ドル円見遠し 急伸続く、円売りの様相も(20/2/21)

112.21円まで一段高となった。その後は112円を挟んだ揉み合いとなっているが一段高状態を維持している。

ドル円見遠し 急伸続く、円売りの様相も(20/2/21)

【概況】

ドル円は2月1日安値108.30円から2月7日高値110.02円へ反騰した後は、2月12日に110.13円までわずかに高値を切り上げたものの110円台に乗せても維持できずに109円台後半での持ち合いが続いていたが、19日夜に2月12日高値110.13円、さらに1月17日高値110.28円を超えて持ち合いを上放れしてから急騰商状となった。
2月20日早朝に111.59円まで大幅上昇となり、午前には111.08円まで小反落したものの111円台を維持し、20日夜もドル全面高を背景に深夜には112.21円まで一段高となった。その後は112円を挟んだ揉み合いとなっているが一段高状態を維持している。

米経済指標は概ね良好だった。米フィラデルフィア連銀が発表した2月の製造業景況指数は36.7となり前月の17.0から上昇、市場予想の12.0を上回り2017年2月以来の高水準となった。
米コンファレンス・ボードが発表した1月の景気先行指数は112.1で前月比0.8%上昇となり、市場予想の0.4%を上回った。
米労働省が発表した週間新規失業保険申請は季節調整済みで21万件となり前週比4000件増加、市場予想と一致した。

【ドル全面高+円売り】

新型コロナウイルス感染拡大で2月1日まで急落した後は株高に支えられてリスク回避感が緩んだとして110円台へ戻したものの、日本での感染拡大リスク等を意識して株高程には楽観できずに上値も限定的だった。しかし2月7日以降の持ち合いを上放れし、1月17日高値を超えたことで昨年8月26日底からの上昇基調継続として円高を見込んでいた弱気筋が一斉に踏み上げ=損切りの円売りに走ったことで円安ドル高の連鎖反応が発生したと思われる。
昨年12月以降は110円前後が壁となって何度も反落していたため、今回の高値更新が壁を突破しての一段高入りとして市場心理的な弾みを付けたという見方もできるところだが、今回の円安が円の暴落的な下げという印象も湧いている。

日本の10-12月期GDPが年率換算でマイナス6.3%まで悪化したこと、1月からの新型コロナウイルスの感染拡大により1-3月期も大幅な落ち込みが懸念されることで円売り感が強まった可能性もある。
中国本土の感染者と死者は増加を続けているものの日々の増加数は減少傾向を示しており、上海総合株価指数が20日には前日比1.84%高と大幅上昇するなど上海株は持ち直しに勢いがついて既に春節明け暴落分を解消している。NYダウは2月20日に一時300ドルを超える反落を見せたものの前日比128.05ドル安まで持ち直して騰勢を維持しており、日経平均も2月14日から18日まで3日間続落したが米中株高により19日、20日と持ち直している。これら株式市場の楽観がドル円においてもリスク回避感のゆるみとして持ち合い上放れに貢献したといえるのだが、急激な円安ドル高の進み具合に対してここ最近のドル円の騰落感覚からは逸脱したドル高円安という印象も強まっていることに警戒感も出始めている。

新型コロナウイルスの感染拡大においては、日本の感染者数はクルーズ船分を加えて725人まで拡大し、死者も3人に増え、全国的な広がりも見え始めている。またこれまでは比較的感染拡大が抑え込まれていたと評価されていた韓国での感染者数が前日から倍増となる104人に一挙に増えたこと、シンガポールの感染者数も85人へ拡大するなど、アジアの拡大が深刻さを増していることが今回のドル円急伸に影響しているのではないかとも思われる。タイが日本からの渡航制限を始めたことも踏まえ、日本への海外旅行者の急減と爆買いの喪失、日本の個人消費意欲の大幅な落ち込み、中国の企業活動低下による製品・部品調達の停滞での製造業不振などが見込まれれば、1-3月期のGDP続落によるリセッション入りも懸念される。大規模なイベント中止も始まり、東京五輪開催への懸念も見られる。これらがドル高という意味合いよりも円安・円売りという意味合いを強めているのではないかと危惧される。

