【概況】
ドル円は2月12日夕刻に110.13円まで上昇して2月7日朝高値110.02円を超えてきた。
新型コロナウイルスの感染拡大によるリスク回避感を背景に1月31日安値108.30円まで大幅下落したが、春節明けの上海総合株価指数の反騰、NYダウの楽観的な連騰と史上最高値更新の中でリスク回避感が大幅に後退して2月7日には1月22日以来の110円台に到達していた。しかし2月7日は連騰に対する高値警戒感でダウが反落し、ドル円も7日深夜安値109.53円まで下落、週明けは株高基調は継続したものの110円超えに対する上値の重さも再認識されていたために109.75円を挟んだ横ばいにとどまっていた。
2月12日の日中も小動きだったが、15時過ぎにダウ先物が高値を更新したところでドル円も買われて110.13円まで上昇して2月1日以降の高値を更新した。
【株高による押し上げ】
株高基調が続いている。2月3日の春節明けに前日比8%を超える急落で始まった上海総合株価指数は2月4日から反騰に転じ、2月12日まで7連騰となっている。日足は2月3日も含めて8日連続の陽線で12日高値では春節急落前の安値に迫っている。春節暴落による窓埋めは完了していないが、中国人民銀行による利下げ観測もあって反騰を継続している。
NYダウは2月12日も前日比275.08ドル高と上昇して4日ぶりに史上最高値を更新、ナスダック総合指数も87.02ポイント高で3日連続の史上最高値更新となった。
中国の新型コロナウイルスの感染者数は12日時点で湖北省においては前日比で2000人増を割り込んだ。中国全体では2月4日の3887人増をピークとして増加数の減少傾向が続いている。大幅に感染者数が拡大していることではあるのだが、中国の爆発的感染拡大が収まり始めれば世界への影響も限定的となり、感染拡大騒動が収束した後の景気復興期待も持ち上がる。
ムニューシン米財務長官は上院財政委員会での証言、新型コロナウイルス感染拡大問題についての経済への影響評価には3〜4週間程度かかり、中国が大きな影響を受けるのは間違いないとしたが、影響は年内にとどまり2021年以降は引きずらないだろうとの見通しを示した。米国への影響が限定的なら米国株高は継続しやすいと市場は受け止めているようだ。
米連銀のパウエル議長は11日と12日の上下院議会証言で、米国に影響がある可能性が極めて高いとして景気の下振れ圧力に言及しているが、米国景気への悪影響が出れば連銀が利下げ再開に動いて株式市場を下支えするという楽観的な受け止め方もされているようだ。
米大統領選の民主党候補指名争いでは2月11日のニューハンプシャー州予備選でサンダース上院議員が勝利した。野党民主党が急進左派系へ傾斜すれば株高重視で現実路線のトランプ大統領が再選される可能性も高まるだろうと市場は見ており株式市場にはプラス効果となっているようだ。
総じて株高が続けばリスクオン心理は拡大し、ドル円にとっても押し上げ要因となるが、中国人民銀行が利下げに走り、新興国などの金融緩和拡大基調が続く場合はドルストレートでのドル高要因になると共にクロス円での円高要因となりやすい点には注意がいる。
【ドル高感強まる】
ユーロの軟調が目立っている。ユーロドルは2月12日に1.0864ドルまで下げて10月1日安値を割り込み年初来安値を更新したが、2018年2月天井1.2555ドル以降の下落基調の継続であり、チャート上の下値支持線は2017年1月底1.0341ドルまで見当たらなくなっている。米国株高が続く中でドルが買われていること、ドイツのメルケル首相後継とされていたクランプカレンバウアー氏が辞意を表明したことで先行きの政局不安が強まっていることもユーロ売り要因とされている。
新興国通貨安も目立ち始めた。
2月12日はブラジル・レアルが一時最安値を更新した。12月のブラジル小売売上高が8か月振りにマイナスとなったことも影響したようだが景気悪化懸念で売られており、一時は4.3526レアルの安値を付けて年初来の下落率が8%まで拡大している。
トルコリラも昨年5月以来の安値を付けた。シリア北西部でアサド政権軍とトルコ軍が軍事衝突しており、エルドアン大統領がシリアへの全面的な攻撃を警告したことで緊張が高まっていることでリラが売られている。
メジャー通貨の加重平均であるドル指数は2月12日に99ポイント台へ到達して年末からの高値を更新、昨年10月1日高値に迫ってきている。ドル全面高の様相であり、ドル円としても110円に乗せても維持できない状況が続いてきた限界を超える後押しになるかどうか注目される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月1日未明安値をサイクルボトムとした強気サイクルで連騰し、2月7日朝高値で直近のサイクルトップを付けて7日深夜へ下落したが、その後は新たな安値更新を回避して109.75円を挟んだ揉み合いとなっていたため、2月12日朝時点では2月1日未明安値から5日目となる2月7日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また今回の高値形成期を12日朝から14日朝にかけての間と想定した。
2月12日夕刻にこの間の高値を更新してその後も高値圏を維持しているのでまだ上昇余地ありとみるが、前回サイクルトップから4日目に入っているので反落警戒期にあるとみて、109.85円割れを弱気転換注意とし、109.70円割れからは弱気サイクル入りとして13日深夜から17日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、2月12日夕刻の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いた。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから転落するところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は2月12日夕刻の上昇で70ポイントを超えたが、その後は60ポイント台中心で推移している。12日夕刻高値を上抜くところで指数のピークが切り下がると弱気逆行となる点に注意し、50ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開警戒とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.85円、次いで109.70円を下値支持線、2月12日夕高値110.13円を上値抵抗線とみておく。
(2)110円を割り込まないか割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとし、110.13円超えからは1月17日高値110.28円試しを想定する。1月17日高値を超えないかわずかに超えたところから110円を割り込む場合は戻り一巡による下げ再開を疑うが、110円台を維持しての推移が続く場合は週末にかけて110円台中盤(110.35円から110.75円)を目指す可能性ありとみる。
(3)109.85円割れを弱気転換注意とし、109.70円割れからは弱気サイクル入りとみて2月7日深夜安値109.53円試しを想定する。急激なリスク回避感の高まりがなければ109.50円前後は押し目買いされやすいところと思われるが、リスク回避感が強まる状況で109.50円を割り込む場合は109円台序盤(109.25円から109.00円)へ下値目途を引き下げる。
【当面の主な予定】
2/13(木)
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前月比 (12月 -0.6%、予想 -0.6%)
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (12月 1.7%、予想 1.7%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 2.3%、予想 2.4%)
22:30 (米) 1月 消費者物価コア指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 消費者物価コア指数 前年同月比 (12月 2.3%、予想 2.2%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件、予想 21.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 175.1万人、予想 174.5万人)
24:00 (米) 米上院、シェルトン、ウォラー両氏のFRB理事指名承認公聴会
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.25%、予想 7.00%)
2/14(金)
13:30 (日) 12月 第三次産業活動指数 前月比 (11月 1.3%、予想 0.3%)
16:00 (ト) 12月 経常収支 (11月 -5.2億ドル)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 0.1%、予想 0.1%)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値 前年同期比 (前期 0.5%、予想 0.4%)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値・季調前 前年同期比 (前期 1.0%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 192億ユーロ、予想 190億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 207億ユーロ)
19:00 (欧) 10-12月期GDP改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP改定値 前年同期比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 0.3%、予想 -0.2%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 -0.2%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 0.7%、予想 0.3%)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.3%、予想 -0.2%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 77.0%、予想 76.8%)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (1月 99.8、予想 99.2)
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 -0.2%、予想 0.1%)
25:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
オーダー/ポジション状況
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