ドル円 米大統領感染報道の急落はいったん落ち着くが、105.50円前後の持ち合い転落(週報10月第1週)

米労働省が2日に発表した9月の雇用統計では失業率が7.9%となり8月の8.4%から0.5%低下した。

ドル円 米大統領感染報道の急落はいったん落ち着くが、105.50円前後の持ち合い転落(週報10月第1週)

米大統領感染報道の急落はいったん落ち着くが、105.50円前後の持ち合い転落

〇ドル円トランプ大統領のコロナ感染報道で104.93まで急落するもパニック的な下げとはならず
〇半値以上を戻し105.30台まで戻し越週
〇米雇用統計NFP66.1万人増と伸び鈍化、ミシガン大消費者信頼感確報は上方修正
〇トランプ大統領の容体注視、重症化の場合金融市場の動揺避けられないか
〇105.50以下での推移中は下向き、105.20割れからは10/2安値104.93試し
〇105.50越えから続伸の場合105.80試し 105.80越えには大統領早期回復復帰見通しが必要

【概況】

10月2日午前から米大統領側近がコロナ陽性となり大統領夫妻らが隔離措置に入ると報じられたが、ダウ先物が続落する中でもドル円の動きは鈍く13時には105.66円までやや上昇気味の推移で、9月24日以降の105.50円を中心に前後1円に満たない小幅なレンジでの持ち合いの範囲にとどまっていた。しかし午後に入って米大統領夫妻がコロナ陽性と報じられたことからドル円は急落反応となり14時台後半には104.93円まで急落した。急落といっても下げ幅は1円弱であり、直前の値動きが小幅な持ち合いだったことから急落商状というイメージを受けるが、105.50円を中心とした持ち合いからは転落したもののパニック的な下げというほどではなかった。その後の持ち直しで105.30円台へ上昇して午後当初の急落幅の半値以上を解消したが105.50円には届かずに週を終えた。

ダウ先物は一時600ドル以上の下落反応となっていたが、陽性報道で安値を付けた後は持ち直しに入り、2日のNYダウは当初に400ドル強の下落で開始したものの一時はプラス圏まで回復し、終盤の下げで134.09ドル安で終了している。ただし、ナスダック総合指数は下げ幅を戻せずに251.49ポイント安で終了している。
米10年債利回りは感染報道から安全資産買いされて一時0.65%まで低下したがその後のNYダウ持ち直しにより前日比0.02%上昇の0.70%で終了している。

【米雇用統計は強弱まちまち、それよりも米大統領感染の続報待ち】

米労働省が2日に発表した9月の雇用統計では失業率が7.9%となり8月の8.4%から0.5%低下した。コロナショックが直撃した4月には戦後最悪となる14.7%となり、その後は改善傾向を続けているが、コロナショック前の3.5%には届いていない。非農業部門就業者数は前月比66万1000人増となり8月の148万9000人増から伸びが大きく鈍化した。コロナショックにより3月と4月に2200万人の雇用が失われ、5月以降の改善で1100万人まで回復してきたが、まだ半分を超えられない程度にとどまっている。失業率の予想以上の改善と就業者数の伸びが大幅鈍化したことで雇用統計への市場反応は限定的なものだった。それよりも大統領感染報道の続報待ちで市場も落ち着かないという状況だったと思われる。

米ミシガン大学が発表した9月の消費者信頼感指数の確報は80.4となり速報の78.9から上方修正されて市場予想の79.0及び前月の74.1を上回った。4-6月期の最悪期を脱して米景気は回復基調にあるが、ホワイトハウスで感染クラスターが発生し大統領夫妻が感染するという状況により、感染対策よりも経済活動を優先させるという社会の楽観的な動きは水を差された印象だ。

トランプ米大統領は2日午後(日本時間3日午前)にワシントン近郊の軍医療センターに入院した。2日に症状が悪化した際には酸素投与もあったとされるが、軽症による早期復帰をアピールしている。しかし、74歳と高齢であり重症化リスクも高いため、米国としての最高の治療を受けるであろうが重症化への懸念も残る。
軍施設内の執務室で数日間職務に当たるというが、自身の健在をアピールするために日々の発信も続けると思うが、その表情等を見ながらメディアも市場も軽症からの復帰期待と重症化への懸念が交錯する日々に入るのではないかと思われる。軽症で早期に前線復帰となれば却って選挙戦に有利になるとの見方もあるが入院が長引けば再選も難しくなる。

