来週の為替相場見通し:『米中対立激化懸念とスタグフレーション発生リスクが相場の重石に』(5/9朝)

ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。

来週の為替相場見通し:『米中対立激化懸念とスタグフレーション発生リスクが相場の重石に』(5/9朝)

米中対立激化懸念とスタグフレーション発生リスクが相場の重石に

今週のレビュー(5/4−5/8)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初106.82で寄り付いた後、早々に、週間高値107.08まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線に続伸を阻まれると、@新型コロナウイルスを巡る米中対立懸念の高まり(対主要通貨でのドル高→クロス円下落→ドル円連れ安)や、A米経済指標の冴えない結果、B本邦大型連休期間中のフラッシュクラッシュ発生への警戒感、Cテクニカル的な地合いの弱さ(強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転の成立+4/29に記録した直近安値106.36の下方ブレイク)、D米主要株価指数の冴えない動きが重石となり、5/6には、3/17以来、約1ヶ月半ぶり安値となる105.98まで下げ幅を広げました。

もっとも、その後は、E本邦大型連休明けに伴う需給の回復(ドル買い・円売り)や、F原油先物価格の堅調推移、G米中両国の通商担当者が早くて来週にも電話協議を行うとの一部報道(米中対立懸念が緩和するとの期待感。※結果的には5/8に中国の劉鶴副首相と米国のライトハイザー通商代表部代表およびムニューシン米財務長官が電話協議を実施)、H警戒されていた米雇用統計を通過したことに伴う材料出尽くし感(※失業率は戦後最高水準へと悪化。非農業部門雇用者数も過去最大の減少幅を記録。但し、発表後は材料出尽くし感からショートカバーが優勢に)、IFRBによる「来週から債券買い入れ額を1日あたり80億ドルから70億ドルに減額する」との発表を受けた米長期金利の上昇が支援材料となり、週末にかけては、一時106.75まで反発しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、結局106.68での越週となっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週間高値1.0980で寄り付いた後、@ユーロ圏経済指標の冴えない結果や、A新型コロナウイルスを巡る米中対立懸念の再燃リスク(リスク回避のドル買い)、Bドイツ連邦憲法裁判所による「ECBの量的緩和政策が一部違憲」との判断に端を発したECBの金融政策先行き不透明感、C欧州委員会による「ユーロ圏GDPや失業率見通しの大幅な下方修正」が重石となり、週後半にかけては、4/24以来、約2週間ぶり安値となる1.0766まで急落しました。しかし、直近安値1.0726をバックに押し目買い意欲が強まると、D欧米株の底堅い動きや、E中国の劉鶴副首相と米国のライトハイザー通商代表部代表およびムニューシン米財務長官の電話協議実施、F上記DEを受けたリスク回避ムードの後退が支援材料となり、結局1.0838まで持ち直しての越週となっております。

来週の見通し(5/11−5/15)

<ドル円相場>
ドル円は、4/30に記録した高値107.51をトップに反落に転じると、今週半ば(5/6)には一時105.98まで下落しました(3/17以来となる安値)。この間、一目均衡表転換線や一目均衡表雲下限を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や移動平均線のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、「上値の重さ」を印象付けるチャート形状となっております(※米雇用統計後に反発に転じた際も、一目均衡表雲下限106.70や一目均衡表転換線106.74に続伸を阻まれ結局失速)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きい米国)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念(中国の劉鶴副首相と米国のライトハイザー通商代表部代表およびムニューシン米財務長官は5/8に電話協議を実施するも、先行き不透明感は根強い)、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウイルスの2次感染リスク(外出規制緩和に伴う2次感染リスクの高まり)、E原油先物価格の不安定化(5/19の納会に向けて再び下落するリスク)、F日本経済におけるリセッション懸念(緊急事態宣言延長に伴う実体経済への更なる下押し圧力)、G過剰流動性と物不足に伴う世界的なスタグフレーション発生リスク(景気後退+物価上昇)など、ドル売り・円買いを想起させる材料は引き続き沢山残っている状況です。

以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。米FRBによる量的緩和継続(ドル売り要因)や、米経済指標の不冴な結果(ドル売り要因)、本邦経済のリセッション懸念(円買い要因)、原油先物価格の不安定化(株安・円買い要因)、米中対立激化懸念(株安・円買い要因)、スタグフレーション発生懸念(金融政策の舵取りが一段と難しくなるリスク)が重石になると見られ、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(来週は米小売売上高や鉱工業生産、消費者物価指数、生産者物価指数、NY連銀製造業景況指数など一連の米経済指標の結果に注目。またFRBによる資産買入額の縮小や米国債入札の結果を受けた米長期金利の反応にも警戒)。

来週の予想レンジ(USDJPY):105.00ー108.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、5/1に記録した約1ヶ月ぶり高値1.1019をトップに反落に転じると、週後半にかけて、約2週間ぶり安値1.0766まで下落しました。この間、一目均衡表基準線や一目均衡表転換線、ボリンジャーミッドバンドを下抜けするなど、テクニカル的に見て「地合いの弱さ」を印象付けるチャート形状となっております(※週末にかけて持ち直した際にも、一目均衡表基準線やボリンジャーミッドバンドに続伸を阻まれ結局失速)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感(欧州委員会はユーロ圏GDPや失業率見通しを軒並み下方修正)や、AECBによる金融緩和長期化観測(4/30に開催されたECB理事会やラガルド総裁記者会見で追加緩和拡大の可能性を示唆。また、ドイツ連邦憲法裁判所による「ECBの量的緩和政策が一部違憲」との判断に端を発したECBの金融政策先行き不透明も相場の重石)、B英合意なき離脱リスクの再燃リスク、C新型コロナウイルスの感染拡大リスク(外出規制緩和後に感染者数が再拡大に転じる2次リスク)、D原油先物価格の不安定化を受けたリスク回避ムードの再燃リスク(対ユーロでのドル買い・円買い)など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚たくさん残っている状況です。

以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的でも、「下落リスク」が警戒されます。新型コロナウイルス関連のヘッドライン(外出規制緩和後に感染者数が再度拡大に転じるリスク)や、欧米株及び欧米長期金利の動向(特にドイツと周辺国の利回り格差)、欧州の主要経済指標の結果(ドイツやユーロ圏の第1四半期国内総生産など)を睨みながらも、来週はユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.1000

米中対立激化懸念とスタグフレーション発生リスクが相場の重石に

ドル円日足

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