FXを取引する場合人によって投資のスタイル、スタンスは異なります。
もちろんFXの取引スタイルはひとつに固定する必要もなく、多くの実際にFXを取引している人たちもいろいろなスタイルを使い分けたり、同時に行ったりということをしています。ここでは短期型と中長期型の代表的な取引スタイルを挙げてみますので自分にあったトレードスタイルを見つけましょう。
@ 短期型
a) デイトレード(日計り取引)
「デイトレード」は主として日中に自分の生活時間帯に開いている市場で取引を行い、その日のうちに取引を完結させ翌日にポジションを持ち越さない取引のスタイルを言います。
一日の値動きの中で収益を狙うため大きな経済の大局観よりは その日の経済指標やニュース、テクニカル分析の結果に基づく売買を行うケースが多くなります。
一日の相場の動きを見ている必要があるため、日中に時間を十分取れる人向きの取引スタイルです。
デイトレードは基本的には翌日にポジションを持ち越さないので寝ているあいだに海外で相場が大変動して大きな損失を蒙ったりする心配はないので、ある意味リスクが低いトレードスタイルとも言えます。
一方で基本的にはゼロサムゲームの為替市場で売買コストを何度も払って利益を残すのはそれほど簡単なことではありません。
また、一日中相場と向かい合っているうちに相場中毒(常にポジションを持って売買していないと気がすまなくなる)のようになってしまう人もいますので、メンタルの管理、健康の管理には十分気を使う必要があります。
FXのよいところは日本が祝日でもシンガポールや香港など同時間帯で開いている市場があれば取引ができる点です。
そのことを利用して、日頃は別のスタイルで取引をしていて日本の祝日になるとデイトレーダーとなって取引を楽しむという人もいます。
b)スキャルピング
デイトレードをさらに短期間で行うのがスキャルピングです。FXの特徴であるレバレッジを生かして大きな元本の取引を行いほんの数pipsの薄い利ざやを取りに行くのが特徴です。一日にこれを何度も繰り返し薄い皮を剥ぐように利益をためていくことから、アメリカのインディアンが敵の頭の皮を薄く剥ぐように取引をすることをさします。
scalp(頭の皮を剥ぐ)はskull(頭蓋骨)が語源とされています。
スキャルピングは一日に場合によっては何十回も取引を行う手法であるため、資金を最大限に活用する手段であるといえます。
ただし、スプレッドが広かったり取引毎に手数料が発生したりするようなFX取引会社でスキャルピングを行うと、コストばかりがかかってあまり儲からないということにもなりかねません。
また利鞘が薄いため例え10回スキャルピングで利益を重ねても一度方向性を誤ると取引金額が大きいために一瞬にしてそれまでの利益を失うこともありえます。
スキャルピングを行うときには相場が反対に動いた場合に迅速で機動的な損切りを行うことが重要となります。
もちろんスキャルピングを行う際には為替相場にはりついている必要があります。
大きな金額で短期間に売買を繰り返すスキャルピングはFX取引会社に取って収益機会であると同時に反対売買でリスクをヘッジするのが難しい取引でもあります。そのためFX会社によってはカバー取引を行いきれずに顧客のスキャルピングの利益がそのままFX会社の損失になってしまうようなケースもあると聞きます。
そのため、一部のFX会社ではスキャルピング自体を禁止している場合もあります。
c)スイングトレード
スキャルピングとは反対に数日間から数週間の短い市場のトレンドに乗り利益を狙うのがスイングトレードです。為替市場はいろいろな周期で変動していますが、経済指標や金融政策の明らかな変化や、市場のテーマの転換点などにある種の相場の明らかな流れが生じることがあります。(この流れのことをトレンドと呼びます)トレンドには周期の長いものも短いものもありますが比較的短期のトレンドを探しそれを利用してトレードするスタイルです。そして「トレンド」を見つけたらその流れに乗るような取引(順張り)が基本です。
FXのスイングトレードは会社員等比較的日中忙しい人でも方針を決めて取組むことができる一般的な手法です。
あまり頻繁に取引をするわけではないので取引コストがかさむこともありませんし、少しの相場の綾に一喜一憂することもありません。
ただし、「トレンド」を見極めるためには為替相場や経済、チャート分析などに対する相応の理解が必要です。
また、「トレンド」の中にも多少の相場のぶれやゆり戻しのようなものはあるのが普通ですので、取引金額比余裕のある資金をFX会社に預け多少の動きではロスカットされないようにする工夫も大切です。
A中長期型
a)キャリートレード(スワップ派)
キャリートレードは金利の高い通貨を買い金利の低い通貨を売ってポジションを作り、長期にわたって保有することにより金利差を収益として狙う取引です。
FXが日本に入ってきた2000年代の初頭以来現在に至るまでほぼ日本が円のゼロ金利政策を続けてきていることからFXで外貨を買って円を売る入りやすいほうの取引がキャリートレードとなることから、広く復旧した手法となりました。
高金利通貨であったA$(オーストラリアドル)やN$(ニュージーランドドル)、ZAR(南アフリカランド)、TRY(トルコリラ)などを買って円を売るFX取引が個人投資家のあいだで流行し、それらの人たちを「スワップ派」と呼んだりします。
キャリートレードではもしも買ったほうの通貨が下落しなければ手元に金利差分のスワップが残ります。
