ドル円見通し 楽観的株高に急ブレーキ、米10年債利回りの反転下降でドル円下落(週報6月第3週)

6月11日付けの米国株安は欧州株の大幅下落等と重なってこれまでの極めて楽観的な株高基調を崩すような不安を市場全般に与えた。

ドル円見通し 楽観的株高に急ブレーキ、米10年債利回りの反転下降でドル円下落(週報6月第3週)

ドル円見通し 楽観的株高に急ブレーキ、米10年債利回りの反転下降でドル円下落




〇ドル円は先週FOMCを挟んで下落に転じ106.55の安値をつけ、107円台半ばで越週
〇FOMCでは現状の政策金利を維持、ゼロ金利解除は2023年以降になるとした
〇イールドカーブ・コントロールについては議論継続となった
〇6/11NYダウは前日比1861.82ドル安と暴落的な下げ記録、楽観的な市場にブレーキ
〇6/11の欧米株急落により債券高・長期債利回りが低下、ドル円を急落させた
〇107.54を上抜く場合、6/5夜高値からの下げ幅に対する1/3戻し107.97、半値戻し108.20を試す
〇107円割れからは下げ再開を警戒、6/12安値106.55、底割れからは105.50円前後試し
〇さらに株安等によるリスク回避での円高感が強まる場合は104円台への下落を想定

【概況】

ドル円は5月19日高値108.07円の後は凡そ10日間を107円台での持ち合いとし、6月2日夜からの米10年債利回り上昇をきっかけとして持ち合い上放れに入り、6月5日の米雇用統計が予想外に前月から改善したことで109.84円まで続伸した。しかし週明けの6月8日からは流れが一変した。6月9−10日の米連銀FOMCを控えて米10年債利回りは再び下降に転じたためドル円は支えを失って109円を割り込み、6月9日には108円割れ、さらに11日未明の米FOMCからさらに続落に入り12日午前には106.55円まで安値を切り下げた。6月2日夜に反騰入りする前の安値は5月29日の107.05円だったが、その水準を割り込み、6月8日夜高値からの下げ幅は3.29円に拡大した。
6月12日午前に安値を付けた後は4日連続の日足陰線による大幅下落が一服となり、12日夜には107.54円まで戻したが、直前4日間の下げ幅に対する3分の1戻しに届かない程度にとどまり、107.50円台では上値が重くなった状況で週を終えた。

【楽観から現実へ、FOMCの景気見通しと感染拡大の継続】

米連銀は6月9−10日の両日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)において、事実上のゼロ金利と量的緩和の維持を全会一致で決定した。また2020年の成長率見通しをマイナス6.5%、失業率見通しを9.3%とし、雇用最大化と物価目標の実現の目処が付くまで現状の政策金利を維持し、ゼロ金利解除は2023年以降になるとした。資産買い入れプログラムについては3月の臨時FOMCで増額した米国債の月額約800億ドル、政府機関債及び住宅ローン担保証券(MBS)の同400億ドルの規模を維持するとした。市場が注目していたイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)については議題に上ったものの有効性には議論の余地があるとされた。

FOMC声明発表を反映した10日の取引終了時点では、米10年債利回りは前日比0.10%低下の0.73%となったが、株式市場は反応が割れてNYダウが前日比282.31ドル安と下落する一方でハイテク株中心のナスダック総合指数は66.60ポイント高となり終値で初めて1万の大台を超え3日連続の史上最高値更新となった。この時点ではまだ株式市場も楽観的な復興期待と米連銀による金融緩和による支援を期待するスタンスだったと思われる。

しかし、6月11日にNYダウは前日比1861.82ドル安と暴落的な下げとなった。6月9日からは3日連続の日足陰線による急落だった。ナスダック総合指数は前日比527.62ポイントと急落に転じた。NYダウもナスダックも12日は暴落一服でやや戻し、米10年債利回りもやや上昇したが、6月11日付けの米国株安は欧州株の大幅下落等と重なってこれまでの極めて楽観的な株高基調を崩すような不安を市場全般に与えた。
6月11日の株安要因としては米国で経済活動再開が始まっている地域での感染者が増加し、全米の感染者数累計が200万人を超えたことが楽観的な市場にブレーキを掛けたともいわれている。

