俄かリスクオンの賞味期限切れに要注意
今週のレビュー(2/3−2/7)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初108.42で寄り付いた後、早々に安値108.33まで軟化しました。しかし、先週末金曜日に記録した直近安値108.32を前に下げ渋ると、@春節明けの中国株や人民元相場が急落しつつも概ね想定の範囲内であったこと、A中国当局によるリバースレポ金利の引き下げや流動性供給(含む追加の景気対策期待)を通じて中国金融市場を巡る警戒ムードが後退したこと(アク抜け感)、B米・1月ISM製造業景況指数(結果50.9、予想48.5)や、C米・1月ADP雇用統計(結果29.1万人、予想15.6万人、約4年半ぶり高水準)が良好な結果となったこと、Dクドロー米国家経済会議(NEC)委員長による「新型肺炎の感染拡大による米国経済への影響は最小」との発言、
Eアイオワ州党員集会で急進左派のサンダース氏やウォーレン氏が台頭しなかったことに伴う安堵感、F新型肺炎のワクチン開発に大きな前進があったとの一部報道(※但し、世界保健機関WHOは効果的なワクチンはまだ見つかっていないとコメント)、G中国「環境時報」の英字紙「Global Times」が「新型肺炎の新規感染者数が2日連続で減少」と報じたこと、Hムニューシン米財務長官による「現時点では新型コロナウィルスの感染拡大が中国のサプライチェーンに大きな影響を及ぼしてはいない(問題にはなっていない)」との発言、I中国政府による「750億ドル相当の米国製品を対象に関税率を半分に引き下げる」との報道等が支援材料となり、週後半にかけては、1/22以来、約2週間ぶり高値110.03まで急伸しました。
もっとも、年初来高値110.30を前に伸び悩むと、週末特有のポジション調整(金融市場が閉まっている土日に新型コロナウィルスに絡むヘッドラインが出てくることを警戒し、短期筋がロングポジションを手仕舞う状態)の動きが活発化し、本稿執筆時点(日本時間5時45分現在)では109.77近辺まで押し戻される展開となっております。尚、注目された米・1月雇用統計については、非農業部門雇用者数が力強い数字を示した一方、失業率や平均時給(前月比)がやや弱めの数字となるなど、強弱まちまちの結果となりました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1093で寄り付いた後、早々に高値1.1097まで上昇しました。しかし、@英政府がEUとの貿易交渉において強気な姿勢を見せたこと(英国合意なき離脱リスクの再燃)、A上記@を受けて英ポンドが急落し、ユーロドルも連れ安となったこと、B良好な米経済指標(米製造業PMIや、米ISM製造業景況指数、米ADP雇用統計、米ISM非製造業景況指数など)を受けてドル高が加速したこと、Cユーロ圏・12月小売売上高(結果▲1.6%、予想▲0.9%、約2年ぶり大幅減)や、Dドイツ・12月製造業受注(結果▲2.1%、予想0.6%) が冴えない結果となったこと、Eペンス副大統領が英国によるファーウェイの一部容認について苦言を呈したと報じられたこと(米英通商協議を巡る先行き懸念→英ポンド売り→ユーロ連れ安の流れ)が重石となり、週末にかけては、10/8以来、約4 ヶ月ぶり安値1.0942まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間5時45分現在)では、1.0947近辺で推移しております。
来週の見通し(2/10−2/14)
<ドル円相場>
ドル円は、2/3に記録した安値108.32をボトムに反発に転じると、2/6には一時110.03まで急伸しました。この間、200日移動平均線や、一目均衡表雲下限及び上限、一目均衡表基準線及び転換線、ボリンジャーミッドバンド、109.70近辺に控える強力なチャートポイント(添付チャートの赤色水平線)を全て上抜けするなど、テクニカル的に見て「地合いの強さ」を意識させるチャート形状となっております。目先は、年初来高値110.30を上抜けられるか否かがポイントとなりそうです。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@日米金融政策の方向性の違いや、Aトランプ米大統領の弾劾リスク、B米国ファンダメンタルズの先行き不透明感(新型コロナウィルスの影響が反映する来月以降の数字)、C米中貿易摩擦の再燃リスク(第2段階合意の後ずれリスク)、D朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、E新型コロナウィルスの感染拡大リスク、F英合意なき離脱リスクの再燃、G米大統領選挙の先行き不透明感など、ドル売り・円買いを想起させる材料は引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的に持ち直しの兆しが見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。来週は新型コロナウィルスに絡む続報(感染拡大などネガティブな報道と、ワクチン開発などポジティブな報道が交錯する見通し。世界保健機関は2/11から2/12にかけて、ワクチン開発に向けた専門家会合を開催予定)や、中国金融市場の動向(中国当局による景気対策及び市場安定化対策の効果が持続するか否か)、米経済イベント(米消費者物価指数や、米小売売上高、パウエルFRB議長の議会証言など)の結果を睨みながらも、ドル円相場の反落(一巡後の下落)をメインシナリオとして予想いたします(不自然なリスクオン相場の賞味期限切れに要注意)。
来週の予想レンジ(USDJPY):108.50ー110.75
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、昨年末(12/31)に記録した約4ヶ月半ぶり高値1.1240をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約4ヶ月ぶり安値となる1.0942まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、200日移動平均線や90日移動平均線、一目均衡表雲上限および下限を下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転、強い下落トレンド入りを示唆するバンドウォークも成立するなど、テクニカル的にみて、「地合いの弱さ」を強く意識させるチャート形状となりつつあります。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスク(欧米貿易摩擦の激化懸念)や、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感、Bイタリアを巡る財政悪化懸念および政局不透明感、CECBによる追加緩和観測(早期正常化期待の後退)、D英国情勢の先行き不安(英合意なき離脱リスクの再燃や、英米通商協議の難航リスク)、E新型コロナウィルスの感染拡大を受けたリスク回避ムード(ドル買い・円買い・スイス買い)など、ユーロドルの上値を抑制する材料が複数残っている状況です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「続落リスク」が警戒されます。欧米の主要経済指標(ユーロ圏鉱工業生産や、米消費者物価指数や、米小売売上高、パウエルFRB議長の議会証言など)や、英国を巡るヘッドライン、新型コロナウィルスの続報を睨みながらも、来週はユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(10/1に記録した直近安値1.0879を試す展開)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0850−1.1050
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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