ドル円見通し 4連騰後に3日連続陰線での反落だが、押し目形成から一段高期待(週報2月第四週)

株式市場のバブル化、ビットコインの大上昇等の投機心の過熱、インフレ進行への警戒感などを要因として、米長期債利回りの上昇が続いている

ドル円見通し 4連騰後に3日連続陰線での反落だが、押し目形成から一段高期待(週報2月第四週)

ドル円見通し 4連騰後に3日連続陰線での反落だが、押し目形成から一段高期待

〇ドル円2/ 17午前106.21円まで上昇し2/5夜高値を抜く一段高後、3日連続陰線で週を終える
〇米長期債利回りの上昇続くも為替市場はリスク選好的なドル安を再開
〇105.75円以下で推移の場合もう一段安の懸念、2/19夜安値割り込む場合105.00〜104.75円を試す
〇105.75円超えからはまず106.21円試し、超えれば106.50〜106.75円を目指す流れ

【概況】

ドル円は2月10日安値104.40円から2月17日午前高値106.21円まで上昇して2月5日夜高値105.76円を上抜く一段高となった。1月6日安値からの上昇は1月11日までを一段目、2月5日までを二段目とし、2月10日を起点として三段目に入った。しかし2月17日夜の上昇では17日午前高値にわずかに届かず60分足レベルではダブルトップ型となり、2月19日夜には105.22円まで下げて日足は3日連続の陰線となった。2月19日深夜には105.66円まで小反発したために3日目の日足陰線は下ヒゲがついたが、105.50円を割り込んだ状況で週を終えた。

【米長期債利回りの上昇続くも為替市場はリスク選好的なドル安を再開】

米長期債利回りの上昇傾向は続いている。昨年8月に0.50%だった米10年債利回りはジリ高傾向を続けて1月12日には1.19%へ上昇、1月28日に0.99%までいったん下げたところから上昇再開に入り2月8日には1.20%に到達して1月12日水準を超え、2月19日には一時1.36%まで水準を切り上げた。昨年2月28日以来の水準だが、米連銀によるコロナショック対策での実質ゼロ金利化と大規模な量的緩和の開始により3月13日には0.31%台まで下げたところから徐々に揺れ返しに入っている。
コロナ対策での大規模な経済政策は財政出動を呼び大量の国債発行が債券需給を弛めて利回りは徐々に上昇してきたのだが、バイデン政権発足により1.9兆ドル規模の追加経済対策が主張されたことで利回り上昇がさらに勢いついてきた。

NYダウが2月19日に取引時間中の最高値を更新するなど株高基調は続いている。ゼロ金利と量的緩和による過剰流動性供給が投機マネー化して株式市場に向かっていることでリスクオン心理が加速している。このことは為替市場においても米長期債利回りが上昇すれば本来的にはドル高になるべきところをそれを上回るリスクオンで優先的な投機通貨買いによりドル安トレンドが継続する状況を生じさせている。ポンドドルと豪ドル、は2月19日に昨年3月コロナショック以降の最高値を更新、南アランドも2月16日に対ドルでの最高値を更新した。

クロス円においてはユーロ円が2月17日に、ポンド円と豪ドル円及びNZドル円等が昨年3月来の最高値を更新している。ドルストレートにおけるドル安の進行速度はややまちまちだが、1月6日以降はクロス円全般の上昇基調に加えてドル円も反騰入りしたことで勢いが増している印象だ。リスク選好でドルストレートがドル安へ進み、かつドル円においては米長期債利回り上昇による金利差を主要因としてドル買い円売りとなる組み合わせだ。

ドルストレートでは、昨年8月からの米長期債利回り上昇開始以降もドル安基調は続いてきた。米10年債利回りが1%を超えた後は長期債利回りの急上昇場面でドル高反応となることもあったが、それはポンドや豪ドル等で押し目形成となり、その後に一段高へ向かうという展開が繰り返されている。ユーロドルでは米長期債利回りの圧力がやや意識されているために他通貨と比較すれば出遅れているという印象はあるが、当面はドルストレートでのドル安基調の継続、クロス円全般の上昇、ドル円におけるドル高円安基調の継続という組み合わせで進む可能性があるのではないかと思われる。

【ややバブル的な株高ドル安、いずれは破裂するとしてもまだ先】

イエレン米財務長官は2月18日のCNBCインタビューで「今回の出来事(コロナショック)がもたらした痛みに対処する大型の対策を導入することが非常に重要だ」とし、1月の小売売上高が予想を大幅に上回り株高が続いていることに対しても「バイデン政権が掲げる規模の経済対策は必要だと考えている」と述べた。感染拡大前と比べても900万人余りの失業状態があり、「何か大きなことをする場合の代価に比べ、対応が小さ過ぎる場合に支払う代価の方がはるかに大きい」とした。

米NY連銀のウィリアムズ総裁も19日のCNBCインタビューで「米景気は今なおかなり深い穴の中にいる」「最大雇用の実現やインフレ目標達成までには長い時間がかかる」「経済対策が大きすぎるという心配はしていない」と述べており、イエレン財務長官と歩調が合っている。株式市場のバブル化、ビットコインの大上昇等の投機心の過熱、インフレ進行への警戒感、それらが米長期債利回りの上昇の要因にもなっているのだが、米財務省も米連銀もこのまま進むということを市場も承知の上で株式市場も為替市場もリスクオン優先の姿勢で進むということだろう。世界規模での新型コロナウイルス感染増加ペースが鈍化していることが金融市場全般を益々楽観的にしていると思われるが、2月19日に公表された米連銀の半期毎の連邦議会に提出する金融政策報告書では、「金融機関は今後数年、融資焦げ付きによる損失拡大に直面する恐れがある」との文言もある。当面はリスクオン優先の展開ではあるが、感染拡大が再び深刻化するような大きな波が世界規模で発生する場合、過剰投資の回転が逆流すればリーマンショック型のパニックが発生しかねないということも念頭に入れて起きたい。

