円安余地は限定的で戻り売りが出やすい(週報5月第4週)

テクニカルなターゲットを見てみると、4月高値と5月安値の61.8%戻しが108.09(青のターゲット)となっていてほぼ先週の高値と一致を見ています。

円安余地は限定的で戻り売りが出やすい(週報5月第4週)

当面はもみあい継続。楽観論には警戒も必要

〇ドル円は先週リスク選好に一時108円に乗せるも、ワクチン期待後退、日銀会合想定内で方向感でず終了
〇市場は新型コロナ関連の好材料に飛びつき過ぎの印象
〇全国で非常事態宣言が解除されても、5割の活動状況がせいぜいか
〇株価の上値余地が限られるのであれば円安余地も限られるか
〇テクニカルには先週高値108.09が4月高値と5月安値の61.8%戻しと一致、強い抵抗に
〇サポートは一目均衡表の雲の下限106.68を意識
〇今週はドル円106.70サポート、108.10レジスタンスとする、もみあいながらも上値の重たい週か

注:ポイント要約は編集部

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初の新型コロナウイルスに対するワクチンが治験段階で効果が出たとのニュースをきっかけに株高の動きからリスクオン方向に反応しやすいスタートを切り、更に火曜には2011年以来の日銀臨時会合による追加対策を期待した円安の動きにより短期筋のストップオーダーも巻き込みながら一時108円台乗せを見ることとなりました。

しかし、ワクチンの話はまだ治験段階で実用化には時間が必要なこと、日銀会合も新たな資金繰り対策が示されたものの想定内ということから方向感は出ないままの週で終わることとなりました。非常事態宣言が4月7日に発動され、実質的にはそれ以前からリモートワーク等での自粛が続いている影響も大きいと思うのですが、新型コロナ関連の好材料に飛びつき過ぎというのが正直な印象です。

既に首都圏と北海道を除いた府県では経済活動が再開してはいますが、以前のような状況に戻るにはかなりの時間が必要です。店舗では当面はソーシャルディスタンスを保ちながら、営業時間も短縮しての営業となりますので、売上高は激減、対応コストは上昇という状況が続きます。私自身は自分の目しか信じませんので、都内で営業範囲を拡げた日本橋のデパートに様子を見に行きましたが、エレベータの定員は4人、食料品売り場でさえも営業していない店舗が目立ちます。

全国で非常事態宣言が解除されたとしても、5割の活動状況といったところでしょうし、各国との人の移動が自由になり国際線路線が再開するのはだいぶ先になるでしょう。大幅に制限を解除し感染者数が増えている米国、また時間差をもって感染者数急増の波が来ているロシアやブラジル等の状況を見る限り、どの国もそれらの国からの入国には厳しくならざるを得ません。実際に制限が緩和された各国における小売店の人出をグーグルがデータ分析していますが、5月13日時点で主要17か国では規制実施前と比較して50%とのことです。

今後徐々に回復はしていくでしょうが、コロナ対策でリモートワークが普通になり、外食の頻度等も以前に比べて減少、そして最大の問題は各国政府が様々な支援策を出しているとはいっても大きく収入が減少した人たち、また日本の通常のサラリーマンも夏のボーナスは激減ということになれば、ある程度元に戻る動きが見えてくるまで消費を縮小するであろうことは容易に想像がつきます。

毎回似たようなことを指摘していますが、現在の金融市場は現在の実体経済に対して、反応が楽観的で投資家のポジションもコロナ後への期待が先行し過ぎている気がしてなりません。先週月曜にドル建て金価格が1765ドル台に乗せ年初来高値を更新しましたが、ドル建て金価格の上昇は、株は買っているもののリスクヘッジも取りたいと考える投資家の動きによるものだと考えられます。

客観的に実体経済を見ていると個人的には現在の株価はやや背伸びしているという感覚ですし、金融市場も安定していることから、株価の上値余地が限られるのであれば円相場も円安に動く余地は限られるという見方をしたいところです。

テクニカルには大きな変化は見られませんが、日足チャートも見てみましょう。

ここ2週間ほどは緩やかな上昇トレンドとなっていますが、上述の通りで円安方向の動きは限定的という考え方から、テクニカルなターゲットを見てみると、4月高値と5月安値の61.8%戻しが108.09(青のターゲット)となっていてほぼ先週の高値と一致を見ています。

