ドル円、米財政赤字拡大懸念を通じた米長期金利の上昇を受けて108円台半ばへ急伸
海外時間の為替概況
18日(水)の外国為替市場でドル円は急伸。@新型コロナウィルスの感染拡大を受けたグローバルなリスク回避ムード(株式市場の不安定化)や、A世界的な大規模金融緩和及び景気対策を受けても尚収束の兆しが見えないことに伴う不安感、B上記@Aを受けた投資家心理の悪化(失望売り)が重石となり、アジア時間には、一時106.76まで下げ幅を広げました。しかし、前日発表された、C米FRBによるコマーシャルペーパーファンディング(CPFF)の再導入や、Dムニューシン米財務長官による総額1兆ドル規模の景気対策提案、Eトランプ米大統領による国民に小切手を支給する計画(最大1000ドル)、F上記CからEを受けた財政赤字拡大懸念(米長期金利の急騰→ドル全面高)が支援材料となると、米国時間には2/28以来、約3週間ぶり高値となる108.65まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間4時40分現在)では、108.00近辺で推移しております。
昨日のユーロドル相場は大幅下落。@新型コロナウィルスの欧州圏での感染拡大を受けたリスク回避ムードの高まり(対ユーロでのドル買い・円買い・スイスフラン買い)や、A先週のECB理事会での追加緩和決定(政策金利を据え置くも、2020年末までの資産買入総額を1200億ユーロ増額するとの発表)を受けたユーロ売り、B米長期金利上昇を受けたドル全面高(米10年債利回りは3/9に記録した0.32%から1.26%まで急上昇)の流れが重石となり、米国時間には、2/21以来となる安値1.0802まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間4時40分現在)では、1.0884近辺で推移しております。
尚、ドル全面高の流れを受けて、英ポンドは一時1985年3月以来となる1.1466まで急落。豪ドルも2003年1月以来となる0.5701まで急落しております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、2/20に記録した約10ヶ月ぶり高値112.21をトップに反落に転じると、3/9には、一時101.19(約3年4ヶ月ぶり安値)まで急落しました。しかし、米財政赤字拡大懸念を背景に米長期金利が急上昇する中、足元では108円台半ばまで値を戻すボラタイルな展開が続いております。但し、108.25に位置する200日移動平均線や、108.97に位置する一目均衡表雲下限付近では戻り売り意欲が強まると予想される他、強い売りシグナルを表す三役逆転も継続するなど、テクニカル的に見れば、「上値の重さ」を意識させるチャート形状と判断できます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違いや、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中貿易摩擦の再燃リスク、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウィルスの感染拡大リスク(米長期金利低下→ドル売りと、米株安→リスク回避の円買いの2つの波及経路)、E英合意なき離脱の再燃リスク、F米大統領選挙の先行き不透明感、G原油価格の不安定化など、ドル売り・円買いを想起させる懸念材料は引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。トランプ政権による相次ぐ景気対策案の発表やFRBによる大胆な金融緩和、世界的な流動性供給策を受けて都度持ち直す場面は見られるものの、発表されればされるほど「Sell the fact」に繋がる不安定な地合いが続いております。足元では米財政赤字拡大懸念やリスク回避ムードを背景にドル全面高の流れが続いていますが、ドル円は他通貨と比べて「ドル高」の度合いが弱く、今後は、「リスク回避のドル全面高→クロス円下落→ドル円下落」といった時間差でのドル売り・円買いに注意が必要でしょう(事実、通貨オプション市場では引き続き、リスクリバーサルが強烈な円コールオーバーで取引されている状態=市場参加者によるドル円下落見通しを示唆)。米株・米長期金利及び原油価格の動向や、新型コロナウィルスを巡るヘッドライン、米経済指標の結果を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。
本日の予想レンジ:106.50ー109.50
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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