ドル円見通し 週間足(途中経過)では3円近い下ヒゲ(20/3/11)

ドル円も10日欧州時間には105.21円まで急伸、10日深夜のダウ反落時には103.21円まで反落したが11日未明には105.91円まで一段高となった。

ドル円見通し 週間足(途中経過)では3円近い下ヒゲ(20/3/11)

【概況】

新型コロナウイルス感染拡大による先行き不透明感から世界連鎖株安となる中、ドル円は週明け3月9日朝に104円割れへ急落、午前安値で101.56円まで続落し、102.50円を挟んだ持ち合いの後に9日夜には101.23円の安値をつけた。3月10日朝からは前日に暴落していたものが総じて反騰となり、ダウ先物の急反騰、歴史的大暴落だった原油の反発等からパニック売りに対する巻き返しの動きとなり、ドル円も10日欧州時間には105.21円まで急伸、10日深夜のダウ反落時には103.21円まで反落したが11日未明には105.91円まで一段高となった。

金融市場全般の暴落が一服して戻しに入ったきっかけとしては、中国の習近平主席が感染爆発の中心地である武漢を訪問したことで中国での終息期待が強まったこと、トランプ米大統領が3月9日に新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた業種を対象とした給与税減税や所得補償などの大規模な景気対策を表明したことが上げられる。

トランプ減税については、景気対策の具体的な中身が決まっていないとの報道もあったが、ムニューシン財務長官が民主党のペロシ下院議長と会談して超党派での合意を急ぐ姿勢を示したことで期待感が強まった。しかしその財源をどうするのか、11月の大統領選挙を控えて与野党の協調が上手く進むのか、米国での感染拡大への不安感がそれらの対策で解消できるのかどうか、不透明さは付きまとうと思われる。
3月10日のNYダウは序盤に900ドル超の上昇となり、いったん前日比マイナスまで反落してから終盤の上昇で1日の上昇幅としては過去3番目となる1167.14ドル高で終了した。世界的な金融緩和拡大や財政出動・景気刺激策への期待から長期金利の指標である米10年債利回りは前日比0.26%上昇の0.81%となり、為替市場ではユーロとポンド及び円が売られてドル高が進んだ。

新型コロナウイルスの感染拡大問題は中国では終息期待が高まっているもののイタリアを中心に欧州全域へ広がり、イタリアは感染者が1万人を超えて死者も631人に増加、フランスは感染者1784人で死者33人、スペインも感染者1695人で死者36人、ドイツは感染者1565人で死者2人、米国でも感染者は975人で死者が30人まで拡大している。米国での感染ピークはまだ先と思われるが、世界的な経済活動停滞による景気後退がどの程度となるのかは不透明だ。リーマンショック並の事態に陥る懸念があるためにリーマンショック時以来となる米連銀の緊急利下げも決定され、トランプ大統領も大規模な減税等を打ち出した。リーマンショックが発生した2008年大統領選挙では共和党が破れて民主党のオバマ大統領が当選した。

【ドル円の週足、長大下ヒゲのまま終われるか】

ドル円は3月9日に101.23円まで大幅下落となり、2月20日高値112.21円からの下げ幅は10.98円となった。2018年10月高値から2019年1月3日への下げ幅が9.72円、2019年4月高値から8月底までの下げ幅が7.94円であり、今回はそれらを超えており、下落期間も1か月に満たない急落角度であった。また101円台は2016年11月以来であり、2018年3月26日安値104.63円、2019年1月3日安値104.82円、2019年8月26日安値104.45円という104円台中盤までの下値支持帯から転落した。
しかし3月9日夜以降はダウの反騰により9日に急落したものが総じて反騰入りしており、ドル円も105円台後半まで大幅に戻している。

週足で見れば、3月11日朝時点の途中経過ではあるが週足下ヒゲ幅は2.97円となる長大下ヒゲの状況となっている。週末への展開次第では下ヒゲが現状より短くなる可能性もあるが、週の始値104.20円以上での推移なら下ヒゲ幅は維持される。
週足における長大下ヒゲとしては2015年8月24日に急落したところで下ヒゲ幅が5.68円、2019年1月3日のフラッシュクラッシュ時には下ヒゲ幅3.63円等の例があり、いずれも下ヒゲを翌週に潰されることなく上昇基調に転じた経緯がある。今回も長大下ヒゲを維持した状況で週を終えて来週へ続伸する場合は、それら前例と同様の反騰入りへの期待感も強まる可能性がある。しかし下ヒゲはつぶされると反騰感が失われて却って下げ足りなさから下落再開に転じる事にもなりえると注意する。

