ドル円見通し 7日連続の日足陰線から5日連続陽線での切り返し、背景はドル高の継続(週報9月第4週)

メジャー通貨の加重平均であるドル指数も9月1日以降の高値を更新している。

ドル円見通し 7日連続の日足陰線から5日連続陽線での切り返し、背景はドル高の継続(週報9月第4週)

ドル円見通し 7日連続の日足陰線から5日連続陽線での切り返し、背景はドル高の継続

〇ドル円9/21の104円割れ以降は5日連続陽線で持ち直し105.50を維持し越週
〇全般的ドル高基調継続ユーロドルは9/1以降の安値更新
〇NYダウ下げ一服するも調整局面入りの可能性、一方で米長期債利回りはじり安程度にとどまる
〇ドル指数上昇継続、株安再燃すれば一旦はドル円も上昇するも、米債券利回り低下に伴い後に円高も
〇米雇用統計がトリガーとなる可能性あり要注意

【概況】

ドル円は9月10日から9月18日までの7日間を日足連続陰線で下落し、9月21日には103.998円まで下げて7月31日安値104.182円を割り込む3月12日以来の104円割れとなったが、その後は5日連続の陽線で持ち直してきた。9月25日深夜には105.698円まで高値を切り上げたが、9月24日以降は105.50円前後で上値が重くなっていたところから頭一つ上抜け、105.50円以上を維持して週を終えた。
全般的なドル高基調が継続する中での円安ドル高の継続であり、9月25日もユーロドルが9月1日以降の安値を更新する一段安となり、メジャー通貨の加重平均であるドル指数も9月1日以降の高値を更新している。

【米国株安の割に米長期債利回りはさほど低下せず】

9月に入ってからNYダウ等が大幅下落に転じて調整局面入りの印象が強まるのと同時にユーロドルが9月1日高値をピークに下落に転じ、英ポンドもEU離脱協定やFTAを巡る対立の深刻化や感染第二波到来により大幅下落となり、株安=リスク回避で為替市場ではドルの買い戻しという動きに入った。資源通貨の豪ドル等の下落も目立った。
ドル円は株安とリスク回避的なドルストレートにおけるドル高に対し、9月14日夜に106円を割り込んで105円台半ばまで下げたところから下げ足を速め、9月21日にかけては毎夕毎晩の安値更新を続けた。ドルストレートにおけるドル高圧力よりもクロス円における円の買い戻しによる円高圧力が勝ったことでドル円においてはドル安円高へ走ったという印象だった。

しかし9月21日に104円割れまで突っ込んだことによる売られ過ぎ警戒感からのリバウンドと共に、ドル円においてもドル高感が勝る状況に入ったために、9月21日への下落期とは真逆に毎夕毎晩の戻り高値切り上げへと進んできた。
通常なら世界連鎖的な株安によるリスク回避型の行動パターンを為替市場が採り始めれば株安債券高による米長期債利回り低下からドル円はドル安円高に走りやすく、ドルストレートでのリスク回避型ドル高となってもクロス円における円高感が増すことでドル円までドル高円安となるケースは少ないと思われる。

NYダウは9月25日に前日比358.52ドル高と反発して下げ一服となっているが、9月3日高値2万9199.35ドルから9月24日安値2万6537.01ドルまで2662.34ドル安であり、6月8日高値2万7580.21ドルから6月15日安値2万4843.18ドルまでの下げ幅2737.03ドル安よりもやや少ないものの、6月15日への下落時や7月30日への下落に下値支持線として機能した52日移動平均を割り込んでおり、6月のような中間調整のレベルを超えた調整局面入りの可能性が懸念される状況だ。

