ドル円見通し 感染拡大報道で110円台を維持できず(20/2/14)

ドル円は2月13日夜には109.62円まで安値を切り下げ、その後も109.80円を挟んでの横ばい推移にとどまっている。

ドル円見通し 感染拡大報道で110円台を維持できず(20/2/14)

【概況】

中国湖北省政府は2月13日午前、新型コロナウイルスによる肺炎の死者が前日より242人増え1310人になったと発表した。今回の統計から臨床診断で陽性の人も含めるなど診断方法が変更されたためとしているが、13日午前時点で中国本土の死者数は1368人、確定診断が59883人に大幅増加した。この報道は中国当局による公式数字は実態を反映していないのではないかとの疑念を強めた。報道直後にダウ先物は100ドルを超える下落となり、ドル円も直前の110.12円から109.78円へ下落した。
2月13日夜には日本国内で新たな感染者が4名、感染疑いも数名発生し、初めての国内死者も出た。WHOは日本寄港のクルーズ船・ダイヤモンドプリンセス号を除けば中国以外での劇的感染拡大は認められないとの声明を出しているが、感染経路不明の感染者数が日本で増え始めていることやクルーズ船での感染拡大が止まらないことで中国以外での感染拡大への懸念も強まった。
ドル円は2月13日夜には109.62円まで安値を切り下げ、その後も109.80円を挟んでの横ばい推移にとどまっている。

感染拡大報道が過熱して2月1日には108.30円まで下落したが、春節明けの上海株反騰とNYダウの史上最高値更新によりリスク回避感が緩んでドル円は2月7日に110.02円へ上昇。7日深夜にはダウが反落したことで109.53円まで下げたが、週明けはジリ高で持ち直して12日には110.13円まで高値を切り上げていた。しかし、13日午前の報道から110円割れに至り、今回も110円台を維持しきれずに失速した印象となっている。
NYダウは前日比128.11ドル安と下落、米10年債利回りは0.02%低下の1.62%となった。
米労働省が発表した1月の消費者物価指数は前月比0.1%上昇、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は0.2%上昇した。前年同月比では全体が2.5%上昇、コアは2.3%上昇した。市場予想は前月比の全体が0.2%上昇、コアが0.2%上昇、前年同月比は全体が2.4%上昇、コアが2.2%上昇だったため、前年同月比で予想を超えたことが米景気の堅調さを示してドル高要因となった。

【ユーロ安ドル高進む】

ユーロの下落が目立っている。2月13日には1.0834ドルまで下落して年初来安値を更新している。2018年2月以降の安値も更新中だが、2019年10月安値でいったん下げ渋りに入ってからの一段安のため、チャート上の下値支持線となる目安は2017年1月底の1.0341ドルまで見たらなくなっている。
一段安へ進んでいる背景はドイツ政局不安、中国の感染拡大による経済停滞が中国依存度の高い欧州景気へ悪影響を与えるのではないかとの懸念、株式市場は堅調なものの為替市場全般ではリスク回避的なドルストレートでのドル買い戻しの動きが強まる傾向にあること等が考えられる。
2月13日にはメキシコ中銀行が主要政策金利を0.25%引き下げて7.00%とし、5会合連続の利下げを決定した。感染拡大問題の影響も含めて世界的な金融緩和傾向が継続していることがドル高を助長している。

中国政府は13日、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎で確認された中国本土の死者について、同日午前0時(日本時間同1時)時点で前日より254人増え1367人になったと発表した。うち8割近くを武漢市が占め1036人。感染者は1万5152人増の5万9804人になった。
湖北省による感染確認の基準変更により死者、感染者が急増した。武漢市での感染は3万2994人が確認された。前日から増えた死者の内訳は湖北省が242人、河南省が2人のほか天津市や広東省などで1人ずつ増えた。湖北省以外の新たな感染者は312人で4日を境に減少傾向が続く。ただ、中国本土で治療中の患者は5万2526人、重体は8030人と依然厳しい状況だ。

