ドル円見通し ダブル底とダブル天井の狭間(週報2月第2週)

雇用統計を見れば米国の労働市場は堅調に推移しているといえる。しかし先行きは新型コロナウイルスの感染拡大の影響がどうなるのか見通せない状況にある。

ドル円見通し ダブル底とダブル天井の狭間(週報2月第2週)

ドル円見通し ダブル底とダブル天井の狭間

【概況】

ドル円は年初のイラン有事情勢緊迫化により1月8日安値107.65円まで下落した後、緊張緩和により1月17日高値110.28円まで上昇して12月2日高値を超えて8月26日以降の高値を更新した。110円台は2019年5月21日高値110.67円以来となった。しかし今度は新型コロナウイルスの感染拡大によるリスク回避感が急速に高まる中で1月31日安値108.30円まで下落した。感染拡大の先行きが見えず、2月3日から春節明けの取引が始まる中国市場での暴落懸念も抱えて1月31日にはNYダウが603.41ドル安と大幅下落で年初来安値を更新した流れと同調したものだった。

2月3日に春節明けの取引が再開した中国市場では上海総合株価指数が8%を超える暴落で開始して前日比7.7%安、2月4日にはさらに前日比で2%を超える続落で始まったものの1.3%高まで反騰し、2月5日から7日へ連騰した。NYダウは2月3日に143.78ドル高、4日に407.82ドル高、5日に483.22ドル高と連騰し、2月6日は88.92ドル高にとどまったものの1月17日高値を超えて史上最高値を更新した。
感染拡大は続いているが、WHOがパンデミックではないとし、中国人民銀行が19兆円規模の資金供給で市場支援を行ったことでいずれは騒動も収まるだろうとの楽観が株高を発生させ、金融市場全般のリスク回避感が大きく緩んだ。
株高によりドル円も反騰に転じて2月7日朝には110.02円を付けて1月17日高値に迫った。

2月7日は米雇用統計の発表があり、市場予想を上回る良好さだったがNYダウは277.26ドル安と下落した。感染拡大問題には楽観的な反応が続いてきたが急反騰で史上最高値を更新するところまで買われてきたことでの高値警戒感と、週をまたぐリスクが敬遠されたためと思われる。株安とともにドル円も2月7日深夜に109.53円まで反落した。2月3日からの連騰により110円台に到達したが、1月17日高値からの下落をほぼ解消したことと、昨年12月以降は110円台に乗せても維持できずに失速してきたことで高値警戒感も加わったためと思われる。

【雇用統計よりも感染拡大問題と米連銀の利下げ再開可能性】

米労働省が2月7日に発表した1月の雇用統計では非農業部門就業者数が前月比22万5000人増となり2か月ぶりに20万人を超え市場予想の16万人増を上回った。失業率は3.6%で前月から0.1%上昇したものの歴史的低水準を維持した。また物価上昇の先行指標とされる平均時給の伸びも前年同月比で3.1%となり市場予想の3.0%を上回った。12月も当初発表の2.9%から3.0%へ上方修正された。
雇用統計を見れば米国の労働市場は堅調に推移しているといえる。しかし先行きは新型コロナウイルスの感染拡大の影響がどうなるのか見通せない状況にある。また就業者統計も全般は好調なものの製造業や小売は落ち込んでおり、米中通商摩擦の影響が見られた。

米連銀(FRB)は2月7日に半年に1度の金融政策報告書を議会提出した。その中には「中国でのコロナウイルスの影響が見通しへの新たなリスクをもたらし」「経済規模ゆえに中国での深刻な機能不全はリスク選好の後退やドルの上昇、貿易およびコモディティー価格の落ち込みを通じて米国や世界の市場に波及する可能性がある」という見方が示された。
パウエル米連銀議長は2月11日に下院金融サービス委員会、12日に上院銀行委員会で半期に一度の議会証言をする。金融政策報告書の通り、現状は感染拡大問題の進展を見守るしかない段階と思われるが、株式市場の楽観程に米連銀が楽観していないとすれば、利下げ再開の可能性も意識され始めるかもしれない。

新型コロナウイルスによる死者数は中国本土で700人を超えて感染者数は3万51,000人を超えた。1週間前は死者が300人を超えて感染者数が1万1千人を超えたところだった。感染者数や死者数の確定がしっかりできていないのか、把握及びカウントされていない現実の数字がどの程度なのかは不明だ。多くの国が中国武漢からの自国民脱出を実行し、武漢等の交通遮断等は解除の兆しが見えない。世界の工場である中国内の製造業の稼働再開も遅れている。株式市場の楽観的な見通しと現実が乖離し始める時には金融市場はリスク回避へ急旋回する可能性も警戒すべきだろう。ドル円が110円台到達で上値が重くなること、米10年債利回りが株高によりやや持ち直したものの低水準のままであること、安全資産の代表とされるゴールドが昨年末からの一段高状態を維持していること等、株式市場以上に慎重姿勢を示している市場もある。

