ドル円見通し 108円台到達後の失速、5月7日未明と15日夜の安値を結ぶ支持線は維持(20/5/21)

108円台を維持できずにジリ安となり、21日早朝には107.43円まで圧されている。

ドル円見通し 108円台到達後の失速、5月7日未明と15日夜の安値を結ぶ支持線は維持(20/5/21)

ドル円見通し 108円台到達後の失速、5月7日未明と15日夜の安値を結ぶ支持線は維持

〇ドル円108円台を維持できず107円台前半まで下押し
〇リスクオン型円安基調にだが、ドル高感が緩んだ状況にあり上値も重い
〇5/22日銀臨時会合も過度の期待を抱かせる追加報道に乏しい
〇未明発表の4月のFOMC議事要旨は現状の株式市場の楽観とは相いれないリスク認識示す
〇FRBの金融緩和拡大、継続姿勢はリスクオンで円安要因だがドル需給の緩和がドルの頭を抑えることにも
〇ユーロドルはコロナ対策基金創設と経済活動再開の動きにユーロ高
〇ユーロドルが5/1高値1.1016を抜けるとドル安感高まりドル円にも影響か
〇原油先物6月限は32ドル台で平穏納会、原油暴落回避で資源通貨高
〇新興国への資金も戻り始めており全般的にドル安感漂う
〇ドル円のチャートは5月入りから右肩上がりのウェッジ型中心線は現状107.65
〇当初107.43円を下値支持線、108.07上値抵抗線と置く

【概況】

ドル円は4月6日の戻り高値109.37円からの下落で4月1日安値106.91円を割り込み、3月24日高値111.71円からの下落が二段下げ型となったが、5月6日(7日未明)安値105.98円からは買い戻されて5月11日(12日未明)に107.77円を付け、13日夜に106.74円まで下げてからの反騰により19日夜には108.07円まで戻した。しかし108円台を維持できずにジリ安となり、21日早朝には107.43円まで圧されている。

欧米での感染爆発が峠を越えて経済活動再開が始まっていることでコロナショック相場から脱却してアフターコロナの復興期待相場として株高基調が続き、EUの景気対策期待でユーロが上昇、先月の当限納会でマイナス価格まで暴落したNY原油相場の持ち直しも続く中で資源通貨も上昇、新興国通貨安も一服に入ったことでドル円も緩やかなリスクオン型の円安基調に入っている印象なのだが、ドル高感が緩んだ状況にあるために上値も重いようだ。5月22日に日銀が臨時の金融政策決定会合を開催すると報じられたことが19日夜の108円台到達となる円安のきっかけでもあったが、日銀政策へ過度の期待を抱かせる追加報道には乏しいようだ。

【米FOMC議事録】

米連邦準備制度理事会(FRB)は5月21日未明に4月28日と29日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表した。ゼロ金利解除には失業率やインフレ率等での明確な基準を検討する必要があるとしてゼロ金利を成果が出るまで継続する姿勢を示した。また、新型コロナウイルスの感染拡大は「中期的な景気見通しへの重大なリスク」であり「感染拡大の再発が起きる可能性が極めて高い」「今後いくつかのビジネスモデルは残らないかもしれない」として、現在の株式市場の楽観的な上昇と比較するとかなり警戒感の強い認識を示す内容だった。また一部参加者は「一定期間に短期と中期の国債利回りに上限を設けて米国債を買い入れる案」にも言及していた。

米連銀によるゼロ金利政策が当面続き、長期債利回り上昇を抑える姿勢や金融緩和拡大姿勢を示していることは金融市場全般にとってはリスクオン要因としてドル円においてもクロス円全般の上昇=円安要因となりえるところだが、3月9日から3月24日にかけて急激な円安を発生させたようなドル需給ひっ迫感が薄れている中では米国の金融緩和姿勢がドル売り要因となりドル円の上値を抑えることともなりやすい。

【ユーロ高、豪ドル高、新興国通貨安一服】

EUでは独仏が5000億ユーロ規模のコロナ対策基金創設へ動き、経済活動再開の動きと共にユーロ高ドル安反応が見られる。2月20日から3月9日にかけては米国の感染爆発と利下げによりユーロが急伸し、その後にドル需給ひっ迫で暴落的に下げ、4月からは1.10ドルから1.07ドル台までのレンジ内で往来している中で戻している範囲だが、5月1日高値1.1016ドルを超えて続伸に入るとドル安感が強まりドル円にも影響を与える可能性があると注目する。

NY原油6月限は5月19日に納会となったが、前日比0.68ドル高の32.50ドルと平穏納会だった。5月限は4月21日の納会を控えた4月20日に前日比55.90ドル安のマイナス37.63ドルという異常な暴落を発生させて4月22日は10.01ドルで納会していた。コロナショックによる急激な経済活動停止の動きにより石油関連在庫が過剰となり貯蔵タンク確保ができないとして買い方が投げ売りした結果タダよりも安くなるという歴史的事件が発生したわけだが、その後は米政府が戦略備蓄タンク等を開放することで在庫収納が可能となり暴落商状が落ち着いた。6月限納会も平穏堅調だったこと、7月限も上昇基調を継続したことで安心感が広がっている。
原油相場の持ち直しは資源通貨高に反映されており、豪ドル米ドルは3月19日底0.5506ドルからの反騰基調が4月末以降は行き詰まっていたが5月20日にはこの間の高値を更新している。

