ドル円見通し 欧米株急落、ドルストレートでドル高、クロス円で円は全面高
〇ドル円は昨晩一時106.56まで続落、欧米株下落にリスク回避感強まる
〇株価の下落は上昇過熱感、支援材料出尽くし感、景気見通しの悲観、2次感染リスクの顕現等が背景
〇対円以外のクロスはリスク回避のドル高が進行
〇107.23を下回る内は下値警戒、106.56割れからは一段安も
〇107.23超えからはいったんリバウンド入り、107.50-75ゾーン試しか
【概況】
ドル円は6月11日未明の米連銀FOMC後の下落で107円を割り込み、さらに11日深夜には106.56円まで安値を切り下げ、その後は107円台を回復できずにいる。
6月2日から6月5日夜にかけての間は米10年債利回りが上昇する中で5月19日夜高値108.07円を超えて上昇期に入り、6月5日夜の米5月雇用統計が予想外の改善となったことで109.84円まで続伸した。しかしその後は米10年債利回りが急低下に転じたことをきっかけにドル円も下落に転じ、8日深夜に109円割れ、9日には108円割れとなり、11日未明のFOMC声明及び議長会見後の下落で107円を割り込んだ。その後も重要イベント通過でFOMC関連を織り込み済として反騰できず、11日夜は欧米株が大幅下落する中でリスク回避感が強まって11日深夜には106.56円の安値をつけた。
【株安再燃、楽観的復興期待から現実を直視】
6月11日未明の米FOMCでは政策金利を現状維持とし、実質ゼロ金利を2022年末まで継続するとした。3月からの臨時会合で拡大してきた量的緩和における資産購入規模も継続するとした。また話題となっていたイールドカーブコントロールについても結論を出さなかったが議論されたことを示し、2020年の成長率見通しをマイナス6.5%、失業率見通しを9.3%とした。
FOMC発表当日のNYダウは前日比282.31ドル安と下落したが、ハイテク株中心のナスダック総合指数は66.60ポイント高となり終値で初めて1万の大台を超えて3日連続で史上最高値を更新した。FOMCが不況長期化の見通しを示したことへの警戒感を優先したダウと、大規模な金融緩和とゼロ金利が続くことを優先して楽観的な上昇を続けたナスダックと反応が分かれた結果となった。また為替市場ではユーロ、ポンド、円が買われてドル安となり、ドル指数は約0.4%安で3か月振り安値水準まで下げた。
しかし11日の日中からダウ先物が下げ始め、株安反応が強まり始めた。日経平均は11日に前日比652.04円安と下落、上海総合株価指数が0.8%安、さらに欧州株式市場がほぼ全面安となり英FT100が3.99%安、ドイツDAXが4.47%安となるなど軒並み4%超えの大幅下落となった。
NYダウも前日比1861.82ドル安、ナスダック総合指数も527.62ポイント安と急落した。
ナスダック総合指数が1万ポイント台に到達して史上最高値を更新し、NYダウも3月暴落をほぼ解消する程に反騰してきたが、さすがに楽観過ぎると急ブレーキがかかった。FOMCは当面金融緩和を継続するが株式市場への支援材料として出尽くし感もある中で、2020年の成長率見通しがマイナス6.5%、失業率見通しを9.3%としたことで景気回復には時間がかかるとの現実感が強まったのだろう。また米ジョンズ・ホプキンス大学の集計で米国の新型コロナ感染者数が200万人を突破したことやテキサス州など経済活動再開エリアでの感染者増加等の報道がパンデミック第二波への懸念を強めたと思われる。
欧米株安により、為替市場ではそれまでリスク選好で上昇してきたユーロやポンドが下落する等ドルストレートではドル高となった。クロス円ではリスク回避の円高が進んだ。米10年債利回りは10日が前日比0.10%低下の0.73%となり、11日は前日比0.06%低下して0.67%となった。米10年債利回りの低下のなかでもドルストレートでドル高だが、ドル円としてはクロス円全般の円高に加えて米10年債利回り低下がドル売り円買い圧力を強めることとなっている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月8日夜の急落により9日朝時点では6月5日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして9日夜から11日夜にかけての間への下落を想定した。11日深夜に続落し、その後も安値圏に止まっているが、既に前回サイクルボトムも6月4日夜安値からは5日を経過した。
6月11日午後の戻り高値107.23円を超える場合は11日深夜ないしは直前の安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして12日の日中から12日深夜にかけての間への上昇を想定するが、戻りは短命の可能性もあるのでその後に今週の安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとして16日深夜から18日深夜にかけての間への下落を想定する。
6月12日の日中に強気転換できずに安値更新が続く場合はサイクルボトム形成期の15日朝への延長か、6月9日深夜安値等を直近のサイクルボトムとして既に底割れから連続的な弱気サイクル入りしているとみて16日にかけての間への下落継続を検討する。
60分足の一目均衡表では6月8日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したがその後も両スパンの悪化が続いている。安値更新がストップすれば遅行スパンは好転しやすくなると注意し、遅行スパン好転からはリバウンド入りとみて高値試し優先とするが、遅行スパンが好転してもその後に再び悪化するところからは下げ再開へ向かうと注意する。またリバウンド入りの場合は先行スパン帯が抵抗帯となってくると思われる。
60分足の相対力指数は11日深夜への安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行型を見せているので、11日深夜安値割れ回避の内は50ポイント超えから上昇再開とみるが、再び30ポイントを割り込むところからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月11日深夜安値106.56円を下値支持線、6月11日午後高値107.23円を上値抵抗線とする。
(2)107.23円を下回る内は一段安警戒とし、106.56円割れからは106円前後、さらに105円台後半への下落を想定する。106円以下は反騰注意とするが、107円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)107.23円超えからはいったんリバウンド入りとみて107.50円から107.75円前後にかけてのゾーンを試すとみる。107.75円以上は反落警戒とし、107.50円を超えた後に107円を割り込む場合や、107.23円を超えた後に106.75円を割り込むところからは下げ再開を警戒するただし107.23円を超えた後も107円以上での推移なら週明けは高値試しへ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/12(金)
休場、フィリピン、ロシア
13:30 (日) 4月 鉱工業生産・確報値 前月比 (3月 -9.1%)
13:30 (日) 4月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (3月 -14.4%)
13:30 (日) 4月 設備稼働率 前月比 (3月 -3.6%)
15:00 (英) 4月 月次GDP 前月比 (3月 -5.8%、予想 -18.4%)
15:00 (英) 4月 鉱工業生産指数 前月比 (3月 -4.2%、予想 -15.0%)
15:00 (英) 4月 鉱工業生産指数 前年同月比 (3月 -8.2%、予想 -19.3%)
15:00 (英) 4月 貿易収支・物品 (3月 -125.08億ポンド、予想 -110.00億ポンド)
15:00 (英) 4月 貿易収支・全体 (3月 -66.76億ポンド、予想 -55.00億ポンド)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -11.3%、予想 -18.5%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -12.9%、予想 -28.8%)
21:30 (米) 5月 輸入物価指数 前月比 (4月 -2.6%、予想 0.6%)
21:30 (米) 5月 輸出物価指数 前月比 (4月 -3.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者態度指数・速報値 (5月 72.3、予想 75.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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