ドル円見通し 7月31日底の押し目となるか、底割れを目指すか見定めるところ(週報8月第4週)

米国の経済指標も強弱まちまちの発表が続いている。

ドル円見通し 7月31日底の押し目となるか、底割れを目指すか見定めるところ(週報8月第4週)

7月31日底の押し目となるか、底割れを目指すか見定めるところ

〇ドル円はFOMC議事要旨公表後106.21まで上昇、その後は105円台から106円台にかけてのもみ合い
〇米指標はまちまち、コロナ感染拡大は抑制傾向だが。戦後最悪の不況は継続
〇米10年債利回りは8月13日に0.72%まで上昇したところをピークとして低下傾向
〇ドルの過剰流動性供給状態の拡大はドル安助長しやすい
〇105.42を超えないうちはもう一段安余地あり、105円割れから続落の場合は7/31安値104.17試しを想定
〇106.06超えからは20日午前高値106.21試しを想定、106円を維持するうちは高値試しへ向かいやすい

【概況】

ドル円は米国の長期債大量入札が続く中での米長期債利回り上昇が一巡したことで8月14日未明高値107.05円から8月19日午前安値105.08円まで下落してきた。日足は8月14日から18日まで3日連続陰線=三羽烏での下落だったが、20日未明の米連銀FOMC議事録公開を控えて買い戻され、FOMC議事録がYCC(長短金利操作)への消極姿勢を示すものと受け止められたことで20日午前高値106.21円まで上昇した。しかし現状の金融緩和姿勢は継続してゆくものとしてドル全面高へ向かう程の勢いには至らないとみられ、米長期債利回りも低下基調を続けたことで21日午後には105.42円まで失速した。

8月21日夕刻に発表されたユーロ圏8月製造業PMIが51.7となり、7月の51.8から低下して市場予想の52.9を下回り、同サービス業PMIも50.1にとどまって7月の54.7及び市場予想の54.5を大幅に下回ったため、夕刻から21時過ぎにかけてはユーロ安ドル高が進行したためにドル円も買い戻しの動きとなり21日深夜には106.06円まで戻した。米国の8月製造業PMIが53.6となり7月の50.9及び市場予想の51.9を上回り、サービス業PMIも54.8となり7月の50.0及び市場予想の51.0を大幅に上回ったことでユーロ圏との景気回復感の差が意識された。また7月の米中古住宅販売件数も586万件となり6月の470万件及び市場予想の538万件を大幅に上回ったのだが、日付をまたいでさらにドル高へ進む動きにはならず、ドル円も106円台を維持できずに先週を終えた。

【米長期債利回り低下傾向が強まるか】

米国の経済指標も強弱まちまちの発表が続いている。8月17日夜のNY連銀製造業景況指数は3.7となり7月の17.2から大幅に低下した。8月18日夜の米7月住宅着工件数は前月比22.6%増と過去最大級の上昇率となったが、8月20日夜のフィラデルフィア連銀8月製造業景況指数は17.2となり7月の24.1からら低下し、新規失業保険申請件数も前週の97.1万件から110.6万件へと増えた。
米国の新型コロナウイルスの感染拡大は8月22日時点で584万人、死者180万人に達したが、日々の増加数は7月24日の7万8586人をピークに峠を越えて低下傾向にあり5万人を切る水準が続いている。しかし、景気回復が一挙に進むほどの劇的改善には至らず、高水準の失業者を伴う戦後最悪の不況は続いている。
米国株式市場は堅調で、21日もNYダウは前日比190.60ドル高と上昇、ナスダック総合株価指数は同46.85ポイント高で2日連続で終値ベースの史上最高値を更新している。金融緩和政策による資産インフレ進行期待、巣籠需要によるIT・ハイテク株高期待が足元の不況感に勝る状況となっている。