また政権交代となる場合の議会勢力がどうなるのかにもより、金融市場にとっては規制強化による萎縮や経済政策を巡る混乱となるのかどうかをかなり心配することにもなるかもしれない。何しろ4年前はトランプ氏勝利のショックにより株式市場は大上昇期に入り、パンデミックの中でもナスダック総合株価指数やSP500指数が史上最高値を更新するところまで上昇してきたのだから、現職敗北となれば金融市場も動揺するのだろうと思われる。

【月初高値からの下落期入りか】

ドル円は月末月初に安値ないしは高値を付けて次の月末月初まで流れを継続しやすいパターンを繰り返している。現状は9月21日安値で104円を割り込んだところから戻したが、9月30日に105.80円まで戻したところでピークを付けた可能性がある。月の後半に安値を付けて月末月初まで戻してから下落に転じた直近の前例は6月23日安値から7月1日高値まで戻してから7月31日安値へ一段安したところで見られる。
3月のコロナショックによる暴落とその後のV字反騰により3月24日に戻り天井を付けた後は、5月7日、7月31日、9月21日と安値を切り下げ、戻り高値も6月5日、7月1日8月13日と切り下がりが続いてきた。7月31日安値を9月21日安値でわずかに割り込んでから戻したことで両安値をダブルボトムとした上昇期に入る可能性もまだ残ってはいると思うが、10月2日午後の安値を割り込んでくる場合は今回も戻り高値を切り下げて戻り一巡による下落期に入る可能性が高まり、9月21日安値を割り込む場合はチャート上の下値目途が3月9日安値101.17円前後へ大きく切り下がってゆく可能性もあると注意したい。

ただし、米大統領の早期回復か、入院長期化か、情勢は米大統領自身が握っている。早期回復見込みが強まって株高再開、為替市場でのリスク選好回復となればドル円も9月30日高値を超えて上昇継続となり、3月24日以降の右肩下がりの流れから脱却する可能性も多少あると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月25日夕安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして9月30日夜から10月2日深夜にかけての間への上昇を想定してきたが、30日午前高値からの下落で30日夕刻を割り込んで安値切り下がりに入ったため、1日朝時点では30日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は30日午後から10月2日夕にかけての間と想定した。
2日午後へ急落してから急落幅の半値以上を戻しているので、2日午後安値を直近のサイクルボトムとする。底割れ回避のうちは5日午前から7日午前にかけての間への上昇余地ありとするが、105.20円割れからは下げ再開注意とし、2日午後安値割れからは弱気サイクル入りとして7日午後から9日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では2日午後の急落で遅行スパンから転落して先行スパンからも転落となったが、その後の持ち直しにより横ばいからややジリ高で推移すれば両スパン揃って好転しやすい位置に来ている。ただし105.50円を超えて続伸に入れないうちは一時的に両スパンそろって好転してもその後に両スパンそろって悪化するところからは下げ再開とみる。また両スパンそろって好転できずに悪化を継続する場合は2日午後安値を割り込んで一段安へ進みやすいとみる。

60分足の相対力指数は30ポイント割れの急落から50ポイントまで戻してニュートラルな位置だが、60ポイント超えへ進めないうちは40ポイント割れからの下げ再開を警戒する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月2日午後安値104.93円を下値支持線、105.50円を上値抵抗線とする。
(2)105.50円以下での推移中は下向きとして、105.20円割れからは2日午後安値試しとし、底割れからは104.50円前後への下落を想定する。104.50円以下は反発注意とするが、急落商状の場合は104円台序盤へ下値目途を引き下げる。また2日午後安値を割り込んだ後も105.20円以下での推移が続くうちは6日から7日にかけて安値試しを続けやすいとみる。
(3)105.50円手前では戻り売りも出やすいとみるが、リスク選好感が回復する動きとなって105.50円超えから続伸に入る場合は上昇再開に入るとみて30日午前高値105.80円試しへ向かうとみる。ただし105.80円を超えてゆくには米大統領の早期回復・復帰見通しによる株高の進行が必要と思われる。(了)<4日18:00執筆>