6月13日時点での新型コロナウイルス感染者数は787.5万人、死者は43.2万人に達したが、米国では214.2万人、死者11.7万人と増加している。既に感染者40万人を超えているNY州では増加ペースがかなり落ち着いているが、カリフォルニア(15万人)やテキサス(8.7万人)等は感染者増加ペースが拡大し、フロリダは急増と呼ぶべき増加となっている。黒人死亡事件による全米のデモ拡大や経済活動再開のなかで米国の感染拡大が抑制されていない現実が突きつけられている。
米疾病対策センター(CDC)のバトラー副所長(感染症担当)は6月12日に「パンデミックが終わったわけではない」「感染者が劇的に増加すれば3月に実施したような対策(経済活動や移動の規制)が再び必要になるかもしれない」と警告した。

株式市場はコロナショックにより3月に暴落したが、ナスダック総合指数が暴落幅を解消して史上最高値を更新するところまで買い進まれ、NYダウも2月天井に迫っていた。株高が米長期債利回り低下を抑え、6月5日にかけては株高債券安・長期債利回り低下が顕著となってドル円も持ち合いを上放れして110円に迫るところまで上昇した。しかし6月8日からは株高継続に反して米国債は買われて利回りは低下に転じた。楽観的株高に対するリスク回避的な長期債買いが発生したためだが、6月11日の欧米株急落により債券高・長期債利回り低下が一段と顕著となり、ドル円を急落させたといえるだろう。

【2か月サイクルでの下落、週間足で2円以上の下落】

【2か月サイクルでの下落、週間足で2円以上の下落】

ドル円の日足における底打ち周期は、昨年8月26日底以降では月末月初に安値を付ける概ね1か月前後のサイクルと、それが2セットとなる2か月前後のサイクルで推移している。3月9日安値からV字反騰した後も、4月1日安値、5月6日安値と続き、5月19日からの持ち合い上放れ直前の5月29日に1か月周期の底を付けている。また3月9日底から2か月目の5月6日安値が2か月周期の底となっている。
6月5日の戻り高値からの反落により既に5月29日安値を割り込んでいるため、次の1か月サイクル及び2か月サイクルの底形成期となる6月末から7月序盤にかけての間へ下落基調が続きやすい状況に入っていると思われる。

6月5日高値から6月12日までの下落幅は3.29円に拡大した。この急角度での下落は3月24日高値から4月1日への下落時(下げ幅は4.80円)や2月20日高値からの急落時の当初にも近い。また2019年1月3日にかけての急落時における12月の下落角度にも近い。
週間足での下げ幅は前週比2.22円だが、3月24日高値から反落した時の週足下落幅は前週比2.86円、2018年12月の下落開始時の週足下落幅は前週比2.08円、2018年1月からの下落開始時の週足下落幅は前週比2.08円、2017年1月からの下落開始時の週足下落幅は前週比2.44円。今回の週足の下落ぶりはそれらに匹敵している。

丸3日間の下げ一服で週末はやや戻したものの、こうした急落に対しては一挙に半値以上を解消する反騰により市場のセンチメントが改善しないと長引きやすいと思われる。仮に5月6日安値105.98円を割り込む場合、3月のV字反騰後の下落は5月6日までを一段目とし、6月5日からは二段目の下げへと発展してくる。その場合は一段目と同規模の下げなら104.11円、6月5日への戻り幅(3.86円)の倍返しなら102.12円と計測される。

【当面のポイント】

(1)当初、6月12日午前安値106.55円を下値支持線、6月12日夜の戻り高値107.54円を上値抵抗線とする。
(2)107.54円を上抜く場合、6月5日夜高値からの下げ幅に対する3分の1戻し107.97円から半値戻し108.20円にかけてのゾーンを試すとみるが、株式市場が急落前の楽観を回復するような情勢好転が見られなければ下げ過ぎに対するリバウンドの範囲に留まるとみて108円以上は反落警戒とする。
(3)107円割れからは下げ再開を警戒して6月12日安値106.55円試しとし、底割れからは105.50円前後、さらに株安等によるリスク回避での円高感が強まる場合は104円台への下落を想定する。(了)<14日17:45執筆>

【当面の主な予定】

6/15(月)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
11:00 (中) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 -7.5%、予想 -2.3%)
11:00 (中) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 3.9%、予想 5.0%)
13:30 (日) 4月 第三次産業活動指数 前月比 (3月 -4.2%、予想 -7.5%)
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調済 (3月 235億ユーロ)
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調前 (3月 282億ユーロ)
21:30 (米) 6月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (5月 -48.5、予想 -30.0)
24:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、オンライン討論会
29:00 (米) 4月 対米証券投資・全体 (3月 3499億ドル)
29:00 (米) 4月 対米証券投資・短期債除く (3月 -1126億ドル)