楽観的な株高基調が続けば通常ならば株高債券安で米長期債利回りは上昇するのを基本とするが、コロナ不況の出口がまだ見えずに米経済指標が劇的に改善する状況に至らないまま強弱が入り乱れるならば、米連銀の金融緩和拡大政策の継続感が維持され、一時的な大量入札により需給緩和懸念が強まって上昇してきた米長期債利回りも再び低下傾向へ向かいやすくなるのではないかと思われる。米10年債利回りは8月13日に0.72%まで上昇したところをピークとしてすでに低下傾向に入ってきている。

ドル円は株高によるリスクオン心理優勢ならば基本的には円安へ向かいやすい性質のものだが、株高によるリスク選好感が強まるとユーロやポンド、豪ドル等が上昇して為替市場での投機通貨買いが優勢となり、ドル円においてもドルストレートでのドル安が影響して円高ドル安に向かうという傾向が最近は見られる。先週末はポンドが急落したりユーロが一段安となるなど欧米経済指標の差からドル高反応も見られたが、世界的金融緩和の中での米連銀の量的金融緩和=ドルの過剰流動性供給状態の拡大はドル圏投資家にとっては金融資産買いの他に為替市場においても投機通貨買いへ向かいやすくドル安を助長しやすい状況が続くと思われる。

【7月31日からの上昇基調を維持できるか】

ドル円は7月31日に104.17円まで下落してから8月13日高値107.05円まで戻した。この間の上昇幅は2.88円だったが、8月14日から18日まで3日間連続の日足陰線=三羽烏となった。19日に105円割れを回避してその後は105円台中心で下げ渋っているところだ。
105円を割り込んでも切り返して106円台後半へ戻せば、8月13日高値からの下落を調整安=押し目として踏みとどまり、8月13日高値を超えるところから上昇に勢い付く可能性がある。しかし105円を割り込んで続落に入れば8月13日からの下落は継続となり、押し目にとどまらずに7月31日安値を割り込んでゆく一段安へと進みやすくなると思われる。

3月24日の戻り天井から日足54本目が6月5日の戻り高値であり、そこから日足50本目が8月13日の戻り高値である。戻り高値は6月5日から8月13日へ切り下がりであり、すでに戻り幅の半値を削っていることから、105円割れからは下落基調が加速しやすくなると思われる。しかしその一方で、7月31日の日足陽線は、当日安値から高値まで1.88円の上昇となる大陽線であり、同じく1.92円の上昇幅をもつ昨年8月26日底からの上昇再開期を彷彿とさせるところでもある。米長期債利回りが低下傾向を継続すれば、日米金利差による円高ドル安感が強まるが、米長期債利回りがさほど低下せずに株高が進み、欧州が感染拡大の再燃不安を強める中で米国が感染拡大の峠を越えた印象が強まるならドル高もぶり返す可能性もある。
当面はいずれへ進むのか、見極めが必要なところだが、8月27日夜のパウエル米FRB議長のジャクソンホール講演(今年はオンライン)、米4−6月期GDP改定値等が流れを決定付けやすいのではないかと注目したい。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)8月21日夕刻の下落では8月19日午前安値割れを回避したが、21日深夜への上昇では20日午前高値を超えずに先週を終えている。このため、8月21日夕刻安値105.42円を当初の下値支持線、21日深夜高値106.06円を当初の上値抵抗線とする。
(2)8月21日夜高値を超えないうちはもう一段安余地ありとみて、21日夕刻安値105.42円割れからは8月19日午前安値105.08円試しを想定する。105円前後はもう一度買い戻しも入りやすいとみるが、105円割れから続落の場合は7月31日安値104.17円試しを想定する。また105円以下での推移が続く場合や米長期債利回り低下が続くうちは安値試しを続けやすいとみる。
(3)8月21日深夜高値106.06円超えからは20日午前高値106.21円試しを想定する。106円台序盤はもう一度売られやすいとみるが、106.21円超えから続伸に入る場合は106円台中後半(106.50円から106.80円)を目指すとみる。また106円以上を維持するうちは高値試しへ向かいやすいとみて、ドル高円安材料により押し上げられる場合は8月14日未明高値107.05円超えを目指す可能性もあると注意する。(了)<23日20:30執筆>

