ドル円見通し 2018年3月、2019年1月と8月以来の104円台(週報3月第2週)

雇用統計の数字は米景気の強さを示すものだが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を反映していないため市場の反応も限定的でドル円はわずかな動きにとどまった。

ドル円見通し 2018年3月、2019年1月と8月以来の104円台(週報3月第2週)

ドル円見通し 2018年3月、2019年1月と8月以来の104円台

【概況】

3月6日に104.99円まで下落して2月20日高値112.21円からの下げ幅は7.22円となった。
104円台は2019年1月3日のフラッシュ・クラッシュによる104.82円、2019年8月26日の104.45円以来だが、その前は2018年3月26日の104.63円であり、104円台中盤が2018年以降の重要な下値支持線となってきた。今回もこの水準に到達したため、104円台到達をもって反騰入りできれば2018年3月以降の支持線維持となって市場心理も好転する可能性があるが、104円を割り込んで一段安に入る場合は2018年3月以降の防衛ラインが突破されてさらに一段下にある2016年6月24日安値99.04円=英国のブレクジット国民投票賛成ショックまで支持線が切り下がる、あるいはさらに水準を引き下げてゆく可能性も懸念される事態となりかねない。

【パンデミック不安による株安・長期債利回り低下は続く】

新型コロナウイルスの感染拡大は当初は中国本土及びアジアへの拡大程度と欧米市場では高を括っていた印象もある。そのためNYダウは2月12日に史上最高値を付けた後も高止まりし、独DAX指数は2月17日に最高値を更新、SP500は2月20日に史上最高値を更新していた。しかしイタリアでの感染爆発から欧州全域へと拡大し、米国でも感染数が増加して死者が発生、非常事態宣言や緊急事態宣言を出す地方が出始めたことで欧米の市場心理は一挙に冷えた。
NYダウは2月26日まで2月12日高値から4887.56ドル安の暴落となったが、25000ドル割れを切り返して3月4日高値まで2421.33ドル高の反発を入れて凡そ半値を戻したが、あくまでも急落に対する反動で戻したにすぎず、3月2日以降は凡そ千ドル幅での乱高下で週末へ失速したために底打ち感には乏しい印象だ。またNYダウが反発する中でもドル円は戻せず、3月2日から3日まで下げ渋ったにすぎず、5日、6日と一段安してきている。

3月6日夜に発表された2月の米雇用統計では、非農業部門就業者数が27.3万人増となり市場予想の17.5万人を大幅に上回った。1月分も当初の22.5万人から27.3万人に上方修正された。失業率も3.5%となり前月の3.6%から低下した。平均時給の伸びは前年比3.0%上昇で予想と一致したが前月の3.1%からは若干低下した。
雇用統計の数字は米景気の強さを示すものだが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を反映していないため市場の反応も限定的でドル円はわずかな動きにとどまった。
株安債券買いにより3月6日の米10年債利回りは一時過去最低となる0.6%台まで低下し、前日比0.15%低下の0.77%で終了した。
3月3日夜の米連銀による緊急利下げをきっかけとして世界的な利下げ、量的金融緩和の拡大が見込まれるが、すでに日本はマイナス金利状態にあるため、ドル円にとっては金利差面でのドル売り圧力が強まることとなる。ECBの利下げ余地が乏しいため、米連銀の緊急利下げ後はユーロ高ドル安となっているが、利下げ余地のある資源輸出国・新興国通貨に対しての円高感は今後も強まってゆくと思われる。

WHOは3月6日時点ではまだパンデミック宣言をしていないものの、アフリカ・南米まで広がっており、この1週間では欧米の感染拡大が顕著となっている。イタリアは3月8日時点で感染者5883人、死者233人、フランスでは感染者949人、死者16人、スペインで感染者448人、死者10人、ドイツも感染者795人と急増している。米国も感染者370人、死者17人となり、カリフォルニア州やワシントン州等で非常事態や緊急事態宣言が出されている。

【40週サイクルの下落局面】

2月20日からは7.22円のドル安円高となった。2019年4月24日から8月26日への下げ幅は7.94円であり、2019年1月底以降を104円中盤を下値支持線、112円台前半を抵抗とした往来相場という見方もできるが、情勢が好転して株高とともに107.50円以上へ切り返す反騰が発生しないことには往来相場からの転落となりかねない。
週足レベルで見れば、概ね10か月から1年周期のサイクルで底打ちを繰り返しているが、2019年4月24日高値から10か月を経過した2020年2月20日でこのサイクルの天井を付けて下落期に入ったと考えられる。2019年8月26日安値が前回のサイクルボトムのため、今回のボトム形成期は2020年6月から8月にかけての間と仮定されるので、まだ下落期間がかなり残っている。104円台中盤の下値支持線=防衛ラインを突破される可能性も残存する下落期間の長さにより高まっている印象もある。
2019年8月26日底104.45円を割り込む場合、特に104円を割り込む場合は2018年3月以降のレンジ相場からの転落としてさらにその下にあるチャート上の節目である2016年6月24日底99.04円まで新たな下値支持線が切り下がる可能性もあると注意すべきだろう。

