来週の為替相場見通し:『リスクオン相場の終焉に警戒。米国のYCC議論に注目』(6/6朝)

米5月雇用統計のポジティブサプライズが支援材料となり、週末海外時間には、3/26以来となる高値109.86まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『リスクオン相場の終焉に警戒。米国のYCC議論に注目』(6/6朝)

リスクオン相場の終焉に警戒。米国のYCC議論に注目


〇ドル円は週初米中対立、米国内のデモ拡大、度重なる108円トライの失敗で107.38に下落
〇しかしその後は主要国のコロナ復興策からの楽観ムードの広がりに株価、原油先物の続伸に108円台乗せ
〇中国のPMIの改善や週末米雇用統計の予想外の改善に109.86まで上伸108.60近辺で越週
〇ユーロドルはEU復興基金への期待感、ECBの予想上回る金融緩和パッケージ拡大に週末1.1384まで急伸
〇この間ユーロ円相場は、約1年1ヵ月ぶり高値となる124.43に上昇

〇ドル円、ユーロ共にテクニカルに強さが見られるも、ファンダメンタルズの弱さが続伸を阻むか
〇ドル円来週の予想レンジ107.50ー110.50
〇ユーロドル来週の予想レンジ1.1100−1.1400

今週のレビュー(6/1−6/5)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初107.74で寄り付いた後、@米中対立激化を背景としたリスク回避ムードの高まりや、A全米での大規模デモを嫌気したドル売り圧力、B108.00トライ失敗に伴う見切り売りが重石となり、週明け海外時間に、安値107.38まで下落しました。しかし、21日移動平均線をバックに下げ渋ると、C世界的な外出規制の緩和を受けた楽観ムードの広がりや、D欧米株および原油先物価格の上昇を受けた投資家心理の改善期待(クロス円上昇→ドル円連れ高)、E市場参加者が注目する200日移動平均線(108.30近辺)を上抜けたことに伴うショート勢のロスカット、F中国共産党機関紙「人民日報」系列の環境時報(グローバルタイムズ)による「中国企業は市場のルールに沿って外部要因の影響を受けずに米国産大豆を購入し続けている」との一部報道(※前日の大豆輸入停止報道を否定→米中対立激化懸念が後退)、

Gグローバルに広がる財政出動期待(本邦における二次補正予算や、欧州委員会によるEU復興基金、米国による給与減税など)、H中国5月財新サービス業PMI(結果55.0、予想47.3)の良好な数字、I米5月雇用統計のポジティブサプライズ(非農業部門雇用者は3ヵ月ぶりにプラス転換、失業率も大幅低下。雇用情勢に底入れ期待が強まる展開)が支援材料となり、週末海外時間には、3/26以来となる高値109.86まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、結局109.60前後での越週となっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1097で寄り付いた後、早々に安値1.1095まで軟化しました。しかし、@世界的な外出規制の緩和を受けた楽観ムードの広がりや、A欧米株および原油先物価格の上昇を受けた投資家心理の改善期待(リスク選好のドル売り・円売り)、B欧州委員会によるEU復興基金への期待感(財政出動期待)、C全米での大規模デモを嫌気したドル売り圧力、D欧州中央銀行(ECB)による予想上回る金融緩和パッケージ(パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を6000億ユーロ拡大させると共に、買い入れ期間の半年延長および保有債券の2022年末までの再投資継続)、

E上記Dを受けたユーロ圏の景気回復期待→独伊スプレッドの縮小、Fドイツ政府によるパンデミック対応財政刺激策の合意(1300億ユーロ規模の景気刺激策)が支援材料となり、週末アジア時間には、一時3/10以来となる高値1.1384(約3ヵ月ぶり)まで急伸しました。もっとも、急激に上昇した反動から戻り売りが強まると、G米長期金利の上昇(来週初よりFRBによる米債購入額がこれまでの1日45億ドルペースから40億ドルへ減少)を受けたドル高圧力も重石となり、結局1.1280前後での越週となっております(尚、この間、ユーロ円相場は、約1年1ヵ月ぶり高値となる124.43まで急伸)。

来週の見通し(6/8−6/12)

<ドル円相場>
ドル円は、5/6に記録した安値105.98をボトムに反発に転じると、今週末(6/5)にかけて一時109.86まで急伸しました(約2ヵ月半ぶり高値)。この間、一目均衡表基準線や転換線、一目均衡表雲下限および雲上限、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転(@転換線の基準線上抜け、Aローソク足の雲上限上抜け、B遅行線のローソク足上抜け)、強い上昇トレンド入りを表すバンドウォーク(ボリンジャーバンド上限に沿って上昇を続ける状態)も発生するなど、テクニカル的にみて、「地合いの強さ」を印象付けるチャート形状となっております(心理的節目110円が射程圏内に)。

但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きい米国)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感(米国のリセッション入り懸念など)、B米中対立激化懸念(今週は米中対立懸念が幾分和らぐも引き続き予断を許さない状況が継続)、C朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、D新型コロナの第2波リスク、E日本経済の先行き不透明感(第二次補正予算の発表を受けても尚デフレマインド継続→実質金利上昇→円高)など、ドル円の下落を想起させる材料は引き続き沢山残っている状況です。

以上の通り、ドル円は、テクニカル的に力強さが見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。世界的な外出規制緩和に伴う景気回復期待は既に織り込まれつつある状況であり、ここから先は一巡後の「反落リスク」により警戒が必要でしょう。米中対立激化を巡るヘッドライン(米国による対中制裁や、中国による報復措置の発動など)や、米FOMCにおけるイールドカーブコントロール=YCCについての議論(イールドカーブコントロールの導入が現実味を帯びれば、米長期金利低下→ドル売りの経路と、金融株下落→リスク回避の円買いの経路に注意)、欧米株や原油先物価格の動向を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):107.50ー110.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、3/23に記録した安値1.0637をボトムに反発に転じると、今週末(6/5)にかけて、一時1.1384(約3ヵ月ぶり高値)まで急伸しました。この間、一目均衡表基準線や転換線、一目均衡表雲下限および雲上限、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転(@転換線の基準線上抜け、Aローソク足の雲上限上抜け、B遅行線のローソク足上抜け)、強い上昇トレンド入りを表すバンドウォーク(ボリンジャーバンド上限に沿って上昇を続ける状態)も発生するなど、テクニカル的にみて、「地合いの強さ」を印象付けるチャート形状となっております。

但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、Aドイツ連邦憲法裁判所がECBの公的部門証券買い取りプログラムの一部が違憲であるとの見解を示していること、B英合意なき離脱リスクの再燃リスク、C米中対立激化懸念(リスク回避のドル買い・円買いの再燃リスク)、D朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、E新型コロナの第2波リスク、FEU復興基金承認へのハードルの高さ(オランダ・オーストリア・デンマーク・スウェーデンが反対を表明しており、6/18−6/19に開催されるEU首脳会議に向けて財政出動期待が後退する恐れあり)など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状況です。

以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的に力強さを見せつつも、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。新型コロナウイルスに係るヘッドライン(外出規制緩和後のユーロ圏の感染者数の動向など)や、欧米株及び欧米長期金利の動向(特にドイツと周辺国の利回り格差)、米FOMCにおけるイールドカーブコントロール=YCCについての議論、欧州当局者の要人発言(来週はラガルド氏やデギンドス氏をはじめ複数の欧州当局者が発言)を睨みながらも、当方ではユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1100−1.1400

注:ポイント要約は編集部

リスクオン相場の終焉に警戒。米国のYCC議論に注目

ドル円日足

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