米中対立激化に端を発したリスク回避再燃に要警戒
〇ドル円世界的外出規制緩和、米4次経済対策への期待、日銀臨時会合報道等で5/19に108.09まで上昇
〇その後株価の反落、FRBの緩和継続姿勢、米中問題等が重石となり反落、107.63で越週
〇ユーロドルは独仏欧欧州復興基金設立提案、欧州経済指標の改善等で5/21に1.1010まで急伸
〇その後は米中対立激化を嫌気したリスク回避のドル買い等で1.0901まで下げて越週
〇テクニカルにはドル円は200日線を前に反落、108円台の滞空時間も短く上値の重さ意識される
〇ファンダメンタルズもドル売り円買い材料多い
〇ドル円相場の下落が来週のメインシナリオ、予想レンジ106.00ー108.50
〇ユーロドルもテクニカル、ファンダメンタルズ両面で下落リスク警戒される
〇来週のユーロドル予想レンジ1.0700−1.1000
今週のレビュー(5/18−5/22)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初107.08で寄り付いた後、早々に安値107.04まで軟化しました。しかし、@世界的な外出規制の緩和(新型コロナウイルスに伴う都市封鎖の緩和)を受けた楽観ムードの広がりや、A米政府による第4弾景気支援策への期待感、B米主要株価指数や原油先物価格の堅調推移(投資家心理の改善→リスク選好ムード→クロス円上昇→ドル円連れ高)C日銀が5/22に臨時の金融政策決定会合を開催するとの一部報道(追加緩和期待→円売り)が支援材料となり、翌5/19には、4/17以来、約1ヵ月ぶり高値となる108.09まで急伸しました。
もっとも、200日移動平均線が走る108.30をバックに伸び悩むと、D米主要株価指数が反落に転じたことや、EパウエルFRB議長より「実質ゼロ金利を景気回復の確信が得られるまで維持する」「あらゆる手段を講じる」との発言が見られたこと、F米中対立激化を嫌気したリスク回避ムードの再燃(5/22に開幕した全人代で中国が香港の直接統治を強化する新たな治安法制の審議を開始→トランプ米大統領はこれに対し「非常に強い対応を取る」と中国を牽制)、G日銀臨時会合後の材料出尽くし感(日銀は5/22に中小企業等の資金繰りを支援するための新たな資金供給手段=総枠約75兆円規模を全会一致で決定するもサプライズは見られず)が重石となり、結局、107.63まで押し下げられての越週となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0816で寄り付いた後、早々に安値1.0799まで軟化しました。しかし、@世界的な外出規制の緩和(新型コロナウイルスに伴う都市封鎖の緩和)を受けた楽観ムードの広がりや、Aワクチン開発への期待感(臨床試験の進展を伝える一部報道)、Bドイツとフランスが欧州連合加盟国の経済再建のために5000億ユーロの基金設立を提案したこと(※欧州委員会はその後、融資と交付金による1兆ユーロ超の新型コロナウイルス復興計画を5/27に提示すると発表)、Cドイツ5月ZEW景況感調査(結果51.0、予想32.0)の力強い結果、Dユーロ圏5月消費者信頼感指数(結果▲18.8、予想▲24.0)の大幅改善、Eユーロ圏5月製造業PMIおよびサービス業PMIの良好な結果が支援材料となり、5/21には、約3週間ぶり高値となる1.1010まで急伸しました。
もっとも、5/1に記録した直近高値1.1019をバックに伸び悩むと、F米中対立激化を嫌気したリスク回避のドル買い圧力や、GECBによる追加緩和観測(ECB議事要旨で「委員会は緊急資産購入プログラムの修正やほかの手段を講じる準備が必要だ」との見解→6月ECB会合での追加緩和観測再燃→ユーロ売り)、HレーンECB専務理事兼チーフエコノミストによる「欧州圏の物価」に対する慎重な見方が重石となり、結局、1.0901まで押し下げられての越週となっております。
来週の見通し(5/25−5/29)
<ドル円相場>
ドル円は、週前半(5/19)に約1ヵ月ぶり高値108.09まで上昇するも、200日移動平均線が走る108.30をバックに伸び悩むと、週末にかけて反落しました。節目108円台での滞空時間は極めて短く、テクニカル的にみて、「上値の重さ」を印象付けるチャート形状となっております(※一目均衡表雲上限も下方ブレイク)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米間における金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きい米国)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念(WHOや台湾に続き、香港も火種となっており、トランプ米大統領は対中強硬姿勢を一段と強める展開に)、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウイルスの2次感染リスク(外出規制緩和に伴う2次感染リスク)、E日本経済の先行き不透明感(インフレ鈍化→実質金利上昇→円高)など、ドル売り・円買いを想起させる材料は引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「上値の重さ」が警戒されます。米FRBによる量的緩和継続(ドル売り要因)や、米経済指標の不冴な結果(ドル売り要因)、日本経済のリセッション懸念(デフレ懸念→実質金利上昇→円買い要因)、米中対立激化リスク(株安・円買い要因)、新型コロナウイルスの第2波リスク(株安・円買い要因)が重石になると見られ、当方では、ドル円相場の下落を来週のメインシナリオとして予想いたします(※米中対立懸念が急速に高まりつつあり、中国高官発言や、トランプ米大統領発言に要警戒)。
来週の予想レンジ(USDJPY):106.00ー108.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、5/21に約3週間ぶり高値1.1010まで急伸するも、200日移動平均線が走る1.1015や、5/1に記録した直近高値1.1019をバックに伸び悩むと、週末にかけて反落しました。心理的節目1.10台での滞空時間は極めて短く、テクニカル的にみて、「上値の重さ」を印象付けるチャート形状となっております(※一目均衡表雲下限も下方ブレイク)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、A次回ECBでの追加緩和観測、B英合意なき離脱リスクの再燃リスク、C外出規制緩和後に感染者数が再び拡大に転じる新型コロナ第2波リスク、D原油先物価格の不安定化を受けたリスク回避ムードの再燃リスク、E米中対立激化懸念など、ユーロドルの上値を抑制する材料は引き続きたくさん残っている状況です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的でも、「下落リスク」が警戒されます。新型コロナウイルスに関連したヘッドライン(外出規制緩和後のユーロ圏の感染者数の動向など)や、欧米株及び欧米長期金利の動向(特にドイツと周辺国の利回り格差)、欧州委員会による新型コロナウイルス復興計画の発表(5/27)、ユーロ圏の主要経済指標の結果(5/25のドイツifo景況感指数や、5/27のドイル小売売上高、5/29のユーロ圏消費者物価指数など)を睨みながらも、来週はユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.1000
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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