ドル円見通し 107円台序盤へ失速、米雇用統計後の楽観的株高ドル高が冷やされる(20/5/13)

12日夜はNYダウの大幅下落、米消費者物価の大幅な落ち込み、米財政収支の大幅赤字などから円高ドル安となり、13日早朝には107.09円まで下落した。

ドル円見通し 107円台序盤へ失速、米雇用統計後の楽観的株高ドル高が冷やされる(20/5/13)

ドル円見通し 107円台序盤へ失速、米雇用統計後の楽観的株高ドル高が冷やされる

〇ドル円は107円台前半に反落
〇水準的には5/7からの上昇の38押し107.09あたりで止まった
〇米国立アレルギー感染症研究所長の「経済活動の性急過ぎる再開はリスク」発言がダウ下落のトリガーに
〇4月の消費者物価指数前月比0.8%低下コア指数も0.4%低下は統計開始以来最悪
〇ドル円は5/7からの反騰を継続できるか見定めが必要
〇当面の下値支持線107.00、上値抵抗線107.50

【概況】

ドル円は4月28日への下落で4月1日と4月15日に同値でつけた106.91円のダブル底ラインを割り込んで4月29日には106.35円まで下げ、5月1日に107.49円までいったん戻したものの5月7日未明には105.98円まで一段安していた。しかし5月8日夜に発表された米雇用統計が戦後最悪の失業者急増となったものの想定内として復興相場期待を優先した株高となったことでドル円もリスクオン優勢となり8日夜には7日夜の戻り高値を上抜いた。
週明け11日もドル高基調が続き、5月11日午後に107円を突破したところから買いの連鎖に入って12日未明には107.77円を付けて4月23日高値108.02円以来の水準へ戻したが、その後は失速に転じた。12日の日中は週を跨いだ連騰に対する調整的な動きだったが、12日夜はNYダウの大幅下落、米消費者物価の大幅な落ち込み、米財政収支の大幅赤字、パンデミック第二波への警戒感から円高ドル安となり、13日早朝には107.09円まで下落した。5月7日未明安値105.98円から12日未明高値107.77円までの1.79円の上昇幅に対して0.68円の下落で、凡そ38%の調整安となっている。

【アフターコロナ相場期待にブレーキ】

5月12日は米連銀当局者の発言も相次いだ。セントルイス連銀のブラード総裁は12日の講演で「経済活動停止が長引けば大規模な企業破綻が起きて不況に陥るリスクが生じる」「4−6月のGDPが約40%減少する可能性がある」とし、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は感染爆発収束後の復興については「緩やかで弱い回復」とした。ダラス連銀のカプラン総裁も「失業率が上昇し続ければ財政による追加の刺激策が必要になる」と述べた。これらはアフターコロナの復興相場期待に水を差すものだった。

米ニューヨーク州では5月15日から段階的な経済活動再開へ進むが、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は12日の上院委員会で「経済活動の性急過ぎる再開はリスク」とし、感染拡大の第ニ波への警戒姿勢を示したが、この発言からダウは下落反応を見せた。

米労働省が12日に発表した4月の消費者物価指数前月比0.8%低下したが、これはリーマンショック時の2008年12月の0.8%低下以来11年4か月振りの低水準だった。エネルギーと食料品を除いたコア指数も0.4%低下だったが、これは統計開始の1957年以来で最大の低下だった。前年同月比は季節調整前で全体が0.3%上昇だったが2015年10月の0.2%上昇以来の低水準であり、コア指数の前年同月比も1.4%上昇だが2011年4月の1.3%上昇以来9年ぶりの低水準だった。コロナショックによる消費低迷と原油暴落の影響だが、トランプ大統領が米連銀はマイナス金利を導入すべきだと述べたことも重なり、これらの数字はさらなる金融緩和及び財政政策を要求するものとしてドル安要因となった。

