ドル円見通し トランプ大統領の強いドル支持発言で持ち直すが米中対立懸念が重石(20/5/15)

トランプ大統領がドル高を支持する発言をしたと報じられたことで再び買い戻しの動きとなり、NYダウも持ち直す中で15日未明には107.36円まで上昇した。

ドル円見通し トランプ大統領の強いドル支持発言で持ち直すが米中対立懸念が重石(20/5/15)

トランプ大統領の強いドル支持発言で持ち直すが米中対立懸念が重石

〇ドル円下げ渋る中トランプ大統領ドル高を支持する発言で107円台回復
〇物価低迷と失業増大で長期不況感強まる
〇「コロナ起源説」きっかけに米中対立再燃、激化の様相
〇当初107.00円、次いで106.74円を下値支持線、107.36円を上値抵抗線とする

【概況】

ドル円は4月1日と4月15日に同値でつけた106.91円のダブル底ラインを割り込んで5月7日未明安値105.98円まで一段安してきたが、5月8日の米雇用統計が戦後最悪となる中でも楽観的な株高が進んだことで買い戻されて12日未明には107.77円まで戻した。しかし戻り一巡後は再び失速して13日夜には106.74円まで下落した。経済活動再開を始めた各国での感染者再増加や米中対立懸念、消費者物価や生産者物価の大幅な落ち込みによる不況感に加え、米連銀総裁による不況長期化への警告か等が楽観的に戻してきたダウが3日間の続落となり、ドル円もリスク回避的な円高感が再燃していた。
5月14日の日中も軟調な推移だったが新たな安値更新を回避して下げ渋る中、5月14日放送のFOXビジネスのインタビューにおいてトランプ大統領がドル高を支持する発言をしたと報じられたことで再び買い戻しの動きとなり、NYダウも持ち直す中で15日未明には107.36円まで上昇した。

【物価低迷と失業増大で長期不況感強まる】

米労働省が5月14日に発表した週間新規失業保険申請は季節調整済みで298万1000件となり前週の317万6000人(316万9000人から上方修正)を若干下回ったものの歴史的な高水準が続いた。感染拡大による経済活動停滞が始まった3月中旬からの8週間の累計は3500万件を超えた。失業保険受給者数は2283万3000人となり前週の2237万7000人(2264万7000人から下方修正)から増加した。歴史的にも異常な高水準での失業保険申請が続いているが、5月8日の4月米雇用統計で示された失業率は14.7%だったが、先行きでは20%を超える可能性も高まってきた印象だ。

米労働省が14日に発表した4月の輸入物価指数は前月比2.6%低下となり2015年1月以来5年3か月ぶりの大きな低下だった。輸出物価指数も3.3%低下してリーマンショック直後の2008年11月の3.2%低下を超える過去最大の低下となった。5月12日の消費者物価、13日の生産者物価も大幅に落ち込んで不況感を強めているが、物価低下は米連銀の金融緩和姿勢を強めさせるものとしてドル円にとっては円高ドル安要因となる。このためこれら指標発表後にドル円はいったん反落したものの、トランプ大統領のドル高支持発言と株高に支えられて切り返している。

【米中対立懸念】

トランプ米大統領は5月14日放送のFOXビジネスのインタビューにて、新型コロナウイルスの感染が最初に広がった中国の対応の遅れが世界へのウイルス拡散につながったと中国を批判した。大統領は「習近平国家主席とは今は話をしたくない」、「発生源が中国であることに間違いはない、大きく失望した」と述べたが、感染拡大の影響で米中貿易協議の第一段階合意の実施状況についても満足できない状況とし、「報復措置として関係を完全に断ち切れば5000億ドルを節約できる」と断交の可能性にも言及した。
米中断行ということは現実的ではないが、コロナショックによる大不況の直撃は政治外交的には保護主義・排外主義を助長して国内の不満を海外へ向けようとする動きにもつながるため、昨年末に段階的合意に至った米中関係が再び悪化する可能性も高まってきた印象だ。

米議会の超党派諮問機関は新型コロナウイルスの世界的流行に乗じ中国が台湾への外交・軍事圧力を強化しているとの報告書を公表し、米共和党の上院議員団は新型コロナに関する中国側の説明次第で大統領に対中制裁を科す権限を与える法案を提出。米連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)は中国企業への投資計画を無期限に延期すると発表、米政府は国家安全保障に深刻な脅威をもたらす恐れのある外国企業の通信機器の使用を禁じる大統領令の期限を1年延長すると発表してきた。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日未明安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りしてきたが、13日早朝に107.09円まで下落したために13日朝時点では12日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は12日の日中から14日早朝にかけての間と想定されるので既に反騰注意期に入っているとした。
14日は新たな安値更新を回避して107.30円台へ反騰し、前回ボトムからも5日を経過しているので13日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は15日未明から19日未明にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるが、107円以上での推移中は上昇余地ありとし、107円割れから続落に入る場合は弱気転換注意とする。新たな弱気サイクル入りは13日夜安値割れからとするが、その場合は18日夜から20日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では14日夜の反騰で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、戻り高値をさらに切り上げないと遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化と先行スパンからの転落が重なるところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は13日夜の下落で30ポイントまで低下したがその後はボトムを切り上げて15日未明には75ポイントを超えた。50ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとするが、40ポイント割れからは下げ再開として30ポイント割れを目指すとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.00円、次いで5月13日夜安値106.74円を下値支持線、15日未明戻り高値107.36円を上値抵抗線とする。
(2)107円台を維持するうちは上昇余地ありとし、107.36円超えからは12日未明高値107.77円試しとする。107.65円以上は反落注意とするが、107円台を維持して週を終える場合は週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)107円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、106.74円割れからは底割れによる弱気サイクル入りとして5月7日未明安値105.98円を目指す下落期入りと考える。106.74円を割り込んだ後も107円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/15(金)
11:00 (中) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 -15.8%、予想 -7.0%)
11:00 (中) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -1.1%、予想 1.5%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.0%、予想 -2.2%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP速報値・季調済 前年同期比 (前期 0.4%、予想 -2.0%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP速報値・季調前 前年同期比 (前期 0.3%、予想 -1.6%)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調済 (2月 258億ユーロ、予想 170億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 貿易収支。季調前 (2月 230億ユーロ)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 -3.8%、予想 -3.8%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 -3.3%、予想 -3.3%)

21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -8.7%、予想 -12.0%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (前月 -4.5%、予想 -8.6%)
21:30 (米) 5月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (4月 -78.2、予想 -63.5)
22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -5.4%、予想 -11.5%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 72.7%、予想 64.0%)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 -0.4%、予想 -0.2%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (4月 71.8、予想 68.0)

オーダー/ポジション状況

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