ドル円見通し ドル高円安基調続くが上昇力鈍る(20/3/24)

3月20日に小反落した時の安値109.33円からは底上げとなり、その後の上昇で24日未明には111.59円まで戻り高値を切り上げた。

ドル円見通し ドル高円安基調続くが上昇力鈍る(20/3/24)

ドル円見通し ドル高円安基調続くが上昇力鈍る

【概況】

ドル円は2月20日高値112.21円から3月9日安値101.23円までの間はリスク回避の円買い戻しにより急激な円高となり、この間の下げ幅は10.98円に拡大したが、3月9日からは一転して投資マネーのドルへの還流により円安ドル高となり、3月20日には111.50円まで戻して2月20日高値へ迫って先週を終えた。新型コロナウイルスの感染が欧米で爆発的に拡大し始めて3月11日にはWHOがパンデミック宣言に踏み切ったこと、3月12日に米国が欧州からの入国禁止を発表するなど全世界的な渡航規制が拡大し、各国で非常事態や緊急事態の宣言が相次ぎ、外出制限等による経済活動の停滞が深刻さを増す中で手元流動性確保・現金化が一挙に押し寄せてドルが全面高となってきた。

米連銀は3月3日にリーマンショック以来となる臨時FOMCを開催して緊急利下げに踏み切り、その後も各国が利下げや量的金融緩和を相次いで決定する中でもドル高の勢いは止まらなかった。
週明けの3月23日は午後にかけて109.66円まで下げたものの3月20日に小反落した時の安値109.33円からは底上げとなり、その後の上昇で24日未明には111.59円まで戻り高値を切り上げた。

【米連銀、無制限の国債購入へ】

米連銀FRBは3月23日、臨時の連邦公開市場委員会(FOMC)を開いて米国債などの資産を「必要な量」買い入れることを決定した。臨時のFOMCは3月3日から三度目となる。必要な量を購入するということは無制限の量的金融緩和を行うことを意味する。FOMCの声明では「経済が深刻な混乱に直面することが明確になった」、「失業と所得の減少を抑える上で果敢な取り組みが必要」とし、米財務省と連携して企業向けに最大3000億ドルの資金供給制度も新たに設ける事も決定した。
米連銀FRBは、3月3日と3月16日に緊急利下げを二度決定、既に実質ゼロ金利とし、資産購入による量的緩和政策でも米国債を5000億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を2000億ドル買い入れる事を決定してきた。また3月17日にはコマーシャルペーパー(CP)購入による企業支援も表明してきた。今回は買い入れの対象として商業用不動産担保証券(CMBS)も加え、前回の決定における買い入れ枠の上限も撤廃したこととなる。

米連銀による無制限の量的金融緩和方針を受けて米10年債利回りは前日比0.06%低下の0.79%となったが、NYダウは米連銀の発表を受けても反騰できずに前日比582.05ドル安で終了し、終値は1万8591.93ドルで2016年11月以来3年4か月振りに1万9000ドルを割り込んだ。
米国以外でもドイツや日本が赤字国債導入検討と報じられるなど世界的な金融緩和政策が相次いでいる。リーマンショックによる金融恐慌不安が強まった際に主要国が利下げと大規模な量的緩和を一斉に開始した時のスケールを超えるような金融緩和体制となり始めたが、それでも感染爆発による不況入りは避けられないとして株式市場は悲観的な反応にとどまっている。

新型コロナウイルスの感染者は世界全体で37万8392人、死者は1万6490人に増加しているが、最近の拡大は指数関数的な急増であり、感染のピークや終息への予想が立たない状況にある。中国の感染者の増加は頭打ち傾向にあるとはいえ、香港紙報道では症状のない4万人を超える感染者はカウントされていないとされる。

イタリアは感染者が6万3927人死者6077人となり、死亡率も1割に迫っている。米国は感染者4万3449人で前日から1万人近い急増となり死者も545人となった。スペインは非常事態宣言を延長しているが感染者3万5136人死者2311人となっている。欧米の感染爆発のピークはこれからであり、その後には南米や東南アジア、中東やアフリカ等へと爆発エリアが拡大してゆくものと懸念される。
3月26日に発表予定の米週間失業保険申請者数(前週分)は市場予想が110万件となり、3月19日発表分の28.1万件から3倍以上に増える見込みとなっている。3月24日は欧州のPMIも発表されるが、3月の経済統計からは感染爆発の影響が顕著になってくるため、市場の悲観をこれまで以上に助長しやすくなると懸念される。

