ドル円見通し 6月23日の急落を解消、持ち合い下放れは仕切り直し(週報6月第5週)

米国では経済活動再開を急いだ南部と西部での感染拡大が深刻となり、テキサス州やフロリダ州は店舗営業の利用制限に踏み切った。

ドル円見通し 6月23日の急落を解消、持ち合い下放れは仕切り直し(週報6月第5週)

ドル円見通し 6月23日の急落を解消、持ち合い下放れは仕切り直し

〇ドル円6/23に106.06まで急落するも以後106円台から107円台で推移
〇リスク選好の強弱に振れるが、リスク選好時はドル円でもあくまでドル売りとなった
〇今週は持ち合い継続、下げ再開、どちらの可能性もあり
〇米国では南部西部での感染拡大深刻、一方でニューヨーク市は抑制期に入り規制緩和第三段階へ
〇米中関係は香港問題で双方が相手方に報復を警告対立一段と激化へ
〇ドル円5/6安値105.98と6/23安値106.06でダブル底の可能性
〇106.78割れ回避のうちは上昇余地あり、107.44円超えからは107.63円試し
〇106.78割れからは下げ再開の可能性、106.06円試し、株安同調で下げ加速の場合105円前後へ

【概況】

ドル円は6月12日に106.55円まで下げてから6月16日高値107.63円まで戻した後は6月23日までその間のレンジ内での持ち合いが続いていたが、22日から23日への欧米株高によるリスク選好感が強まる中でユーロ等が上昇してドル安感が強まり、ドル円にも波及したことで23日深夜に106.06円まで急落して持ち合いをいったんは下放れした。しかし5月6日安値105.98円割れを回避し、24日から25日にかけては23日と逆に株安ユーロ安等からドル高感が強まりドル円においてもドル高優勢となって揺れ返しの上昇に転じ、25日夜には107.44円まで戻り高値を切り上げて23日夜急落前の高値107.22円を超えた。
通常なら株安円高、株高円安という基本的な反応になるところ、ドルストレートでのドル高ないしはドル安の動きが勝ってドル円も振り回されることとなった。

6月26日夜にかけては106.78円までいったん下げたが26日深夜には107.35円まで再び戻している。
6月23日夜の急落時には、それまでの7日間の持ち合いからの転落として下落がさらに加速してゆくのではないかと思われたが、この先安感は仕切り直しとなり、もとの持ち合い相場レンジ内に押し返された。6月12日以降の戻り高値は6月16日の107.63円であり、107.63円を超えてさらに上昇するようだと、6月5日からの下落基調がストップして戻りをさらに試す流れへ向かいやすくなると思われるが、元の持ち合い半に概ね止まる程度なら、6月23日夜安値を中心軸としてもう一度元の持ち合いを繰り返す展開になるのか、戻りが続かずに下げ再開へ向かうのか、いずれの可能性も残るところだ。

【パンデミックへの楽観と悲観の交錯】

米国では経済活動再開を急いだ南部と西部での感染拡大が深刻となり、テキサス州やフロリダ州は店舗営業の利用制限に踏み切った。また前日に発表された米連銀による大手銀行へのストレステストにより大手銀行の自社株買い禁止や配当制限等が実施されることとなったことや米上院が香港自治法案を可決して中国への制裁への動きが強まったことなどが重なり6月26日のNYダウは前日比730.05ドル安と大幅下落、ナスダック総合指数も259.78ポイント安と大幅反落した。

米国では感染が抑制期に入ったニューヨーク市で7月6日から規制緩和の第3段階に入る方針を示し、飲食店の屋内席やマッサージ店等の再開で推定5万人が職場に復帰する見込みとなった。その一方でテキサス州のアボット知事は感染者急増によりバーの営業を禁止してレストランの入店者数も50%に制限する知事令を出した。フロリダ州は感染者急増により26日にバーでの酒類販売を停止した。
米政府の新型コロナウイルス対策本部長であるペンス副大統領は26日の記者会見で「感染が急拡大していた2か月前に戻ったと思う国民がいるかもしれないが我々は当時よりはるかに改善している」として第ニ波への懸念打ち消しに動いたが、市場では感染拡大の継続ないしは第ニ波への懸念が日々強まっている。米国の感染者数は6月27日時点で前日から4万3581人増の259.6万人に拡大している。