これに対して米10年債利回りは9月25日時点で0.65%であり、8月27日の0.74%及び9月4日の0.72%からは低下しているものの9月3日の0.62%を割り込まない程度のジリ安にとどまっている。コロナ対策での米国債大量発行による需給緩和が株安だからといって米長期国債買いを積極的には誘発しないのかもしれない。こうして株安の割に米長期債利回りの低下が見られないため、米長期債利回り低下による円高ドル安感よりも、ドルストレート全般でのドル高感が勝る状況となっていることが9月21日以降のドル円の上昇を支えていると思われる。このため、米長期債利回りが顕著な低下に入らないうちはドル円も底固さを継続する可能性があると思われる。

【ユーロの下落が目立つ中でドル指数上昇継続】

ドルストレートでのドル高はドル指数でみれば9月1日から続いている。ドル指数は3月20日高値で102.99を付けたところを天井として大幅下落期に入り、9月1日には91.74まで下げて2018年5月以来の安値水準となったが、その後は持ち直しており、9月25日は94.74まで上昇して週間では1.86%高となった。
ドル指数上昇の主要因はユーロドルの下落だが、ユーロドルは9月1日に1.2009ドルまで上昇したところを天井として下落に転じ、9月18日までは1.170ドル台を下値支持線とした高値圏を維持していたものの9月21日からの一段安で1.161ドル台まで一段安となっている。高値からの下落率は3.3%程度だが、9月1日高値を中心として8月18日高値と9月10日高値を両肩とした三尊天井型を形成しており、6月の中間調整的な下落時を上回る下落規模となっている。

英ポンド米ドルも9月1日高値1.34813から9月23日安値1.26747ドルまでの下落率は凡そ6%と大きく、ユーロドルと同様に6月の中間調整期の下落規模を超えている。
世界的な感染拡大が収まらないこと、欧州での第二波の到来、米国での感染者700万人超え及び死者20万人超え、ECB理事会や米FOMC、日銀金融政策決定会合、英国の金融政策決定会合等を通過しても金融政策的な手詰まり感が強まるだけであり、欧米も有効な追加的財政政策を打ち出せない状況にある中で、3月の第一波時のコロナショック暴落から出直ってきた米国株や投機通貨、資源通貨等の上昇基調が一巡となり、さらに上へ押し上げる推進力にかけて失速し始めている状況にある。

3月のコロナショック時に見られたようなドル急伸という状況にはまだ至っていないものの、金融市場全般が動揺してくればひとまず投機ポジションの縮小、手仕舞いと換金売りによりドル高が進むということが現状でも発生しているのだろうと思われる。米長期債利回りがさほど低下しない中で、104円割れまでいったん下げたところからさらに円高ドル安を加速させる状況というよりも、ドル全面高に合わせてドル円も当面は戻りを試す動きを慎重に続けるかもしれないが、株安がさらに深刻化すれば米長期債利回り低下も進み始めてドル円においての円高ドル安が再燃する時期もいずれ来るのではないかと思う。そのきっかけが10月2日の米雇用統計かもしれない。

【米雇用統計前までの当面のポイント】

【米雇用統計前までの当面のポイント】

(1) 7日連続の日足陰線から5日連続の日足陽線へと切り返してきた。連続陰線で急落してからの反騰としては7月31日安値から8月13日高値へ戻した時に近い印象がある。月の終盤に安値を付けて反騰入りしたケースでは7月31日安値から8月13日への反発時、6月24日から7月1日への反発時が前例と思われる。
10月2日の米雇用統計が今後の流れを決める上で重要となる可能性があるが、仮に雇用統計をドル高円安で通過する場合は10月第2週にかけて高値試しを継続しやすくなると思うが、雇用統計から下落に転じる場合は戻り一巡より次の下落期に入る可能性が高まると思われる。