この108円台前半の水準は、4月中旬以降は何度も上値を抑えられている水準となっていることを考えると明確に上抜けするまでは強いレジスタンスとなりうる水準と見てよいかと思います。一方でサポート側は一目均衡表の雲の下限(106.68)を意識している人が多い様子です。

今週も大きな動きは期待できそうもありませんが、それぞれ上記のテクニカルなポイントを参考にして、106.70レベルをサポートに、108.10レベルをレジスタンスとするもみあいながらも上値の重たい週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

5月25日(月)
**:** シンガポール、トルコ、LDN、NY市場休場
15:00 ドイツ1〜3月期GDP改定値
17:00 ドイツ5月ifo企業景況感
28:00 カナダ中銀総裁講演


5月26日(火)
**:** トルコ市場休場
07:45 NZ4月貿易収支
15:00 ドイツ6月GFK消費者信頼感
21:45 レーンECB理事講演
22:00 米国3月住宅価格指数
22:00 米国3月ケースシラー住宅価格指数
23;00 米国5月消費者信頼感
23:00 米国4月新築住宅販売件数
26:00 ミネアポリス連銀総裁講演

5月27日(水)
15:45 フランス5月消費者信頼感
16:30 ラガルドECB総裁講演
23:00 米国5月リッチモンド連銀製造業景況指数
25:30 (セントルイス連銀総裁講演)
27:00 ベージュブック


5月28日(木)
18:00 ユーロ圏5月消費者信頼感
18:30 南ア4月PPI
21:00 ドイツ5月CPI速報値
21:30 米国1〜3月期GDP改定値
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国4月耐久財受注
23:00 米国4月住宅販売保留件数
24:00 NY連銀総裁講演
24:00 週間原油在庫統計

5月29日(金)
08:30 本邦5月東京区部CPI
08:30 本邦4月失業率・有効求人倍率
15:00 ドイツ4月小売売上高
15:45 フランス5月CPI速報値、4月PPI
15:45 フランス1〜3月期GDP改定値
16:00 トルコ1〜3月期GDP
16:00 トルコ4月貿易収支
18:00 ユーロ圏5月CPI速報値
21:00 南ア4月貿易収支
21:30 米国4月個人所得・消費支出
21:30 カナダ1〜3月期GDP
22:45 米国5月シカゴ購買部協会景況指数
23:00 米国5月ミシガン大消費者信頼感
24:00 パウエルFRB議長講演

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~Y午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月18日(月)
週明けのドル円は多少の上下は見られたものの東京前場はもみあいを続けていました。株式市場は朝方から強い地合いとなっていたことから後場に入りドル円も徐々に底固めをして海外市場に移ってからはリスクオンの動きがNY前場まで続きました。NY市場では治験段階で新型コロナウイルスに有効なワクチンが認められたことをきっかけに株式市場は大幅高となりましたが、ドル円はユーロドルが急騰したことでドル売りとユーロ円の買いに挟まれ107円台前半でのもみあいとなりました。


5月19日(火)
ドル円は東京朝方から底堅い動きとなっていましたが、欧州市場以降は金曜に臨時日銀会合が開催され追加措置を取るとの思惑から円安の動きとなりました。その後はストップオーダーも巻き込みながらNY市場の朝方には108.09レベルの高値を見ましたが、引けにかけては利食いとダウの下げにも押される動きとなりました。

5月20日(水)
ドル円は朝方こそ株価とともに買いが先行したものの後が続かず、その後は終日じり安の展開となりました。特段材料があったわけでもなく、前日の円安の動きに対する調整の下げと考えられましたが、ユーロドルでのユーロ買い・ドル売りの動きも影響していた様子でした。NY昼前には107.47レベルの安値をつけたものの、引けにかけてはやや調整の買い戻しも見られ107円台半ばで引けました。


5月21日(木)
ドル円は細かい上下はあったものの、107円台後半の狭いレンジでのもみあいを終日続けることとなりました。多くの市場参加者は金曜の日銀会合の結果を見るまで動きにくいという状況となりました。

5月22日(金)
ドル円は株価に沿った動きとなりました。朝方は小高く始まった株価とともにドル買いが先行しましたが、日銀会合の結果は想定内で材料出尽くしというところに、中国全人代で香港に国家安全法を導入するとの動きから株式市場は売りが強まり、ドル円も欧州市場序盤には107.32レベルの安値をつけました。海外市場では株式市場が反転上昇する動きに沿ってドル円も買い戻し、東京朝方の水準に戻して引けました。

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