WHOがパンデミック宣言を行う場合、終息宣言が出されないことには東京五輪も難しいだろう。既に増税で消費が落ち込み10-12月期がマイナス成長となった日本経済への打撃も大きい。消費の萎縮は金融市場、特にクロス円での投機心理も冷え込ませるだろうと懸念される。
感染が爆発的となっているイタリアでは都市封鎖も始まり、状況的には初期の武漢・湖北省の展開にも近いようだが、フランスやドイツ及びスぺインへの波及も進んでいる。イタリアとドイツの2期連続マイナス成長=リセッションも確率が高まっている。
米国での感染も拡大が顕著となっているが、欧米で感染ショックがピークを迎えるのはまだ先で、現状よりもさらに世界景気への悪影響は深刻化すると警戒すべきだろう。欧米のピーク以降には新興国・途上国でのピークも来るのだろうと思われる。

感染拡大とは性質が異なるものの、前回の金融市場危機であったリーマンショックの時は3月のベアスターンズ破綻から10月のリーマンブラザーズ破綻へと危機的展開は半年以上続いた。NYダウの底打ちは2009年3月まで長引いたが、ドル円は3月17日安値95.75円から8月15日高値110.64円へいったん戻したものの2009年1月21日安値87.11円へ急激な円高となり、長期的には2011年10月31日の75.57円まで円高が続いた。今回もリーマンショック後と同様に仮に株式市場が持ち直しても金融緩和による円高が長期化することも考えておく必要があるのではないかと思う。

【当面のポイント】

週足のボリンジャーバンドは昨年秋以降はほぼ横ばいだったが、2月20日からの下落でマイナス2σラインを下へ突き抜けた。突き抜けてから続落の場合は週足レベルでのバンドウォークでマイナス2σラインが実勢を追いかけて低下してゆく展開となりかねない。

ここ2週、週明け早々の安値からいったん戻してから週末へ一段安となり、週間の下げ幅は4円前後だが、今後も週間の高安で4円前後規模の円高ドル安が続く可能性もあるとすれば、106円台へ戻してから一段安する場合は102円台、105円台からの一段安なら101円前後やそれ以上の円高へ進む可能性も考えておく必要があると思われる
(1)当初、106.00円を上値抵抗線、2019年8月26日安値104.45円を下値支持線と仮定する。
(2)3月2日も朝に一段安してから1.32円の反発を入れているがその後は一段安しているので、今回も106円を超える場合は106.50円前後への上昇とその後の反落を想定する。
(3)104.45円割れからは103円、102円、101円と段階的に下値目途を切り下げながら円高進行してゆく展開を想定する。状況好転には治療法の確立等で情勢が大きく好転する必要があると思われる。(了)<3/8 17時>

ドル円見通し 2018年3月、2019年1月と8月以来の104円台

ドル円日足

【当面の主な発表予定】

3/9(月)
米国が夏時間入り 3月8日から
08:50 (日) 1月 経常収支・季調前 (12月 5240億円、予想 5303億円)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調済 (12月 1兆7147億円、予想 1兆6598億円)
08:50 (日) 10-12月期GDP改定値 前期比 (速報 -1.6%、予想 -1.7%)
08:50 (日) 10-12月期GDP改定値 年率 (速報 -6.3%、予想 -6.7%)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー現状判断DI (1月 41.9)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー先行判断DI (1月 41.8)
16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 152億ユーロ)
16:00 (独) 1月 経常収支 (12月 294億ユーロ)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -3.5%、予想 1.6%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -6.8%、予想 -4.2%)

3/10(火)
06:45 (NZ) 10-12月期製造業売上高 前期比 (前期 0.9%)
08:50 (日) 2月 マネーストックM2 前年同月比 (1月 2.8%)
09:30 (豪) 2月 NAB企業景況感指数 (1月 3)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 5.4%、予想 5.2%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 0.1%、予想 -0.3%)
16:00 (ト) 12月 失業率 (11月 13.3%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP確定値 前期比 (改定値 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP確定値 前年同期比 (改定値 0.9%、予想 0.9%)

3/11(水)
16:00 (ト) 1月 経常収支 (12月 -28.0億ドル)
18:30 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 0.3%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.3%)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前年同月比 (12月 -1.8%、予想 -2.5%)
18:30 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 0.3%、予想 0.3%)
18:30 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 8.45億ポンド、予想 -70.00億ポンド)
18:30 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 77.15億ポンド、予想 -2.11億ポンド)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.1%、予想 0.0%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 2.5%、予想 2.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.3%、予想 2.3%)
27:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -326億ドル、予想 -2385億ドル)

3/12(木)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 0.2%、予想 -0.3%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 1.7%、予想 1.0%)
08:50 (日) 1-3月期大企業全産業業況判断指数・BSI (前期 -6.2)
08:50 (日) 1-3月期大企業製造業業況判断指数・BSI (前期 -7.8)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -2.1%、予想 1.2%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -4.1%、予想 -3.4%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 0.5%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 2.1%、予想 1.8%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前月比 (1月 0.5%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.9万人)
21:45 (欧) 欧州中央銀行・ECB政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルド欧州中央銀行総裁、定例記者会見

3/13(金)
13:30 (日) 1月 第三次産業活動指数 前月比 (12月 -0.2%)
16:00 (ト) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 1.9%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 0.0%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 2月 輸出物価指数 前月比 (1月 0.7%、予想 -0.4%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (2月 101.0、予想 96.7)


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