ドル円見通し 株高によるリスク選好でクロス円全般、円安だがユーロ高ドル安でドル円は小動き(5/19)

15日夜に107円を割り込んだところも買い戻されて18日夜には107.50円を付けて15日の戻り高値107.43円を上抜いている。

ドル円見通し 株高によるリスク選好でクロス円全般、円安だがユーロ高ドル安でドル円は小動き(5/19)

株高によるリスク選好でクロス円全般、円安だがユーロ高ドル安でドル円は小動き

〇昨日ワクチン開発報道によるダウ急伸でリスク選好の円安となりドル円は107.50まで上昇
〇独仏がEU再建基金を新設を提案したことでユーロが対ドルで急伸
〇対ユーロのドル売りがドル円にも波及しその後は頭の重い展開となる
〇金融政策やワクチン開発への期待先行型の相場が実体にどの程度まで耐えられるかは疑問
〇5/6安値は1か月周期及び2か月周期のサイクルでの底打ちの可能性
〇107.00円を下値支持線、18日深夜高値107.50円を当初の上値抵抗線とおく

注:ポイント要約は編集部

【概況】

ドル円は4月1日と4月15日に同値でつけた106.91円のダブル底ラインを割り込んで一段安に入り、5月6日(7日未明)安値105.98円まで一段安してきたが、5月8日の米雇用統計が戦後最悪となる中でも楽観的な株高が進んだことで5月11日(12日未明)には107.77円まで戻した。戻り一巡から5月13日夜には106.74円まで下げたもののその後はしっかりし、15日夜に107円を割り込んだところも買い戻されて18日夜には107.50円を付けて15日の戻り高値107.43円を上抜いている。
先週末は107.00円まで反落して終了していたが、18日の日中はしっかりし、18日夜はワクチン開発関連報道からNYダウが急伸したためにクロス円全般でリスク選好の円安となりドル円も107.50円まで上昇したが、一方ではユーロが対ドルで急伸したことにより上値が抑えられ、深夜には107.19円まで小反落するなど上値の重さも見られた。

ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は5月18日の首脳会談で、新型コロナウイルス危機収束後の欧州再建に向けた共同提案に合意した。イタリアやスペインなど経済的打撃の大きい加盟国を救済するために5000億ユーロ規模のEU再建基金を新設するとした。同基金はEUの次期中期予算(2021年から2027年)の枠組みで設置されるという。この報道からユーロが対ドルで急伸し、ユーロ円も5月12日高値を超える一段高となったが、ドル安感を助長したことがドル円の上昇にはややブレーキとなった。

【NYダウ急伸】

米バイオ医療のモデルナ社は5月18日に新型コロナワクチン候補の初期段階の治験について参加者全員が抗体を獲得して有効性を示すデータが得られたと発表した。ワクチン早期開発への期待が広がったためにNYダウは前日比911.95ドル高と急伸した。欧州では観光地の規制解除等で経済活動が戻り始めており、深刻な感染爆発地となった米ニューヨーク州でも一部で経済活動が再開し始めたこともあり、株式市場はコロナショックからアフターコロナの復興相場期待優勢となっている印象だ。
ギリシャではアクロポリス遺跡等の観光地が凡そ2か月振りに市民へ開放された。深刻な感染爆発の発生したイタリアでも18日からほぼすべての商店で営業が再開し始め、ミラノ大聖堂やバチカン市国のサンピエトロ大聖堂も開放された。

パウエル米連銀議長の議会証言原稿公表もリスクオン心理を助長した。5月19日に米連銀のパウエル議長が上院銀行委員会で証言を行うが、その冒頭発言の原稿が公開された。議長は実質ゼロ金利を景気回復の確信が得られるまで維持するとし、新型コロナウイルス危機で悪化した景気を支えるためにあらゆる手段を講じるとの姿勢を示した。リーマンショックが米連銀等の大規模金融緩和により復興したことの再現を期待する市場心理も働いて株高及びリスクオン心理を助長しているようだ。しかし、楽観的な株高が実体経済の悪化にどこまで耐えられるかという懸念もある。またワクチン開発報道も好結果期待が先行して報道されることも多いが、パンデミックを終息させる程の効果を現実に発揮できるのかどうかはこれからだ。