(2) 9月21日安値で7月31日安値をわずかに割り込んだが、その後の持ち直しにより今のところは両安値をダブル底として戻しに入る可能性がある。106円前後では抵抗感があるが、106円を超えて続伸に入り、雇用統計も強気で通過すれば、ダブル底の間にある高値=8月13日の107.045円を試しにかかる流れが想定される。ただし、3月のコロナショック暴落から戻した後は戻り高値切り下がりとその後の安値も切り下げてきたため、8月13日高値に迫っても高値更新できずに9月21日以降の上昇幅の半値以上を削るところからは下げ再開に入りやすいと思われる。106円前後までの上昇から下落に転じる場合も同様と思われる。
(3) 9月21日安値を割り込む下落発生の場合、下値目途は3月9日安値101.174円まで見当たらなくなる。仮に106円前後まで戻してから底割れへ向かえば、戻り幅の倍返しで102円前後へ進みやすくなると考えるが、7月31日安値から8月13日高値までの戻り幅の倍返しなら下値計算値は101.319円となり3月9日安値に迫る計算だ。

(4) 10月2日の米雇用統計前の日々の短期的なポイントとしては、9月21日安値以降は高値を切り上げた後の安値も切り上げが続いているので、階段を上る上昇パターンが続くうちは高値更新余地ありとして106円、106円台序盤、106円台前半と高値試しを続けやすいと考える。安値の切り上がりパターンが崩れる場合、現状では9月25日夕安値105.238円を割り込む場合はいったん調整安に入るとみて105.00円、次いで104円台中盤(104.70円から104.30円)等を段階的に試して行くと思われる。(了)<27日18:00執筆>

【当面の主な予定】

9/28(月)
休場、ニュージーランド
14:00 (日) 7月 景気先行指数CI改定値 (速報 86.9)
14:00 (日) 7月 景気一致指数CI改定値 (速報 76.2)
22:45 (欧) ラガルド欧中銀(ECB)総裁、欧州議会で証言
27:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

9/29(火)
米大統領候補、第1回討論会(オハイオ州クリーブランド)
08:30 (日) 9月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (8月 -0.3%、予想 -0.3%)
18:00 (欧) 9月 経済信頼感 (8月 87.7、予想 89.0)
18:00 (欧) 9月 消費者信頼感確定値 (速報 -13.9)
21:00 (独) 9月 消費者物価指数速報値 前月比 (8月 -0.1%、予想 0.0%)
21:00 (独) 9月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (8月 0.0%、予想 0.0%)
22:00 (米) 7月 ケース・シラー米住宅価格指数 (6月 225.13)
22:00 (米) 7月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (6月 3.5%、予想 3.6%)

22:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
22:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:00 (米) 9月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (8月 84.8、予想 89.6)
23:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
26:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、バーチャルイベント参加
26:00 (米) クォ―ルズFRB副議長、講演

9/30(水)
休場 韓国
06:45 (NZ) 8月 住宅建設許可件数 前月比 (7月 -4.5%)
08:50 (日) 8月 小売業販売額 前年同月比 (7月 -2.8%、予想 -3.2%)
08:50 (日) 8月 鉱工業生産速報値 前月比 (7月 8.7%、予想 1.5%)
08:50 (日) 8月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (7月 -15.5%、予想 -13.4%)
10:00 (中) 9月 国家統計局製造業PMI (8月 51.0、予想 51.3)
10:30 (豪) 8月 住宅建設許可件数 前月比 (7月 12.0%、予想 0.0%)
10:45 (中) 9月 財新製造業PMI (8月 53.1、予想 53.1)

14:00 (日) 8月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (7月 -11.4%、予想 -10.1%)
15:00 (英) 4-6月期GDP改定値 前期比 (速報 -20.4%、予想 -20.4%)
15:00 (英) 4-6月期GDP改定値 前年同期比 (速報 -21.7%、予想 -21.7%)
15:00 (英) 4-6月期経常収支 (1-3月期 -211億ポンド、予想 +8億ポンド)
15:00 (独) 8月 小売売上高指数 前月比 (7月 -0.9%、予想 0.4%)
15:00 (独) 8月 小売売上高指数 前年同月比 (7月 4.2%、予想 4.2%)
15:00 (英) 9月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (8月 2.0%、予想 0.5%)
16:00 (ト) 8月 貿易収支 (7月 -27.0億ドル、予想 -63.0億ドル)
16:20 (欧) ラガルド欧中銀(ECB)総裁、発言
16:55 (独) 9月 失業率 (8月 6.4%、予想 6.4%)

