【概況】
ドル円は新型コロナウイルスの感染拡大報道を背景に1月17日からの下落基調を続けて2月1日未明には108.30円の安値をつけたが、週明けは春節明けの上海株が当初8%強の急落となってから反騰に転じ、NYダウも反騰し始めたことでリスク回避感が緩んで円安となり、2月5日への上昇で1月29日高値を超えるV字反騰となった。5日深夜には109.84円をつけて1月17日からの下げ幅に対する3分の2戻しにあたる109.62円も超えた。
2月5日のNYダウは前日比483.22ドル高と3連騰し、ナスダック総合指数は取引時間中の史上最高値を更新している。新型コロナウイルスの感染拡大報道は続いているが、WHOが2月4日にパンデミックではないとしたことや、2月5日には中国の浙江大学や英国の研究者チーム等での治療薬開発前進報道があって感染拡大への過度な懸念が緩んでいる。
2月5日に発表された米経済指標も株高とドル高円安を助長した。
米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した1月の全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比29万1000人増となり市場予想の15万6000人増を大幅に上回った。ただ昨年12月分は当初の20万2000人増から19万9000人増に下方修正された。
米商務省が発表した2019年の貿易赤字は6168億ドルとなり前年から1.7%減少して2013年以来6年ぶりに縮小した。対中国の貿易赤字は過去最大だった2018年の4195億ドルから17.6%減少して3456億ドルとなり、3年ぶりに赤字幅が縮小した。一方で対日赤字は前年比2.7%増の690億ドルとなった。
米サプライ管理協会(ISM)が発表した1月の米非製造業景況指数は55.5となり前月の54.9から上昇して市場予想の55.0も上回った。
【感染拡大への警戒は継続】
2月6日8時時点での中国本土の感染死者数は前日から74人増えて564人、感染者は2万8060人、感染疑いは2万4702人と拡大している。一方で治癒も1153人と増えている。中国本土以外での感染者数も拡大基調にあるが、WHOの言うようにパンデミック的なパニック状態には至っていない。しかし最終的にどの程度の被害レベルへ拡大するのかはっきり見通せない状況が続いていることも確かだ。
春節明けの上海株が暴落後に反騰していることや1月31日の600ドル超の下落で年初来安値を更新していたNYダウが3連騰していることは、感染拡大問題がパニック的にならないとすれば今が買い時とした投資家の買い急ぎであり、1月31日の様なダウ急落が再び発生しないとも限らない状況にあると注意したい。
【1月8日安値割れを回避して再びV字反騰】
1月17日高値110.28円から1月31日安値(2月1日未明)108.30円へ下落したが、1月8日安値107.65円割れは回避した。また昨年8月26日安値と今年1月8日安値を結ぶ支持線に到達してから切り返し、直前の下げ幅に対する半値戻し109.29円及び3分の2戻し109.62円をクリアしている。
直前の下げ幅1.98円からのV字反騰は、昨年10月3日へ1.97円の下落からV字反騰して高値を更新した時、今年1月8日へ2.07円の下落からV字反騰して高値を更新した時にも近い動きだ。
1月17日高値を超えないで下落する場合、1月17日高値を中心として12月13日高値を左肩とする三尊型が形成される。1月17日高値とほぼ同値かわずかに高値を更新してから失速する場合はダブルトップ形成で終わる可能性がある。しかし高値を更新して続伸に入れば、1月8日からの上昇時並として110.93円、1月31日への下げ幅の倍返しとして112.26円等が上値目処となりうると考えられ、その場合は昨年8月底からの上昇基調の継続として2月末から3月序盤にかけての間へ高値形成期が伸びてゆく可能性も考えられる。これらを踏まえると、下落再開は1月31日からの反騰幅の半値以上を削って続落するような展開が必要であり、そうしたレベルの下落が発生しない内は高値試しを継続しやすいという見方が優先されそうだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月27日朝安値から5日目となる2月1日早朝安値を直近のサイクルボトムとして戻しに入った。今回のトップ形成期は1月29日朝高値と30日未明高値によるダブルトップを基準とすれば、2月3日から6日未明までの間と想定されるため既に反落警戒期にあると思われるが、下落基調から上昇基調へ転じる場合はサイクルのリズムも転調してトップ形成期が延長されるケースが多々あるため、109.50円以上での推移中はまだ上昇余地ありと考える。
109.50円割れからはいったん弱気サイクル入りの可能性を優先して安値試しとする。ただし弱気サイクル入りした場合はボトム形成期が2月6日未明から10日朝にかけての間と想定されるので既にボトムをつけての反騰注意期にあると注意し、高値更新からは新たな強気サイクル入りにより次の高値形成期となる10日から12日深夜にかけての間へ上昇してゆく可能性があると考える。
