ドル円見通し 110円の壁突破、8月底からの上昇基調は継続に(週報1月第2週)

週明けの13日は金融市場全般のリスクオン心理が拡大する中で109.68円を超えて一段高に入り、14日午前には110円を超えた。

ドル円見通し 110円の壁突破、8月底からの上昇基調は継続に(週報1月第2週)

【概況】

1月2日夜に米軍がイラン革命防衛隊司令官を空爆で殺害する事件が突然発生して中東情勢が一挙に緊迫した。1月8日朝にはイランがイラク駐留の米軍基地へ弾道ミサイルを発射して報復攻撃を行った。この段階では米・イランの全面戦争化や中東全域を巻き込む様な喫緊の有事リスクが高まる状況だったが、イラン外相が「国連憲章51条による自衛行為」として攻撃されたことに対する釣り合いの取れた報復にとどめて全面戦争化を望まないと表明し、8日夜にはトランプ大統領が米国民向けの演説で「イランに強力な経済制裁を科す」が「軍事力は行使したくない」として全面戦争化への懸念が一挙に冷めた。株式市場はリスクオン心理を取り戻して史上最高値を更新し、ドル円も反騰に転じた。

1月2日の米国による攻撃報道から1月6日朝には107.75円の安値をつけ、イランが喪に服す中で新たな動きが見られないとして1月7日深夜に108.62円まで戻していたが、8日朝のイラン報復攻撃直後には107.65円まで下げて12月2日以降の安値を更新した。
しかし、1月6日朝と8日朝の安値が結果的にはダブルボトムとなり、全面戦争回避のなかでダブルボトム完成目安の1月7日深夜高値を超え、ダブルボトムへの下落起点だった12月27日高値109.68円に対して1月10日深夜には同値まで戻して往って来いとなった。週末終了時点ではやや下げていたが、週明けの13日は金融市場全般のリスクオン心理が拡大する中で109.68円を超えて一段高に入り、14日午前には110円を超えた。

【米雇用統計を無難に通過、15日には米中第1段階合意への署名へ】

1月10日夜に発表された12月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比14.5万人増となり市場予想の16.4万人増を下回った。11月は当初の26.6万人増から25.6万人増へ若干下方修正された。失業率は前月及び市場予想と同じ3.5%だった。平均時給伸び率は前年同月比2.9%で市場予想及び前月の3.1%を下回った。総じて市場予想を若下回る水準だが、景気後退懸念を助長するほどの悪さではなく、また利上げを検討するような好調さでもなく、米連銀は当面して政策金利を現状維持して中期的な様子見姿勢を継続することに変化はないだろうと市場は受け止めた。

NYダウは米国・イランの全面戦争突入が回避されたことによる安堵と先行きへの楽観回復で買われ、1月10日には高値で29009.07ドルを付けて初めて29000ドルに到達した。雇用統計が予想を下回ったことや29000ドル到達での高値警戒感から終値では前日比133.13ドル安だった。1月13日は史上最高値更新へ進めなかったものの前日比83.28ドル高と高値圏を維持し、ナスダック総合株価指数は13日も95.07ポイント高と上昇して立会中及び終値ベースで史上最高値を更新している。

イラン情勢ではイラン軍によるウクライナ民間航空機誤射撃墜が反政府デモを招くなど、イラン側の混乱も見られる。しかし戦時下での誤射による撃墜や空爆における軍事拠点以外への誤爆事件等は過去何度も起きている。イランがウクライナ等へ正式に謝罪していることもあり、今のところこの問題によりさらに戦闘再開リスクが高まっている感じはないようだ。

市場の関心は米中貿易協議「第1段階の合意」への署名を控え、米中関係改善への期待感が強まっている印象だ。1月13日には複数の米メディアが米政府が中国への為替操作国認定を取り消すと報じた。
中国の劉副首相は1月14日に訪米して15日には通商協議の第1段階合意の署名を行う予定。第2段階以降の先行き不透明感は継続しているとはいえ、当面は両国が双方を名指しで批判し合って緊張感を高めることはないとすれば、株式市場の高値追及の流れが為替市場でのリスクオン心理も助長すると思われる。