【米中対立再燃への懸念】

今年11月の大統領選挙へ向けて、コロナショックによる失業急増や感染増が収まらない現況に対する現政権への不満が強まっている。人種差別問題もクローズアップされて全米にデモが波及していることも影響し、トランプ再選には赤信号が点灯している。逆風の中でトランプ政権は株高対策、景気対策を強化するとともに不満のはけ口を排外主義的に中国批判へ向けようとする動きも見られる。
米上院は6月25日に香港の自治侵害に関わった中国当局者らに制裁を科す「香港自治法案」を可決した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙は26日に、米国が香港問題へ干渉すれば米中貿易協議の「第1段階合意」に盛り込んだ米国産品購入の順守が危うくなると中国側が米側に警告したと報じた。米国側はポンペオ米国務長官が26日に、香港の高度な自治の侵害に関わった中国共産党員らに対するビザ発給制限を発表した。対象者の具体的な名前は明らかにしていないが、トランプ大統領が表明していた香港問題での中国への対抗措置の第1弾とされる。

【方向感に欠けるが6月5日からの下落はまだ終わっていないか、当面のポイント】

【方向感に欠けるが6月5日からの下落はまだ終わっていないか、当面のポイント】

6月23日安値106.06円では5月6日安値105.98円割れをひとまず回避した。このため両安値をダブル底としてドル円が戻しに入る可能性が出てきた。しかし6月5日から6月23日までの下げ幅3.78円に対する3分の1戻し107.32円はクリアしたが、半値戻し107.95円には届かずにいる。上昇再開感が強まるには6月12日以降届いていない108円に乗せて半値戻しをクリアする必要があり、そこまで戻せないうちは6月23日からの戻りが続かずにもう一段安する可能性が残ると思う。

概ね2か月周期の底打ちサイクルでは、前回のサイクルボトムである5月6日安値から2か月目となる6月末から7月序盤にかけての間が安値形成期と想定されるので、6月23日深夜安値ではやや日柄が浅いと思う。7月4日の米独立記念日により7月3日が米国休場となるために6月の米雇用統計は7月2日夜に発表される。6月29日から7月2日までは米主要経済指標の発表も相次ぐために、足元の不況感が強まるのか、今を不況の底として復興期待が勝るのかを試すところに入る。
アフターコロナの復興期待も、感染爆発が収まり経済活動再開が続くことが前提であり、3月から4月にかけての経済活動停止のような状況に再び陥り始める場合は、楽観も大幅に後退して景気対策をさらに拡大させるような催促として株安が深刻化してゆきリスク回避による円高も再び強まる可能性もあると思う。まだ情勢は安定しないままだ。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月26日夜安値106.78円を下値支持線、6月25日夜高値107.44円から6月16日高値107.63円にかけてのゾーンを上値抵抗帯とする。
(2)6月26日夜安値割れ回避のうちは上昇余地ありとし、107.44円超えからは107.63円試しとする。107.63円を超えて続伸の場合は108円を目指す可能性があるが、107.63円以上は反落警戒圏とみる。
(3)6月26日夜安値割れからは下げ再開の可能性を優先して6月23日深夜安値106.06円試しを想定する。株安円高が同調して下げが加速する場合は6月23日深夜安値割れから105円前後を目指す流れへ向かうと考える。(了)<28日17:00執筆>

【当面の主な予定】

6/29(月)
08:50 (日) 5月 小売業販売額 前年同月比 (4月 -13.7%、予想 -11.6%)
18:00 (欧) 6月 経済信頼感 (5月 67.5、予想 80.0)
18:00 (欧) 6月 消費者信頼感確定値 (速報 -14.7)
18:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、発言
21:00 (独) 6月 消費者物価指数速報値 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.3%)
21:00 (独) 6月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 0.6%、予想 0.6%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前月比 (4月 -21.8%、予想 19.7%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前年同月比 ’(4月 -34.6%)
24:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、パネル討論に参加
28:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、IMF専務理事とのディスカッションで司会役

