ドル円見通し 安値更新後に反騰するも感染拡大と株安リスクは解消せず
〇ドル円、10/29夜104.02まで一段安となったが深夜反騰入り、10/30未明104.72まで持ち直す
〇米GDP7-9月期速報値、市場予想上回る、前期からの反動で過去最大の上昇率となる
〇日銀、金融政策の現状維持を決定、市場はサプライズ無しの反応
〇欧州中央銀行(ECB)も現状維持だが、12月会合で緩和拡大の意向か
〇104.25を上回るうちは上昇余地ありとし、104.72超えからは105円前後への上昇を想定
〇104.25割れからは104.02試しとし、底割れからは103円台中盤を目指す下落を想定
【概況】
ドル円は10月28日夜に104.11円まで下落してから下げ一服で29日昼には104.50円まで戻していたが、29日夜に104.02円まで一段安となった。104円割れをぎりぎりで回避して9月21日安値103.99円割れに至らずに踏みとどまったこととドル高の進行がクロス円における円高を勝る状況となったことで深夜に反騰に入り、29日昼高値を上抜いて30日未明には104.72円まで持ち直した。
10月28日はNYダウが前日比943.24ドル安と大幅下落となり、欧州株も全面安で為替市場ではリスク回避のドル買い戻し優勢の展開となってユーロやポンド、豪ドルなどが一斉に下落、クロス円では円が全面高となり、ドル円は円高優勢で10月21日夜安値を割り込む一段安となった。欧米の感染拡大が深刻化し米大統領選挙情勢も混沌とする中でリスク回避感が強まったことが背景だったが、29日の日中は株安ドル高がやや落ち着きドル高及び円高がやや緩んでいたが、ダウ先物の続落気配から再び安値試しへと向かって104円を試した。
NYダウは取引開始直後からプラス圏とマイナス圏を上下しつついったん持ち直しに入ったが、終盤は再び失速して戻り幅を削り前日比139.16ドル高で終了した。ユーロドルは深夜へ安値を更新、ポンドも28日夜安値を割り込んでからも安値圏に留まる等、ドルストレートでのドル高基調は継続し、クロス円全般も軟調推移のままだが、ドル円はドル高圧力がやや勝って戻したようだ。
【米GDP7-9月期速報は過去最大の回復】
米商務省が29日に発表した2020年7-9月期GDP速報値は年率換算で前期比33.1%増となり市場予想の31.0%を上回った。戦後最悪だった4-6月期の31.4%減からの反動で過去最大の上昇率となった。2期連続のマイナスの後に3期ぶりのプラスで、GDPの7割を占める個人消費は40.7%増となったことが貢献した。政府のコロナ対策での財政出動効果といえるが、米国での感染拡大状況を踏まえれば年末にかけての減速も懸念されるところだ。
米労働省が発表した10月24日までの1週間の新規失業保険申請は季節調整済みで75万1000件、前週比4万件減少となり市場予想の77.5万件を下回った。2週間連続で改善している。また失業保険受給者総数は10月17日までの1週間で775万6000人、市場予想の770万人を若干上回ったものの前週からは70万9000人の減少となった。
米不動産業者協会(NAR)が発表した9月の中古住宅販売仮契約指数は前月比2.2%低下となり市場予想の3.4%を下回った。
【日銀金融政策、現状維持】
10月29日、日銀は金融政策を現状維持とした。大規模な金融緩和策を維持、資金繰り支援と金融市場安定に努めるとし、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとした。また経済・物価情勢の展望では「景気は引き続き厳しい状態にあるが持ち直している」とした。2020年度の実質GDPについてはマイナス5.5%に、物価上昇率はマイナス0.6%に下方修正した。黒田総裁は会見で、「コロナ特別プログラムは必要と判断すれば期限を延長する」「携帯料金値下げやGoToトラベルは短期的に物価を押し下げるが一時的な変動に留まる」、「ETF購入は引き続き必要」「2%物価目標を変更する必要はない」等と述べた。市場は特にサプライズ無しとして昼過ぎからの円高ドル安基調を続けた。
【ECBも現状維持だが12月会合での緩和拡大を示唆】
欧州中央銀行(ECB)は29日の定例理事会で市場予想通りに主要政策金利を据え置き、量的緩和拡大規模の維持を決めた。政策金利を0.0%とし、限界貸付金利を0.25%、中銀預金金利をマイナス0.50%とそれぞれ維持した。コロナ不況対策としての1兆3500億ユーロ規模の資産購入枠も2021年6月末まで維持するとした。
ラガルドECB総裁は定例会見で「コロナウィルスの第二波拡大は経済見通しへの脅威」「ECBは12月の会合であらゆる手段を検討する」「全員が行動を起こす必要性で一致」等と述べた。ECBについてはマイナス金利の深掘りや量的緩和拡大等への期待が続いているが、12月には何かを決断する意向というところを市場に示したと思われる。ECBの緩和拡大姿勢はユーロ安ドル高に寄与するものと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月21日深夜安値を前回のサイクルボトム、26日夜高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとして27日の日中から28日深夜にかけての間への下落を想定しきたが、28日夜安値からは下げ渋り21日夜安値から5日を経過したので、29日朝時点では28日夜安値を割り込む場合は新たな下落期入りとするのを妥当とみて28日夜安値を直近のサイクルボトムとした。