【110円の壁を突破】

ドル円は12月2日に109.72円をつけた後は新たな高値更新へ進めずに12月26日深夜も109.68円に留まっていた。株高が続く中でもドル円が上昇しきれなかったことは、8月26日底からの上昇も3か月を経過して大方の円安材料を織り込んだ中での110円に対する心理的な抵抗感、米中通商協議でも第1段階合意の先は混乱が待っているだろうとの懸念の先取り、米長期債利回りの低水準での推移等が背景だった。
上値が重くなる中でイラン情勢が勃発したためにドル円としては上昇一巡から下落に転じるきっかけを得たこととなり108円割れへ急落したのだが、このきっかけ自身が一挙に解消されたことで却って切り返し上昇に勢いをつけ、110円の壁を前に上値の重かった市場心理をより楽観的にするきっかけに変わったと思われる。

8月26日底からの3か月の上昇から一旦調整安を入れてからV字反騰して12月2日高値を更新したことにより、1月8日底を新たな起点とした円安ドル高波動に入ったという印象だ。110円の壁も超えたことにより、10月3日安値106.50円から12月2日への上昇幅3.22円を1月8日安値に加算したN計算値110.87円、次いで12月2日から1月8日への下げ幅の倍返しとなるV計算値111.79円等が上値目処となってゆく可能性があると考える。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

ドル円60分足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値と8日午前安値をダブル底とした強気サイクル入りとしてきた。高値形成期は1月10日夜から14日深夜にかけての間と想定してきたので、14日夜にかけてはまだ上昇余地があると思われる。また1月8日午前安値から3日弱となる11日未明安値を直近のサイクルボトムとして連続的な強気サイクル入りとなっている可能性も検討される。弱気転換は11日未明安値割れからとし、109円台後半を維持する内は上昇余地ありとし、14日深夜を超えて弱気転換しない場合は15日深夜から17日深夜にかけての間へ上昇期が伸びる可能性を検討する。

60分足の一目均衡表では、8日夜の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜き、その後も両スパンそろっての好転を維持している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、戻り高値更新が続かないで109.20円割れへ下げるようだと遅行スパンも悪化してくると注意し、遅行スパン悪化からはいったん反動安入りとみて安値試し優先とする。その場合は当初の下値支持線を先行スパンの上下限とする。

60分足の相対力指数は13日夜の上昇で80ポイントを超えているのでかなりの買われ過ぎと思われるが、70ポイントを割り込んでも切り返す内は上昇余地ありとみる。ただし相場が高値を更新するところで指数のピークが切り下がる場合は弱気逆行となって下落に転じやすいと注意し、60ポイント割れからは反動安入りを警戒する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.75円を下値支持帯、110.50円を上値抵抗線とみておく。
(2)110円を割り込んでも切り返す内は110.50円前後試しを想定する。110.50円以上は反落警戒とするが110円台を維持しての推移なら15日も高値を試しやすいとみる。先行きは111円台を目指す可能性もあるとみる。
(3)109.75円割れからはいったん弱気サイクル入りする可能性を警戒して109.50円前後への下落を想定する。109.50円台は押し目買いも入りやすいとみるが、金融市場は常にサプライズ材料に備える必要もあるので、リスク回避材料がでて109.50円を割り込む場合は反動安入り警戒として15日も安値試しを続けやすくなるとみる。

【当面の主な予定】

1/14(火)
劉鶴中国副首相、貿易合意署名のため訪米(1月15日まで)
未 定 (中) 12月 貿易収支・米ドル (11月 387.3億ドル、予想 457.0億ドル)
未 定 (中) 12月 貿易収支・人民元 (11月 2742.1億元、予想 3150.0億ドル)
06:45 (NZ) 11月 住宅建設許可件数 前月比 (10月 -1.1%)
08:50 (日) 11月 経常収支・季調前 (10月 1兆8168億円、予想 1兆4248億円)
08:50 (日) 11月 経常収支・季調済 (10月 1兆7322億円、予想 1兆7862億円)
08:50 (日) 11月 貿易収支・国際収支ベース (10月 2540億円、予想 1038億円)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー現状判断DI (11月 39.4、予想 40.9)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー先行判断DI (11月 45.7、予想 46.9)