キャリートレードのよいところは、一度取引をはじめると放置しておいてもスワップ益が積みあがっていくことです。しかし、キャリートレードの悪いところはスワップを支払って高金利通貨を売るポジションを作るという発想になりにくいためにポジションが偏りがちで、気がつくと高金利通貨の下落で思わぬ損失を蒙っていたということになりかねない点です。
実際FXが日本で始まって以降、一時ドル円で70円台の「超円高」になった局面がありましたので、放置されていたキャリートレードのポジションの多くに損失が生じました。
いま、また円安局面になっていますのでキャリートレードを再開したり始めたりする人も増えてきていると思われますが、いつまた円高の流れにならないとも限りませんので、損失回避のためのロスカットオーダーをきちんと入れておいたり、下落局面では一時的に高金利通貨売りのポジションを作って凌いだりということは必要です。
さらに極端な場合ではいつの間にか金利差が逆転してスワップを払っていたというようなことも起こりえます。
高金利通貨の中には流動性の乏しい通貨も含まれています、FXでキャリートレードを行う場合には当該国の情報をできるだけ集め、ポジションを放置しないように気をつけましょう。
b)ポジショントレード
FXのポジショントレードはスイングトレードをもっと長期化したものです。
金利差を狙うトレードではなく、長期の相場観に基づき数週間から数ヶ月時には数年に亘ってポジションを持ち続ける手法をポジショントレードと呼びます。
長期的な経済の流れを読み、強い信念と多少の相場の戻しには耐えられる穏当なレバレッジでポジションを作ります。
取引回数が少ないために余計なコストはかかりませんが、あまりハイレバレッジにはできないために資金効率がよいとはいえないのが難点です。
Bその他のFXの取引手法
a) システムトレード
PC上で売買のルールを決めてソフトウェアに組み込みある基準に達したら自動的に売買させる方法です。
システムトレードにもいろいろなタイプがあり、FX取引会社の中に既に自動売買ツールが組み込まれているもの、汎用的なシステムに自分で売買の仕組みを作ったり他人からソフトウェアを買ってきたりしてインストールする機能を持っているもの、自動売買用のいくつものパーツが用意されていてそれを自分で組み合わせて使うものなどさまざまです。
FXの取引はどうしても冷静になれない局面が出てきてしまうことがあります。そんなときにシステム売買であれば機械が自動的に売買してくれますので感情に左右されて判断を誤ることはありません。
もちろんシステムトレードの秘訣は勝てるシステムを見つけるか作るかすることです。
勝てないシステムでシステム売買を行うことはただただ自動的にお金を失うだけになります。
b)ペッグ通貨の金利裁定
世の中には少数ですが他の国の通貨との価値を一定に保つ通貨政策を取る国があります。こういう通貨をペッグ通貨と呼びます。
香港ドルがそうでしたし、アルゼンチンペソや中国元もペッグ通貨の一種といえるでしょう。南米や中東にも程度の差はあれドルに自国通貨の価値を連動させている国があります。
これらの通貨はレートは固定的乃至は固定されていますが、経済状況により金利は意外とバラバラです。その性質を利用して為替リスクなしで金利差分のスワップを受取る取引がペッグ通貨の金利裁定です。
特にFXの場合レバレッジがかけられますので、この考え方がうまくいけばリスクなく金利差分のスワップだけが手元に残ることになります。
しかしながら、ペッグ通貨は政策で自国通貨を固定しているだけなので、その政策が変更され変動相場に変わったり、ペッグの水準を変更したりしないとも限りません。
その場合水準が一気に変化するため途中のレートがなくロスカットの仕組みが機能しないので、一気に証拠金以上の損失が出ないとも限りません。
FXにおいてペッグ通貨の金利裁定を行うことは一見リスクなしに見えて、実はとてもリスクの高い取引であるといえます。
c)週明けの窓あけ取引
FXは二十四時間取引可能ですが、金曜の米国市場が終了して、月曜の朝にニュージーランドのウェリントンで取引が始まるまでの間は取引ができません。
そのため、経済に影響のある週末に大きな出来事があると金曜の終値とは全く違う水準で始まることがあります。これをチャート上に「窓が開いた」状態といいます。
元々は株式市場のローソク足の分析の手法ですが、一般的に窓が開くと最後はその水準まで戻って結局その隙間は埋められるというアノマリーというかジンクスのようなものがあります。実際にはいつも必ず窓が埋まるわけではないのですが為替相場は自然現象ではないので皆がそう信じて行動すると短期的にはジンクスどおりの動きをする傾向があります。
特に週明けのニュージーランドの市場などは取引参加者も少なく取引が薄いため、同じように考えた多くの投資家がレバレッジをかけて窓を埋めにいくと意外に高い確率で窓が埋まったりします。
もちろんこんなのはジンクスにすぎませんし、流動性の低い市場ではスプレッドが大きく開いてレート表示されたりすることもあり必ず利益が出る保証はありません。また、月曜の朝できるだけ早い時間に取引を始められるFX取引会社を見つけることも必要です。
しかしもし、取引に行き詰まったら試してみる価値はあるかもしれません。
経験則的には為替の窓埋めの確率は7割といったところでしょうか。
※「FX羅針盤」のを運営する株式会社カカクコムのメインサイト「価格.com」にも羅針盤でオセアニア通貨をご担当されている川合美智子先生の執筆された入門ガイド「FXとは?」が掲載されています。あわせてご参照ください!
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