ドル円、市場予想を上回るインフレ指標を受けて約3週間ぶり高値圏へ
〇ドル円PPIの予想外の改善を背景とした長期金利の上昇に一時106.68まで続伸
〇ユーロドルZEW指数改善に1.1807まで上昇後にドル上昇で1.1730まで反落
〇ドル円テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「一巡後の下落リスク」が警戒される
〇米中対立激化や新型コロナウイルスの感染拡大を背景に上値の重い展開が継続
〇本日の予想レンジ:106.00ー107.00
海外時間の為替概況
11日(火)の外国為替市場でドル円は上昇。@中国及び米政府による財政出動期待の高まりや、A欧米株の上昇を背景としたリスク選好の円売り、Bロシアが新型コロナウイルスのワクチンに認可(世界初)を下したとの一部報道、C米7月生産者物価指数(結果0.6%、予想0.3%)の伸び率高進、D上記Cを背景とした米長期金利の上昇(ドル高)が支援材料となり、米国時間にかけて、7/24以来となる高値106.68まで上昇しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間4時45分現在)では、106.57近辺で推移しております。
11日(火)のユーロドル相場は上昇後に急反落。@欧米株の上昇を背景としたリスク選好ムードの高まりや、Aユーロ圏8月ZEW景況感指数(結果64.0、前回59.6)及び、Bドイツ8月ZEW景況感指数(結果71.5、予想55.0)の力強い結果、C短期筋のショートカバーが支援材料となり、米国時間朝方にかけて、高値1.1807まで急伸しました。しかし、1.18台で戻り売り圧力が強まると、D短期筋の見切り売りや、E米7月生産者物価指数の伸び率高進、F米長期金利上昇を受けたドル高圧力が重石となり、本稿執筆時点(日本時間4時45分現在)では、1.1730近辺まで反落する展開となっております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、7/1に記録した高値108.17をトップに反落に転じると、7/31には、一時104.19(約4ヵ月半ぶり安値)まで急落しました。この間、一目均衡表基準線や転換線、ボリンジャーミッドバンドや雲下限を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転も成立するなど、テクニカル的にみて、「地合の悪さ」を印象付けるチャート形状となっております(足元106円台後半まで値を戻すも、強い売りシグナルを示唆する三役逆転やパーフェクトオーダーは継続中)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、積極的な緩和方針の継続を示した米国)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念、C世界的な貿易戦争拡大リスク、Dトランプ米大統領の支持率低下(米政治の先行き不透明感の高まり)、E朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、F新型コロナウイルスの感染拡大懸念(ニュージーランド最大都市オークランドで3日間の都市封鎖再開。ブータン全土でも都市封鎖開始)、G日本経済の先行き不透明感(本邦における新型コロナ感染者数再拡大→日本経済低迷→デフレマインド再燃→予想実質金利上昇→円高への波及経路)など、ドル円相場の下落を想起させる不安材料が山積みの状態です。
以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「一巡後の下落リスク」が警戒されます(現在は中期下落トレンドの途中で見られる一時的な戻り局面との認識)。欧米株や商品市況の動向や、新型コロナウイルス及び米中対立激化に関するヘッドライン、欧米の主要経済指標(米7月消費者物価指数など)の結果を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(米中対立激化や新型コロナウイルスの感染拡大を背景に上値の重い展開が継続。ニュージーランドやブータンなどロックダウンに踏み切る国も出始めており、一巡後の反落リスクに警戒が必要)。
本日の予想レンジ:106.00ー107.00
ドル円日足
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