円高回帰。105円を見るか。(週報2016年6月第一週)

波乱の一週間となりました。火曜日以降、目立った材料の無い中でドル円は水準を切り下げる動きとなっていましたが

円高回帰。105円を見るか。(週報2016年6月第一週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値    高値    安値    終値

ドル円  110.77   111.45  106.51  106.54
ユーロ円 123.05   124.19 120.83  121.11
ユーロドル 1.1108  1.1374  1.1097  1.1367
日経平均 16973.72 17251.36 16525.47 16642.23

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

5月30日(月)

週明けの早朝市場では、前週金曜のイエレン議長講演で示された早期利上げの可能性の余波からドル買いが先行、東京市場が始まると株高も手伝って円全面安の展開となりました。欧州市場が始まる頃には消費増税延期の話も伝わってきてドル円が111.45レベル、ユーロ円も123.90レベルまで水準を切り上げましたが、LDN市場、NY市場とも休場となることから、その後は参加者が少ない中でやや調整が入ってのクローズとなりました。

5月31日(火)

東京市場では強い株価も支えとなってドル円、クロス円とも底堅い値動きとなりました。しかし、前日高値をトライするほどの勢いも無く、NY市場までは111円挟みで方向感のはっきりしない展開。NY市場では英国のEU離脱に関する直近の世論調査結果が発表され、離脱派が残留派を上回る結果となったことからポンドが急落。そこから派生してリスクオフで米株下落、さらに原油大幅安となり、ドル円は110円台半ばへの下押しとなりました。ユーロは、対ドル、対円とも底堅い動きでユーロ円は一時124.19レベルの高値を付けましたが、こちらもポンド急落の影響を受け押しての引けとなりました。

6月1日(水)

東京市場も昼過ぎまでは落ち着いた動きをしていましたが、午後にニュースも無い中でドル円が突然値を崩し109円台半ばまで下押し。短期筋のストップオーダーも巻き込んだ様子で一気に値が飛ぶ展開となりました。その後も戻りは鈍く、ほぼ円独歩高の状態、NY市場の朝方にはドル円が109.05レベル、ユーロ円も121.90レベルまで水準を下げ、その後は米株やWTI原油の買い戻しの動きから引けにかけてはやや戻してのクローズとなりました。ユーロドルはドル円のドルの動きに追随して買いは入ったこと、またユーロポンドの買いから値幅は大きくないものの底堅い値動きのまま引けました。

6月2日(木)

ドル円は前日に続いて円高が進行しました。東京市場から欧州市場にかけては主に弱い株価を材料に、NY市場に移ってからはOPEC総会で原油産出量凍結を含めた上限枠に関する合意が無かったことから、原油安とともにリスクオフの円買いとなりました。NY市場の朝方には一時108.53レベルの安値を付けましたが、NY後場には原油が行って来いとなり下げる前の水準へと戻す中、NYダウも前日高値を上回る動きとなり、108円台後半へと戻してのクローズ。いっぽうユーロドルは、ドル安の動きから欧州市場で1.1220レベルの高値を付けていましたが、ECB理事会後のドラギ総裁会見で、為替の水準も重要と述べたことをきっかけに反落、1.11台半ばへと押して引けました。ユーロ円はドル円、ユーロドルともに水準を下げたことから一時121.06レベルと3年ぶりの安値をつけ、やや戻してのクローズとなりました。

6月3日(金)

米国雇用統計を控え、ドル円は東京、LDNと108円台後半の直近安値圏で膠着状態を続けていましたが、雇用統計をきっかけに急落する動きとなりました。5月雇用統計は失業率こそ4.7%に改善しましたが、NFPは+16.4万の予想に対して+3.8万と2010年以来の低水準、前月の数字も+16万から+12.3万へと−3.7万の下方修正。2か月合わせたNFPの伸びはほぼゼロ、この数字をきっかけにドル全面安、米金利低下、米株も下げと利上げ思惑が急速にしぼんだこととリスクオフの動きからドル円は106.51レベルと5月6日以来の水準に沈み、そのまま安値圏でのクローズとなりました。ユーロドルもドル円同様にドルが売られ1.1374レベルまで上昇し高値圏で引けています。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月6日(月)
 **:** NZ市場休場
15:00 ボストン連銀総裁講演
23:00 米国5月労働市場情勢指数
25:30 イエレンFRB議長講演

