ドル円見通し 買い戻し一巡で失速、107円割れの後は下げ渋る、NYダウ3日続落が重石(20/5/14)

不況感の再認識、米連銀総裁による不況長期化警告等が楽観的に戻してきたダウを失速させ、ドル円も揺れ返しの円高ドル安となった。

ドル円見通し 買い戻し一巡で失速、107円割れの後は下げ渋る、NYダウ3日続落が重石(20/5/14)

ドル円見通し 買い戻し一巡で失速、107円割れの後は下げ渋る、NYダウ3日続落が重石

〇ドル円は復興期待のリスク選好がはげ落ち反落
〇経済再開地域での感染第二波発生、米中対立、物価下落、パウエル議長の悲観観測等が重石に
〇当初の下値支持線は106.74上値抵抗線107.14

【概況】

ドル円は4月1日と4月15日に同値でつけた106.91円のダブル底ラインを割り込んで4月29日には106.35円まで下げ、5月1日に107.49円までいったん戻してから5月7日未明に105.98円まで一段安した。しかしその後は5月8日夜の米雇用統計が戦後最悪となる中でも楽観的な株高が進む中で買い戻しの動きに入り、11日に107円を超えて12日未明には107.77円まで上昇した。
コロナショックの失業急増を想定内としてコロナショックよりもアフターコロナの復興期待での株高円安だったが、経済活動再開を始めた各国での感染者再増加やコロナ問題も交えた米中対立、消費者物価や生産者物価の大幅な落ち込みによる不況感の再認識、米連銀総裁による不況長期化警告等が楽観的に戻してきたダウを失速させ、ドル円も揺れ返しの円高ドル安となった。

【米連銀総裁の警告、米中対立、物価の落ち込み】

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は13日の米ピーターソン国際研究所主催オンラインセミナーで講演し、景気の先行きについて「非常に不確実性が高く、大きな下振れリスクにさらされている」、「追加の財政刺激策がなければ景気低迷が長引く可能性がある」と警告した。「先行きが非常に不透明で大きな下振れリスクがあることを踏まえると現状は最終章ではない可能性がある」と述べた。景気対策への姿勢を強調したものではあったが、不況長期化への警告として株式市場は弱気反応となった。米中対立を煽る動きも重なったためにNYダウは前日比516.81ドル安と下落し、11日の109.33ドル安、12日の457.21ドルに続いて3日間で1,000ドル以上の下げ幅となった。楽観的な戻りを続けてきたダウの続落はドル円にとっては円高へ揺れ返しとなるきっかけとなった。

米労働省が13日に発表した4月の生産者物価は前月比1.3%低下し、現行方式で統計開始した2009年12月以降では最大の落ち込みとなった。前年同月比は1.2%低下となり2015年11月の1.3%低下以来4年5か月振りの落ち込みとなった。エネルギーと食料品を除いたコア指数は前月比0.3%低下、前年同月比は0.6%上昇にとどまった。
前日に発表された4月の消費者物価指数も前月比0.8%低下でリーマンショック時の2008年12月以来11年4か月振りの低水準となり、コア指数の0.4%低下は統計開始の1957年以来で最大の低下だった。これら物価低下はデフレ不況の長期化懸念を助長しドル売り要因となった。