1月6日以降の上昇基調が継続か

1月6日以降の上昇基調が継続か

先週後半は3日連続の日足陰線で下落したが、今のところは1月6日安値、1月21日安値を結んだ上昇トレンドの支持線を維持しており、2月10日安値104.40円を割り込まないうちは1月6日以降の底上げパターンは維持されるので、新たなリスク回避的材料により流れが変わらない限りは1月6日以降の上昇基調を継続しやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月19日夜安値105.22円を下値支持線、105.75円を上値抵抗線とみておく。
(2)105.75円を超えないうちはもう一段安の懸念が残るので、19日夜安値を割り込む場合は105.00円から104.75円にかけてのゾーンを試すとみるが、そこは押し目買いされやすい水準とみる。
(3)105.75円超えからは2月17日からの調整安を脱却して新たな上昇期に入るとみてまず106.21円試し、超えれば106.50円から106.75円にかけてのゾーンを目指す流れと考える。(了)<21日18:40執筆>

【当面の主な予定】

2/22(月)
08:50 (日) 1月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (12月 -0.4%、予想 -0.4%)
18:00 (独) 2月 IFO企業景況感指数 (1月 90.1、予想 90.5)
22:45 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演
24:00 (米) 1月 景気先行指数 前月比 (12月 0.3%、予想 0.3%)

2/23(火)
休場、日本
06:45 (NZ) 10-12月期 小売売上高指数 前期比 (7-9月期 28.0%、予想 -0.5%)
16:00 (英) 1月 失業保険申請件数 (12月 0.70万件)
16:00 (英) 1月 失業率 (12月 7.4%)
16:00 (英) 12月 失業率・ILO方式 (11月 5.0%、予想 5.1%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.4%)
23:00 (米) 12月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (11月 1.0%)
23:00 (米) 12月 ケース・シラー住宅価格指数 前年同月比 (11月 9.1%、予想 10.0%)
24:00 (米) 2月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (1月 89.3、予想 90.0)
24:00 (米) 2月 リッチモンド連銀製造業指数 (1月 14)
24:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、上院銀行委員会で半期議会証言

2/24(水)
10:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ、NZ中銀) 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
16:00 (独) 10-12月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
16:00 (独) 10-12月期 GDP改定値・季調済 前年同期比 (速報 -3.9%、予想 -3.9%)
16:00 (独) 10-12月期 GDP改定値・季調前 前年同期比 (速報 -2.9%、予想 -2.9%)
21:00 (英) ホールデン英中銀理事、講演
24:00 (米) 1月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (12月 84.2万件、予想 86.0万件)
24:00 (米) 1月 新築住宅販売件数 前月比 (12月 1.6%、予想 2.1%)
24:00 (米) パウエルFRB議長、下院金融委員会で半期議会証言

2/25(木)
09:30 (豪) 10-12月期 民間設備投資 前期比 (7-9月期 -3.0%、予想 0.5%)
14:00 (日) 12月 景気先行指数(CI)・改定値 (速報 94.9)
14:00 (日) 12月 景気一致指数(CI)・改定値 (速報 87.8)
16:00 (独) 3月 GFK消費者信頼感 (2月 -15.6、予想 -14.0)
19:00 (欧) 2月 経済信頼感 (1月 91.5、予想 92.0)
19:00 (欧) 2月 消費者信頼感確定値 (速報 -14.8)

22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 86.1万件、予想 82.3万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 449.4万人)
22:30 (米) 10-12月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 4.0%、予想 4.1%)
22:30 (米) 10-12月期 個人消費改定値 前期比年率 (速報 2.5%、予想 2.5%)
22:30 (米) 10-12月期 コアPCE改定値 前期比年率 (速報 1.4%、予想 1.4%)
22:30 (米) 1月 耐久財受注 前月比 (12月 0.2%、予想 1.1%)
22:30 (米) 1月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (12月 0.7%、予想 0.7%)
24:00 (米) 1月 住宅販売保留指数 前月比 (12月 -0.3%、予想 -0.8%)
24:00 (米) 1月 住宅販売保留指数 前年同月比 (12月 22.8%)
24:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
29:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、バーチャル討論会

2/26(金)
06:45 (NZ) 1月 貿易収支 (12月 0.17億NZドル、予想 -6.29億NZドル)
08:30 (日) 2月 東京消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (1月 -0.4%、予想 -0.4%)
08:50 (日) 1月 鉱工業生産速報値 前月比 (12月 -1.0%、予想 3.9%)
08:50 (日) 1月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (12月 -2.6%、予想-5.4%)
08:50 (日) 1月 小売業販売額 前年同月比 (12月 -0.3%、予想 -2.6%)
14:00 (日) 1月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (12月 -9.0%、予想 )
16:45 (仏) 10-12月期 GDP改定値 前期比 (速報 -1.3%、予想 -1.3%)
17:30 (欧) シュナーベルECB理事、講演

21:30 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
22:30 (米) 1月 個人所得 前月比 (12月 0.6%、予想 9.5%)
22:30 (米) 1月 個人消費・PCE 前月比 (12月 -0.2%、予想 2.2%)
22:30 (米) 1月 PCEデフレーター 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.4%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前月比 (12月 0.3%、予想 0.1%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (12月 1.5%、予想 1.4%)
23:45 (米) 2月 シカゴ購買部景況指数 (1月 63.8、予想 61.0)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 76.2、予想 76.4)

注:ポイント要約は編集部

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