6/16(火)
休場、南ア
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合
10:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
10:30 (豪) 1-3月期 住宅価格指数 前期比 (前期 3.9%、予想 2.5%)
10:30 (豪) 1-3月期 住宅価格指数 前年同期比 (前期 2.5%、予想 8.1%)
15:00 (独) 5月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.1%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 5月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
15:00 (英) 5月 失業保険申請件数 (4月 85.65万件)
15:00 (英) 5月 失業率 (4月 5.8%)
15:00 (英) 4月 失業率・ILO方式 (3月 3.9%、予想 4.7%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見

18:00 (独) 6月 ZEW期待指数 (5月 51.0、予想 60.0)
21:30 (米) 5月 小売売上高・全体 前月比 (4月 -16.4%、予想 8.0%)
21:30 (米) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 -17.2%、予想 5.3%)
22:15 (米) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -11.2%、予想 3.0%)
22:15 (米) 5月 設備稼働率 (4月 64.9%、予想 66.9%)
23:00 (米) 4月 企業在庫 前月比 (3月 -0.2%、予想 -1.0%)
23:00 (米) 6月 NAHB住宅市場指数 (5月 37、予想 45)
23:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、半年に1度の議会証言(上院銀行委員会)

6/17(水)
07:45 (NZ) 1-3月期 経常収支 (前期 -26.57億NZドル、予想 15.85億NZドル)
08:50 (日) 5月 通関貿易統計・季調済 (4月 -9963億円、予想 -6751億円)
08:50 (日) 5月 通関貿易統計・季調前 (4月 -9304億円、予想 -1兆0518億円)
15:00 (英) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 -0.2%、予想 0.0%)
15:00 (英) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.8%、予想 0.5%)
15:00 (英) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 1.4%、予想 1.3%)
15:00 (英) 5月 小売物価指数 前月比 (4月 0.0%、予想 0.1%)
15:00 (英) 5月 小売物価指数 前年同月比 (4月 1.5%、予想 1.2%)
15:00 (英) 5月 生産者物価コア指数 前年同月比 (4月 0.6%、予想 0.5%)

18:00 (欧) 4月 建設支出 前月比 (3月 -14.1%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前年同月比 (3月 -15.4%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
21:30 (米) 5月 住宅着工件数・年率換算件数 (4月 89.1万件、予想 110.0万件)
21:30 (米) 5月 住宅着工件数 前月比 (4月 -30.2%、予想 23.5%)
21:30 (米) 5月 建設許可件数・年率換算件数 (4月 107.4万件、予想 125.0万件)
21:30 (米) 5月 建設許可件数 前月比 (4月 -20.8%、予想 18.0%)
23:00 (米) パウエルFRB議長、半年に1度の議会証言(下院金融委員会)
29:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、オンライン講演

6/18(木)
OPECプラス、共同閣僚監視委員会(JMMC)開催
EU首脳(テレビ)会議(19日まで、ブリュッセル]
07:45 (NZ) 1-3月期 GDP 前期比 (前期 0.5%、予想 -1.0%)
07:45 (NZ) 1-3月期 GDP 前年同期比 (前期 1.8%、予想 0.3%)
10:30 (豪) 5月 新規雇用者数 (4月 -59.43万人、予想 -7.50万人)
10:30 (豪) 5月 失業率 (4月 6.2%、予想 7.0%)
16:30 (ス) スイス国立銀行 政策金利 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
20:00 (英) イングランド銀行 政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
20:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 6450億ポンド、予想 7450億ポンド)
21:30 (米) 6月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (5月 -43.1、予想 -25.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 154.2万件、予想 129.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 2092.9万人、予想 1980.0万人)
23:00 (米) 5月 景気先行指数 前月比 (4月 -4.4%、予想 2.4%)
25:15 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、オンライン講演

6/19(金)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.1%、予想 0.2%)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数 生鮮食料品除く 前年同月比 (4月 -0.2%、予想 -0.1%)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数 生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (4月 0.2%、予想 0.5%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨

15:00 (英) 5月 小売売上高 前月比 (4月 -18.1%、予想 6.4%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 -22.6%、予想 -16.4%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 -15.2%、予想 4.1%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (4月 -18.4%、予想 -14.9%)
15:00 (独) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 -0.7%、予想 -0.3%)
17:00 (欧) 4月 経常収支・季調済 (3月 274億ユーロ)
17:00 (欧) 4月 経常収支・季調前 (3月 407億ユーロ)
21:30 (米) 1-3月期 経常収支 (前期 -1098億ドル、予想 -1018億ドル)
23:15 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、オンラインセミナー
26:00 (米) パウエルFRB議長とメスター・クリーブランド連銀総裁、ビデオ会議

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