21:15 (米) 9月 ADP非農業部門雇用者数 前月比 (8月 42.8万人、予想 65.0万人)
21:30 (米) 4-6月期GDP確定値 前期比年率 (改定値 -31.7%、予想 -31.7%)
21:30 (米) 4-6月期GDP個人消費確定値 前期比年率 (改定値、-34.1%、予想 -34.1%)
21:30 (米) 4-6月期コアPCE確定値 前期比年率 (改定値 -1.0%、予想 -1.0%)
22:45 (米) 9月 シカゴ購買部景況指数 (8月 51.2、予想 52.0)
23:00 (米) 8月 住宅販売保留指数 前月比 (7月 5.9%、予想 3.0%)
23:00 (米) 8月 住宅販売保留指数 前年同月比 (7月 15.4%)
24:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
26:40 (米) ボウマンFRB理事、講演

10/1(木)
休場、中国、香港、台湾、韓国
EU臨時首脳会議(ブリュッセル、10/2まで)
07:30 (豪) 9月AiG製造業PMI (8月 49.3、予想 49.7)
08:00 (豪) 9月マークイット製造業PMI確報値 (速報 53.6、予想 55.5)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (4-6月 -34、予想 -22)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業製造業先行き (4-6月 -27、予想 -16)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (4-6月 -17、予想 -9)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (4-6月 -14、予想 -7)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業設備投資 前年度比 (4-6月 3.2%、予想 0.5%)
16:00 (ト) 9月 製造業PMI (8月 54.3)
16:55 (独) 9月 製造業PMI改定値 (8月 56.6)
17:00 (欧) 9月 製造業PMI改定値 (8月 53.7)
17:30 (英) 9月 製造業PMI改定値 (8月 54.3)

18:00 (欧) 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 0.6%)
18:00 (欧) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 -3.3%)
18:00 (欧) 8月 失業率 (7月 7.9%)
21:30 (米) 8月 個人所得 前月比 (7月 0.4%、予想 -2.6%)
21:30 (米) 8月 個人消費支出(PCE) 前月比 (7月 1.9%、予想 0.8%)
21:30 (米) 8月 PCEデフレーター 前年同月比 (7月 1.0%)
21:30 (米) 8月 PCEコア・デフレーター 前月比 (7月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (7月 1.3%、予想 1.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 87.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1258.0万人)
22:45 (米) 9月 製造業PMI改定値 (速報 53.5)
23:00 (米) 8月 建設支出 前月比 (7月 0.1%、予想 0.7%)
23:00 (米) 9月 ISM製造業景況指数 (8月 56.0、予想 55.8)
24:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演

10/2(金)
休場、中国、香港、台湾、韓国、インド
08:30 (日) 8月 失業率 (7月 2.9%、予想 3.0%)
08:30 (日) 8月 有効求人倍率 (7月 1.08、予想 1.05)
08:50 (日) 9月 マネタリーベース 前年同月比 (8月 11.5%)
10:30 (豪) 8月 小売売上高 前月比 (8月 3.2%、予想 -6.5%)
14:00 (日) 9月 消費者態度指数 (8月 29.3)
21:30 (米) 9月 非農業部門就業者数 前月比 (8月 137.1万人、予想 86.5万人)
21:30 (米) 9月 失業率 (8月 8.4%、予想 8.2%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前月比 (8月 0.4%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前年同月比 (8月 4.7%、予想 4.7%)
22:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 78.9、予想 78.9)
23:00 (米) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 6.4%、予想 1.5%)

注:ポイント要約は編集部

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