【1か月周期及び2か月周期での反発局面】

5月11日高値107.77円まで1.79円の円安ドル高となった。3月24日からの下落過程では、4月1日から4月6日にかけての反発幅が2.46円であり、その時よりも戻り幅は小さい。2円前後の逆流は上昇期においては押し目、下落期においては下げ一服のリバウンドの範囲であり、今回も5月6日安値を割り込めば戻り一巡による下落再開に入ると思われるが、5月6日安値を割り込まないうちは戻り高値をさらに試しても不思議ではないところだ。
昨年8月26日底以降、安値を付けるタイミングは10月3日、11月1日、12月9日、今年に入って1月8日、1月31日、3月9日、4月1日と1か月周期でつけてきた。またこの周期が2セットで2か月周期の底打ちサイクルを形成している印象もあるが、5月6日安値も1か月周期及び2か月周期のサイクルでの底打ちと思われる。このため底割れ回避のうちは上昇余地ありということになるが、底割れの場合は次の1か月及び2か月周期の安値形成期となる5月末から6月序盤、さらに6月末から7月序盤にかけての間へと下落期が続く可能性が高まると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日未明安値をサイクルボトムとした上昇が12日未明高値で一巡して弱気サイクルに入っていたが、13日夜安値106.74円と14日午後安値106.76円をダブルボトムとして再び強気サイクルに入った。トップ形成期は19日未明までの間と想定されるので既に反落警戒期にあるが、15日夜へ106.85円まで反落してから戻り高値を切り上げているので、15日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとすれば15日午前高値を基準としてトップ形成期が20日午前から22日午前にかけての間へと延びる可能性がある。
これらを踏まえ、107円台を維持するうちは22日午前にかけての間への上昇余地ありとするが、107円割れからは弱気サイクル入りとみて19日午後から21日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では18日夜の上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いた状況を維持しているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから転落するところからは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は13日夜安値以降はややジリ高での往来相場となっているため50ポイント割れを切り返しつつ、ややジリ高での推移となっている。50ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとするが、70ポイント以上は反落注意とし、45ポイント割れからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.00円を下値支持線、18日深夜高値107.50円を上値抵抗線とする。
(2)107円台を維持するうちは上昇余地ありとし、107.50円超えからは12日未明高値107.77円試しとする。107.65円以上は反落注意とするが、107円台を維持しての推移なら20日午前にかけても高値試しを続けやすいとみる。
(3)107円割れからは弱気サイクル入りと仮定してまず5月13日夜安値106.74円試しとし、底割れからは5月7日未明安値105.98円を目指す下落期入りと考える。また107円以下での推移なら20日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/19(火)
休場、トルコ
10:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
13:30 (日) 3月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 -3.7%)
13:30 (日) 3月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -5.2%)
13:30 (日) 3月 設備稼働率 前月比 (2月 -1.8%)
15:00 (英) 4月 失業保険申請件数 (3月 1.22万件、予想 67.65万件)
15:00 (英) 4月 失業率 (3月 3.5%)
15:00 (英) 3月 失業率・ILO方式 (2月 4.0%、予想 4.4%)

18:00 (欧) 3月 建設支出 前月比 (2月 -1.5%)
18:00 (欧) 3月 建設支出 前年同月比 (2月 -0.9%)
18:00 (独) 5月 ZEW景況感・期待指数 (4月 28.2、予想 32.0)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数・年率換算件数 (3月 121.6万件、予想 90.0万件)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数 前月比 (3月 -22.3%、予想 -26.0%)
21:30 (米) 4月 建設許可件数・年率換算件数 (3月 135.3万件、予想 100.0万件)
21:30 (米) 4月 建設許可件数 前月比 (3月 -6.8%、予想 -25.9%)
23:00 (米) ムニューシン米財務長官、パウエルFRB議長、上院銀行委員会証言
23:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
27:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、オンライン討論会

5/20(水)
08:50 (日) 3月 機械受注 前月比 (2月 2.3%、予想 -6.8%)
08:50 (日) 3月 機械受注 前年同月比 (2月 -2.4%、予想 -8.9%)
15:00 (英) 4月 消費者物価指数 前月比 (3月 0.0%、予想 -0.1%)
15:00 (英) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 1.5%、予想 0.9%)
15:00 (英) 4月 消費者物価コア指数 前年同月比 (3月 1.6%、予想 1.4%)
15:00 (英) 4月 小売物価指数 前年同月比 (3月 2.6%、予想 1.6%)
15:00 (英) 4月 生産者物価コア指数 前年同月比 (3月 0.9%、予想 0.6%)

17:00 (欧) 3月 経常収支・季調済 (2月 402億ユーロ)
17:00 (欧) 3月 経常収支・季調前 (2月 338億ユーロ)
18:00 (欧) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 4月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
22:30 (英) ベイリー英中銀総裁等、財務委員会証言
23:00 (欧) 5月 消費者信頼感 (4月 -22.7、予想 -23.4)
25:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、オンライン討論
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

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