【当面の主な予定】

8/24(月)
米共和党全国大会(8月27日まで)
07:45 (NZ) 4-6月期 小売売上高指数 前期比 (1-3月 -0.7%、予想 -15.0%)

8/25(火)
15:00 (独) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 -10.1%、予想 -10.1%)
15:00 (独) 4-6月期 GDP改定値・季調済 前年同期比 (速報 -11.7%、予想 -11.7%)
17:00 (独) 8月 IFO企業景況感指数 (7月 90.5、予想 92.4)
22:00 (米) 4-6月期 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前期比 (1−3月 1.7%)
22:00 (米) 6月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (5月 -0.3%、予想 0.3%)
22:00 (米) 6月 ケース・シラー米住宅価格指数 (5月 224.76)
22:00 (米) 6月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (5月 3.7%、予想 3.6%)

23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数 前月比 (6月 13.8%、予想 0.8%)
23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (6月 77.6万件、予想 78.3万件)
23:00 (米) 8月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (7月 92.6、予想 93.0)
23:00 (米) 8月 リッチモンド連銀製造業指数 (7月 10、予想 10)
28:25 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、パネル討論会

8/26(水)
07:45 (NZ) 7月 貿易収支 (6月 4.26億NZドル、予想 2.85億NZドル)
08:50 (日) 7月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (6月 0.8%、予想 0.8%)
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI・改定値 (速報 85.0)
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI・改定値 (速報 76.4)
20:00 (メ) 4-6月期 GDP確定値 前期比 (速報 -17.3%、予想 -17.4%)
20:00 (メ) 4-6月期 GDP確定値 前年同期比 (速報 -18.9%、予想 -18.9%)
21:30 (米) 7月 耐久財受注 前月比 (6月 7.3%、予想 4.4%)
21:30 (米) 7月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (6月 3.3%、予想 1.7%)

8/27(木)
トランプ米大統領、共和党大会で指名受諾演説(ワシントン)
カンザスシティ連銀主催年次シンポジウム(7月28日まで、ジャクソンホール、オンライン)
10:30 (豪) 4-6月期 民間設備投資 前期比 (1−3月 -1.6%、予想 -8.2%)
13:30 (日) 6月 全産業活動指数 前月比 (5月 -3.5%、予想 6.3%)
14:45 (ス) 4-6月期 GDP 前期比 (1−3月 -2.6%、予想 -9.0%)
14:45 (ス) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1−3月 -1.3%、予想 -10.2%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 -32.9%、予想 -32.5%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費改定値 前期比年率 (速報 -34.6%、予想 -34.6%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE改定値 前期比年率 (速報 -1.1%、予想 -1.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 110.6万件、予想 100.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1484.4万人)

22:10 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ジャクソンホール講演(オンライン)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前月比 (6月 16.6%、予想 2.0%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前年同月比 (6月 12.7%)
24:15 (加) マックレム加中銀総裁、ジャクソンホール講演(オンライン)

8/28(金)
08:30 (日) 8月 東京都区部消費者物価・生鮮食料品除く 前年同月比 (7月 0.4%、予想 0.3%)
15:00 (独) 9月 GFK消費者信頼感 (8月 -0.3、予想 0.9)
15:45 (仏) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 -13.8%、予想 -13.8%)
18:00 (欧) 8月 経済信頼感 (7月 82.3、予想 85.0)
18:00 (欧) 8月 消費者信頼感確定値 (速報 -14.7)

21:30 (加) 4-6月期 GDP 前期比年率 (1−3月 -8.2%、予想 -40.0%)
21:30 (米) 7月 個人所得 前月比 (6月 -1.1%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 7月 個人消費支出 前月比 (6月 5.6%、予想 1.5%)
21:30 (米) 7月 PCEデフレーター 前年同月比 (6月 0.8%、予想 1.0%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前月比 (6月 0.2%、予想 0.5%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (6月 0.9%、予想 1.3%)
22:05 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、ジャクソンホール講演、オンライン)
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部協会景況指数 (7月 51.9、予想 52.0)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 72.8、予想 72.8)


注:ポイント要約は編集部

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