米中間の対立も再び強まり市場の関心事となってきている。米議会の超党派諮問機関は新型コロナウイルスの世界的流行に乗じ中国が台湾への外交・軍事圧力を強化しているとの報告書を公表した。米共和党の上院議員団は新型コロナに関する中国側の説明次第で大統領に対中制裁を科す権限を与える法案を提出した。米連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)が中国企業への投資計画を無期限に延期すると発表した。
トランプ米大統領は国家安全保障に深刻な脅威をもたらす恐れのある外国企業の通信機器の使用を禁じる大統領令の期限を1年延長すると発表したが、これにより華為技術(ファーウェイ)等中国企業を米市場からの締め出しが続くこととなった。
トランプ政権は中国の感染発生と情報公開遅延等を非難しているが、米中通商合意の第一段階についてもコロナショックによる環境変化で合意内容が順守されるのかどうか懸念も広がっている。秋の大統領選挙も控えており、国内危機の際には排外主義・保護主義的な政治へ傾斜しやすくなることも危惧すべき状況だろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日未明安値を底とし、7日夜高値を上抜いたことで強気サイクル入りしてきたが、7日未明からは丸3日間の上昇となっていたために12日朝時点では107.50円割れからは弱気転換注意とし、107.25円割れからはいったん弱気サイクル入りとしていた。13日早朝に107.09円まで下落したため、13日朝時点では12日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとし、ボトム形成期は12日の日中から14日早朝にかけての間と想定されるので既に反騰注意期に入っているものの、107.50円以上へ回復できないうちは一段安余地ありとした。
5月13日夜に107円をいったん割り込んでから戻し、前回ボトムからも5日を経過したので、13日夜安値を直近のサイクルボトムとする。底割れ回避のうちは15日未明から19日未明にかけての間への上昇余地ありとするが、下げ渋りにとどまって底割れするところからは新たな弱気サイクル入りとして18日夜から20日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では12日夜の下落で遅行スパンが悪化し、13日夜の続落で先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、一時的に遅行スパンが好転する場合は高値試し優先とするが、その後に再び悪化するところからは一段安警戒として安値試し優先とする。上昇が勢い付くには先行スパン突破が必要と思われる。

60分足の相対力指数は13日夜の下落で30ポイントまで低下してから戻したが、50ポイント前後が抵抗となっている。50ポイント超えから続伸に入れば上昇も続きやすいが、50ポイント前後が抵抗となっているうちは40ポイント割れから下げ再開へ進みやすいと注意し、13日夜安値を割り込む場合は20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月13日夜安値106.74円を下値支持線、13日深夜の戻り高値107.14円を上値抵抗線とする。
(2)13日夜安値割れ回避のうちは上昇余地ありとし、107.14円超えからは107.50円を目指すとみるが、107.35円以上は反落注意とし、その後の107円割れからは下げ再開を疑う。ただし107.50円を超えてその後も107.35円以上での推移なら15日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)106.74円割れからは一段安入りとなるため5月7日朝安値105.98円を目指す下落を想定する。106円台序盤では買い戻しも入りやすいとみるが、106.74円を割り込んだ後も106.90円以下での推移なら15日も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/14(木)
10:30 (豪) 4月 新規雇用者数 (3月 0.59万人、予想 -57.50万人)
10:30 (豪) 4月 失業率 (3月 5.2%、予想 8.3%)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
19:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 -2.3%、予想 -3.1%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (2月 -1.6%、予想 -2.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 316.9万件、予想 250.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 2264.7万人、予想 2510万人)
26:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 6.00%、予想 5.50%)

5/15(金)
08:50 (日) 4月 国内企業物価指数 前月比 (3月 -0.9%、予想 -0.9%)
08:50 (日) 4月 国内企業物価指数 前年同月比 (3月 -0.4%、予想 -1.6%)
11:00 (中) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 -15.8%、予想 -7.0%)
11:00 (中) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -1.1%、予想 1.5%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.0%、予想 -2.2%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP速報値・季調済 前年同期比 (前期 0.4%、予想 -2.0%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP速報値・季調前 前年同期比 (前期 0.3%、予想 -1.6%)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調済 (2月 258億ユーロ、予想 170億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 貿易収支。季調前 (2月 230億ユーロ)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 -3.8%、予想 -3.8%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 -3.3%、予想 -3.3%)

21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -8.7%、予想 -12.0%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (前月 -4.5%、予想 -8.6%)
21:30 (米) 5月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (4月 -78.2、予想 -63.5)
22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -5.4%、予想 -11.5%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 72.7%、予想 64.0%)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 -0.4%、予想 -0.2%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (4月 71.8、予想 68.0)

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