【ダブル天井破りかダブル底破れか】

1月17日から1月31日までの下げ幅は1.98円だったが、1月8日安値を割り込まずにV字反騰した。直前の下落と反騰のレベルは1月8日にかけて2.07円の下落からV字反騰した時にも近い。
このまま1月17日高値を上抜いて続伸に入れば、1月8日から1月17日への上昇幅並みとして110.93円、1月31日への下げ幅の倍返しとなる112.26円等を目指す可能性が高まると思われる。しかし1月17日高値を上抜けないかわずかに超えても直後に失速する場合はダブル天井形成の可能性が高まり、1月31日安値を割り込むところからはダブル天井完成により1月31日への下げ幅の二倍値で106.32円前後を目指す下落へ進み、さらに昨年8月底からの上昇基調が崩れて昨年8月底試しへ向かう流れへ進みやすくなると思われる。

【雇用統計よりも感染拡大問題と米連銀の利下げ再開可能性】

【雇用統計よりも感染拡大問題と米連銀の利下げ再開可能性】

米労働省が2月7日に発表した1月の雇用統計では非農業部門就業者数が前月比22万5000人増となり2か月ぶりに20万人を超え市場予想の16万人増を上回った。失業率は3.6%で前月から0.1%上昇したものの歴史的低水準を維持した。また物価上昇の先行指標とされる平均時給の伸びも前年同月比で3.1%となり市場予想の3.0%を上回った。12月も当初発表の2.9%から3.0%へ上方修正された。
雇用統計を見れば米国の労働市場は堅調に推移しているといえる。しかし先行きは新型コロナウイルスの感染拡大の影響がどうなるのか見通せない状況にある。また就業者統計も全般は好調なものの製造業や小売は落ち込んでおり、米中通商摩擦の影響が見られた。

米連銀(FRB)は2月7日に半年に1度の金融政策報告書を議会提出した。その中には「中国でのコロナウイルスの影響が見通しへの新たなリスクをもたらし」「経済規模ゆえに中国での深刻な機能不全はリスク選好の後退やドルの上昇、貿易およびコモディティー価格の落ち込みを通じて米国や世界の市場に波及する可能性がある」という見方が示された。
パウエル米連銀議長は2月11日に下院金融サービス委員会、12日に上院銀行委員会で半期に一度の議会証言をする。金融政策報告書の通り、現状は感染拡大問題の進展を見守るしかない段階と思われるが、株式市場の楽観程に米連銀が楽観していないとすれば、利下げ再開の可能性も意識され始めるかもしれない。

新型コロナウイルスによる死者数は中国本土で700人を超えて感染者数は3万51,000人を超えた。1週間前は死者が300人を超えて感染者数が1万1千人を超えたところだった。感染者数や死者数の確定がしっかりでいていないのか、把握及びカウントされていない現実の数字がどの程度なのかは不明だ。多くの国が中国武漢からの自国民脱出を実行し、武漢等の交通遮断等は解除の兆しが見えない。世界の工場である中国内の製造業の稼働再開も遅れている。株式市場の楽観的な見通しと現実が乖離し始める時には金融市場はリスク回避へ急旋回する可能性も警戒すべきだろう。ドル円が110円台到達で上値が重くなること、米10年債利回りが株高によりやや持ち直したものの低水準のままであること、安全資産の代表とされるゴールドが昨年末からの一段高状態を維持していること等、株式市場以上に慎重姿勢を示している市場もある。

【ダブル天井破りかダブル底破れか】

1月17日から1月31日までの下げ幅は1.98円だったが、1月8日安値を割り込まずにV字反騰した。直前の下落と反騰のレベルは1月8日にかけて2.07円の下落からV字反騰した時にも近い。
このまま1月17日高値を上抜いて続伸に入れば、1月8日から1月17日への上昇幅並みとして110.93円、1月31日への下げ幅の倍返しとなる112.26円等を目指す可能性が高まると思われる。しかし1月17日高値を上抜けないかわずかに超えても直後に失速する場合はダブル天井形成の可能性が高まり、1月31日安値を割り込むところからはダブル天井完成により1月31日への下げ幅の二倍値で106.32円前後を目指す下落へ進み、さらに昨年8月底からの上昇基調が崩れて昨年8月底試しへ向かう流れへ進みやすくなると思われる。