【ドル円の上昇力鈍ったか】

ドル円は3月20日高値111.36円の後は21日未明高値111.50円、24日未明高値111.59円と高値を切り上げているが、高値更新幅はわずかであり、3月16日夜からの上昇力が鈍っている印象だ。3月20日安値109.33円から23日安値109.66円へと底上げは継続しているので上昇トレンドは維持されているので、上値抵抗線も下値支持線もいずれもやや切り上がるウェッジ型三角持ち合いの様相といえる。

高値更新から上昇に勢いがついてゆくケースも考えられるが、3月23日安値を割り込む場合はウェッジ型三角持ち合いからの下放れとしていったん大きめの調整安に入る可能性がある。2週間の暴落的な下げからV字反騰を2週間続けてきたわけだが、金融市場全体が動揺・波乱状態にあるため、手元流動性確保のドル買いがいったん落ち着けば円高への揺れ返しもあり得ると注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月16日深夜安値から4日目となる3月20日午後安値で直近のサイクルボトムを付け、3月20日朝高値を上抜いたことで新たな強気サイクルに入った。高値形成期は25日朝から27日朝にかけての間と想定されるが、3月23日午後安値109.66円を割り込む場合は底上げパターンが崩れるので弱気サイクル入りと仮定して25日午後から27日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では3月20日以降は上昇力が鈍ってのウェッジ型三角持ち合いのために遅行スパンは実線と交錯を繰り返しているが、先行スパンからの転落は回避されている。先行スパンへ潜り込んでも切り返して上抜けるうちは上昇余地ありとするが、先行スパン転落からはいったん調整局面入りとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は3月20日から21日、23日への高値更新に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行となっているため、70ポイントを超える場合は上昇再開とするが、40ポイント割れからは大きめの調整安入りとみて30ポイント割れへの下降を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面の見通しを示す。
(1)当初、3月23日安値109.66円を下値支持線、24日未明高値111.59円を上値抵抗線とする。
(2)109.66円以上での推移中は上昇余地ありとし、24日未明高値更新からは112円台後半への上昇を想定する。113円以上は反落注意とするが、110.50円以上での推移なら25日の日中も高値試しへ進みやすいとみる。
(3)109.66円割れからはいったん調整安入りとみて107円台後半への下落を想定する。108円以下は反騰注意とするが、110円以下での推移なら25日の日中も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な発表予定】

3/24(火)
14:00 (日) 1月 景気先行指数CI・改定値 (速報 90.3)
14:00 (日) 1月 景気一致指数CI・改定値 (速報 94.7)
17:30 (独) 3月 製造業PMI速報値 (2月 48.0、予想 39.6)
17:30 (独) 3月 サービス業PMI速報値 (2月 52.5、予想 42.3)
18:00 (欧) 3月 製造業PMI速報値 (2月 49.2、予想 39.0)
18:00 (欧) 3月 サービス業PMI速報値 (2月 52.6、予想 39.0)
18:30 (英) 3月 製造業PMI速報値 (2月 51.7、予想 45.0)
18:30 (英) 3月 サービス業PMI速報値 (2月 53.2、予想 45.0)

22:45 (米) 3月 製造業PMI速報値 (2月 50.7、予想 42.8)
22:45 (米) 3月 サービス業PMI速報値 (2月 49.4、予想 42.0)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (1月 76.4万件、予想 75.0万件)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数 前月比 (1月 7.9%、予想 -2.0%)
23:00 (米) 3月 リッチモンド連銀製造業指数 (2月 -2、予想 -15)

3/25(水)
06:45 (NZ) 2月 貿易収支 (1月 -3.40億NZドル、予想 5.50億NZドル)
18:30 (英) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 -0.3%、予想 0.3%)
18:30 (英) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.8%、予想 1.7%)
18:30 (英) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 1.6%、予想 1.5%)
18:30 (英) 2月 小売物価指数 前月比 (1月 -0.4%、予想 0.6%)
18:30 (英) 2月 小売物価指数 前年同月比 (1月 2.7%、予想 2.6%)
18:30 (英) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 0.7%、予想 0.5%)
21:30 (米) 2月 耐久財受注 前月比 (1月 -0.2%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 2月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (1月 0.8%、予想 -0.4%)
22:00 (米) 1月 住宅価格指数 前月比 (12月 0.6%、予想 0.4%)

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