短期的には方向感が出ず、もみあい継続(週報5月第2週)

先週のドル円は、ほぼ一週間かけての行って来いという動きになりました。

短期的には方向感が出ず、もみあい継続(週報5月第2週)

短期的には方向感が出ず、もみあい継続

〇週末の雇用統計は数値自体は悪かったものの、事前予想ほどでなく、市場はリスクオンで反応
〇米企業の体力回復には時間を要しその間は雇用調整が続くと思われ楽観禁物
〇コロナ後は元の世界には戻らず、現在はニュースタンダードに向かう道筋か
〇ドル円は判断に悩むところ、106円割れは買い、107円台後半は売り
〇106.30レベルをサポート、107.30レベルをレジスタンスに

今週の週間見通し

先週のドル円は、東京市場がゴールデンウィークで休みの間はじり安の展開を辿り、その後底打ちをしてから週後半は買い戻しが目立ち、週明け早朝の動きも含めると、ほぼ一週間かけての行って来いという動きになりました。先週前半のドル円の下げは前週からのドル安の流れを継続したものとなりますが、前週木曜にいったん上げたものの絶好の売り場となったことや、火曜のドイツ連邦裁の違憲判断によるユーロ円の売りの影響も大きかったと言えます。

その後週後半は106円以下でのドル買いが見られたことから、米国雇用統計を前にポジション調整の買い戻しが出たこととなります。米国雇用統計は失業率が14.7%、NFPはー2050万と予想通りの悪い数字で、どちらも戦後見たことの無い数字です。失業率はリーマンショック後の10.0%を大きく上回り、就業を諦めた潜在的な失業者も含めると5人に1人が失業状態にあると見られています。またNFPの数字も想像できない数字となっていますが、当然実体経済に与える悪影響も計り知れず、米国だけでなく世界的な大不況状況にいると考えざるを得ません。

しかし、市場の反応は水曜のADP全国雇用者数(同じく2000万以上の減少)を見て、目が慣れていたこともあったのか、想定内とまったく悪材料と捉えない動きをしています。リーマンショックの時と異なり今回の失業者は景気が回復すればすぐに職に就けるという見方も多いですし、株式市場も超緩和状態におけるコロナ後を見越しての楽観的なリスクオンとなっていますが、一部のコロナ特需銘柄を除いて多くの企業が収益の回復の目途をつけるのはまだ先の話ですし、米国ではその間は雇用調整で体力をつけるという動きになるはずです。

しかも、最近よく聞かれるニュースタンダードがスタンダードになる、つまり今までと全く同じ社会には戻らず高額なオフィス利用の減少、外食等が減る節約の継続といった状況が今までの想定とは異なった景気回復の進展を見せるような気がしてなりません。ウォーレン・バフェット氏も航空株を売り元に戻るのには数年かかるという見方を示しましたが、個人的には元に戻るのではなく、別の世界へと進んでいく不透明な過渡期にあるのではないかという印象です。

株式市場の場合は、好悪が比較的わかりやすいのですが、為替市場は判断が悩ましいところです。今回のコロナショックによる企業収益で減少幅が大きかった地域が日本と欧州という点を見れば、円売り、ユーロ売りという考え方もシンプルなのですが、ドルの過剰な供給やシンプルに短期的な従来型リスクオフとしてドル売り・円買いという見方も可能です。今は流れについていく方がよさそうですが、おそらくは多くの市場参加者も迷っている状況で、上下ともに方向感が出にくい動きが5月相場になりそうな気がしています。

レンジとしては大きく106円割れは買い、107円台後半は売りといったところでしょうか。このあたりをテクニカルに見ていきましょう。

先週引いたピンクのラインのレジスタンスラインをまさに本日試しているところですが、レジスタンスラインの起点となっている4月高値(109.38)と先週の5月安値(105.99)のフィボナッチ・リトレースメントを計算すると38.2%戻しが107.28(青のターゲット)となっていて、短期的には107円台前半がレジスタンスとなりやすい水準であると見てよいでしょう。

また、先週106円割れの底堅さは実感していますので、今週のところは106円台前半では買いたい向きが出てくることも予想ができます。今週は106.30レベルをサポートに、107.30レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

5月11日(月)
08:50 日銀会合主な意見公表
16:00 トルコ2月失業率
19:45 メルシュECB理事講演

5月12日(火)
10:30 中国4月CPI・PPI
10:30 豪州4月企業景況感
21:30 米国4月CPI
22:00 (セントルイス連銀総裁講演)
23:00 フィラデルフィア連銀総裁講演

5月13日(水)
06:00 クリーブランド連銀総裁講演
08:01 英国4月小売売上高
08:50 本邦3月貿易収支(国際収支)
09:30 豪州5月消費者信頼感
11:00 NZ中銀政策金利発表
16:00 トルコ3月経常収支
17:30 英国1〜3月期GDP速報値
17:30 英国3月貿易収支、鉱工業生産
18:00 ユーロ圏3月鉱工業生産
21:30 米国4月PPI
23:30 週間原油在庫統計

5月14日(木)
08:01 英国4月住宅価格
10:30 豪州4月失業率
15:00 ドイツ4月CPI
16:00 トルコ3月鉱工業生産
19:30 英中銀総裁講演
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国4月輸入物価指数
24:15 カナダ中銀総裁講演

5月15日(金)
11:00 中国4月鉱工業生産、小売売上高
15:00 ドイツ1〜3月期GDP速報値
15:45 フランス4月CPI
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP改定値
18:00 ユーロ圏3月貿易収支
21:30 米国4月小売売上高
21:30 米国5月NY連銀製造業景況指数
22:15 米国4月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国5月ミシガン大消費者信頼感速報値
23:00 米国3月企業在庫

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月4日(月)
週明けの株式市場は動きが鈍く、ドル円もNY市場までは動きが見られませんでしたが、NY前場にはユーロドルの売りとともにドル買い戻しの場面が見られました。しかし後場に入りユーロ円の売りに押され、ドル円は安値圏での引けとなりました。

5月5日(火)
ドル円は株高の動きに引っ張られて前日の下げを戻す動きを見せました。しかし、ドイツ連邦裁がECB債券購入プログラムを一部違憲と判断したことからユーロが大きく売られ、それに追随してユーロ円、ドル円と波及し、3主要通貨ペアともに前日安値を割り込んでの引けとなりました。

5月6日(水)
ドル円は株安の動きとともにアジア市場前場にストップも巻き込んで106円台前半へと水準を下げました。その後欧州市場ではユーロ円が2017年安値を割り込む展開となり、ドル円もその動きに押され、NY市場では116円割れと東京3連休はドル安・円高が目立つこととなりました。

5月7日(木)
東京市場休み明けのドル円はNY市場昼前までは堅調な株価とともにリスクオン、週前半の下げに対する利食いも手伝ってじり高の展開を辿りました。NY前場には106.65レベルの高値をつけましたが、米金利が低下する動きとともにドル売りへと転換し106.21レベルまで下押しし安値圏での引けとなりました。

5月8日(金)
ドル円は株高の動きを見ながら底堅い動きながらもNY市場に入るまでは106円台前半の狭いレンジの中での動きに終止していました。NY市場に入り発表された雇用統計は予想通りの大幅な悪化となりましたが、予想の範囲内だった安心感から最初の反応はドル買いとなりました。その後は米金利の低下と上昇に沿って、ドル売りとドル買い直しという動きを見せての週末大引けとなりました。

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