楽観的見方に傾きすぎ、円高の動きに注意(週報11月第3週)

為替市場は週初からじり安の動きとなり、木曜には一時108.24レベルの安値をつけました

楽観的見方に傾きすぎ、円高の動きに注意(週報11月第3週)

今週の週間見通し

先週は、米中通商協議進展期待と協議難航のニュースが入り乱れました。たしかに合意への協議はかなり進んでいるものの、最終的な署名に至るにはまだ解決しなくてはならない問題が残されていることを感じさせる双方からの発言があったと思います。そうした動きから為替市場は週初からじり安の動きとなり、木曜には一時108.24レベルの安値をつけましたが、米国株式市場で主要3株価指数が揃って史上最高値となる動きから下値を限定的となりました。

米中通商協議について政権中枢からは基本的に合意に近いという発言で揃っていますが、肝心のトランプ大統領は同様の発言をしつつも決まっていないとも発言、合意に至らない場合の関税引き上げにも言及していることを考えると、これまでの部分合意自体が今回は95%以上進展しているものの、残りの数%はまだというのが現実的な解釈かと思います。以前の90%まで合意から決裂となったことを考えると、今回も決して楽観はできないと思いますが、米国民に向けて部分合意のパフォーマンスをした以上、さすがに今回ばかりは12月中旬までに署名となるというのが市場参加者の多くの見方のようです。

個人的には蓋を開けてみるまでは何が出てくるかわからないと、かなり疑いの目で見ているため素直にリスクオンには反応しがたいのですが、米国株がここまで強いと株価に利食いが入り反転下落という動きにでもならない限り、ドル円が大きく下げることも無さそうです。そうなると、引き続き108円台前半では買いが出てくるものの、109円台では売りも出てくるという流れになりそうですから、今週もレンジ相場となる可能性が圧倒的に高いとしか言えません。年内も残すところ1か月半を切りましたので、変動相場制移行後最低レンジ更新は間違いない感じとなってしまいました。

さて今週ですが、イベントとしては経済指標が連日出てくるものの方向感が決まってくるような重要性の高いものでもありませんし、FOMC議事録もサプライズに繋がるようなものでも無いと思われます。引き続き、米中協議の進展具合が最大の材料となりそうですが、ここまでかなり楽観的な見通しにバイアスがかかっていますので、注意すべきは株価の調整とともに合意難航関連のニュースとなります。

そして、今週気になるのは日柄です。まず、20日まではどのような材料も方向感が出にくい時間帯なのですが、21日(木)は円高に振れやすい日柄となっていて、過去15年程度の値動きから前後1日の誤差を考えると7割以上の相関をもって円高に動きやすいと言えます。ここまでの楽観的な見方に対して、20〜22日、つまり今週後半に調整が入る可能性が出てくるかもしれないというスタンスでいたほうがよいように思われます。

次にテクニカルです。日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

先週は8月安値からのサポートライン(ピンクの細線)を下抜け、トレンド転換かと思いましたが結局は上昇ウェッジの中に戻されサポートラインを引き直した上昇ウェッジ(ピンクの太線)を継続と見ることとなりそうです。ただ、ごく短期目線ではフラッグ(あるいは下降チャンネル、青の平行線)を形成する可能性もあり、引き続き引き直したサポートラインを下抜ける動きに特に週後半には気を付けたいところです。

テクニカルな値幅観測のターゲットは、このようなもみあいではあまり意味を成してきませんので、今週も基本は108円台前半の買いと109円台前半の売りに挟まれつつ、上述の通り、円高方向へ短期的に動く可能性を‘考えるというところかと思われます。個人的には円高方向に動く可能性が高いと見て、108.10レベルをサポートに109.20レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

11月18日(月)
08:50 本邦10月貿易収支(通関)
18:00 デギンドスECB副総裁講演
22:20 レーンECB理事講演
24:00 米国11月NAHB住宅市場指数
26:00 (クリーブランド連銀総裁講演)
30:45 NZ7〜9月期PPI


11月19日(火)
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表
18:00 ユーロ圏9月経常収支
19:00 ユーロ圏9月建設支出
22:30 米国10月住宅着工・建築許可件数
23:00 NY連銀総裁講演


11月20日(水)
16:00 ドイツ10月PPI
17:00 南ア10月CPI
24:30 週間原油在庫統計
28:00 FOMC議事録公表

11月21日(木)
16:45 フランス11月企業景況感
18:40 デギンドスECB副総裁講演
**:** 南ア中銀政策金利公表
21:30 ECB理事会議事要旨公表
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:30 (クリーブランド連銀総裁講演)
22:40 カナダ中銀総裁講演
24:00 ユーロ圏11月消費者信頼感速報値
24:00 米国10月景気先行指数
24:00 米国10月中古受託販売件数
24:10 (ミネアポリス連銀総裁講演)


11月22日(金)
08:30 本邦10月CPI
16:00 ドイツ7〜9月期GDP改定値
17:00 ラガルドECB総裁講演
17:15 フランス11月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ11月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏11月製造業・サービス業PMI速報値
22:00 ドイツ連銀総裁講演
23:45 米国11月製造業・サービス業PMI速報値
24:00 米国11月ミシガン大消費者信頼感確報値

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時からNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

11月11日(月)
ドル円は東京前場に前週のトランプ大統領の関税撤廃は決まっていないとの発言が重石となる中、アジアの主要株価指数が下げたことを受け東京前場からドル売りが先行しました。その後も上値の重たい動きが続き欧州市場では108.90レベルの安値をつけたものの、ポンド円の買いが反転につながり109円台に戻しましたが、NYが休場となる中でほとんど動きがないままでの引けとなりました。


11月12日(火)
ドル円は東京市場では強い株価を背景に円売りが先行する動きとなりました。しかし109.25以上では実需と利食い売りも目立つ中、欧州市場に入り株価指数先物が下げに転じる動きとともに円買い戻しの動きとなりました。その後も上値が重たい展開が続きましたが、トランプ大統領が講演で中国との合意署名が間近としつつも、合意できない場合は関税を大幅に引き上げると発言したことを嫌気して、引けにかけては109円を割り込む流れとなりました。

11月13日(水)
ドル円は早朝には前日の流れを受けドル売りが先行しましたが、東京市場に入りすぐに株価が持ち直す動きとともに反転、欧州市場序盤には109.15レベルまで回復しました。しかし、直後に株価に売りが入りリスクオフの動きとなりNY市場では米中通商協議が難航しているとのニュースもあって、108.65レベルの安値をつけました。いっぽうで株式市場ではダウが高値を更新する動きとなり、やや買い戻しが入っての引けとなりました。


11月14日(木)
ドル円は前日までのドル安を継続してのスタート、東京朝方の日経平均の下げも重石となってじりじりと水準を切り下げる展開が続きました。NY市場では米金利の低下とともにドルがじり安となる中で米中協議難航のニュースが改めて出たことで一時108.24レベルまで売られましたが、引けにかけてはダウの上昇とともにやや買い戻されて引けました。

11月15日(金)
ドル円はNYの引け間際に既に反転上昇の動きが始まっていましたが、それまでの米中協議難航のニュースに反してNEC委員長が合意に近いと発言したことで、株価とともにリスクオンの動きとなりました。その後も上昇の流れは衰えず、一貫して強い地合いを続けていましたが、NY市場では商務長官も合意に違いとの発言を繰り返し、米国主要3株価指数が揃って史上最高値を更新したことも重なって、108.86レベルまで上伸後そのまま高値圏で引けました。

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