【概況】
ドル円は3月9日安値101.23円からV字反騰に入り、先週末の3月21日未明には111.50円まで上昇した。その後も24日未明高値111.59円、25日未明高値111.71円へと高値をわずかずつ切り上げ、高値更新後の反落時につける安値も3月20日安値109.33円、23日安値109.66円、24日安値110.08円と切り上げて上昇基調を維持してきた。
しかし25日夜への上昇では新たな高値更新へ進めずに26日朝は110円台後半へ失速気味となっている。
ドル円の3月9日からの急騰は金融市場全般の動揺により手元流動性確保のためにドルが全面高となったことが背景だったが、3月3日と16日の米連銀による連続利下げと量的緩和拡大でやや落ち着き、3月23日には米連銀が米国債などの資産を「必要な量」買い入れるとして無制限の量的金融緩和方針を示したことから世界的な金融緩和拡大がさらに進むとしてドル買いも一服している。
3月24日にはトランプ政権による経済対策が当初の1兆ドルに数千億ドル規模が上乗せされて議会での可決が近づいているとの報道からNYダウが前日比2112.98ドル高と1日の上昇幅としては過去最大記録を更新し、3月25日も前日比495.64ドル高と続伸した。NYダウの2日連続上昇は2月上旬以来1か月振りで株式市場も落ち着きを取り戻しつつある印象だが、25日の日中には1300ドルを超える上昇場面や前日比マイナス圏まで下げる場面もあるなど乱高下に過ぎない。
米政府と与野党議会指導部は3月25日未明に新型コロナウイルスの感染拡大への対応として総額2兆ドル規模の経済対策案で合意し、経済対策としては過去最大規模となったが、感染拡大もまだピークが見えないために金融市場全般の不安心理は解消していないと思われる。
新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、3月26日朝時点の世界感染者数は46万8千人、死者は2万1千人を超えた。米国も感染者数6万6132人で前日から1万人強の大幅増で死者は167人増えて947人となっている。イタリアの死者は7503人、スペインの死者は3647人に急増して中国の3285人を超えた。欧州全域への感染爆発と米国の感染ピークはまだ先と思われ、中南米やアジア等を含めた世界規模の感染拡大ピークが見えるのはまだまだ先と思われる。
【ドル全面高が一服】
メジャー通貨の加重平均であるドル指数は2月20日高値99.92から3月9日安値94.63まで急落し、その後のV字反騰で3月20日には102.99まで大上昇したのだが、3月20日から25日まで日足は4日連続で反落している。
3月9日への急落は感染拡大対策での米連銀の利下げや金融緩和政策の拡大を想定して利下げ余地が相対的に大きかった米ドルが既に実質マイナス金利状態にあるユーロ等に対して売られる状況であり米10年債利回りの急低下を反映した動きであった。
3月9日からは米10年債利回りが反騰に転じ、米長期債までも換金売り対象となる中で手元流動性確保のためのドル資金需要が高まってドル全面高の様相となり、3月19日はほぼ連日の日足陽線での急上昇となった。
急騰一巡でここ4日間は下落しているが、G7を中心としたドル資金供給協調や日米欧の量的緩和政策での流動性供給が効果を上げてドル買いの殺到が緩和したことを反映している。
ドル円はドル指数の動きと同調して円高ドル安となり2月20日から3月9日へ急落したが、3月9日からのドル指数急騰とともにV字反騰した。ドル指数のドル円の上昇は3月20日から鈍ったものの、3月25日未明までわずかずつ高値を切り上げてきた。ドル買いの殺到は一服してドル指数は下げ始めたものの、株の反騰期待とドル買い一服による米長期債利回り上昇も落ち着いたことでやや円安が優勢だったということだろう。しかし上値の重さも意識されてきているため、きっかけ次第ではV字反騰に対する揺れ返しの反落にも注意がいるところと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月16日深夜安値から4日目となる3月20日午後安値で直近のサイクルボトムを付け、3月20日朝高値を上抜いたことで新たな強気サイクルに入った。今回の高値形成期は25日朝から27日朝にかけての間と想定されるが、25日未明までは高値更新が続いてきたものの25日深夜には高値更新できずに失速しているため、すでに25日未明高値でサイクルトップを付けたと思われる。ボトム形成期は25日午後から27日午後にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあることと、3月20日以降はレンジ縮小のウェッジ型三角持ち合いの様相のため、25日未明高値を上抜くところからは新たな強気サイクル入りとみて28日未明から31日朝にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では3月20日以降は上昇力が鈍ってのウェッジ型三角持ち合いのために遅行スパンは実線と交錯を繰り返しており、先行スパンからの転落を回避してきたが26日朝時点では先行スパンから転落しやすい位置にある。先行スパン転落からはいったん調整局面入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、25日未明高値を超える反騰からは一段高入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数はウェッジ型の持ち合いで推移しているため50ポイントを挟んで60ポイント台前半から40ポイント台序盤までの範囲で往来してきたが、26日朝時点では40ポイント割り込みつつあるので30ポイント割れへ進みやすい状況と思われる。上昇再開には60ポイントを超え、その後も50ポイント以上での推移に入る必要があると思われる。
以上を踏まえて当面の見通しを示す。
(1)当初、3月24日午前安値110.08円を下値支持線、25日未明高値111.71円を上値抵抗線とする。
(2)111.71円を超えないうちは一段安余地ありとし、110.08円割れからは108円前後への下落を想定する。108円以下は反騰注意とするが、110円以下での推移なら27日の日中も安値試しを続けやすいとみる。
(3)111.71円超えからは新たな強気サイクル入りとみて112.50円、次いで113円台を目指す流れとみる。そのためにはドル全面高となるようなドル指数の上昇、クロス円での円高を上回るドル高感が必要と思われる。
【当面の主な発表予定】
3/26(木)
16:00 (独) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 9.8、予想 7.7)
18:30 (英) 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.9%、予想 0.2%)
18:30 (英) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 0.8%、予想 0.8%)
18:30 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 1.6%、予想 -0.2%)
18:30 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (1月 1.2%、予想 1.1%)
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 6350億ポンド)
21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP確定値 前期比年率 (改定値 2.1%、予想 2.1%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP個人消費確定値 前期比 (改定値 1.7%)
21:30 (米) 10-12月期 コアPCE確定値 前期比 (改定値 1.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 前週分 (前週 28.1万件、予想 100.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 前週分 (前週 170.1万人、予想 179.1万人)
3/27(金)
08:30 (日) 3月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (2月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 個人所得 前月比 (1月 0.6%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 個人消費・PCE 前月比 (1月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 2月 PCEデフレーター 前年同月比 (1月 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 2月 PCEコア・デフレーター 前月比 (1月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (1月 1.6%、予想 1.8%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 95.9、予想 92.5)
オーダー/ポジション状況
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