夕への高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられたため、65ポイント超えへ戻せないうちは一段安警戒とし、40ポイント割れからは30ポイント前後を目指すとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。

(1)当初、13.15円を下値支持線、29日夕高値13.38円を上値抵抗線とする。
(2)13.15円割れからは13.00円前後への下落を想定する。13.00円以下は反騰注意とするが、13.15円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。また下げ足が早まる場合は12.90円前後へ下値目途を引き下げる。
(3)13.30円超えからは13.38円試しへ向かうとみる。13.35円以上は反落注意とするが、13.30円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

4月30日
 16:00 3月 貿易収支 (2月 -33億ドル、予想 -24億ドル)
 16:00 1-3月期 観光収入 (10-12月 39.1億ドル、予想 37.6億ドル)
 17:00 3月 観光客数 前年比 (2月 -68.96%、予想 -72%) 
5月3日
 16:00 4月 消費者物価 前月比 (3月 1.08%、予想 2.1%)
 16:00 4月 消費者物価 前年同月比 (3月 16.19%、予想 17.63%)
 16:00 4月 生産者物価 前月比 (3月 4.13%、予想 3.6%)
 16:00 4月 生産者物価 前年同月比 (3月 31.2%、予想 34.21%)
 16:00 4月 イスタンブール製造業PMI (3月 52.6)
5月6日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 19.0%、予想 19.0%)


注:ポイント要約は編集部

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