トルコリラ円見通し 中銀総裁解任騒動による暴落一服だが一段安状態続く(21/4/5)

4月2日夕刻には13.84円まで戻したものの米雇用統計後のドル高に圧されて2日深夜には15.48円まで反落し、安値圏にとどまって週を終えた。

トルコリラ円見通し 中銀総裁解任騒動による暴落一服だが一段安状態続く(21/4/5)

中銀総裁解任騒動による暴落一服だが一段安状態続く

〇トルコリラ円、2日夕刻に13.84まで戻すも米雇用統計発表後のドル高に圧され深夜に13.48まで反落
〇3/30から4/1へ2日連続の日足陽線で戻すも2日は長い上ヒゲの目立つ陰線で戻り売りにつかまった印象
〇対ドルでは2日に7.96リラまで戻すも米雇用統計後のドル高で8.18リラまで反落
〇5日発表のトルコ3月物価上昇率に注意、市場予想を超えてくる場合、利上げ催促なリラ売りの可能性
〇13.60超えから13.80前後試しとその後の反落を想定
〇13.40割れから13.20前後、13.01に迫る流れとみる

【概況】

トルコリラ円は3月22日にトルコ中銀総裁解任報道から暴落的な下げとなり、3月19日高値15.13円から3月22日安値13.33円へ急落、その後も中銀副総裁解任報道から安値更新を続けて3月30日には13.01円まで下げた。新総裁による早期の利下げ否定発言から持ち直して4月2日夕刻には13.84円まで戻したものの米雇用統計後のドル高に圧されて2日深夜には13.48円まで反落し、安値圏にとどまって週を終えた。

トルコリラ円は3月22日に暴落する前段階では、2月16日高値15.26円に対して3月19日高値で15.13円まで迫っていたが、両高値をダブルトップ型として暴落した。4月2日夕に13.84円まで戻したものの、ダブルトップの中間点にある3月8日安値13.97円には届かず、一段安状態の解消には至らなかった。3月30日から4月1日へ2日連続の日足陽線で戻したが、4月2日は長い上ヒゲの目立つ陰線で終わり、戻り売りにつかまった印象を与えた。

対ドルでのトルコリラは3月22日の暴落から3月30日には8.45リラまで急落して昨年11月6日の史上最安値8.57リラへ迫ったが、底割れはひとまず回避して4月2日には7.96リラまで戻した。しかし米雇用統計後のドル高により8.18リラまで反落しており、トルコリラ円同様に長い上ヒゲの陰線に終わった。

イスタンブール100株価指数は4月2日に前日比0.25%高と小幅続伸して3月22日に前日比9.8%安の暴落となってからの戻り高値を若干更新したが、3月17日高値から3月22日の暴落時安値への下げ幅に対しては凡そ半値を戻したところにとどまっている。
トルコの10年債利回りは3月22日の暴落前は13.63%だったところから3月31日には18.60%へ急伸した。2019年5月以来の水準であり、トルコ国債の急落を反映している。週末時点も17.33%近辺で高止まりしている。

【4月5日のトルコ物価上昇率に注目】

トルコ中銀のカブジュオール新総裁は就任早々からインフレの抑制を優先して拙速な利下げはしないとの姿勢表明を繰り返して市場を落ち着かせようとしてきた。4月1日には大手投資家との電話会見において「高インフレを踏まえれば引き締め的な金融政策は維持される」「4月の金融政策委員会後に自身を判断してほしい」とも発言している。
3月22日の暴落時には、4月15日の次回金融政策決定会合における利下げの可能性を市場は懸念したが、さすがに現時点での利下げは無謀であり、通貨危機的なリラ暴落を助長しかねないという認識がトルコ中銀にもあることは確認されているようだ。しかしエルドアン大統領と共にカブジュオール新総裁は低金利がインフレを抑えるとの異説を主張してきた人物であり、アーバル前総裁がトルコ国内の物価上昇を踏まえて三度目の利上げを行ったことへの不満により解任されたことを踏まえれば、政策金利の19%を物価上昇率が超えない限りは利上げをすることもないだろうと思われる。

