ドル円見通し 110円台を維持できず、109円台後半での横ばい(週報2月第3週)

14日の日中から15日早朝にかけては109.75円を挟んでほぼ横ばいの動きにとどまって週を終えた。

ドル円見通し 110円台を維持できず、109円台後半での横ばい(週報2月第3週)

ドル円見通し 110円台を維持できず、109円台後半での横ばい

【概況】

中国武漢発の新型コロナウイルスの感染拡大問題により、リスク回避感が強まった春節明け前の2月1日に108.30円まで下げていたドル円は、2月3日からのNYダウ連騰、4日からの上海総合株価指数の反騰・連騰によりリスク回避感が緩んで2月7日には110.02円まで持ち直した。
2月7日夜はNYダウが越週リスクを嫌って下げたためにドル円も109.53円までいったん下げたが、2月10日以降も株高基調は継続したために2月12日夕刻には110.13円を付けて1月17日高値110.28円に迫った。
2月13日朝は110円台だったが、13日朝に中国が感染統計における集計方法を変更したとして死者が前日より242人増え1310人になったと発表したことでリスク回避感の緩みが是正されて13日夜には109.62円まで下げた。しかし、さらにリスク回避感を強めて円高へ進む流れにはならず、14日の日中から15日早朝にかけては109.75円を挟んでほぼ横ばいの動きにとどまって週を終えた。

【感染拡大に対する収束期待の楽観と不安の交錯】

2月17日時点で、新型コロナウイルスによる死者数は1666人、感染者数は6万8586人に達した。横浜に寄港している大型クルーズ船での感染拡大も進んでおり、クルーズ船を含む日本の感染者数は400人を超え、感染経路不明での感染者数が増加、日本人死者も初めて発生している。欧米の感染者数は中国や日本程には増えていないものの、米国やカナダなどはクルーズ船から自国民をチャーター機で救出することを表明するなど、交通封鎖された武漢市から各国がチャーター機で自国民を脱出させたことを彷彿とさせるような状況になりつつある。

それでも株式市場は極めて楽観的で、1月31日に前日比603.41ドル安といったんは急落したNYダウはその後の連騰で2月12日には史上最高値を更新し、14日も前日比25.23ドル安と若干の下げで最高値近辺を維持している。ナスダック総合株価指数は14日も史上最高値を更新している。上海総合株価指数も2月3日に7.7%安の暴落で春節明け再開となり2月4日も2%強の続落で開始したものの2月12日まで7連騰、13日は反落したが14日は前日比0.38%高と上昇している。
株式市場は、いずれ事態は収束し、中国経済も第1四半期に大幅に落ち込んでもその後は持ち直しに入るだろうとの楽観的な見方に支えられているのだろうと思われる。特に米国株式市場は自国への直接的な感染被害がまだ軽微であり、このまま米景気の好調さを維持しつつ感染収束後には中国景気持ち直しの恩恵を受けるとの期待もあるのだろう。

しかし、為替市場、債券市場、国際商品市場は株式市場程には楽観できずにいる。昨年末から米10年債利回りは低下傾向を続け、2月14日の米10年債利回りは1.59%にとどまっている。NY原油は1月8日にイラン情勢緊張を背景として65.65ドルの高値を付けてから下落に転じ、感染拡大による中国需要低下懸念で大幅続落に入って2月4日には49.31ドルの安値を付けた。その後は50ドル割れを買い戻されてやや戻しているものの急落した状況から脱却できずにいる。
米長期債とともに安全資産としてリスク回避買いが入るゴールドはイラン情勢で1月8日高値1611.23ドルを付けた後は新たな高値更新へ進んでいないが株高ドル高と並走して高値圏の持ち合いを維持している。東京の金先物市場では円安分を反映しているためにドル建てよりも強く、2月15日未明高値で1月8日高値を超えて上場来最高値を更新している。
先高期待で「持たざるリスク」を嫌って買われる株高と、先行き不安により安全資産へのリスクヘッジとして買われる債券高とゴールド高が並走する状況となっている。

為替市場ではリスク回避感が強まればドルストレートでのドル買い戻しへ傾斜しやすくなり、ドル指数は年末からの上昇基調を維持し、特に中国の景気後退に対する影響度が大きいであろうユーロの下落が目立つ。クロス円も円が買い戻されて円高となりやすく、ドル円においてはドル高圧力と円高圧力が交差して110円台では上値が使える状況にとどまり、株高へ同調しきれないジレンマに陥っている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

2月7日以降は109.80円前後を中心とした持ち合いだが、2月7日高値110.02円から2月12日高値110.13円へ若干高値を切り上げ、2月7日深夜安値109.53円から2月13日夜安値109.62円へ若干安値を切り上げている。「持ち合いは持ち合い放れにつけ」というのが基本であり、2月12日高値を超えるか、2月13日及び2月7日安値を割り込むのかにより持ち合い放れが決まり、上下へ大きく動きだすのだろうと思われる。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月7日深夜安値から4日目の2月13日夜安値で直近のサイクルボトムを付けたと思われる。このため、2月13日夜安値を割り込まないうちは2月12日夕高値を基準として17日夕から19日夕にかけての間への上昇余地ありとし、2月12日夕高値超えからは持ち合い上放れにより上昇に勢いがつくと思われる。逆に2月13日夜安値を割り込む場合は底割れによる新たな弱気サイクル入りとなり次のボトム形成期となる18日夜から20日夜にかけての間への下落が想定され、持ち合い下放れも加わるために下げが加速しやすいと思われる。

