ドル円見通し 8月26日からの上昇トレンドはギリギリで維持(週報11月第3週)

米中通商協議はまだ土壇場の駆け引きが続いているのだろう。

ドル円見通し 8月26日からの上昇トレンドはギリギリで維持(週報11月第3週)

ドル円見通し 8月26日からの上昇トレンドはギリギリで維持

【概況】

10月31日未明の米連銀FOMC(今年三度目の小幅利下げを決定、利下げ打ち止め姿勢を示す)直後の高値109.28円から11日1日午前安値107.93円まで下落した後、11月1日夜の米雇用統計が良好な数字だったことで反騰に転じ、11月4日からは米経済指標の持ち直しへの楽観と米中協議進展への期待感を背景に11月6日高値109.24円まで戻した。10月31日未明高値に迫ったところでいったんは11月7日昼安値108.64円まで下げたが、11月7日夕刻に中国商務省が米中双方が段階的な関税撤廃に合意と会見したことを好感して11月8日未明高値で109.48円へ上昇した。
11月8日夜にも109.47円を付けたが109.50円超えには至らずに週を終えたが、週明けからは再び米中協議進展への不透明感が意識されて下落に転じた。

米連銀が今年三度の利下げをもって当面は現状維持とする姿勢を示したことで、ドル円にとっての主要テーマは米中協議の進展度合いによるリスクオンかリスクオフかというところに焦点が向かった。
11月7日の中国商務省会見で盛り上がった早期合意期待に対しては、トランプ米大統領が8日に「合意していない」「中国はいくらかの関税の引き下げを望んでいるが完全撤廃ではない」等と述べたためにドル円の上昇は11月8日まででいったんピークとなった。
13日には米WSJ紙が米中協議は暗礁に乗り上げたと報じ、中国共産党系メディアも関税撤廃無しの合意はないと報じた。14日には英フィナンシャルタイムズ紙も同様に交渉が行き詰まっていることを報じためにドル円は15日未明安値108.24円まで下落した。中国商務省の高峰報道官も14日の記者会見で両国が追加関税撤回について「深く議論している」と述べたが11月7日の会見で示した合意の有無に触れなかったため不透明感が増した。

11月15日朝からの反発はクドロー米国家経済会議(NEC)委員長発言等がきっかけだった。クドロー委員長は中国との貿易協議が非常に建設的に進んでいるとして貿易合意に近づいているとの認識を示した。またロス米商務長官も米中両国が電話協議を15日に行うとし、第1段階の合意に署名する可能性を「非常に高い」と述べた。これら発言を受けてドル円は買い戻されて16日未明には108.84円まで上昇した。
11月8日高値109.48円から15日安値108.24円まで1.24円の円高ドル安だったが、終盤の反発で0.60円を戻し、半値戻しに近いところとした。

米中通商協議はまだ土壇場の駆け引きが続いているのだろう。
16日午前には中国の劉鶴副首相とムニューシン米財務長官及びライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が電話協議を行っている。建設的な協議だったと中国新華社通信が報じているが、具体的な内容については触れられていない。
これまでも協議進展を巡る楽観と悲観の発言・報道が交互に繰り返されて市場も振り回されてきたが、この状況は現に第1段階合意署名へ向けた米中首脳会談の日程・場所が明示されてトランプ大統領が署名すると発言するまでは続くだろうし、合意ならリスクオン全開となり、土壇場で破談して米中双方が従来に増して強硬姿勢を示せばリスクオフ全開の展開に陥るのだろう。12月15日の米国による対中国制裁関税第4弾発動予定まではまだ波乱含みということだろう。

【8月底からの上昇トレンドは維持】

8月26日底と10月3日安値、11月1日安値はほぼ1直線で下値支持線を形成してきたが、11月14日の反落により同線を若干割り込んた。しかし15日朝からの反発で15日の日足は陽線引けしており、土俵で言えば徳俵に足が残っているところだ。
11月1日安値107.88円を割り込めば、下値支持線からの転落となるため10月3日安値106.50円試し、さらに8月1日からの急落時や昨年12月の暴落時並の下落へ発展して8月26日安値104.45円を試しにかかる可能性も出てくると思われる。しかし11月14日(15日未明)安値割れ回避か、若干割り込んでも11月1日安値割れに至らずに109円超えへ切り返すなら上昇基調の継続となり、11月7日高値超えからは110円台中盤試しへ向かう可能性も出てくるだろう。

上昇トレンドを維持できるかどうかとともに注意するポイントとしては日足チャートの形状としてウェッジ型を形成していることが挙げられる。8月26日からの支持線に対して9月18日高値と10月30日高値を結ぶ上値抵抗線は角度が緩いために支持線と抵抗線の幅は徐々に狭まっており、いわゆる「くびき型」=「ウェッジ型」を形成している印象だ。上昇基調にあってせりあがるものの徐々に煮詰まる細い三角持ち合いといえる。
今年4月天井はダブル天井が抵抗線で1月31日と3月25日安値を結ぶ支持線により三角持ち合い型を形成して底から転落した。昨年10月天井は抵抗線が切り下がり支持線が切り上がるレンジ縮小型の三角持ち合いを形成して12月にそこから転落した。今回も8月26日以降の支持線を割り込む=ウェッジ型三角持ち合いから転落すると天井感が強まると思われる。