コロナショックが新興国市場における投資マネーの逆流を発生させて新興国通貨安が急激に進んできたが、ブラジルレアルは5月8日に対ドルでの史上最安値を付けてから持ち直し、南アランドも4月6日の史上最安値からは戻して5月20日にはこの間の高値を更新している。アジア通貨もかなり上昇してきており、全般的なドル安感が強まり始めている印象だ。

【5月入りから右肩上がりのウェッジ型】

5月1日の戻り高値と12日未明の戻り高値を結んだラインを上値抵抗線とすれば19日夜高値がちょうどこのラインに抵触して失速を招いている。また5月7日未明安値と15日夜安値を結んだラインを下値支持線とすれば現状は支持線を上回っている。これら抵抗線と支持線はレンジ縮小気味となっており、やや右肩上がりのウェッジ型を形成している印象だ。
107.30円を割り込んでくると下値支持線割れが発生して安値試しへ進みやすくなるところだが、抵抗線と支持線の中心を通るラインが107.65円前後に来ており、107.65円を超えて続伸に入れば19日夜高値試しへ進みやすくなり、高値更新なら上昇=円安ドル高に弾みも付きやすくなると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月13日夜安値106.74円と14日午後安値106.76円をダブルボトムとして強気サイクル入りしてきたが、19日夜高値から20日朝へ下落してから午前にいったん戻したものの夜へ一段安となったため、19日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は20日夜から22日夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、19日夜高値を超えないうちは一段安余地ありとし、19日夜高値超えからは新たな強気サイクル入りとして22日夜から26日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では19日夜高値からの下落継続で遅行スパンが悪化している。先行スパンからも転落しやすい位置に来ている。このため遅行スパン悪化中は高値試し優先とし、先行スパン転落からは下げが加速しやすいと注意するが、遅行スパンが再び好転するところからは上昇再開とみて高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は19日夜に70ポイントを超えたが、その後の失速で50ポイントを割り込んでいる。60ポイント超えからは上昇再開とみるが、超えないうちは30ポイント前後への一段安余地ありとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月21日早朝安値107.43円を下値支持線、19日深夜高値108.07円を上値抵抗線とする。
(2)107.43円割れからは107円前後への下落を想定する。107円割れは買い戻しも入りやすいとみるが、107.43円以下の水準での推移が続くうちは22日午前へ安値試しを続けやすいとみる。
(3)107.65円超えからは上昇再開の可能性ありとし、19日夜高値を上抜く場合は108円台中盤への上昇を想定する。108.50円以上は反落注意とするが、107.65円以上での推移が続く場合は22日も高値試しを続けやすいとみる。
※ 22日には日銀の金融政策決定臨時会合が開催されるので注目したい。

【当面の主な予定】

5/21(木)
休場、スイス
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行政策金利 (現行 4.25%、予想 3.75%)
16:30 (独) 5月 製造業PMI (4月 34.5、予想 39.2)
16:30 (独) 5月 サービス業PMI (4月 16.2、予想 26.6)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI (4月 33.4、予想 38.0)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI (4月 12.0、予想 25.0)
17:30 (英) 5月 製造業PMI (4月 32.6、予想 36.0)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI (4月 13.4、予想 25.0)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 8.75%、予想 8.25%)

21:30 (米) 5月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (4月 -56.6、予想 -40.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 298.1万件、予想 240.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 2283.3万人、予想 2350万人)
22:45 (米) 5月 製造業PMI (4月 36.1、予想 38.0)
22:45 (米) 5月 サービス業PMI (4月 26.7、予想 30.0)
23:00 (米) 4月 景気先行指数 前月比 (3月 -6.7%、予想 -5.5%)
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (3月 527万件、予想 430万件)
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数 前月比 (3月 -8.5%、予想 -18.9%)
23:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、オンライン討論会
26:00 (米) クラリダFRB副議長、オンライン討論会
27:30 (米) パウエルFRB議長、新型コロナウイルスの経済的影響を巡るFRBイベントで開会挨拶

5/22(金)
中国、全国人民代表大会(全人代)開幕
日銀金融政策決定会合
07:45 (NZ) 1-3月期 小売売上高指数 前期比 (前期 0.7%、予想 -1.5%)
08:30 (日) 4月 全国消費者物価指数 前年同月比 (3月 0.4%、予想 0.1%)
08:30 (日) 4月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (3月 0.4%、予想 -0.1%)
08:30 (日) 4月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (3月 0.6%、予想 0.2%)
15:00 (英) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -5.1%、予想 15.0%)
15:00 (英) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 -5.8%、予想 -18.9%)
20:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る