6/30(火)
08:30 (日) 5月 失業率 (4月 2.6%、予想 2.8%)
08:50 (日) 5月 鉱工業生産速報値 前月比 (4月 -9.8%、予想 -5.7%)
08:50 (日) 5月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (4月 -15.0%、予想 -22.7%)
10:00 (中) 6月 国家統計局製造業PMI (5月 50.6、予想 50.5)
14:00 (日) 5月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (4月 -12.9%、予想 -12.7%)
15:00 (英) 1-3月期GDP改定値 前期比 (速報 -2.0%、予想 -2.0%)
15:00 (英) 1-3月期GDP改定値 前年同期比 (速報 -1.6%、予想 -1.6%)
15:00 (英) 1-3月期経常収支 (前期 -56億ポンド、予想 -150億ポンド)

18:00 (欧) 6月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 0.1%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (4月 0.9%、予想 0.8%)
22:00 (米) 4月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (3月 3.9%)
22:45 (米) 6月 シカゴ購買部景況指数 (5月 32.3、予想 42.0)
23:00 (米) 6月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (5月 86.6、予想 90.0)
24:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
25:30 (米) ムニューシン米財務長官とパウエルFRB議長、下院金融委員会公聴会で証言

18:00 (欧) 6月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 0.1%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (4月 0.9%、予想 0.8%)
22:00 (米) 4月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (3月 3.9%)
22:45 (米) 6月 シカゴ購買部景況指数 (5月 32.3、予想 42.0)
23:00 (米) 6月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (5月 86.6、予想 90.0)
24:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
25:30 (米) ムニューシン米財務長官とパウエルFRB議長、下院金融委員会公聴会で証言

7/1(水)
休場 香港(香港特別行政区設立記念日)、カナダ(建国記念日)
07:45 (NZ) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -6.5%)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業現況 (前期 -8、予想 -31)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業先行 (前期 -11、予想 -24)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業現況 (前期 8、予想 -20)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業先行 (前期 -1、予想 -15)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (前期 1.8%、予想 1.3%)
10:30 (豪) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -1.8%、予想 1.3%)
10:45 (中) 6月 財新製造業PMI (5月 50.7、予想 50.7)
14:00 (日) 6月 消費者態度指数・一般世帯 (5月 24.0)

16:55 (独) 6月 製造業PMI改定値 (速報 46.9、予想 46.9)
16:55 (独) 6月 失業者 前月比 (5月 +23.80万人、予想 8.00万人)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 6.3%、予想 6.4%)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI改定値 (速報 46.9、予想 46.9))
17:30 (英) 6月 製造業PMI改定値 (速報 50.1、予想 50.2)
21:15 (米) 6月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (5月 -276.0万人、予想 +300.0万人)
22:45 (米) 6月 製造業PMI改定値 (速報 49.6)
23:00 (米) 5月 建設支出 前月比 (4月 -2.9%、予想 1.0%)
23:00 (米) 6月 ISM製造業景況指数 (5月 43.1、予想 49.0)
23:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、オンラインフォーラム開催
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

7/2(木)
米、債券市場は短縮取引
08:50 (日) 6月 マネタリーベース 前年同月比 (5月 3.9%)
10:30 (豪) 5月 貿易収支 (4月 88.00億豪ドル、予想 90.00億ドル)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 -2.0%)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 -4.5%)
18:00 (欧) 5月 失業率 (4月 7.3%、予想 7.6%)
21:30 (米) 5月 貿易収支 (4月 -494億ドル、予想 -520億ドル)
21:30 (米) 6月 雇用統計・非農業部門就業者数 前月比 (5月 250.9万人、予想 300.0万人)
21:30 (米) 6月 雇用統計・失業率 (5月 13.3%、予想 12.5%)
21:30 (米) 6月 雇用統計・平均時給 前月比 (5月 -1.0%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 6月 雇用統計・平均時給 前年同月比 (5月 6.7%、予想 5.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 148.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1952.2万人)
23:00 (米) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 -13.0%、予想 7.0%)

7/3(金)
休場 米国(独立記念日)
10:30 (豪) 5月 小売売上高 前月比 (4月 -17.7%)
10:45 (中) 6月 財新サービス業PMI (5月 55.0)
16:55 (独) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 45.8、予想 45.9)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 47.3、予想 47.3)
17:30 (英) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 47.0、予想 47.1)

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