4月5日にはトルコの3月物価上昇率の発表がある。消費者物価上昇率(前年同月比)は2月に15.61%だったが3月は16.11%への上昇が予想されている。前月比では2月の0.91%から1.04%へと伸びが若干加速する予想となっている。市場の予想範囲ならリラ売り圧力もさほどにならないと思われるが、市場予想を超えてくる場合は利上げ催促的なリラ売りのきっかけとなる可能性もある。

【トルコの感染拡大第三波 増加ペース加速】

トルコ保健省は3月30日に新型コロナウイルス新規感染者数が3万7303人増となり1日当たりとしては感染流行開始以来で最多となったとしたが、その後も増加ペースは加速しており、4月2日には新規感染者数が4万4756人に達した。保健相は24万9126回の検査によるもので有症発生者は1483人としているが、2日の死者数は186人となっており深刻さが増している印象だ。
トルコの感染拡大第一波のピークは4月11日の1万3967人、第二波のピークは12月8日の3万3198人だったがすでに超えている。死者数のピークは第一波が4月17日の126人、第二波のピークが12月23日の259人であり、3月15日に63人まで減っていたところから急増している。

トルコ政府は3月29日に移動と集会の規制を発表、エルドアン大統領はイスラム教の断食(ラマダン)中に週末の全土ロックダウンを再開するとしている。コカ保健相は夏までには国産ワクチンの実用化を目指すとしているが、観光大国であるトルコにとっては国内の感染急増問題はネガティブ要因になってくる。
今年のトルコにおけるラマダンは4月13日(火)から5月12日(水)。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

3月30日安値から4月2日夕高値まで戻していたものの米雇用統計後の下落によりこの間の戻りも一巡した可能性がある。
中勢としては2月16日と3月19日の両高値をダブルトップとしての急落であり、利上げによる通貨防衛姿勢を鮮明にしていた前中銀総裁から利上げを嫌悪する新総裁へと交代したことによる市場の不信任感も継続しやすい状況にあることを踏まえれば、ダブルトップからの下落基調が続きやすい環境にあると思われる。
概ね40週前後の底打ちサイクルによるリバウンドが16週で途絶えての急落というのも、同じく16週のリバウンドで終わった2018年8月底から同年11月高値への上昇が一巡して長期の下落期に入ったことを彷彿させる。

(1)中勢としては、14円前後までを上値抵抗線とし、13円割れからは昨年11月6日の史上最安値12.03円を目指す流れとみる。
(2)短期的には、4月2日高値13.84円を上値抵抗線、13.40円を下値支持線とみる。13.60円超えからは13.80円前後試しとその後の反落を想定し、13.40円割れからは13.20円前後、さらに3月30日安値13.01円に迫る流れとみる。週前半に続落した後に小反発しても戻り高値を切り上げられずに4月2日以降の安値を切り下げるところからは次の下落期入りとして安値試しを続けやすい展開で進むとみる。

【当面の主な予定】

4月5日
 16:00 3月 消費者物価上昇率 前年比 (2月 15.61%、予想 16.11%)
 16:00 3月 消費者物価上昇率 前月比 (2月 0.91%、予想 1.04%)
 16:00 3月 生産者物価上昇率 前年比 (2月 27.09%、予想 27.85%)
 16:00 3月 生産者物価上昇率 前月比 (2月 1.22%、予想 1.50%)
4月8日
 16:00 週次 外貨準備高 グロス 4/2時点 (3/26時点 508.9億ドル)
 16:00 週次 外貨準備高 ネット 4/2時点 (3/26時点 127.9億ドル)
4月12日
 16:00 2月 失業率 (1月 12.2%、予想 12.5%)
 16:00 2月 経常収支 (1月 -18.7億ドル、予想 -27.0億ドル)

4月13日
 16:00 2月 鉱工業生産 前年比 (1月 11.4%、予想 10.1%)
 16:00 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 11.4%)
 16:00 2月 小売売上高 前年比 (1月 2.0%、予想 3.6%)
 16:00 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.3%)
4月15日
 17:00 3月 財政収支 (2月 231.7億リラ、予想 -530億リラ) 
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 週間レポレート (現行 19.0%、予想 19.0%)


注:ポイント要約は編集部

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