当面はもみあい継続。楽観論には警戒も必要(週報5月第3週)

先週のドル円は、実質的なゴールデンウィーク明け直後に実需のドル買いが見られたものの、その後は上値の重たいNYダウの動きとともにじり安の流れとなりました。

当面はもみあい継続。楽観論には警戒も必要(週報5月第3週)

当面はもみあい継続。楽観論には警戒も必要

〇ドル円大きくば106-108レンジ短期では107円割れの買いと107円越えの売りで膠着状態
〇原油価格上昇で株価の調整も一服
〇トランプ大統領のドル高容認発言はただの思いつきの可能性
〇市場の景気のV字回復期待には疑問、レ字回復がせいぜいか
〇輸出入、資本移動等の実需玉が減少、逆張りとスキャルピング主体の本邦個人投資家の市場占有率増加が相場膠着の原因
〇今週は106.60サポート107.60レジスタンスの横方向へのもみあいを予想

注:ポイント要約は編集部によるものです

今週の週間見通し

先週のドル円は、実質的なゴールデンウィーク明け直後に実需のドル買いが見られたものの、その後は上値の重たいNYダウの動きとともにじり安の流れとなりました。木曜欧州時間にトランプ大統領が現状ではドル高を支持するとの発言を行い、ドル買い戻しが見られましたが金曜には買われる前の水準へと押し、週末のNY市場では方向感がはっきりしないまま引ける動きとなりました。

最近のドル円は大きくは106〜108円のレンジ内での動きを続けていますが、先週後半の動きを見ていると、そのレンジの中で107円割れの買いと107円台半ばの売りとに挟まれ、方向感がはっきりしない展開を続けています。最近の金融市場は全般に落ち着きを取り戻し、経済指標は悪くて当然、コロナ後の景気回復も織り込み済みという流れが支配的です。木曜まではNYダウも上値が重たい展開となっていましたが、原油価格の上昇とともに株価も上昇に転じ、金融市場全般に落ち着いた動きながらもやや楽観的な見通しの参加者が多いという印象です。

そうした中で、トランプ大統領としては久しぶりに為替水準に関する発言を木曜に行いました。しかもこれまでと異なりドル高容認発言であったことから、発言後しばらくはドル買いの動きは見られましたが、翌日には元の水準に押す動きとなっています。先週の発言の真意はわかりかねるものの、米国としては長期的には強いドルを支持するという点は従来からの財務省を中心とした考え方なのでそのことを言ったようにも思えます。

最近のコロナショックによる経済の悪影響を考えると貿易面でドル高がメリットになるとも思えませんし、何か深い理由があるかと思いめぐらしても、どうもピンとくるような背景もありませんので、正解としてはトランプ大統領によくあるその場で頭に浮かんだことを言った程度なのかもしれません。おそらく、多くの市場参加者がどうせ思い付きだろうということで結局は24時間程度で元に戻ったというのが正しいように思えます。

さて、為替市場は方向感が無いものの、原油市場の上昇は需給回復を期待した動きですし、需給回復にはコロナショック前の経済に戻ることが前提で、おそらくは株式市場も上下を挟みながらもコロナ後のV字回復期待による株高という側面が大きいと思われます。しかし、本当にV字回復となるのかは結果を見なければわからないと同時に、個人的にはどうもそうはならないのではないか、元に戻るには年単位の時間が必要かもしれないという考えが常にあり、どうも楽観的な株式市場の動きやそれと同調するリスクオンの動きには警戒感が出てしまいます。

今回のコロナショックばかりは過去に見たことが無い相場で、経験値がほとんど役に立たないのですが、中国で起きてきたことや欧州の規制緩和後の動きを見ていると、景気のV字回復の前に、ブレグジットではないですが移行期間があり、そこで経験値を得た上での新たな景気回復という時代を迎える気がしてなりません。最近、どちらかというと悲観的な意見を書くことが多いのですが、過去や思惑を考えず現実に起きているニュースや経済指標の数字など事実にだけ目を向けるとそうした未来の可能性しか見えてきません。

単純な例では、フランスでは先週から外出制限が解除されましたが、場所によってはクラスターが発生しているようですし、ソーシャルディスタンスは重要であるとの考えからレストラン等入店できる人数を減らしたり、営業方法を変化させたりと以前の回復には程遠い状況ではないかと思います。そして、また大きな感染第2波でも来ようものなら部分的ロックダウンといったことも起こり得るでしょう。以前の状態に戻るには最低限ワクチンの完成が前提になるのではないかと思います。

つまり、V字回復したとしてもVの右側のラインは、長さが短いカタカナの「レ」のような回復を辿るのではないかというのが現時点での個人的な経済に対する見通しです。ただ、相場というのは美人投票と言われますので、多くの市場参加者が楽観的な見方をするならばそれについていくしかないというのも事実です。ついていきながらもわずかな変調の兆しが見えたら最初に降りるというスタンスは変えたくないところです。

