ドル円 ターゲットも達成し調整が入りやすい(週報3月第2週)

先週もドル円はドル高・円安が進んだ一週間となりました。

ドル円 ターゲットも達成し調整が入りやすい(週報3月第2週)

ドル円ターゲットも達成し調整が入りやすい

〇先週もドル円はドル高・円安が進んだ一週間に
〇2月以降は米金利上昇の動きに引っ張られ欧州や日本の金利も上昇
〇先週金曜に黒田日銀総裁が長期金利の変動幅拡大を否定し円金利下がる
〇1.9兆ドル支援可決で財政赤字が一段と拡大し米国債売りの動きも続きそう
〇高値警戒感のある株式から米国債へと資金が移る可能性あり、警戒が必要
〇今週は107.50レベルをサポートに108.70レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週もドル円はドル高・円安が進んだ一週間となりました。年始の安値からは上昇N波動を繰り返しながら上げてきていますが、振り返ると大きなきっかけは1月末に昨年7月からのレジスタンス(ピンク)を上抜けた動きで中期上昇トレンド入りが確定、その後は上昇チャンネルの中での動きが続いていましたが、先週水曜にチャンネル上抜けとなったことから更に上昇に勢いをつけることとなりました。

ドル円上昇の最大の原動力は米金利上昇によるドル買いということになりますが、2月以降は米金利上昇の動きに引っ張られて欧州や日本の金利も上昇していました。日本の10年国債利回りは年始の0.025%から2月1日には0.058%へと上昇し、2月26日には0.169%まで上昇、日銀が想定しているであろう0.1%を大きく超えていました。

3月日銀会合における点検で長期金利の変動幅拡大を容認するのではという思惑もありましたが、先週金曜に黒田日銀総裁が否定したことで円金利が下げるとともに、米金利は米国雇用統計が予想よりも強かったことから上昇、長期金利における日米金利差は拡大しました。参考までに日米10年債利回りとその金利差のチャートを上げておきます。上から、米金利、日本金利、金利差の日足となっています。

ドル円ターゲットも達成し調整が入りやすい

日米金利は水準がかなり異なりますので、米金利単独(上段)で見ても日米金利差(下段)で見ても、結局は米金利を見ているのと変わりはありませんので、日米金利差拡大というところまでは考えず、シンプルに米金利の上昇が続くのか反転するのか、そこだけを見ておけば十分です。

そしてその米金利はFRB関係者がインフレでは無いことを強調し、現時点ではターゲットに及ばないインフレ目標達成にも好ましいというスタンスを取っているのでそう簡単には流れが変わりそうもありません。米国議会でバイデン政権の1.9兆ドル支援も可決されたことで財政赤字が一段と拡大することから米国債売りという動きも続きそうです。

ただ、先週も書いた通りで米国の主要株価指数であるS&P500の配当利回りは1.5%程度であることを考えると、高値警戒感のある株式から米国債へと資金が移る可能性もあり、1.5%を上回る現在の水準はこれまで以上に警戒が必要なことは間違いありません。米金利チャートの一番上の水平グリッドが1.5%となっていますので、継続して見ていきたいところです。

テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

※このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

冒頭に書いた通りですが、材料では米金利上昇、テクニカルには上昇トレンドの加速という動きが重なって先週は大きくドル高・円安が進みました。前回執筆時点ではこれほど簡単に上抜けせず、もみあいを挟む可能性を考えていましたが、水曜以降は完全に調整を否定する値動きを見せています。しかし上昇ペースも速く、上昇チャンネル(青の平行ライン)の中での押しを起点とした上昇N波動におけるフィボナッチ・エクスパンションによるターゲット(ピンク)と、昨年6月高値からのフィボナッチ・リトレースメント(赤)が108円台前半で重なっていることから、そろそろ上昇ペースが鈍ってきそうではあります。

また上昇チャンネルを上抜けたことで現在は同水準がサポートとなってきます。急角度な緑のサポートラインも引くことは出来ますが、あまりに急角度なため抜けたチャンネル上限をサポートと見ることが妥当でしょうが、今週に関してはそこまでは下げられないでしょう。

今週はサポート手前となる107.50レベルをサポートに、先週高値を抜けてもダマシになるという見方で108.70レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月8日(月)
08:50 本邦1月貿易収支(国際収支)
16:00 ドイツ1月鉱工業生産
19:00 英中銀総裁講演
24:00 米国1月卸売売上高・在庫
30:45 NZ10〜12月期製造業売上高

3月9日(火)
09:00 NZ3月企業信頼感
09:01 英国2月小売売上高
09:30 豪州2月企業景況感
16:00 ドイツ1月貿易収支
18:30 南ア10〜12月期GDP
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値

3月10日(水)
07:00 豪中銀総裁講演
08:30 豪州3月消費者信頼感
10:30 中国2月CPI・PPI
16:00 トルコ12月失業率
16:45 フランス1月鉱工業生産
19:00 南ア1〜3月期企業信頼感
22:30 米国2月CPI
24:00 カナダ中銀政策金利発表
24:30 週間原油在庫統計

3月11日(木)
09:01 英国2月住宅価格
16:00 トルコ1月経常収支
18:00 南ア10〜12月期経常収支
21:45 ECB理事会
22:30 ラガルドECB総裁会見
22:30 米国新規失業保険申請数

3月12日(金)
16:00 英国1月貿易収支、鉱工業生産
16:00 トルコ1月鉱工業生産
16:00 ドイツ2月CPI
19:00 ユーロ圏1月鉱工業生産
22:30 米国2月PPI
24:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感

3月14日(日)
 **:** 米国夏時間開始

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月1日(月)
月初のドル円は若干の下押しを挟みながらも終日ドル高の動きとなりました。東京市場から株式市場が底堅く始まり金融市場全般に落ち着きが見られる中、前週からのドル高トレンドを継続した流れとなっていて、特にドル買いにつながる材料があったわけではありませんでした。

3月2日(火)
ドル円はこれまで同様に細かな上下は見られたものの欧州市場昼頃まで一貫してドル買いの動きが続き一時106.96レベルの高値をつけました。しかし既に反転していたユーロドルの動きを追いかけるようにドル円も反落、NY後場には106.66レベルまで水準を下げて安値圏での引けとなりました。

3月3日(水)
ドル円は火曜日の僅かな調整を挟んで再び円安・ドル高の動きとなりました。東京市場では強い日経平均株価を円安材料に海外市場に移ってからは改めて上昇に転じた米金利の動きを見てドル高材料と、常に上方向にバイアスがかかりやすい流れが続きました。NY昼前には一時107.15レベルの高値をつけ引けにかけて若干押しも入り107円前後での引けとなりました。

3月4日(木)
ドル円は東京市場では底堅いもののもみあいとなっていましたが、欧州市場序盤に前日高値を上抜けると仕掛けとストップの買いを巻き込みながらドル買いが加速。その後もドル買いが続く中でNY市場ではパウエルFRB議長がインフレ懸念はないと繰り返したことをきっかけに米金利が上昇、ユーロドルの下げとともに107.99レベルまでドルが買われて高値引けで終わりました。

3月5日(金)
ドル高の一日となりました。ドル円は円売り先行後に仲値前後で押しも見られましたが、後場に入り前場高値を抜ける動きの中で黒田日銀総裁が長期金利上昇に対して変動幅拡大を否定。円金利が低下したことから長期金利の日米金利差拡大もドル買い要因とされました。欧州時間に入るとユーロの下げがドル買いをリード、NY市場では強い米国雇用統計を背景に再びドル高となり一時108.64レベルの高値をつけ、引けにかけてはやや押しての引けとなりました。

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