【ドル高進行】

20日もドル全面高が続いている。ユーロドルは2018年2月天井以来の安値を更新した。英ポンドは昨年112月以降の安値を更新して昨年9月安値からの戻りが一巡して下落再開に入った印象が強まっている。
新興国。資源輸出国に対するドル高も強まっており、豪ドル米ドルは2011年7月天井以降の安値更新が続いており、2008年10月のリーマンショック時の安値水準に接近している。ブラジルレアルは史上最安値を更新中だ。
メジャー通貨の加重平均であるドル指数は2月19日に昨年10月1日高値を超えて2017年5月以来の高値水準となったが20日も続伸している。
これらドルストレートでのドル全面高が今回のドル円急騰の一番の要因ではあるだろう。しかし急激な円安は日本売り的な市場心理も反映している可能性があるとすれば、昨年8月からのドル高円安基調が行き詰まって円高を再開してゆくのではないかとの観測も大きく後退することになる。

ドル円は1月17日高値を上抜いたことでダブル天井破りによる一段高に入った。1月17日から1月31日までの下げ幅1.98円の倍返しは112.26円だが、2月20日深夜高値112.21円でほぼ到達した。この上は2019年4月天井112.39円だが、昨年4月天井を超えると2018年10月4日高値114.54円まで上値目途が切り上がってゆく可能性も考える必要があると思われる。中勢レベルの弱気転換には2月19日からの急騰分を解消する反落が必要だと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月17日深夜高値をサイクルトップとしていったん弱気サイクル入りとしていたが、18日夜安値からの反発で17日深夜高値と同値まで戻したために、19日朝時点では18日夜安値で既にサイクルボトムをつけて新たな強気サイクルに入ったとし、トップ形成期を20日夜から24日深夜にかけての間とした。20日深夜へ一段高し、その後も高値圏を維持しているのでまだ上昇余地ありとするが、前回サイクルトップから3日を経過しているので21日未明安値111.70円割れを弱気転換注意、20日午前安値111.08円割れからは弱気サイクル入りとして21日夜から25日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では持ち合い上放れにより遅行スパンが好転、先行スパンを突破したが、その後も両スパンそろっての好転を続けている。新たな高値更新へ進めないと21日夕刻からは遅行スパンが悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは安値試し優先とするが、いったん悪化しても早々に好転してくる場合は上昇再開とし、20日午前安値を割り込む場合は反動安入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先が続くと思われる。

60分足の相対力指数は2月20日未明高値時に90ポイントを超えて20日深夜への一段高では指数のピークが切り下がっているので弱気逆行による下落警戒感が出始めているが、70ポイント割れの現状から75ポイント以上へ切り返す場合は弱気逆行破りによる一段高入りも考えられるので、弱気転換は50ポイント割れからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月21日未明安値111.70円を下値支持線、20日深夜高値112.21円を上値抵抗線とみる。
(2)111.70円以上での推移中は高値更新から112.50円、さらに113円に迫る可能性もあるとみる。112.50円以上は反落警戒圏とし、いったん下げに入る場合は高値から1円以上の下落となる可能性に注意するが、111.50円以上での推移なら週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)111.70円割れから弱気転換注意とし、20日午前安値111.08円割れからは弱気サイクル入りとみて110.75円前後への下落を想定する。110.75円以下は反騰注意とするが、111.50円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

2/21(金)
17:30 (独) 2月 製造業PMI速報値 (1月 45.3、予想 44.8)
17:30 (独) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 54.2、予想 54.2)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI速報値 (1月 47.9、予想 47.3)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 52.5、予想 52.3)
18:30 (英) 2月 製造業PMI速報値 (1月 50.0)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 53.9)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.4%、予想 1.4%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.1%、予想 1.1%)

23:35 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
23:45 (米) 2月 製造業購買担当者景気指数(PMI、速報値) 51.9 51.5
23:45 (米) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 53.4、予想 53.5)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数 前月比 (12月 3.6%、予想 -0.9%)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (12月 554万件、予想 549万件)
24:15 (米) ブレイナードFRB理事、ボスティック・アトランタ連銀総裁、パネル討論
27:30 (米) クラリダFRB副議長、パネル討論
27:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、パネル討論会

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