ドル円見通し ユーロやポンドに対するドル高感で戻すが上値は重い(20/3/13)

13日未明には106.09円を付けて11日未明高値をわずかに上抜いた。しかし106円台を維持できずに13日早朝は105円も割り込んでいる。

ドル円見通し ユーロやポンドに対するドル高感で戻すが上値は重い(20/3/13)

【概況】

3月9日にNYダウが前日比2013.76ドル安の1日の下げ幅としては過去最大記録を更新する中でドル円は9日夜に101.23円まで下落して2月20日夜高値112.21円からの下げ幅は10.98円にまで拡大したが、NYダウの持ち直しや暴落し過ぎの反動で揺れ返しの上昇となって11日未明には105.91円まで戻し、その後は様子見となっていた。
米国への感染拡大が進む中で12日10時に米トランプ大統領が感染対策に関する米国民向けの演説に注目が集まっていたが、感染被害対策は市場の期待を満たさず、欧州からの渡航禁止を打ち出したことでかえって経済活動の停滞と混乱の長期化が懸念される結果となったためにダウ先物が大幅下落となり、ドル円も大統領演説後に103.07円まで下落した。

12日夜のNYダウは大幅下落で開始となり、前日比2352.6ドル安と1日の下げ幅としては3月9日に前日比2013.76ドル安が記録した過去最大記録を更新する暴落となった。株安の深刻化によるリスク回避の円高圧力もかかる状況だったが、一方ではユーロやポンド、豪ドル等の資源通貨や新興国通貨が大幅下落したことでドル高感が強まったため、13日未明には106.09円を付けて11日未明高値をわずかに上抜いた。しかし106円台を維持できずに13日早朝は105円も割り込んでいる。

3月12日夜にはECB理事会があったが、既にマイナス金利状態にある現状の政策金利を据え置き、量的緩和拡大にとどめたことも市場の失望を買った。また感染爆発の発生しているイタリアへの支援に対する否定的姿勢も株安を助長した。
米連銀は3月3日夜にリーマンショック時以来となる定例FOMC以外での緊急利下げに踏み切り、英中銀も3月11日に定例会合を待たずに緊急利下げを行った。ECBもマイナス金利状態にあるものの米英に追従する姿勢を示すのではないかとの期待もあったのだが、マイナス金利の深掘りを避けたことが失望となった。

12日夜の米経済指標等に対する市場の反応は限定的だった。それよりも感染拡大問題と世界連鎖株安動向へ市場の目が向かっている。2月の米生産者物価は全体の前月比が-0.6%で市場予想の-0.1%を下回り1月の0.5%から低下した。前年同月比も1.3%で予想の1.8%や1月の2.1%を下回った。食品・エネルギーを除くコア指数の前年同月比は1.4%で市場予想及び1月の1.7%を下回った。
週間失業保険申請件数は21.1万件で市場予想の21.8万件及び前週の21.5万件を下回った。

新型コロナウイルスの感染拡大は続いている。イタリアでは感染者が1万5113人・死者1016人に増え、スペインは感染者3146人・死者86人、フランスは感染者2876人・死者61人、ドイツは感染者2745人・死者6人となった。米国も感染者は1636人、死者40人へ増加している。中国では感染爆発の峠を越えたといわれているものの、世界的な大流行の終息見通しが立たない状況にある。

【リーマンショック時の下げ幅を超えるも、下落率はまだ及ばず】

NYダウは12日の下げ幅が前日比2352.6ドル安となり、安値では21154.46ドルまで下げて2月12日の史上最高値29568.57ドルからの下げ幅が8414.11ドル安まで拡大した。2018年12月に米中通商摩擦等を背景に大幅下落した際に付けた安値21712.53ドルを割り込んだ。2009年3月のリーマンショック後安値からの上昇期における中間調整レベルをはるかに超える下落であり、リーマンショックの2007年10月高値14198.10ドルから2009年3月底6469.95ドルまでの下げ幅7728.15ドル安を超えた。リーマンショック時の下落率は凡そ55%であり、現状はまだ28.5%の下落率にとどまっている。下落率がリーマンショックレベルとなる可能性も警戒すべきかもしれない。

【ドル指数反騰】

メジャー通貨の加重平均であるドル指数は2月20日高値99.92ポイントから3月9日安値94.63ポイントまで急落していたが、その後は急反騰している。米国株安が深刻化する中でいったんドルが売られ、米連銀の緊急利下げから一段安していたが、売り一巡後はリスク回避による投機マネーのドルへの還流感が強まって急上昇している。投資家心理が冷え込みポートフォリオが悪化すれば換金入り、投機ポジションの手仕舞いでドルは買い戻される。このドル高がドル円には下支えとなっているのだが、クロス円での円高が進めば円の買い戻しも進み、世界連鎖株安による本邦投資家による海外投資ポジションの還流も始まると円高が急加速しかねない。3月9日からのドル円はややドル高気味の動きではあるが、106円前後では上値が重く、暴落一服でやや戻した程度に過ぎない状況のため、12日の米大統領演説後に付けた安値103.07円を割り込むところからは円高が再び加速しやすくなると警戒する。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月9日夜安値をサイクルボトムとし強気サイクル入りしたが、11日未明へ戻り高値を切り上げた後は新たな高値更新へ進めずに1日を経過したため、12日朝時点では11日未明高値でサイクルトップをつけたと仮定して12日夜から16日夜にかけての間への下落を想定し、11日未明高値を上抜く場合はサイクルボトム形成を短縮しての強気サイクル入りとした。
12日昼前へいったん下げたが深夜の反騰で11日未明高値をわずかに上抜いたため、12日昼前安値を直近のサイクルボトムとする。トップ形成期は14日未明から18日未明にかけての間と想定されるので、13日未明高値を上抜く場合は13日夜以降へ続伸する可能性があるが、11日未明高値とのダブルトップ形成で終わる可能性もあるので、105円以下での推移中は弱気転換注意とし、12日昼前安値を割り込むところからは弱気サイクル入りとして17日午前から19日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、13日未明への上昇で先行スパンを突破したが、その後の反落により遅行スパンは悪化し始めている。13日未明高値を上抜くところからは上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、12日昼前安値を割り込むところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11日未明高値と13日未明高値がほぼフラットだが、指数のピークもほぼフラットで弱気逆行の気配となっている。65ポイント超えからは上昇継続とみるが、50ポイント以下での推移中は下げ再開警戒とし、40ポイント割れからは下げ再開と30ポイント割れへの下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、104.00円、次いで3月12日昼前安値103.07円を下値支持線、13日未明高値106.09円を上値抵抗線とする。
(2)104円以上での推移中は上昇余地ありとし、13日未明高値超え殻は107円前後への上昇を想定する。107円以上は反落警戒とすれば、104円以上での推移なら週明けも高値を試す余地ありとみる。
(3)104円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、103.07円割れからは弱気サイクル入りとして3月9日夜安値101.23円試しを想定する。101円台序盤では買い戻しも入りやすいとみるが、底割れの場合は100円試し、さらに週明けへ向けて100円割れへ向かう可能性を警戒する。

【当面の主な発表予定】

3/13(金)
13:30 (日) 1月 第三次産業活動指数 前月比 (12月 -0.2%、予想 0.0%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 0.0%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 2月 輸出物価指数 前月比 (1月 0.7%、予想 -0.4%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (2月 101.0、予想 95.0)

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