ドル円見通し ドル全面高で108円台へ(週報3月第3週)

ドル円は13日未明高値を超えたところから続伸に入って14日未明には108.50円まで急伸した。

ドル円見通し ドル全面高で108円台へ(週報3月第3週)

ドル円見通し ドル全面高で108円台へ

【概況】

3月9日にNYダウが前日比2013.76ドル安の1日の下げ幅としては過去最大記録を更新する中でドル円は9日夜に101.23円まで下落して2月20日夜高値112.21円からの下げ幅は10.98円にまで拡大したが、NYダウの持ち直しや暴落し過ぎの反動で揺れ返しの上昇となって11日未明には105.91円まで戻し、その後は様子見となっていた。

3月12日午前の米トランプ大統領による感染対策演説が英国を除くEU諸国からの渡航禁止を打ち出したことでかえって経済活動の停滞と混乱への懸念が強まってダウ先物が大幅下落反応となってドル円も103.07円まで下落した。NYダウは前日比2352.6ドル安で3月9日の記録を超える1日の下げ幅として過去最大となった。リスク回避感が強まってドル安円高が再燃しやすい状況になりかけたが、12日夜のECB理事会がマイナス金利の深掘りを決定しなかったことでユーロ安となり、また欧州の感染拡大による投資マネーのドルへの還流でドル高が進んだためにドル円は13日未明に106.09円まで戻した。
3月13日はトランプ大統領が非常事態宣言を出し、500億ドル規模の対策を表明したことでNYダウが前日比1985.0ドル高と1日の上昇幅として過去最大となる反騰なり、ドル高感が進んでドル円は13日未明高値を超えたところから続伸に入って14日未明には108.50円まで急伸した。

【10円前後の円高からの反騰事例と比較】

2月20日高値112.21円から3月9日安値101.23円までの下げ幅は10.98円となったが、3月13日高値までの反騰幅は7.27円となり、凡そ3分の2を一挙に解消した。直前の暴落角度や下げ幅は2018年10月4日から2019年1月3日への9.72円を超えるが、その後の反騰レベルも当時を超えている。
週足で2016年12月高値以降の下落規模は、2017年4月17日への下げ幅10.54円、2018年3月26日への10.09円、2019年1月3日への9.72円等、10円前後規模の下落から戻しに入っているので、今回もそれらと同様に10円規模の下落から出直りに入った可能性は考えられる。

2016年6月24日安値99.04円の後は、戻り高値が切り下がりつつ安値も徐々に切り下がってきたが、今回の下げでは2016年6月底割れはひとまず回避しているので、テクニカルな過去のパターンから考えれば現状から戻しに入っても不思議はないだろうと思われる。
しかし、2018年3月26日安値104.63円、2019年1月3日安値104.82円、2019年8月26日安値104.45円と104円台の安値から切り返してきたところを今回は割り込んでいるため、2016年6月底割れをひとまず回避して急反騰したとはいえ、このまま戻しに入れるのかどうかについては疑問符も付くところだ。

NYダウは千ドルを超える急落と反騰を繰り返していたが、3月9日以降は2千ドル規模での暴落と暴騰を繰り返す大乱調となっている。下落規模は2008年のリーマンショックや1987年のブラックマンデー等を彷彿とさせる状況であるが、リーマンショックやブラックマンデーが人災的なバブル崩壊だったのに対して今回は自然災害としての新型コロナウイルスの感染爆発であり、その拡大規模や被害、経済活動の停滞の深刻さや期間等に対する終わりが見えない状況にあるため、従来の常識的な騰落幅を超える乱調な展開になる可能性もある。暴落度合いが大きければその途中の反騰も大きくなり、さらに一段安に陥ると暴落度合いも拡大しかねない。トランプ大統領の非常事態宣言と対策で足りるのかどうか、G7だけでなく主要国・新興国での被害見通しはまだ立たない。

【日本売り型の円安へ進む可能性は?】

ドル円は各種リスクによる株安ならリスク回避先としての円買い、クロス円投資マネーの還流による円買い、株安対策による欧米長期債利回り低下による円買い等により円高ドル安へ進むのが基本だ。しかし通常のレベルを超えるリスク回避となり、世界的なリスク回避による投資マネーの還流規模が拡大すればドルへの回帰でドル高へ進みやすくなる。その際に日本経済が比較的平穏でしっかりしているなら、ドルストレートではドル高となってもクロス円及びドル円では円高となってしかるべきだが、日本経済がしっかりしてないなら、日本売りとしての円安も発生しうるところだ。

日本の2019年10-12月期GDPは3月9日の改定値で年率マイナス7.1%となり速報のマイナス6.6%から悪化した。消費税増税による消費低迷が直撃したと思われるが、1-3月期、さらに4-6月期は増税による悪化に加えて感染拡大による消費急減も加わるために大幅な落ち込みが懸念されている。WHOによるパンデミック宣言で東京五輪の開催が危ぶまれているが、五輪中止の場合や感染拡大が欧米並みとなる場合には日本売り型の円安もあり得るところだ。
日本の投資マネーの規模を考えれば、まだポジション圧縮や換金売りが出し切った状況ではないと思われるので、世界連鎖株安が一段と深刻化する場合は円高へ向かうのだろうと推察するが、感染拡大への政治経済政策的な対応を誤れば日本売り型の円安にも注意しておきたい。