為替相場に話を戻します。今の為替市場は経済活動が低迷しているので、実需に関しては輸出も輸入も減っているはずですし、資本の動きも定期的な投資の動きはあるにせよ、M&Aをはじめ大きな資本移動は起きにくいと言えます。そうすると、主要な為替市場参加者はFXをはじめとする投機的な動きが中心となりますが、そうしたFX取引における主役の一人が本邦個人投資家です。本邦個人投資家の基本は長期のトレードは逆張り、あるいは超短期のスキャルピングが中心です。そして取引の中心はドル円ですから、昨今の動きが鈍い理由もわからないではありません。

チャートも見てみましょう。

4月以降、特に中旬以降は動きが鈍くなってきていますが、直近の動きとしては青の水平線で示した4月高値と5月安値の半値107.68がレジスタンスの水準、そして5月安値105.99がサポートの水準ですが、チャートの形としては高値を徐々に切り下げる動きとなっていますので、ピンクのラインで示した下降ウェッジの中での動きになってきている可能性は中期的展開として考えておいた方がいいように思えます。

ただ、今週も大きな動きは期待できそうもありませんので、106.60レベルをサポートに、107.60レベルをレジスタンスとする横方向へのもみあいの週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

5月18日(月)
08:00 パウエルFRB議長TV出演
08:01 英国5月住宅価格
08:50 本邦1〜3月期GDP速報値
19:00 スペイン中銀総裁講演
23:00 米国5月NAHB住宅市場指数
27:00 (アトランタ連銀総裁講演)
**:** ユーロ圏財務相会合

5月19日(火)
**:** トルコ市場休場
07:45 NZ1〜3月期PPI
10:30 豪中銀会合議事要旨公表
15:00 英国3月失業率
18:00 ドイツ5月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏3月建設支出
18:30 南ア2月鉱工業生産
21:30 米国4月住宅着工・建設許可件数
23:00 レーンECB理事講演
23:00 ミネアポリス連銀総裁講演
23:00 パウエルERB議長議会証言(上院)
27:00 (ボストン連銀総裁講演)

5月20日(水)
15:00 英国4月CPI・PPI
16:00 トルコ5月消費者信頼感
17:00 ユーロ圏3月経常収支
18:00 ユーロ圏4月CPI
20:00 南ア2月小売売上高
22:30 英中銀総裁講演
23:00 ユーロ圏5月消費者信頼感速報値
23:30 週間原油在庫統計
25:00 (セントルイス連銀総裁講演)
27:00 FOMC議事要旨公表

5月21日(木)
08:50 本邦4月貿易収支(通関)
09:30 本邦5月日経製造業PMI
17:30 英国5月製造業・サービス業PMI速報値
20:00 トルコ中銀政策金利発表
**:** 南ア中銀政策金利発表
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:45 米国5月製造業・サービス業PMI速報値
23:00 NY連銀総裁講演
23:00 米国4月中古住宅販売
23:00 米国4月景気先行指数
26:00 クラリダFRB副議長講演
27:00 パウエルFRB議長講演

5月22日(金)
07:45 NZ1〜3月期小売売上高
08:30 本邦4月CPI
15:00 英国4月小売売上高
16:00 トルコ5月設備稼働率
16:15 フランス5月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ5月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏5月製造業・サービス業PMI速報値
20:30 ECB理事会議事要旨公表

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月11日(月)
円安の一日となりました。実質的なゴールデンウィーク明けとなった月曜は仲値に向けて実需のドル買いが水準を押し上げてのスタート。昼過ぎには押しも入りましたが、欧州市場以降は改めて円売りの動きが目立ち、短期筋のストップオーダーやテクニカルな仕掛けも巻き込んで一段のドル買いの動きとなりました。NY市場では米金利上昇も手伝って後場には107.77レベルまで上昇し高値圏での引けとなりました。

5月12日(火)
ドル円は前日の上げに対する調整の一日となりましたが、東京前場は株価の上値の重さもあってじり安で始まりました。後場にはいったん買い戻される場面も見られましたが、ユーロも含め全般的なドル売りの動きに押されたこと、またNY市場ではダウが大幅安となったことから107.12レベルまで下げての安値引けとなりました。

5月13日(水)
ドル円は東京市場では全く動かず、欧州市場に入り若干売りが先行する中でユーロドルの買いが強まる動きとともにじり安となりNY市場前場には106.75レベルの安値をつけました。しかし、ユーロが一転大幅安となるとドル円は元の水準へと買い戻されましたが、動き自体は鈍いままの一日で終わりました。

5月14日(木)
ドル円は東京市場では上値は重たかったものの目立った動きは無いまま海外市場入り。欧州市場ではトランプ大統領が現状ではドル高を支持するとの発言を受け、ユーロドルを中心にドル買いの動きとなりました。NY市場ではいったん押しも入ったもののそれまで売りが先行していたダウ先物に買い戻しが入る動きとともにリスクオンの動きとなりドル円は107.37レベルまで買い戻されて高値圏での引けとなりました。

5月15日(金)
ドル円は仲値前に実需のドル買いが出て一時107.44レベルと前日高値を上回りましたがそこまで、その後はNY市場までじり安の展開を辿りました。特に目立った材料も無く、前日のトランプ発言でドルを買っていた向きのポジション調整と見られました。一時106.86レベルの安値をつけたものの前日安値はトライしきれず買い戻し、NY市場では高値圏でのもみあいを続けましたが、引けにかけては買い戻される前の水準に押して引けました。

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