ドル円見通し、8月26日底以降の高値更新たが、米大統領の香港人権法案署名で上昇にブレーキ(19/11/28)

トランプ大統領が香港人権法案について署名して成立させたため、中国側の反発必至として109円台前半へ反落している。

ドル円見通し、8月26日底以降の高値更新たが、米大統領の香港人権法案署名で上昇にブレーキ(19/11/28)

【概況】

11月7日(8日未明)高値109.48円から11月15日未明安値108.24円まで下落した後、さらに21日午前に安値で108.26円まで下げたものの底割れを回避してダブル底型を形成しつつ反騰に転じ、11月26日午前に109.20円へ続伸して11月18日夜高値を突破したためにダブル底が完成した。また11月8日未明高値から12日、18日へ戻り高値が切り下がってきた流れを脱却した。
11月26日午前高値の後はいったん109円を割り込んだが早々に切り返して27日深夜には26日高値を突破、28日未明には109.60円をつけて8月26日底以降の高値を更新した。しかし、28日早朝、トランプ大統領が米議会による香港人権法案について署名して成立させたため、中国側の反発必至として109円台前半へ反落している。一段高の流れに急ブレーキがかかった印象だ。

11月27日は米中協議進展期待と米GDP速報や耐久財受注統計が予想を上回ったことにより株高ドル高が進み、 NYダウは前日比42.32ドル高と上昇して3日連続で史上最高値を更新した。ドル円が大幅上昇した他、ユーロドルも11月25日夜安値を割り込んで一段安となる等ドル高感が強まった。
11月27日夜までは米中協議関連での新たな動きもなかったが、11月25日に閣僚級電話協議が行われたことや、トランプ米大統領が26日に中国との貿易協議第1段階の最終合意が近いとした事が株式市場の楽観を助長していた。

【米GDP上方修正がドル円の高値更新に貢献】

11月27日の米経済指標はまちまちだったが、7〜9月期の米GDP改定値が上方修正され、10月の耐久財受注が2カ月ぶりにプラスとなった事が株高ドル高を助長してドル円の一段高要因となった。
米商務省が発表した2019年7〜9月期の実質GDP改定値は季節調整済年率換算で前期比2.1%増となり速報値の1.9%増から上方修正され、市場予想の1.9%も上回った。また10月の米耐久財受注は前月比0.6%増となり前月の1.4%減から大幅改善して市場予想の0.8%減も上回った。航空機を除く非国防資本財受注も1.2%増となり市場予想の0.3%減を上回った。

米商務省が発表した10月の個人消費支出物価指数は前年同月比1.3%上昇となり前月と上場率は横ばいに、米連銀が目標としている2%には12カ月連続で届かなかった。同コア指数の前年同月比は1.6%上昇で予想の1.7%を下回り、これも10カ月連続で2%を下回った。
米労働省が発表した週間新規失業保険申請 は季節調整済みで21万3000件となり前週比1万5000件減、市場予想の22万1000件を下回った。
米不動産業者協会(NAR)が発表した10月の中古住宅販売仮契約指数は前月比1.7%低下して市場予想の0.8%上昇を下回ったが、前年同月比は4.4%の上昇だった。
11月のシカゴ購買部景況指数(シカゴPMI)は46.3となり前月の43.2から上昇したが、強弱分岐点の50を3カ月連続で割り込み市場予想の47.0を下回った。

【米中協議は再び暗礁に乗り上げるか?】

トランプ米大統領は28日早朝、「香港人権・民主主義法案」に署名した。同法案は米上院、下院が可決して成立のための大統領の署名待ちとなっていたが、署名により成立した。中国から見れば香港の反政府デモを支援するものであり、中国政府は法案提出時から内政干渉として猛反発してきた。
トランプ大統領は香港問題で中国と対立することにより米中通商協議の第1段階の合意が暗礁に乗り上げるリスクと、米上下院が可決した法案を潰して議会との対立が強まり弾劾への動きが増長することのデメリットを天秤にかけた上で署名したという印象だ。
米中通商協議は大詰めとされてきたが、トランプ大統領が成果を強調できるためのハードルはまだ超えていない印象も伝わってきた。今回の法案署名・成立により中国側がどの程度の反撃に出るのかにより、第1段階合意の先送り、破談の可能性と12月15日からの米国による対中制裁関税第4弾発動がどうなるのか、市場も不安に陥りリスクオフへ急旋回する可能性も出てきたと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月15日未明と21日午前の両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りとしてきたが、26日午前高値から一旦109円を割り込んで切り返しに入って高値を更新したため、26日午前高値を直近のサイクルトップ、26日夜安値を同サイクルボトムとして新たな強気サイクル入りしたと思われる。トップ形成期は29日午から12月3日午前にかけての間と想定されるが、サイクルトップは短縮されることもあり、28日朝に反落しているため、既にサイクルトップをつけてしまった可能性もあるとみる。109.20円を上回る内は上昇余地ありとみるが、109.20円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、109円割れからは弱気サイクル入りと仮定して29日夜から12月3日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では週明けの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンも突破してきた。28日朝時点でも両スパン揃っての好転は維持されているが早朝高値からの反落もあるので、26本基準線を割り込んでも切り返す内は上昇余地ありとするが、同線割れからは弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からは弱気転換とみる。その場合は先行スパンからの転落を試す可能性もあるとみる。
60分足の相対力指数は28日早朝高値で80ポイントを超える「買われ過ぎ」水準となり、その後に60ポイント割れまで失速した。70ポイント台を回復する反騰に入れないうちは50ポイント割れからの下落継続を警戒するところか。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.20円下値支持線、11月28日早朝高値109.60円を上値抵抗線とする。
(2)109.20円以上での推移中は上昇余地ありとし、28日早朝高値超えからは110円試しへ向かうとみるが、そのためには香港法案成立によるネガティブ反応を解消するポジティブ材料が欲しいところだ。
(3)109.20円割れからは弱気転換注意として109円試しを想定する。109円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、米中関連でのネガティブ報道から大幅続落となる場合は108.75円前後まで下値目処を引き下げる。また109.20円以下での推移なら29日にかけても安値を試しやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/28(木)
休場、米国(感謝祭)
12:30 (日) 黒田日銀総裁、講演(パリ)
19:00 (欧) 11月 経済信頼感 (10月 100.8、予想 101.0)
19:00 (欧) 11月 消費者信頼感確定値 (速報 -7.2、予想 -7)
22:00 (独) 11月 消費者物価指数速報値 前月比 (10月 0.1%、予想 -0.8%)
22:00 (独) 11月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (10月 1.1%、予想 1.3%)

11/29(金)
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 7.2%)
08:30 (日) 10月 失業率 (9月 2.4%、予想 2.4%)
08:30 (日) 10月 有効求人倍率 (9月 1.57、予想 1.56)
08:30 (日) 11月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (10月 0.5%、予想 0.6%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前月比 (9月 1.7%、予想 -2.0%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (9月 1.3%、予想 -5.3%)
09:01 (英) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -14、予想 -14)

14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -4.9%、予想 -7.4%)
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 36.2、予想 37.0)
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.0%、予想 5.0%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 7.5%、予想 7.5%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (10月 0.7%、予想 0.9%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (10月 1.1%、予想 1.2%)

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