5月8日の米雇用統計では失業率が14.7%へ跳ね上がって戦後最悪となり、非農業部門就業者数が前月比2050万人減少となったが、感染拡大のピークを過ぎれば復興相場へ進むとの期待感から当日のNYダウは前日比455.43ドル高と上昇した。しかし週明けの11日はやや楽観し過ぎとして109.33ドル安と下落、12日も米消費者物価の低下や感染拡大の第二波への警戒から457.21ドル安と大幅続落した。経済活動再開と金融財政政策効果への期待も大きいが、ドイツや中国及び韓国で経済活動再開後に感染増加が見られることや世界全体の感染爆発ペースが鈍化しないことがやや楽観過ぎる株式市場に冷静さを求めている印象だ。ドル円も大きく反騰はしたものの安値からの上昇幅は2円に満たず、5月7日未明安値からの反騰を継続できるのかどうか、見定めが必要なところだろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日未明安値を底とし、7日夜高値を上抜いたことで強気サイクル入りしてきたが、7日未明からは丸3日間の上昇となっていたために12日朝時点では107.50円割れからは弱気転換注意とし、107.25円割れからはいったん弱気サイクル入りする可能性があるとした。13日早朝に107.09円まで下落したため、12日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は12日の日中から14日早朝にかけての間と想定されるので既に反騰注意期に入っているが、107.50円以上へ回復できないうちは一段安余地ありとみる。新たな強気サイクル入りは12日未明高値超えからとするが、その場合は15日未明から19日未明にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では8日夜からの上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを大きく上抜けたが、12日夜の下落で遅行スパンが悪化した。先行スパンへ潜り込んでいるが転落は回避している。このため遅行スパン悪化中は一段安余地ありとして安値試し優先とし、先行スパン転落からは下げが加速しやすいと注意する。遅行スパン好転からは上昇再開の可能性ありとして高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11日深夜への上昇で80ポイントに到達しているのでかなりの買われ過ぎとなり、13日早朝への下落で40ポイントをいったん割り込んだ。相場の安値更新に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行は見られないので、50ポイント台を抵抗とし、まだ一段安余地が残っている印象だ。上昇再開には60ポイントを超える必要があると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.00円を下値支持線、107.50円を上値抵抗線とする。
(2)107.50円以下での推移中は一段安余地ありとし、107円割れからは106.50円前後への下落を想定する。106.50円以下は反騰注意とするが、107円以下での推移なら14日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)107.50円超えからは60分足の一目均衡表で先行スパン突破となり遅行スパンも好転してくるので上昇再開の可能性が高まるとみて12日未明高値試しを想定する。107.70円以上は反落警戒とするが、107.50円を超えた後も107.30円以上での推移なら14日午前にかけて高値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/13(水)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI (3月 14.2、予想 10.0)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー調査-先行判断DI (3月 18.8、予想 17.0)
17:30 (英) 3月 月次GDP 前月比 (2月 -0.1%、予想 -8.0%)
17:30 (英) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.0%、予想 -2.5%)
17:30 (英) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比 (前期 1.1%、予想 -2.1%)
17:30 (英) 3月 鉱工業生産指数 前月比 (2月 0.1%、予想 -5.8%)
17:30 (英) 3月 鉱工業生産指数 前年同月比 (2月 -2.8%、予想 -9.3%)
17:30 (英) 3月 貿易収支・物品 (2月 -114.87億ポンド、予想 -100.00億ポンド)
17:30 (英) 3月 貿易収支・全体 (2月 -27.93億ポンド、予想 -25.00億ポンド

18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -0.1%、予想 -12.1%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -1.9%、予想 -11.2%)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 -0.2%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 0.7%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.0%
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前年同月比 (2月 1.4%、予想 0.9%)

5/14(木)
08:50 (日) 4月 マネーストックM2 前年同月比 (3月 3.3%、予想 3.4%)
10:30 (豪) 4月 新規雇用者数 (3月 0.59万人、予想 -45.00万人)
10:30 (豪) 4月 失業率 (3月 5.2%、予想 7.8%)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
19:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演

21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 -2.3%、予想 -3.1%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (2月 -1.6%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 316.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 2264.7万人)
26:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 6.00%)

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る