ドル円見通し 3月9日以降の底上げパターンを維持できるかどうかを試す(20/3/18)

NYダウが2万ドル割れから戻して前日比1048.86ドル高と上昇したためにドル円も18日未明には107.86円まで戻した。

ドル円見通し 3月9日以降の底上げパターンを維持できるかどうかを試す(20/3/18)

【概況】

ドル円は3月9日夜に101.23円まで下落して2月20日夜高値112.21円からの下げ幅は10.98円にまで拡大したが、その後はドル全面高の流れで上昇に転じ、3月11日未明高値105.91円から3月14日早朝高値108.50円へ戻り高値を切り上げた。3月16日はNYダウが一時3千ドルを超える暴落となる中で円高となったが16日夜安値は105.15円に止まって3月9日安値と3月12日安値103.07円を結んだ下値支持線を割り込まずに107円台を回復した。
3月17日も金融市場全般の動揺は続いたが、トランプ大統領の支援政策や米連銀のCP買い入れ表明等で落ち着き、NYダウが2万ドル割れから戻して前日比1048.86ドル高と上昇したためにドル円も18日未明には107.86円まで戻した。

米トランプ政権は新型コロナウイルス感染拡大への経済対策として8500億ドル規模の予算を議会に求めていると報じられた。米連銀は企業が短期資金を調達するために発行するコマーシャルペーパー(CP)を購入すると発表した。米連銀によるCP買い入れはリーマンショック時にも行われたがそれ以来となる。
米商務省が発表した2月の小売売上高は前月比0.5%減少してマイナス幅は2018年12月の2.0%減以来の大きさとなった。感染拡大の影響は3月も続くと思われる。

欧州の感染拡大はイタリアを中心として深刻だが、ドイツのZEWが発表した3月の景気期待指数は前月比58.2ポイント低下のマイナス49.5となり、統計開始の1991年12月以来で過去最大の低下となった。
EUは臨時の首脳TV会議を行い、第三国からの入域を30日間原則禁止することに合意した。既に米国が欧州からの入国規制を始めているが、世界規模での入国・渡航禁止が広がっている。
イタリアの感染者は3万人を超えて、死者も2千人を超えている。米国の感染者も6千人を超え死者は109人に拡大しており、欧米の混乱はさらに続きそうだが、新興国への感染拡大が一段と進むようだと先進国以上の経済的打撃を被る可能性があり、新興国通貨・株への売り圧力も強まってゆくことが懸念される。やや落ち着いているとはいえ、混乱はまだまだ続くと懸念される。

【2017年以降の変動幅では先行きを見誤るか】

2月20日から3月9日への暴落幅は10.98円だが、3月14日未明高値108.50円までの反騰幅は7.27円であり、ほぼ3分の2を戻したところとなっている。この間の暴落度合は2018年12月の急落時を超え、その後の反騰度合も2019年1月3日安値からのV字反騰時を超える勢いとなっている。
2017年以降では高値から10円前後の規模で下落したところで底打ちしてきた経緯もあるので、今回もV字反騰により当面の底をつけた可能性も考えられるところだ。しかし、NYダウが3月序盤までは千ドル前後規模の騰落だったものが2千ドル前後規模の騰落となり、さらに3月16日には前日比で一時3000ドルを超える下落規模となるように変動幅が拡大していることを踏まえると、ドル円も2017年以降の変動幅・率で現状をみていると先行きを見誤るのではないかと懸念される。

【60分足の上昇チャンネル】

3月9日以降は3月9日夜安値と12日午前安値を結ぶ下値支持線と、11日未明高値と14日早朝高値を結ぶ上値抵抗線がほぼ平行に走る上昇チャンネルを形成している。この上昇チャンネルの下値支持線(現在106円近辺)を上回る内は高値更新へ進む可能性があるが、支持線を割り込んでくると流れは下向きとなり、16日夜安値を割り込む場合は安値切り上げパターンが崩れるために下落再開感が強まると警戒される。

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月12日昼安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りしていたが、3月11日未明高値から3日目となる14日早朝高値で直近のサイクルトップをつけて弱気サイクル入りした。しかし16日夜安値からはジリ高基調を継続して1日を経過しているので、3月16日夜安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて3月16日夜安値を直近のサイクルボトムとする。3月14日早朝高値を基準としてトップ形成期を19日早朝から23日朝にかけての間と想定するが、戻りは短命の可能性があることと、3分の2戻し水準である3月14日早朝高値とのダブルトップ形成で終わる可能性もあると注意し、107円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、16日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして19日夜から23日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では17日夜の上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンを上抜けてきている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、両スパン揃って悪化するところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は16日夜の反落時に30ポイント台へ低下してから切り返して60ポイント台へ上昇し、18日朝時点も50ポイント台を維持しているのでまだ上昇余地ありとするが、50ポイント割れからは弱気転換注意とし、40ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント以下への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.00円を下値支持線、3月14日早朝高値108.50円を上値抵抗線とする。
(2)107円以上での推移中は上昇余地ありとし、108円超えからは14日早朝高値試しを想定する。高値更新からは109円台、さらに110円を目指す可能性もあるとみるが、世界連鎖株安の再開懸念が拭えないので109円以上は反落警戒圏と考える。
(3)107円割れから続落に入る場合は弱気転換注意として106円前後への下落を想定する。106円台序盤までの下落から107円超えへ切り返す場合は上昇再開とみるが、106.50円以下での推移に留まる場合は下向きとし、106円割れからは3月9日以降の上昇一巡による下落再開と考える。その場合は当初の下値目処を104円台、先行きは3月9日安値を試しにかかる可能性もあると考える。

【当面の主な発表予定】

3/18(水)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調済 (12月 222億ユーロ、予想 192億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調前 (12月 1231億ユーロ)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数・改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価コア指数・改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数・年率換算件数 (1月 156.7万件、予想 150.0万件)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数 前月比 (1月 -3.6%、予想 -4.3%)
21:30 (米) 2月 建設許可件数・年率換算件数 (1月 155.1万件、予想 150.0万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数 前月比 (1月 9.2%、予想 -3.2%)

3/19(木)
ブラジル、南ア、台湾、フィリピン、インドネシア、トルコの政策金利発表
06:45 (NZ) 10-12月期GDP 前期比 (前期 0.7%、予想 0.6%)
06:45 (NZ) 10-12月期GDP 前年同期比 (前期 2.3%、予想 1.8%)
08:30 (日) 2月 全国消費者物価指数 前年同月比 (1月 0.7%、予想 0.5%)
08:30 (日) 2月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (1月 0.8%、予想 0.6%)
08:30 (日) 2月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (1月 0.8%、予想 0.7%)
09:30 (豪) 2月 新規雇用者数 (1月 1.35万人、予想 1.00万人)
09:30 (豪) 2月 失業率 (1月 5.3%、予想 5.3%)
13:30 (日) 1月 全産業活動指数 前月比 (12月 0.0%、予想 0.1%)

17:30 (ス) スイス国立銀行、3カ月物銀行間取引金利誘導目標中心値 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
21:30 (米) 10-12月期経常収支 (前期 1241億ドル、予想 -1083億ドル)
21:30 (米) 3月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (2月 36.7、予想 10.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.2万人
23:00 (米) 2月 景気先行指数 前月比 (1月 0.8%、予想 0.1%)

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