60分足の一目均衡表では2月3日夜の反発で遅行スパンが好転し、4日の続伸で先行スパンを突破したが、その後も両スパン揃っての好転を維持している。新たな高値更新へ進めないと遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは弱気サイクル入りと仮定して安値試し優先とする。その際は先行スパンが下値支持帯となりやすいとみて、その後に遅行スパンが好転するところからは上昇再開とするが、先行スパンから転落するような下落が発生する場合はその後の下げも厳しくなると注意する。
60分足の相対力指数は2月5日未明に80ポイントに到達した後は高値更新に対して指数のピークが切り下がった状態にあるため弱気逆行となっている。このため50ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地が残るとみるが、50ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント台への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.50円を下値支持線、2月5日深夜高値109.84円、1/13高値109.94円辺りを上値抵抗線とする。
(2)109.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、109.94円超えの場合は110円試しを想定する。110円到達ではいったん売られやすいとみるが、110円超えから上昇が加速する場合は1月17日高値110.28円試しへ上値目処を引き上げる。また109.50円以上での推移が続く内は7日の日中も高値を試しやすいとみる。
(3)109.50円割れからはいったん弱気サイクル入りと仮定し、新たな高値更新へ進めない内は6日の日中から10日朝にかけての間への下落余地ありとし、2月5日夕安値109.30円割れの場合は109.00円試しを想定する。ただしいったん弱気サイクル入りした後に2月1日以降の高値を更新するところからは新たな強気サイクル入りとなるため110円台前半への上昇へ進む流れと考える。
【当面の主な予定】
2/6(木)
休場 ニュージーランド
16:00 (独) 12月 製造業新規受注 前月比 (11月 -1.3%、予想 0.7%)
16:00 (独) 12月 製造業新規受注 前年同月比 (11月 -6.5%、予想 -6.6%)
17:20 (欧) ラガルドECB総裁、講演
22:30 (米) 10-12月期非農業部門労働生産性速報 前期比 (前期 -0.2%、予想 1.5%)
22:30 (米) 10-12月期単位労働コスト速報 前期比年率 (前期 2.5%、予想 1.0%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.6万件、予想 21.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 170.3万人)
23:15 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
2/7(金)
未 定 (中) 1月 貿易収支・米ドル (12月 467.9億ドル)
未 定 (中) 1月 貿易収支・人民元 (12月 3292.7億元)
07:30 (豪) ロウ豪中銀総裁、半期に一度の議会証言
08:30 (日) 12月 全世帯家計消費支出 前年同月比 (11月 -2.0%、予想 0.1%)
14:00 (日) 12月 景気先行指数(CI)速報値 (11月 90.8)
14:00 (日) 12月 景気一致指数(CI)速報値 (11月 94.7)
16:00 (独) 12月 貿易収支 (11月 183億ユーロ)
16:00 (独) 12月 経常収支 (11月 249億ユーロ)
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 1.1%、予想 -0.2%)
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -2.6%、予想 -3.7%)
22:30 (米) 1月 非農業部門雇用者増加数 前月比 (12月 14.5万人、予想 16.0万人)
22:30 (米) 1月 失業率 (12月 3.5%、予想 3.5%)
22:30 (米) 1月 平均時給 前月比 (12月 0.1%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 平均時給 前年同月比 (12月 3.0%)
24:00 (米) 12月 卸売在庫 前月比 (11月 -0.1%)
24:00 (米) 12月 卸売売上高 前月比 (11月 1.5%)
25:00 (米) 米連銀、半期金融政策報告書を議会に提出
29:00 (米) 12月 消費者信用残 前月比 (11月 125.1億ドル)
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2020.02.06
ドル円110円に接近 リスク回避の動き弱まり反騰4日目(2/6午前)
6日午前の東京市場でドル円は109円台後半を堅調推移。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2020.02.06
ドル円、新型肺炎のワクチン開発前進報道と良好な米経済指標で109円台後半へ続伸(2/6朝)
5日(水)の外国為替市場でドル円は下落後に急反発。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。