16:00 (ト) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.9%)
17:30 (欧) メルシュECB理事、講演
22:30 (米) 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 2.1%、予想 2.3%)
22:30 (米) 12月 消費者物価コア指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 2.3%、予想 2.3%)
23:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
27:00 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演

1/15(水)
08:50 (日) 12月 マネーストックM2 前年同月比 (11月 2.8%、予想 2.7%)
09:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、日銀支店長会議で挨拶
18:30 (英) 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.2%)
18:30 (英) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 1.5%、予想 1.5%)
18:30 (英) 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 1.7%、予想 1.7%)
18:30 (英) 12月 小売物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.4%)
18:30 (英) 12月 小売物価指数 前年同月比 (11月 2.2%、予想 2.3%)
18:30 (英) 12月 生産者物価コア指数 前年同月比 (11月 1.1%、予想 1.0%
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.5%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 -2.2%、予想 -1.0%)

19:00 (欧) 11月 貿易収支・季調済 (10月 245億ユーロ、予想 220億ユーロ)
19:00 (欧) 11月 貿易収支・季調前 (10月 280億ユーロ)
22:30 (米) 12月 生産者物価指数 前月比 (11月 0.0%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 1.1%、予想 1.3%)
22:30 (米) 12月 生産者物価コア指数 前月比 (11月 -0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 生産者物価コア指数 前年同月比 (11月 1.3%、予想 1.3%)
22:30 (米) 1月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (12月 3.5、予想 3.6)
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
26:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

1/16(木)
未 定 (南ア) 南アフリカ準備銀行政策金利 (現行 6.50%、予想 6.50%)
08:50 (日) 11月 機械受注 前月比 (10月 -6.0%、予想 3.0%)
08:50 (日) 11月 機械受注 前年同月比 (10月 -6.1%、予想 -5.4%)
08:50 (日) 12月 国内企業物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.1%)
08:50 (日) 12月 国内企業物価指数 前年同月比 (11月 0.1%、予想 0.9%)
16:00 (独) 12月 消費者物価指数、改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 12月 消費者物価指数、改定値 前年同月比 (速報 1.5%、予想 1.5%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 12.00%、予想 11.50%)
21:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨

22:30 (米) 12月 輸入物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 輸出物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 小売売上高 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 0.1%、予想 0.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 180.3万人)
22:30 (米) 1月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (12月 0.3、予想 3.0)
24:00 (米) 11月 企業在庫 前月比 (10月 0.2%、予想 -0.1%)
24:00 (米) 1月 NAHB住宅市場指数 (12月 76、予想 74)
27:00 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、発言
30:00 (米) 11月 対米証券投資 (10月 -483億ドル)
30:00 (米) 11月 対米証券投資・短期債除く (10月 325億ドル)

1/17(金)
11:00 (中) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 8.0%、予想 7.9%)
11:00 (中) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 6.2%、予想 5.9%)
11:00 (中) 10-12月期GDP 前年同期比 (前期 6.0%、予想 6.0%)
11:00 (中) 10-12月期GDP 前期比 (前期 1.5%、予想 1.4%)
13:30 (日) 11月 第三次産業活動指数 前月比 (10月 -4.6%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調済 (10月 324億ユーロ)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調前 (10月 410億ユーロ)

18:30 (英) 12月 小売売上高 前月比 (11月 -0.6%、予想 0.6%)
18:30 (英) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 1.0%、予想 2.7%)
18:30 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 -0.6%、予想 0.8%)
18:30 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (11月 0.8%、予想 3.0%)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前月比 (10月 -1.0%)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前年同月比 (10月 0.3%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価指数、改定値 前年同月比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価コア指数、改定値 前年同月比 (速報 1.3%、予想 1.3%)

22:30 (米) 12月 住宅着工件数・年率換算件数 (11月 136.5万件、予想 138.0万件)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数 前月比 (11月 3.2%、予想 1.1%)
22:30 (米) 12月 建設許可件数・年率換算件数 (11月 148.2万件、予想 146.0万件)
22:30 (米) 12月 建設許可件数 前月比 (11月 1.4%、予想 -1.5%)
23:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:15 (米) 12月 設備稼働率 (11月 77.3%、予想 77.1%)
23:15 (米) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 1.1%、予想 0.2%)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (12月 99.3、予想 99.0)

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