【当面のポイント】

通常の変動率を超える乱高下はまだ続くと警戒し、大幅続伸も一転しての急落もあり得るところと注意する。
3月9日からの反騰は直前の暴落に対する3分の2戻しにある。また3月13日への反騰に対する半値押しは104.86円にある。
(1)107円割れから続落の場合は105円前後への下落とその後の反騰注意とするが、105円割れからさらに104.86円を割り込んで続落するような展開に入る場合は円高ドル安再開とみて3月9日安値101.23円試しを想定する。101円台序盤はもう一度買い戻しも入りやすいとみるが、仮に底割れの場合は2016年6月24日安値99.04円試しとし、さらに割り込む場合は95円前後まで下値目途を引き下げ、先行きは90円割れもあり得ると注意する。
(2)107.00円を割り込んでも105円台前半までの下落から切り返して107.50円以上へ戻す場合は上昇継続の可能性ありとし、3月13日高値108.50円を超えて続伸の場合は110円試し、さらに2月20日高値112.21円試しへ進む可能性があると考える。110円以上は反落警戒水準とみるが、日本売り型の円安感が強まる場合は2月20日高値を超える可能性も念頭に入れておく。(了)<15日18:00執筆>

【当面の主な発表予定】

3/16(月)
休場、メキシコ
08:50 (日) 1月 機械受注 前月比 (12月 -12.5%、予想 -1.0%)
08:50 (日) 1月 機械受注 前年同月比 (12月 -3.5%、予想 -1.1%)
11:00 (中) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 8.0%、予想 -4.0%)
11:00 (中) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 5.7%、予想 -3.0%)
21:30 (米) 3月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (2月 12.9、予想 5.0)
29:00 (米) 1月 対米証券投資・全体 (12月 782億ドル)
29:00 (米) 1月 対米証券投資・短期除く (12月 856億ドル)

3/17(火)
未 定 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
09:30 (豪) 10-12月期住宅価格指数 前期比 (前期 2.4%、予想 4.5%)
09:30 (豪) 10-12月期住宅価格指数 前年同期比 (前期 -3.7%)
09:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
13:30 (日) 1月 設備稼働率 前月比 (12月 -0.4%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.8%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -2.5%)
18:30 (英) 2月 失業保険申請件数 (1月 0.55万件)
18:30 (英) 2月 失業率 (1月 3.4%)
18:30 (英) 1月 失業率・ILO方式 (12月 3.8%、予想 3.8%)

19:00 (欧) 1月 建設支出 前月比 (12月 -3.1%)
19:00 (欧) 1月 建設支出 前年同月比 (12月 -3.7%)
19:00 (独) 3月 ZEW景況感・期待指数 (2月 8.7、予想 -25.0)
21:30 (米) 2月 小売売上高・全体 前月比 (1月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 0.3%、予想 0.2%)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.3%、予想 0.4%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 76.8%、予想 77.2%)
23:00 (米) 1月 企業在庫 前月比 (12月 0.1%、予想 -0.1%)
23:00 (米) 3月 NAHB住宅市場指数 (2月 74、予想 75)

3/18(水)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合 1日目
06:45 (NZ) 10-12月期経常収支 (前期 -63.51億NZドル)
08:50 (日) 2月 通関貿易統計・季調済 (1月 -2241億円)
08:50 (日) 2月 通関貿易統計・季調前 (1月 -1兆3126億円)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調済 (12月 222億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調前 (12月 1231億ユーロ)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数・改定値 前年同月比 (速報 1.2%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価コア指数・改定値 前年同月比 (速報 1.2%)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数・年率換算件数 (1月 156.7万件、予想 149.0万件)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数 前月比 (1月 -3.6%、予想 -4.9%)
21:30 (米) 2月 建設許可件数・年率換算件数 (1月 155.1万件、予想 149.0万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数 前月比 (1月 9.2%、予想 -3.9%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 1.00-1.25%、予想 0.75-1.00%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

3/19(木)
ブラジル、南ア、台湾、フィリピン、インドネシア、トルコの政策金利発表
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%)
06:45 (NZ) 10-12月期GDP 前期比 (前期 0.7%)
06:45 (NZ) 10-12月期GDP 前年同期比 (前期 2.3%)
08:30 (日) 2月 全国消費者物価指数 前年同月比 (1月 0.7%)
08:30 (日) 2月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (1月 0.8%)
08:30 (日) 2月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (1月 0.8%)
09:30 (豪) 2月 新規雇用者数 (1月 1.35万人)
09:30 (豪) 2月 失業率 (1月 5.3%)

13:30 (日) 1月 全産業活動指数 前月比 (12月 0.0%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
17:30 (ス) スイス国立銀行、3カ月物銀行間取引金利誘導目標中心値 (現行 -0.75%)
21:30 (米) 10-12月期経常収支 (前期 1241億ドル)
21:30 (米) 3月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (2月 36.7、予想 12.5)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週
23:00 (米) 2月 景気先行指数 前月比 (1月 0.8%、予想 0.1%)

3/20(金)
休場、日本
ロシア中銀、政策金利発表
16:00 (独) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 0.8%)
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調済 (12月 326億ユーロ)
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調前 (12月 512億ユーロ)
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数 年率換算件数 (1月 546万件、予想 555万件)
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数 前月比 (1月 -1.3%、予想 1.7%)


ドル円見通し ドル全面高で108円台へ

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る