金融市場全般は乱高下にある。NYダウは3月10日に前日比1167.14ドル高となり1日の上昇幅としては過去3番目の上昇だったが、道中では900ドル超の上昇後にいったんマイナスに転じる等、千ドル幅の乱高下だった。また千ドル超の上昇と言っても3月9日は2013.76ドル安で1日における過去最大の下げ幅となったばかりでもある。2月27日に1190.95ドル安となったところがその時点での1日における過去最大の下げ幅、3月2日の反騰が前日比1293.96ドル高でその時点の過去最大の上昇幅だった。そのレベルを覆す状況のため、一段安後のレンジの大きな持ち合いに過ぎないのかもしれない。
ドル円は2月20日から3月9日までの半月で10.98円の暴落、3月10日高値105.91円まで4.68円の反騰だが半値戻しには到達していない。3月9日の下落についてもフラッシュクラッシュとして一時的パニックによる瞬間下落として済ませてよいものかどうかは、週末から週明けへの展開で見定める必要があると思う。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月2日朝安値を底割れしたことによる弱気サイクル入りとしていたが、3月9日午前と夜の両安値でダブルボトムをつけて強気サイクル入りした。このため10日朝時点では10日の日中から12日にかけての間への上昇余地ありとした。11日未明へ一段高しているためまだ上昇余地が残るが、9日朝からの急落分を解消するところまで戻したため、戻り一巡から下げ再開に入りやすいところと注意する。104円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、10日深夜の反落時安値103.21円割れからは弱気サイクル入りとして12日夜から16日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、11日未明へ一段高で先行スパンを突破したが、新たな高値更新へ進めないと遅行スパンは悪化しやすくなる。遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは下げ再開と仮定して安値試し優先とし、先行スパン転落からは下げが加速しやすいと注意する。

60分足の相対力指数は10日夜から11日未明への一段高に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られるので、50ポイント割れからは下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、104.00円、次いで103.21円を下値支持線、11日未明高値105.91円を上値抵抗線とみておく。
(2)104円を上回るか一時的に割り込んでも回復する内は上昇余地ありとし、105.91円超えからは106円台中盤を目指すとみるが、106.50円以上は反落警戒とし、その後の105円割れからは下げ再開を疑う。
(3)104円割れからは弱気転換注意として10日深夜安値103.21円試しとし、103.21円割れからは弱気サイクル入りとみて9日夜安値101.23円試しへ向かう流れとみる。102円前後ではいったん買い戻しも入りやすいとみるが、金融市場全般が再び崩れるようなら9日夜安値を割り込んで100円の大台試しへ向かう流れとなる可能性も警戒しておく。

【当面の主な発表予定】

3/11(水)
16:00 (ト) 1月 経常収支 (12月 -28.0億ドル)
18:30 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 0.3%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.3%)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前年同月比 (12月 -1.8%、予想 -2.6%)
18:30 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 0.3%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 8.45億ポンド、予想 -70.00億ポンド)
18:30 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 77.15億ポンド、予想 -3.56億ポンド)

21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.1%、予想 0.0%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 2.5%、予想 2.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.3%、予想 2.3%)
27:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -326億ドル、予想 -2345億ドル)

3/12(木)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 0.2%、予想 -0.3%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 1.7%、予想 1.0%)
08:50 (日) 1-3月期大企業全産業業況判断指数・BSI (前期 -6.2)
08:50 (日) 1-3月期大企業製造業業況判断指数・BSI (前期 -7.8)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -2.1%、予想 1.2%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -4.1%、予想 -3.4%)

21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 0.5%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 2.1%、予想 1.8%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前月比 (1月 0.5%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.9万人)
21:45 (欧) 欧州中央銀行・ECB政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルド欧州中央銀行総裁、定例記者会見

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