【当面の主な予定】

10/5(月)
休場、中国、オーストラリア
ユーロ圏財務相会合
15:40 (日) 黒田東彦日銀総裁、全国証券大会挨拶
16:50 (仏) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 47.5、予想 47.5)
16:55 (独) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 49.1、予想 49.1)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 47.6、予想 47.6)
17:30 (英) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 55.1、予想 55.1)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前月比 (7月 -1.3%、予想 2.5%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 0.4%、予想 2.2%)
22:45 (米) 9月 サービス業PMI改定値 (7月 54.6、予想 54.6)
23:00 (米) 9月 ISM非製造業景況指数 (8月 56.9、予想 56.3)
23:45 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
28:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

10/6(火)
休場、中国
日米豪印の4カ国外相会合
米国務長官、日韓モンゴル歴訪
09:30 (豪) 8月 貿易収支 (7月 46.07億豪ドル、予想 50.50億豪ドル)
12:30 (豪) 豪準備銀行、政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 2.8%、予想 2.9%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前年同月比 (7月 -7.3%、予想 -3.5%)
21:30 (米) 8月 貿易収支 (7月 -636億ドル、予想 -660億ドル)
22:00 (欧) ラガルドECB総裁、パネル討論会
23:40 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、全米企業エコノミスト協会年次会合で講演
24:30 (欧) レーンECB理事、講演
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

10/7(水)
休場、中国
米副大統領候補討論会(ユタ州ソルトレークシティー)
07:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
14:00 (日) 8月 景気先行指数(CI)速報値 (7月 86.7、予想 89.0)
14:00 (日) 8月 景気一致指数(CI)速報値 (7月 78.3、予想 79.4)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 1.2%、予想 1.8%)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 -10.0%、予想 -8.7%)
21:10 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演

25:30 (欧) ヴィルロワ・ド・ガロー仏中銀総裁、講演
26:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC 9月15-16日開催分)議事要旨
27:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
27:15 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
28:00 (米) 8月 消費者信用残高 前月比 (7月 122.5億ドル、予想 140.0億ドル)
29:30 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演

10/8(木)
休場、中国
未 定 (日) 黒田東彦日銀総裁、支店長会議で挨拶
08:01 (英) 9月 英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格指数 (8月 44、予想 40)
08:50 (日) 8月 国際収支・経常収支・季調前 (7月 1兆4683億円、予想 2兆600億円)
08:50 (日) 8月 国際収支・経常収支・季調済 (7月 9642億円、予想 1兆5446億円)
08:50 (日) 8月 国際収支・貿易収支 (7月 1373億円、予想 4089億円)
09:00 (NZ) 10月 NBNZ企業信頼感 (9月 -26.0)
10:45 (中) 9月 財新サービス業PMI (8月 54.0、予想 54.3)
14:00 (日) 日銀地域経済報告[さくらリポート、)

14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI (8月 43.9、予想 45.0)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 192億ユーロ、予想 160億ユーロ)
15:00 (独) 8月 経常収支 (7月 200億ユーロ、予想 162億ユーロ)
16:25 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、パネル討論会参加
20:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 83.7万件、予想 82.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1176.7万人)
27:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、同連銀主催イベントで講演
31:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、バーチャル会合参加

10/9(金)
08:30 (日) 8月 全世帯消費支出 前年同月比 (7月 -7.6%、予想 -6.7%)
15:00 (英) 8月 月次GDP 前月比 (7月 6.6%、予想 4.7%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前月比 (7月 5.2%、予想 2.6%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前年同月比 (7月 -7.8%、予想 -4.6%)
15:00 (英) 8月 製造業生産指数 前月比 (7月 6.3%、予想 3.0%)
15:00 (英) 8月 商品貿易収支 (7月 -86.35億ポンド、予想 -91.00億ポンド)
15:00 (英) 8月 貿易収支 (7月 10.74億ポンド、予想 0.00億ポンド)
23:00 (米) 8月 卸売在庫 前月比 (7月 -0.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 8月 卸売売上高 前月比 (7月 4.6%)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る