60分足の一目均衡表では持ち合いによる横ばい推移のため、遅行スパン及び先行スパンが実線と交錯を繰り返しているので方向感に乏しい。2月12日夕高値超えからは持ち合い上放れによる一段高入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先とし、2月13日夜安値割れからは持ち合い下放れによる一段安開始として遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は持ち合い推移のために50ポイント台を維持できずにいる。持ち合い上放れに入る場合は70ポイント台への上昇へ、下放れなら20ポイント台への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月13日夜安値109.62円を下値支持線、2月12日夕高値110.13円を上値抵抗線とみておく。
(2)109.90円以下での推移中は一段安警戒とし、13日夜安値割れからは2月1日からの上昇幅に対する半値押しとなる109.21円前後を目指すとみる。109.25円以下は反発注意とするが、下げが加速する場合は週明けには3分の2押しとなる108.91円まで下値目途が切り下がる可能性も考えられる。
(3)109.90円超えからは強気転換注意とし、12日夕高値超えからは110円台中盤(110.25円から110.65円)への上昇を想定する。(了)<16日20:50>

【当面の主な予定】

2/17(月)
休場、カナダ、米国(株式・債券市場が休場)
08:50 (日) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 0.4%、予想 -1.0%)
08:50 (日) 10-12月期GDP速報値 年率換算 (前期 1.8%、予想 -3.8%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 1.3%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -3.0%)
13:30 (日) 12月 設備稼働率 前月比 (11月 -0.3%)
19:00 (欧) 12月 建設支出 前月比 (11月 0.7%)
19:00 (欧) 12月 建設支出 前年同月比 (11月 1.4%)

2/18(火)
09:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
18:30 (英) 1月 失業保険申請件数 (12月 1.49万件)
18:30 (英) 1月 失業率 (12月 3.5%)
18:30 (英) 12月 失業率・ILO方式 (11月 3.8%、予想 3.8%)
19:00 (独) 2月 ZEW景況感・期待指数 (1月 26.7、予想 20.0)
22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 4.8、予想 5.0)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数 (1月 75、予想 75)
30:00 (米) 12月 対米証券投資・合計 (11月 731億ドル)
30:00 (米) 12月 対米証券投資・短期除 (11月 229億ドル)

2/19(水)
08:50 (日) 12月 機械受 前月比 (11月 18.0%、予想 -8.8%)
08:50 (日) 12月 機械受注 前年同月比 (11月 5.3%、予想 -2.0%)
08:50 (日) 1月 通関貿易統計・季調前 (12月 -1525億円、予想 -1兆7172億円)
08:50 (日) 1月 通関貿易統計・季調済 (12月 -1025億円、予想 -5905億円)
18:00 (欧) 12月 経常収支・季節済 (11月 339億ユーロ)
18:00 (欧) 12月 経常収支・季調前 (11月 366億ユーロ)
18:30 (英) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.0%)
18:30 (英) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 1.3%)
18:30 (英) 1月 消費者物価コア指数 前年同月比 (12月 1.4%)
18:30 (英) 1月 小売物価指数 前月比 (12月 0.3%)
18:30 (英) 1月 小売物価指数 前年同月比 (12月 2.2%)
18:30 (英) 1月 生産者物価コア指数 前年同月比 (12月 0.9%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 11.25%)
22:10 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
22:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.1%)
22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.6%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前年同月比 (12月 1.1%、予想 1.3%)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数・年率換算件数 (12月 160.8万件、予想 140.0万件)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数 前月比 (12月 16.9%、予想 -12.9%)
22:30 (米) 1月 建設許可件数・年率換算件数 (12月 141.6万件、予想 145.0万件)
22:30 (米) 1月 建設許可件数 前月比 (12月 -3.9%、予想 2.1%)
25:45 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、シンポジウム参加
27:30 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
30:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演

2/20(木)
06:45 (NZ) 10-12月期 生産者物価指数 前期比 (前期 1.0%)
09:30 (豪) 1月 新規雇用者数 (12月 2.89万人)
09:30 (豪) 1月 失業率 (12月 5.1%)
16:00 (独) 3月 GFK消費者信頼感 (2月 9.9、予想 9.8)
16:00 (独) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 0.1%)
18:30 (英) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -0.6%)
18:30 (英) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 0.9%)
18:30 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -0.8%)
18:30 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (12月 0.7%)
21:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
22:30 (米) 2月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (1月 17.0、予想 10.0)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 169.8万人)
24:00 (米) 1月 景気先行指数 前月比 (12月 -0.3%、予想 0.4%)
24:00 (欧) 2月 消費者信頼感 (1月 -8.1、予想 -8.0)
27:20 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演

2/21(金)
08:30 (日) 1月 全国消費者物価指数 前年同月比 (12月 0.8%、予想 0.6%)
08:30 (日) 1月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (12月 0.7%、予想 0.7%)
08:30 (日) 1月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (12月 0.9%、予想 0.8%)
17:30 (独) 2月 製造業PMI速報値 (1月 45.3、予想 44.8)
17:30 (独) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 54.2、予想 54.2)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI速報値 (1月 47.9、予想 47.3)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 52.5、予想 52.3)
18:30 (英) 2月 製造業PMI速報値 (1月 50.0)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 53.9)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.4%、予想 1.4%)

19:00 (欧) 1月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.1%、予想 1.1%)
23:35 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
23:45 (米) 2月 製造業購買担当者景気指数(PMI、速報値) 51.9 51.5
23:45 (米) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 53.4、予想 53.5)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数 前月比 (12月 3.6%、予想 -0.9%)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (12月 554万件、予想 549万件)
24:15 (米) ブレイナードFRB理事、ボスティック・アトランタ連銀総裁、パネル討論
27:30 (米) クラリダFRB副議長、パネル討論
27:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、パネル討論会

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