ドル円見通し 8月26日からの上昇トレンドはギリギリで維持

ドル円日足

【対等数値への警戒】

さらにもう一つの注目点は日柄だ。一目均衡表では分析における重点は値幅と時間であり、特に時間=日柄が重視される。日柄分析としては基本数値と対等数値という概念があり、基本的に変化点となりやすい経過日数・本数と、前回の天井から直近の天井までの経過日数とその後の日数、前回の上昇波動における経過日数とその後の日数等が変化日としての警戒点とされる。
この1年間のドル円日足においては(1)昨年10月天井から今年4月戻り天井まで日足145本、そこから11月7日高値までが142本。(2)4月24日高値から8月1日高値までが日足72本でそこから11月7日までが71本。(3)8月1日高値から9月18日高値まで日足35本でそこから11月7日までが37本であることが、対等数値としての注意点になってきている印象がある。これら対等数値を踏まえれば、11月7日高値ないしは高値更新の場合でも11月中旬は8月26日からの上昇が一巡しやすい時間帯である可能性があるということだ。逆に言えば、11月中旬を超えてドル円が上昇するなら、よりスケールの大きい対等数値を目指して上昇基調が発展する可能性を考えるべきということになるだろう。

【当面のポイント】

(1)当初の下値支持線を108.50円、109.00円を上値抵抗線とみておく。
(2)108.50円以上での推移か、一時的に割り込んでも回復するうちは15日未明からの上昇基調継続として11月8日高値試しを想定する。11月8日高値を上抜けば110円台中盤を目指す流れを想定するが、そのためにはよりリスクオン心理が拡大してゆく展開が必要だろう。
(3)108.50円を割り込んで続落の場合は11月15日未明安値108.24円をもう一度試すとみる。底割れ回避から15日未明以降の戻り高値を更新すれば押し目底形成による第二段階の上昇として11月8日高値試しへ再挑戦の流れと考える。
(4)11月15日未明安値を割り込む場合は11月8日高値からの下落が11日夜安値までを一段目とし、15日未明安値までを二段目とし、底割れから三段下げの三段目に入ることとなるため、11月1日安値107.93円試し、さらに底割れの場合は8月26日以降の上昇基調からの転落として107円台序盤、10月3日安値106.50円試し、さらに8月底試しへ進む下落基調に入る可能性も出てくると思われる。(了)<17日16:50>

【当面の主な予定】

11/18(月)
休場、メキシコ(革命記念日)
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 71、予想 71)
26:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁(FOMC投票権有)、講演
30:00 (米) 9月 対米証券投資・合計 (8月 705億ドル)

11/19(火)
衆院本会議で日米貿易協定承認案が採決

06:45 (NZ) 7-9月期生産者物価 前期比 (前期 0.5%)
09:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 266億ユーロ)
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調前 (8月 257億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前月比 (8月 -0.5%)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前年同月比 (8月 1.2%)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算件数 (9月 125.6万件、予想 132.0万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 -9.4%、予想 5.1%)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算件数 (9月 138.7万件、予想 138.5万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数 前月比 (9月 -2.7%、予想 -0.4%)

11/20(水)
休場 ブラジル(黒人意識の日、株式休場、債券・為替通常取引)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調前 (9月 -1230億円、予想 3010億円)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調済 (9月 -972億円、予想 2612億円)
16:00 (独) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 0.1%、予想 0.0%)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨10月29-30日開催分

11/21(木)
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行、政策金利 (現行 6.50%)
13:30 (日) 9月 全産業活動指数 前月比 (8月 0.0%)
22:30 (米) 11月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (10月 5.6、予想 6.6)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.5万件、予想 21.9万件 )
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.3万人、予想 168.3万人
22:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁(FOMC投票権有)、講演
24:00 (米) 10月 景気先行指数 前月比 (9月 -0.1%、予想 -0.2%)
24:00 (欧) 11月 消費者信頼感・速報値 (10月 -7.6、予想 -7.2)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (9月 538万件、予想 550万件)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数 前月比 (9月 -2.2%、予想 2.2%)
24:10 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演

11/22(金)
20カ国・地域(G20)外相会議(名古屋市、11/23まで)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価指数 前年同月比 (9月 0.2%、予想 0.3%)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (9月 0.3%、予想 0.4%)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価指数・生鮮食料品エネルギー除く 前年同月比 (9月 0.5%、予想 0.6%)
16:00 (独) 7-9月期GDP改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
16:00 (独) 7-9月期GDP改定値・季調済 前年同期比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 7-9月期GDP改定値 季調前 前年同期比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
17:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演

17:30 (独) 11月 製造業PMI速報値 (10月 42.1、予想 42.9)
17:30 (独) 11月 サービス業PMI速報値 (10月 51.6、予想 52.0)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI速報値 (10月 45.9、予想 46.4)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI速報値 (10月 52.2、予想 52.4)
22:00 (欧) バイトマン独連銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 製造業PMI速報値 (10月 51.3、予想 51.5)
23:45 (米) 11月 サービス業PMI速報値 (10月 50.6、予想 51.5)
23:45 (米) 11月 総合PMI速報値 (10月 50.9)
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 95.7、予想 95.7)

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