ドル円、パウエルFRB議長のハト派発言を受けて値を崩す展開
〇ドル円107.44まで上昇後、米経済指標の不冴え、パウエル議長ハト派発言等で107円近辺まで反落
〇米国内の一部地域での感染拡大も重しに
〇ユーロドルは1.1294まで上昇後にリスクオフの動き強まり1.1207まで下落
〇ドル円は一目均衡表の「雲」上限を下方ブレイク
〇テクニカル、ファンダメンタルズとも下落リスクが警戒される
〇本日の予想レンジ:106.70ー107.50
海外時間の為替概況
17日(水)の外国為替市場でドル円は上値の重い展開。@米FRBによる広範な米社債を買い入れる(セカンダリー・マーケット・コーポレート・クレジット・ファシリティ=SMCCF)との発表(6/15)や、Aトランプ米大統領による総額1兆ドル規模の財政出動検討報道(6/16)、B上記@Aを受けたリスク選好ムード(リスクオンの株高→クロス円上昇→ドル円連れ高)が支援材料となり、欧州時間朝方にかけて、一時107.44まで上昇しました。
しかし、前日高値107.61をバックに戻り売りが強まると、C米テキサス州で新型コロナ感染の入院者数が11%急増したとの一部報道や、D米5月住宅着工件数(結果97.4万件、予想109.5万件)の冴えない結果、EパウエルFRB議長によるハト派的な発言(半期に一度の下院金融員会での議会証言を通じて、利上げやバランスシートの解消は当面検討することが無いと発言)、F好調な米20年債入札を受けたドル売り圧力(米長期金利低下→ドル売り)が重石となり、米国時間午後にかけては、一時107.04まで下落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間4時40分現在)では、107.06近辺で推移しております。
17日(水)のユーロドル相場は上昇後に反落。@米FRBによる景気対策(SMCCFや総額1兆ドル規模の財政出動検討)や、A上記@を受けたリスク選好ムード(リスクオンの株高→ドル売り・円売り)、B6/18−6/19に予定されているEU首脳会議(EU復興基金に進展が見られるか否か)への期待感が支援材料となり、欧州時間朝方にかけて、高値1.1294まで上昇しました。しかし、節目1.1300をバックに伸び悩むと、C新型コロナ第2波リスクへの警戒感(米テキサス州で新型コロナ感染の入院者数が11%急増したとの一部報道)や、D上記Bを目前に控えたポジション調整が重石となり、米国時間午後にかけては、一時1.1207まで反落する場面も見られました。引けにかけて小反発するも上値は重く、本稿執筆時点(日本時間4時40分現在)では、1.1234近辺で推移しております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、先週末金曜日(6/5)に記録した約2カ月半ぶり高値109.86をトップに反落に転じると、6/11には一時106.58まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や200日移動平均線、ボリンジャーミッドバンドや一目均衡表基準線を下抜けした他、バンドウォーク(ボリンジャーバンド上限に沿って上昇を続ける状態)や一目均衡表三役好転も終了するなど、テクニカル的にみて、「地合いの悪さ」を強く印象付けるチャート形状となっております(昨日は一目均衡表雲上限を下方ブレイク)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きな米国=イールドカーブ・コントロール導入の可能性もあり)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念、C朝鮮半島や中東、中印、香港を巡る地政学的リスク、D新型コロナの第2波リスク(米テキサス州や中国北京で感染拡大の兆候)、E日本経済の先行き不透明感(インフレ鈍化→実質金利上昇→円高)、F全米各地で広がる人種差別抗議デモなど、ドル円相場の下落を想起させる材料が引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。世界的な外出規制の緩和や各国中銀による景気対策を通じた景気回復期待は既に織り込み済みであり、ここから先は「米中第2波リスク到来→リスクオフ(リスクオンの巻き戻し)」に注意が必要でしょう。新型コロナウイルスを巡るヘッドライン(米国テキサス州や中国北京の続報)や、米主要経済指標の結果(新規失業保険申請件数、フィラデルフィア連銀製造業景気指数など)、欧米株や米長期金利の動向を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(節目107円を割り込む展開を想定)。
本日の予想レンジ:106.70ー107.50
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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