【110円台では上値が重い】

昨年12月2日に109.72円の高値まで戻した後は110円に届かない状況が続きつつ、1月8日に107.65円まで急落した。その後の持ち直しで1月17日には110.28円を付けて昨年5月以来の110円台乗せとなったものの110円台を維持しきれずに1月31日(2月1日未明)安値108.30円まで下げた。リスク回避感が緩んで株高となったために2月12日高値で110.13円を付けたが1月17日高値を超えられずに110円を再び割り込んできている。
1月17日までは高値切り上げを続けてきたが、110円前後での上値の重さも再三認識させられる状況にある。わずかでも高値更新を実現できればその後の反落でも安値を切り上げて次の上昇で高値を更新する期待も継続するが、高値更新できないままに1月31日安値試しへ向かう場合は、1月17日高値とのダブルトップ形成に終わって安値切り下がりに入るリスクが出てくると注意する。

感染拡大問題については、中国を中心とした感染爆発にとどまって米国への影響はまだ軽微なためにNYダウは一時的な反落を入れながらも史上最高値更新まで上昇するような楽観的心理で進んできた。しかし日本においては感染拡大が徐々に深刻化し始めているため、米国市場心理と日本市場心理とでは乖離が始まる可能性があり、特に日本における為替市場でのリスク回避感が強まる場合はクロス円全般が円高へ進みやすくなり、ドルストレートでのドル高とともにクロス円の円高が並走することも考えておく必要があると思う。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月1日未明安値から5日目となる2月7日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして12日朝から14日朝にかけての間への上昇を想定してきた。
2月12日夕刻にこの間の高値を更新してその後も高値圏を維持していたので13日朝時点ではまだ上昇余地ありとしたが、前回サイクルトップから4日目に入っているので反落警戒期にあるとして109.85円割れを弱気転換注意とし、109.70円割れからは弱気サイクル入りとした。
13日午前の感染拡大報道から109.70円割れへ下落したため、12日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は13日夜から17日深夜にかけての間と想定されるので既に反発注意期に入っているが、12日夕高値を上抜き返せないうちは一段安余地ありとみる。新たな強気サイクル入りは12日夕高値超えからとするが、その場合は17日午後から19日夕にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では、2月13日の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは強気転換注意とし、12日夕高値超えからは一段高入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は2月12日夕高値と13日朝高値がほぼフラットだったのに対して指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せてから下落している。30ポイント割れには至らずにやや戻しているが50ポイント前後が抵抗となりやすいのでもう一段安余地があると考える。13日夕安値を割り込む場合に指数のボトムが切り上がれば強気逆行での上昇再開へ進む可能性が考えられるが、指数のボトムが切り下がるならさらに週明けへ安値更新しやすくなると注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月13日夜安値109.62円を下値支持線、2月12日夕高値110.13円を上値抵抗線とみておく。
(2)110円以下での推移中は一段安警戒とし、13日夜安値割れからは2月1日からの上昇幅に対する半値押しとなる109.21円前後を目指すとみる。109.25円以下は反発注意とするが、下げが加速する場合は週明けには3分の2押しとなる108.91円まで下値目途が切り下がる可能性も考えられる。
(3)110円超えからは強気転換注意とし、12日夕高値超えからは110円台中盤(110.25円から110.65円)への上昇を想定する。またその際は週明けへ続伸しやすいとみる。

【当面の主な予定】

2/14(金)
13:30 (日) 12月 第三次産業活動指数 前月比 (11月 1.3%、予想 0.3%)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 0.1%、予想 0.1%)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値 前年同期比 (前期 0.5%、予想 0.4%)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値・季調前 前年同期比 (前期 1.0%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 192億ユーロ、予想 190億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 207億ユーロ)
19:00 (欧) 10-12月期GDP改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP改定値 前年同期比 (速報 1.0%、予想 1.0%)

22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 0.3%、予想 -0.2%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 -0.2%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 0.7%、予想 0.3%)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.3%、予想 -0.2%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 77.0%、予想 76.8%)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (1月 99.8、予想 99.2)
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 -0.2%、予想 0.1%)
25:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る