6月7日(火)
**:** 世銀経済見通し公表
13:30 豪中銀政策金利発表
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP確報値
21:30 米国1〜3月期単位労働コスト確報値
23:00 米国6月IBD景気楽観度指数
24:00 オランダ中銀総裁議会証言
28:00 米国4月消費者信用残高

6月8日(水)
08:50 本邦1〜3月期GDP改定値
08:50 本邦4月貿易収支
**:** 中国5月貿易収支
17:30 英国4月鉱工業生産
18:30 南ア1〜3月期GDP
23:30 米国週間原油在庫発表

6月9日(木)
**:** 中国、本校市場休場
06:00 NZ政策金利発表
10:10 NZ中銀総裁議会証言
10:30 中国5月CPI、PPI
16:00 ドラギECB総裁講演
17:00 フィンランド中銀総裁講演
17:30 英国4月貿易収支
17:30 フランス中銀総裁討論会参加
20:00 南ア4月製造業生産
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国4月卸売在庫

6月10日(金)
**:** 中国市場休場
15:00 ドイツ5月CPI確報値
16:00 トルコ1〜3月期GDP
16:00 ドイツ連銀総裁講演
21:15 コンスタンシオECB副総裁講演
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感指数速報値
27:00 米国5月財政収支

6月12日(日)
 14:30 中国5月小売売上高、鉱工業生産

今週の週間見通し

波乱の一週間となりました。火曜日以降、目立った材料の無い中でドル円は水準を切り下げる動きとなっていましたが、金曜の雇用統計が予想を大幅に下回る結果となったことから週末の終値は106円台半ばの安値引けとなっています。

先週のレポートでは6月利上げの可能性が高いと書いたばかりですが、さすがにここまで弱い数字が出て来ると、1か月先送りとの判断をするFOMCメンバーが増えそうです。また先週発表されたICMによる英国の世論調査結果で電話調査においても離脱支持が過半数となってきたことも、6月FOMC(14・15日)の翌週に予定されている英国国民投票(23日)に向けて不透明要因となっていて、現状ではどうも7月利上げという流れが濃厚な様子です。

本日は、FOMCメンバーの一人であるボストン地区連銀総裁(ハト派)の講演が東京時間15:00〜、またイエレンFRB議長(ハト派)の講演が同25:30〜予定されています。米国のブラックアウトルール(関係者が金融政策に関する発言をしてはいけない)では、FOMC前週の火曜日(つまり、今回は7日)から発言が出なくなりますので、その点でも本日出て来る両者の発言内容は注目されます。ふたりともハト派ですから、おそらくは6月の利上げ思惑を一段と低下させるような発言になると思われますが、どうなるでしょうか。

さて、ドル円が先週初の高値111.45レベルから、週末の安値106.51レベルまで約5円もの円高進行となりました。今週はテクニカルな観点を中心に円一段高の可能性が高まっていることを見ていきましょう。日足チャートをご覧ください。

ドル円は、東京が休場となったGW中の3日から5月30日まで上昇チャンネルの中できれいなトレンドとともにドル高・円安が進んでいましたが、30日には主要なレジスタンスラインのひとつである3月10日高値と3月29日高値を結んだライン(ピンクのレジスタンスライン)の水準で上値を抑えられ、その後目立った材料が無い中でアルゴリズムトレードと噂されるドル売りに押され水準を下げ、さらに雇用統計でダメ押しの下げを見ることとなりました。

重要な点として、ドル円は昨年の高値125.86レベルからの長期的な下げトレンドを継続していて、直近のところでは中期的な下げに対して調整の上昇チャンネルを形成後の下抜けです。これは典型的なコンティニュエイション・パターン(継続パターン)と言え、それまでのトレンド(5月3日までの下げ)を、チャンネル下抜けとともに再開するパターンです。

また、3日の安値は東京市場が休場の時に付けている安値という点も要注意で、東京で見ていない新値は東京時間に再び見に行く傾向が高いため、今回も東京市場でもって105.55レベル、そして黒田バズーカ#2直前の安値105.20レベル(2014年10月、ピンクの水平線)あたりをターゲットとする動きが出て来ると見ています。


今週は、来週のFOMCに向けて利上げは無さそうだとの思惑(米金利低下によるドル安効果)、そして週次で出て来る英国の世論調査結果(離脱派が増えていればリスクオフで円高効果)、この2つを中心にしつつ、戻り売りを考える参加者が多い週となりそうです。

今週のドル円は、105.20レベルをサポートに、107.50レベルをレジスタンスとする見通しとしておきます。

           ドル円(日足)チャート

           ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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