【当面のポイント】

2月7日朝高値110.02円から7日深夜安値109.53円へ反落した。2月1日安値108.30円からの上昇に対する3分の1押しが109.44円、半値押しが109.16円、3分の2押しが108.87円である。
(1)当初、2月7日朝高値110.02円を上値抵抗線、7日深夜安値109.53円を下値支持線とする。
(2)110.02円を超えないうちは戻り一巡による安値試しが続きやすいと仮定し、109.53円を割り込む場合は109円前後への下落を想定する。109.53円を割り込んだ後に109.75円超えへ反発するところからは上昇再開から一段高へ進む可能性ありと考えるが、109.75円を超えずに安値を更新する場合は108円台中盤へさらに一段安して行きやすいと考える。
(3)109.90円超えからは上昇再開の可能性を優先し、2月7日朝高値110.02円を上抜く場合は1月17日高値110.28円試しを想定する。110.25円以上は反落注意だが、110円以上での推移が続く場合は週の中後半へ向けて上値目途を110.35円から110.75円にかけてのゾーンへ引き上げる。(了)<2月9日21:50>

【当面の主な予定】

2/10(月)
08:50 (日) 12月 経常収支・季調前 (11月 1兆4368億円、予想 4647億円)
08:50 (日) 12月 経常収支・季調済 (11月 1兆7949億円、予想 1兆6772億円)
08:50 (日) 12月 貿易収支・国際収支ベース (11月 -25億円、予想 280億円)
10:30 (中) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 4.5%、予想 4.9%)
10:30 (中) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 -0.5%、予想 0.1%)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー-現状判断DI (12月 39.8、予想 39.1)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー-先行判断DI (12月 45.4、予想 43.8)
16:00 (ト) 11月 失業率 (10月 13.4%、予想 13.4%)
27:45 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
29:15 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演

2/11(火)
休場、日本(建国記念日)
09:30 (豪) 1月 NAB企業景況感指数 (12月 3)
18:30 (英) 12月 月次GDP 前月比 (11月 -0.3%、予想 0.2%)
18:30 (英) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 0.4%、予想 0.0%)
18:30 (英) 10-12月期GDP速報値 前年同期比 (前期 1.1%、予想 0.8%)
18:30 (英) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 -1.2%、予想 0.3%)
18:30 (英) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -1.6%、予想 -0.8%)
18:30 (英) 12月 製造業生産 前月比 (11月 -1.7%、予想 0.4%)
18:30 (英) 12月 貿易収支・物品 (11月 -52.56億ポンド、予想 -100.00億ポンド)
18:30 (英) 12月 貿易収支・全体 (11月 40.31億ポンド、予想 -3.50億ポンド)
20:00 デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演 [ダブリン]
24:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、下院金融サービス委員会証言
27:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
28:15 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、質疑応答

2/12(水)
08:50 (日) 1月 マネーストックM2 前年同月比 (12月 2.7%、予想 2.8%)
10:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 1.00%、予想 1.00%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 0.2%、予想 -1.7%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -1.5%、予想 -1.9%)
22:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
24:00 (米) パウエルFRB議長、上院銀行委員会証言
28:00 (米) 1月 月次財政収支 (12月 -133億ドル、予想 62億ドル)

2/13(木)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.0%)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前年同月比 (12月 0.9%、予想 1.5%)
16:00 (ト) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 0.7%、予想 0.3%)
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前月比 (12月 -0.6%、予想 -0.6%)
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (12月 1.7%、予想 1.7%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 2.3%、予想 2.5%)
22:30 (米) 1月 消費者物価コア指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 消費者物価コア指数 前年同月比 (12月 2.3%、予想 2.2%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件、予想 21.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 175.1万人、予想 174.8万人)
24:00 (米) 米上院、シェルトン、ウォラー両氏のFRB理事指名承認公聴会
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.25%、予想 7.00%)

2/14(金)
13:30 (日) 12月 第三次産業活動指数 前月比 (11月 1.3%、予想 0.3%)
16:00 (ト) 12月 経常収支 (11月 -5.2億ドル)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 0.1%、予想 0.1%)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値 前年同期比 (前期 0.5%、予想 0.4%)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値・季調前 前年同期比 (前期 1.0%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 192億ユーロ、予想 190億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 207億ユーロ)
19:00 (欧) 10-12月期GDP改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP改定値 前年同期比 (速報 1.0%、予想 1.0%)

22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 0.3%、予想 -0.2%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 -0.2%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 0.7%、予想 0.3%)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.3%、予想 -0.2%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 77.0%、予想 76.8%)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (1月 99.8、予想 99.2)
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 -0.2%、予想 0.1%)
25:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

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