29日夜に28日夜安値をわずかに割り込んだが、その後の反騰で29日午後高値を上抜き返している。このため28日夜と29日夜安値をダブルボトムとした強気サイクルの継続と仮定する。高値形成期は29日夜から11月2日夜にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるが、104.25円以上での推移中は上昇余地ありとし、104.25円割れからは弱気転換注意として29日夜安値試しとし、底割れからは弱気サイクル入りとして11月2日夜から4日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では30日未明への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜き返した。このため先行スパンからの転落回避中は上昇余地ありとするが、先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は29日深夜の上昇で60ポイント台を回復したが70ポイント超えへ進めずにいる。50ポイント以上を維持するうちは上昇余地ありとみるが、相場が高値を切り上げる際に指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合及び50ポイント割れからは下げ再開注意とし、40ポイント割れからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、104.25円を下値支持線、30日未明高値104.72円を上値抵抗線とする。
(2)104.25円を上回るうちは上昇余地ありとし、30日未明高値超えからは105円前後への上昇を想定する。105円前後は反落警戒とし、その後に104.50円を割り込むところからは下げ再開を疑うが、104.50円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)104.25円割れからは29日夜安値104.02円試しとし、底割れからは103円台中盤(103.75〜103.25)を目指す下落を想定する。103.50円以下は反騰注意とするが、104.25円以下での推移が続く場合は週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
10/30(金)
09:30 (豪) 7-9月期生産者物価指数 前期比 (4-6月 -1.2%)
09:30 (豪) 7-9月期生産者物価指数 前年同期比 (4-6月 -0.4%)
14:00 (日) 9月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (8月 -9.1%、予想 -8.6%)
15:30 (仏) 7-9月期GDP速報値 前期比 (4-6月 -13.8%、予想 15.4%)
18:00 (独) 7-9月期GDP速報値 前期比 (4-6月 -9.7%、予想 7.3%)
18:00 (独) 7-9月期GDP速報値・季調済 前年同期比 (4-6月 -11.3%、予想 -5.3%)
18:00 (独) 7-9月期GDP速報値・季調前 前年同期比 (4-6月 -11.3%、予想 -5.2%)
19:00 (欧) 9月 失業率 (8月 8.1%、予想 8.3%)
19:00 (欧) 7-9月期GDP速報値 前期比 (4-6月 -11.8%、予想 9.4%)
19:00 (欧) 7-9月期GDP速報値 前年同期比 (4-6月 -14.7%、予想 -7.0%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (9月 -0.3%、予想 -0.3%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (9月 0.2%、予想 0.2%)
21:00 (メ) 7-9月期GDP速報値 前期比 (4-6月 -17.1%、予想 12.0%)
21:00 (メ) 7-9月期GDP速報値 前年同期比 (4-6月 -18.7%、予想 -8.9%)
21:30 (米) 9月 個人所得 前月比 (8月 -2.7%、予想 0.4%)
21:30 (米) 9月 個人消費支出(PCE) 前月比 (8月 1.0%、予想 1.0%)
21:30 (米) 9月 PCEデフレーター 前年同月比 (8月 1.4%、予想 1.5%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (8月 1.6%、予想 1.7%)
21:30 (米) 7-9月期 雇用コスト指数 前期比 (4-6月 0.5%、予想 0.5%)
22:45 (米) 10月 シカゴ購買部協会景況指数 (9月 62.4、予想 58.0)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 81.2、予想 81.2)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2020.10.30
ドル円、米GDP速報値の力強い結果を受けて安値圏から急反発(10/30朝)
29日(木)の外国為替市場でドル円は下落後に急反発。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。